まさるのビジネス雑記帳

勉強ノート代わりに書いています。

米国企業の役員報酬

2016-12-16 23:38:40 | 商事法務
〇 米国企業のEmployment Agreement (役員でも一般的に「雇用契約」という表題ですね)の主な規定は、以下ですね。特徴的な規定は、以下のTerminationの規定でしょうか。
1) Employment : A-sanをEVP and CFOとして雇う。 A-sanはこれを受けて、この契約等の規定通り役務を提供する。この後にいろいろ義務を書いたり、CEOへのreporting等が記載されますね。
2) Term: 期間
3) Compensation (a) Base Salary + (b) Performance (Discretionary) Bonus + (c) Severance Payに加えてBenefits (これは従業員とあまり変わらない)、Business Expensesの会社負担(or Reimbursement) + Vacation
4) Termination (以下に解説)
5) Non-recruitment, Non-solicitation, Non-competition and Non-disparagement Covenants.
6) Non-disclosure of Trade Secrets and Confidential Information
7) Ownership of Protected Works (在職中の発明などは会社のもの等)
8) 一般条項

〇 雇用契約の終了の規定は、大体以下の3通りが記載されます。これが米国の雇用契約の特徴と言えるかもしれませんね。ポイントは、役員に有責事由(Cause)があれば、既に発生した(Accrued)役務提供の対価を除いて、Performance (Discretionary) Bonus や Severance Payは支払いませんというものです。また、役員側としては対価を受領できる正当事由(Good Reason)があれば、報酬を得ることができるというものです。
(a) Termination upon Death or Disability.
(b) Compensation upon Termination by Company with Cause or by Employee without Good Reason =Discretionary Bonus や Severance Payを支払わない場合
(c ) Compensation upon Termination by Company without Cause or Employee for Good Reason = Discretionary Bonus や Severance Payを支払う場合

〇 Good Reasonとしては、会社による一方的なBase Salaryの大幅カットや、違法行為を行えという命令等ですね。ある弁護士(mhm)がドラフトした契約には、(i) a material reduction in the Executive's Annual Bonus opportunity, (ii) a material adverse change in the reporting structure applicable to the Executive.等をGood Reasonに挙げていました。Performance bonusですから、そのformulaを会社が大幅に守らなければGood Reasonにはなりますが、material reductionが本人のpoor performanceなら仕方ないですよね。また普通はreporting structureが変更されてもこれがGood Reasonにはならないと思いますしね。

Causeとしては、結構いろいろ記載しますね。一例として以下ですね。(i) the Executive's conviction of or plea of guilty or nolo contendere to a crime that constitutes a felony (or state law equivalent) or a crime that constitutes a misdemeanor involving moral turpitude; (ii) the Executive's embezzlement, misappropriation, or fraud, whether or not related to the Executive's employment with the Company, (iii) commission of embezzlement or fraud on, or in his dealings with, the Company or his misappropriation of any of the Company's funds or assets、その他全部で10個ぐらい書きますかね。

Disabilityとしては、the Executive's inability, due to physical or mental incapacity, to perform the essential functions of his job, for one hundred eighty (180) days等ですね。
Inabilityの判断が分かれるときは、お医者さんの診断書で判断するむね記載しますね。

・定義で時々抜けている条項があります。drug or alcohol abuseは、Disabilityの定義にきちんと入れましょうね。また、Causeには、willful failure to comply with any applicable law that is material to the business or affairs of the Companyのところには、discrimination or sexual harassmentも明記した方が良いでしょうね。
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現地法人の役員報酬

2016-12-01 21:21:36 | 商事法務
〇 米国系企業の日本法人役員が親会社であり米国の証券取引所に上場している会社のStock Optionを得るケースがありますね。日本法人は米国企業の出先・先兵で、馬車馬のようにかつ近視眼的に働けば、おいしい人参を上げますよという制度です。国税庁が途中で解釈を変更して、何件も訴訟になりましたね。逆に、東証等に上場している日本企業の現地子会社の現地人役員への報酬はどうでしょうか? 日本では、従業員にStock Optionを与えている新興企業も増えてきましたが、まだまだ少ないですね。また現地法人役員は、親会社からの出向者が多いので、せいぜい普通の本社の持株会加入が多いでしょうね。しかし、これからは、傾向として現地法人トップは現地の人に任せる方向になるでしょう。そのときの重要課題は、いかにやる気の出る報酬体系にするかということだと思います。米国の上場企業の役員は、個別に雇用(経営委託)契約を結んでStock Optionを得ます。Option行使価格は、FMV(fair market value)=行使時の時価-x(10-15)%ぐらいでしょうか?その他、買収されて退職に追い込まれた時は、Parachute Paymentと言って、会社からがっぽり報酬を得て、従業員を見捨てて自分だけ会社を去る、その内容を規定することもあります。

〇 日本企業も、現地子会社の現地人CEOにどのようなIncentiveを与えるかを考えないといけないですね。まず、全世界の統一ルールと個別ルール・考え方を整理したうえでの話になります。しかし、現状はそういった考え方が整理されていない企業が多いですね。また目標・達成度管理、達成度に応じた報酬の増減formulaも整理されていないですね。米国系企業の場合は、近視眼的・単年度で目標達成したらPerformance Bonusが多いのではないでしょうか? 日系企業の場合は、そのまねをする必要はないですね。単年度の達成具合と中長期的な見方の二面性があった方が良いと思います。米国企業でも、継続性という視点からFace Bookのように、後継者にも同様の契約が締結される旨を(当事者が違うので後継者がこの契約はいやだと言えば承継されないのですが)規定している(This Agreement shall be binding upon any successor)ものもありますが。

〇 米国企業では、役員にはPerformance Bonusの他に、福利厚生(Benefit)もありますが、これは従業員とはあまりかけ離れていませんね。即ちAnnual Vacation(有給)、Sick Leave(無給も多い)、Medical Coverage(保険)、Retirement Plan(401(k) (経営陣の場合は、matching contributionを出さない場合もある)。

〇 では次にPerformanceに応じた報酬ですが、単年度の達成具合と中長期的な見方の二面性ある制度が良いと言いました。中長期的な報酬として、上場企業でない場合はStockが使えないので、結局お金を払うぐらいでしょう。退職給付のSeverance Packageにして払うというのも、一つの考え方ですね。一方単年度のPerformance Bonusの設定は比較的簡単ですね。年度初めに目標を立て、その達成度に応じて報酬額が決まる方式が多いでしょう。その経営陣と話し合って業績目標を設定します。
経営陣としては、低い目標を設定して高く報酬を得ようとしますが、会社側(その背後の株主たる親会社)は、出来るだけ高い(達成可能な)目標を設定しようとします。一旦目標を設定(売上高とかEBITDA額とか)したら、その年度終了後にその結果がでますので、それに応じた報酬額の支払(中間期で一部支払いもあり)をすることになります。

〇 Incentive Bonusの一例(EBITDAで目標を立てた場合)
1) COO shall be entitled to receive an additional amount equivalent to 50% of his Annual Base Salary (“Incentive Amount"), in case the Company's EBITDA calculated in the end of the relevant fiscal year is 100% of the EBITDA projection agreed.
2) In case the Company's EBITDA calculated in the end of the relevant fiscal year reaches 150% or more of the EBITDA Projection, COO shall be entitled to receive the equivalent of 200% of the Incentive Amount.
3) In case the Company's EBITDA calculated in the end of the relevant fiscal year is below 50% of the EBITDA Projection, COO shall not be entitled to receive any incentive hereunder.
目標達成100%の場合はインセンティブ金額(仮に、年間報酬額の半額)の支払、50%未満はインセンティブ無し、150%以上の場合は、設定インセンティブ金額の2倍を上限として支払うというものですね。では、50-100%の間、100-150%の間はどうなるのかですが、50-100%のときは、50%をスタートして達成度が1% upするごとに1%up = 100%達成で100%、100-150%のときは、達成度1%upごとに報酬額が2%して150%達成度で、インセンティブ金額の2倍の金額で頭打ちという規定をいれます。

まあ、こういうのもありますよという例示です。


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