まさるのビジネス雑記帳

勉強ノート代わりに書いています。

M&AのFAのFeeは高騰?

2014-06-21 08:57:28 | M&A

  • M&Aでは、売り手も買い手もFA(Financial Advisor)を起用するのが一般的になりました。やはり企業としてもFAを入れて、きちんと行っている振りをしないといけなくなりました。しかし、FAの機能は、相変わらず限られています。にも拘らず過度に依存する企業が多いのは嘆かわしいですね。M&Aが終了すれば、お金をもらってありがとさよならです。企業買収は金があれば、買えますが、しかし、その後経営が大変です。M&Aの失敗率はどれぐらいでしょうか?6割は超えているかもしれません。映画会社を買収して23年で23000億円損した松下電器=Panasonic、一兆円以上を世界にばら撒いたNTT Docomo、インド企業を買収して2-3000億円損した第一三共等、M&A失敗企業は、数え上げればキリがありません。

     

  • FAは、企業価値算出・買収価格を算出します。EV/EBITDA等は、少し勉強すれば簡単に出来ます。DCFとかTerminal Valueの計算遊び、前提が異なる負債コストと資本コストの足し算をして算出するWACC等、ウオーレンバフェットが言う馬鹿馬鹿しい理論を、難しい計算をしているがごとく、自分たちは高度なことをやっているように見せるところが腕でしょうか?しかし、機能はあります。買い手Repなら、社内の人間がやったらいろいろけちを付ける経営陣が、プロ(FA)がやったふうに見せられますからね。

     

  • 最近の買収価格はどのように算出しますかね。WACCが低いので、FCFの年数を増やして、且つTerminal Valueの永久成長率を、1.5%とか2%にすれば高値がでますね。Terminal Valueは、全体価値の67割、あるいは8割に達することがあります。要はTerminal Valueを操作すればいいんですね。即ち、EBITDAmultipleの最大値が、DCFの最低値ぐらいになるように検討を付けてDCFの数字遊びを行って、買い手から最大限の買収価格を出させるのですね。これが、即ち「勝つ価格」ですね。入札方式だと、勝つ価格を出さないと意味ないですから、そういう点では、計算係の機能はありますね。

     

  • 買い手RepFAの機能は、上記のように企業に高値を出させるという点にあります。時々ありますが、日本企業は欧米の入札参加者の値段を吊り上げる当て馬にされる場合もあります。FAは、定性面の機能は全く無いですね。事業の評価も出来ないしDDもあまり出来ない。DDでは、監査法人系コンサルティング会社が能力を発揮します。成功報酬がありませんので、結構理にかなった報酬です。他にDDではあまり役立たない法律事務所の法務DD(彼らの機能はDefinitive Agreementの作成と届出等の規制への対応)等もありますね。買収企業自体がしっかりビジネス・定性面のDDを行わないといけないのに、これもFAに依存する企業もあります。私の行ったかつての有名投資銀行をFAとして起用したM&Aでは、いくつもの領域(経営、IT、財務、法務、環境、製造、調達、販売、研究開発)毎にDDをやりましたが、FAの人は、各DDに参加させて手伝いますということでしたが、DDのとき、彼らは、ただそばに座っていただけでした。FAの人には事業は分からないし、DD check listを作らせても、全くピンボケで、全部こちらで作り直したときもありました。しかし、ろくな機能も持たないのにFeeだけは、がめつく要求しますね。

     

  • 最近は、FAの責任者等のhourly rate7万円とか平気で言いますからね。私に言わせれば7万円/hは、法外レートも良いとこですね。でももし、私が逆の立場なら、適正レートと言いますがね!まあ、一言で言えばFAは、邪魔臭い計算をしてくれる計算係と、相手方Repとの間の連絡係でしょうか。M&Aの定性面の分析もDDも出来ません。それなのにどうしてこんなにFeeが高いのでしょうか? 

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中国の傘型公司

2014-06-14 00:27:55 | 企業一般

 中国への投資についての本は、山ほど出ていますね。中国は「いらっしゃい」「いらっしゃい」と投資セミナー等を開催して、その口車に乗って中国に行って会社を作っても、そう簡単には儲けさせてくれません。人件費も高騰して安い人件費を求めて中国進出するという発想もなくなりつつあります。既にうまくいかなくなった企業も多く出てきました。最近は、中国からの撤退のセミナーもはやってきました。撤退しようとして、少し残った残余財産を日本の親会社に戻そうとしても、送金許可を下ろさないで塩漬けというのも多そうですね。いったん中国に投下した資本は、もう殆ど戻せないと考えたほうがいいでしょう。また、企業の中には、複数の中国子会社を持っており、利益を出している会社もあるが損失を出している会社もあるので、これをどの様に管理するかという課題も出てきました。複数の中国内の中外合資や外商合資・独資有限公司をリストラの一環として、傘型公司の下に統合しようと考えるところもあります。しかし、これも簡単にはいきません。今回は傘型公司(投資性公司)の話です。

 

 

【傘型公司設立の背景】

 傘型公司=投資性公司は、資本金を投資に回し傘下企業を保有することを認める会社ですね。中国政府の意図は、中国内の投資を増やすということですから、地方レベルでも最低登録資本金US$3000万は現金払い込みです。相変わらず金持ってやってこいということです。かつては、中国政府が投資性公司に対して傘下企業が生産する輸出向け商品等の国内販売権を優先的に付与するよという人参を示して、国内ビジネスが制限されていた時代に、日本の大手商社が、国内販売権を取得するために投資性公司を設立する場合が多かったですね。しかし、最近は投資性公司を中国における統括会社と位置づけ、中国事業のリストラ、あるいは規模拡大や効率性向上に向けて、日本本社からの権限委譲や役員派遣を進め、また中国に複数ある現地法人の統括機能を持たせるために設立されているようですね。

 

【傘型公司の特徴等】

1) 投資会社として子会社持分の保有や中国投資全般の投資管理・統括を行う。 

2) お金を持った会社として借入保証という財務的支援が出来る。但し、1US$以上の国家レベルの投資性公司を除き、関係会社への直接貸付は出来ません。中国では企業間の金銭の直接の貸し借りは出来ません。銀行を介在させて委託貸付なら可能ですが、銀行は手数料を取りリスクは一切負いませんね。

3) 傘下企業の販売・マーケティングを行ったり、中国向け商品の研究開発を行う場合もあります。

4) 傘下会社の経理事務等のシェアード・サービスの中心として、傘型公司で集約して行い効率化を計る場合もあります。

5) 負債資本比率の上限が4~6倍と高い。即ち、海外からの借り入れが多く出来る。

6) 傘下公司から傘型公司への配当時に企業所得税が免税される。但し、海外の親会社への配当時は課税対象となります。

 

【傘型公司のデメリット】 

1) 傘下会社の持分を譲渡する時の税率が25%と高い(外国=非居住企業が中国会社の持分を売却する場合は、譲渡益の10%が課税される)。

2) 傘型公司は地方政府レベル最低3000USDの資本金ですが、この分は現金で払い込み。既存の中国企業の持分を傘型公司に現物出資するのは、この枠外で、しかもいろいろ条件を満たす必要があります。

3)  投資先(傘下)企業の設立は、通常通りで、手間のかかる許認可取得が必要。

4) 傘下会社へ経営指導を行い、傘下会社が指導料を傘型公司に支払っても、損金算入ができない。

5) シェアード・サービスの対価は5%の営業税(+各都市の附加税で実際は合計で6%強)が賦課される。上海等は1年半ほど前から、政府のお達しで営業税はやめて増値税となりましたが、支払い税額という点では殆ど変わりません。

 

 

まあ、中国への投資も、ますます多様化・複雑化しています。政治情勢もおかしくなって来ていますし、カントリーリスクも増大している気がしますね。ますます難しくなってきていますね。

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企業統治の在り方と監査等委員会設置会社

2014-06-03 21:27:14 | 商事法務

 ○ 今回の会社法制部会の見直しは、1部 企業統治の在り方、2部 親子会社に関する規律及び3部 その他 からなっていますね。今回は、このうち企業統治の在り方について述べます。企業統治・機関設計については、意思決定・執行・監査監督という3つのポイントから、どのように設計するかですが、経団連・日本取締役協会という、一部の団体の提言等も踏まえて、視野の狭い要綱案が出来ました。こういった組織論に加えて、企業統治の議論では、社外取締役の導入圧力があり、従来抵抗してきたトヨタ・キャノン・新日鉄住金等も導入していますが、まあこれは、どうせ役立たない、期待などしていないけど、1-2人ぐらい入っても、意思決定に影響があるわけないから、形式的に入れておこうということでしょうか。 

 

 

○ 今回の会社法改正では、あまり利用されていない委員会設置会社制度(「指名委員会等設置会社」に名称変更予定)屋上屋を架して、監査等委員会設置会社(当初は「監査・監督委員会設置会社」となっていましたが「監査等委員会設置会社」に変更)を設置するとの事です。委員会設置会社にいったん移行した上場企業は、70社ぐらいあったと思いますが、約1/5不都合ありで監査役会設置会社に戻しています。なぜ普及しなかったのか、どの様に改善・修正すればよいのかという視点ではなく、失敗の上塗りの制度設計ではないかと思います。

 

○ では、どういった点が問題なのでしょうか。

 1)  法制部会の委員は、会社法学者、弁護士、判事+民間の飾りが少しという構成で会社法学 者がメインです。選任は全く頑迷固陋でピンボケです。企業統治は、企業組織・人事論を専門とする経営学者の方が多面的で実証的な意見が多いのではないでしょうか?法学者は、企業統治のプロですか?頭法律で、組織を作っても機能しないのではないでしょうか?その証拠として委員会設置会社制度の失敗例があります。 

 

 

2)  委員会設置会社は、米国の制度の猿まねです。しかも、米国の各州の会社法では、指名・報酬・監査委員会等は一切定められていません。委員会を設置できるとしていますが、その内容は定款自治ですね。この3委員会はNY証券取引所等の上場規制です米国では上場企業用のルールを、日本では会社法に規定しました。仏作って魂入れずというか、形だけまねたのですね。即ち、米国の取締役は、株主の代表ですが、日本の取締役は、従業員の代表がメインですね。企業風土の違い、会社組織の歴史を踏まえない発想です。また、米国の制度がグローバルスタンダードと考えること自体が誤りです。ドイツの監査役会・共同決定法等という、機関設計もあります。こういったグローバルな発想もありません。

 

 

3)  社外取締役が、監査・報酬・指名という職責を果たせるという、現実性の乏しい仮定の認識に基づいている。一か月に一度、会社の役員室にやってくる役員に会社の実態が把握できる筈が無い、現場・現実・実務無視の発想です。たんに、役員会の直前に送付されている議事内容の紙を読んだだけで何がわかるというのですか?指名・報酬委員会等は、既にあるその会社の内規等の解説を事務当局から受けて、「うんうん」と了承しているだけではないでしょうか。

 

 

4)  事業報告書では、取締役会での、社外役員の発言の状況、社外役員の意見により事業方針・決定が変更されたときは、その内容を記載しないといけません(施行規則124条4号)→上場企業の事業報告書はEDINETで閲覧できますね。この内容を全部調べたのですか?私は、数社の事業報告書を読んだ限り、社外取締役は、「有益な助言・発言をした」等という、何もしていないという事を示す建前文言しか見ることができません。こういった調査・実情把握も不十分なまま、会社法学者が頭だけで考えたものが、今回の企業統治の考えですね。法学者は、法律的な組み立てを行うエンジニアであって、企業統治を広く深く多面的に見る専門家ではないのです。

 

 

○ 最適な企業統治の在り方は、規模・歴史・株主構造・企業文化と風土・業種等を踏まえて企業自らが考えて設計すればいいものです。会社法はそういった企業統治の枠組みを整備すればいいのです。従い、会社法では、取締役会は、委員会を設置して、取締役会の機能・権限を一部委譲できると規定する事(委譲出来ない部分も、委員会設置会社のように規定すればよい)とすれば良いのです。

しかし、各企業では、自分に合った企業統治の委員会を設計できるだけの能力が無いのが現状です。従い、かつて経済産業省・法務省が合同で、買収防衛策の指針を出したら、これに沿って買収防衛策を無批判に導入した企業が多くありました。それの例のように、例示の企業統治のパターンを、いくつか用意してあげれば、そのどれかを弁護士と相談して採用するでしょう。

 

 

 

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