まさるのビジネス雑記帳

勉強ノート代わりに書いています。

企業価値・株主共同の利益とは何なの?

2008-07-28 22:59:23 | 企業一般

     ライブドアvsニッポン放送事件の東京高裁の決定で、濫用目的をもって株式を取得した敵対的買収者は株主としての保護に値しない例として、四つの事例が挙げられています。少し長いですが該当箇所を引用してみます。「株式の敵対的買収者が、(1)真に会社経営に参加する意思がないにもかかわらず、ただ株価をつり上げて高値で株式を会社関係者に引き取らせる目的で株式の買収を行っている場合(いわゆるグリーンメーラーである場合)、(2)会社経営を一時的に支配して当該会社の事業経営上必要な知的財産権、ノウハウ、企業秘密情報、主要取引先や顧客等を当該買収者やそのグループ会社等に移譲させるなど、いわゆる焦土化経営を行う目的で株式の買収を行っている場合、(3)会社経営を支配した後に、当該会社の資産を当該買収者やそのグループ会社等の債務の担保や弁済原資として流用する予定で株式の買収を行っている場合、(4)会社経営を一時的に支配して当該会社の事業に当面関係していない不動産、有価証券など高額資産等を売却等処分させ、その処分利益をもって一時的な高配当をさせるかあるいは一時的高配当による株価の急上昇の機会を狙って株式の高価売り抜けをする目的で株式買収を行っている場合など、当該会社を食い物にしようとしている場合には、濫用目的をもって株式を取得した当該敵対的買収者は株主として保護するに値しないし、当該敵対的買収者を放置すれば他の株主の利益が損なわれることが明らかであるから、取締役会は、対抗手段として必要性や相当性が認められる限り、経営支配権の維持・確保を主要な目的とする新株予約権の発行を行うことが正当なものとして許されると解すべきである。」

     最近の議論では、企業価値・株主共同の利益を確保する場合は、限定的な条件下にて買収防衛策を発動して構わない。但し、敵対的買収者の損害回避可能性(=防衛策発動による希釈化の損害を回避出来る可能性)がある場合とすべしという議論がなされているようです。

   尚、企業価値とは概念的には、「キャッシュフローの割引現在価値」を指すとしていますが、「株主共同の利益」については、特に定義らしきものは見当たりません。(企業価値研究会H20.6.3「近時の諸環境の変化を踏まえた買収防衛策の在り方」ご参照)

     2005.5.27に経産省・法務省が「企業価値・株主共同の利益の確保又は向上のための買収防衛策に関する指針」を公表してから、企業が買収防衛策を導入する場合には、馬鹿の一つ覚えの様に、「企業価値・株主共同の利益の確保」が決まり文句になりました。

     企業価値:東京高裁の決定に例示されている濫用的買収者から企業を守る場合の内容を見てみると、確かに企業価値が破壊・毀損されると思いますが、その内容はどういったものでしょうか。私は、①買収者が企業を食い物にして私利私欲を追求する。②付加価値を生み出して、顧客・社会に貢献している社会の公器たる企業の価値を破壊する。③企業の正常な事業活動を破壊して、そこで働く役職員の正常・平穏な活動を危険にさらす。等が企業価値を毀損する事だとしているのではと思います。しかし、企業価値研究会流に言うと、企業価値の毀損は「キャッシュフローの割引現在価値が減少する」となります。私には、企業価値研究会の企業価値の概念定義は少しおかしいのではないかと思います。米国の借り物概念を安直に持ってきて、「企業価値とは何か」を十分考えて議論していないのではないかと思います。

     株主共同の利益:これまた不思議な言葉ですね。株主共同の利益って何ですか?私は、基本的には株主は同床異夢の存在だと思います。私利私欲を追求する敵対的買収者であっても高値で株式を買ってくれれば、株式を売りたい株主にとっては株主の利益でしょ。そういった株主も株主ですし、高値で売り逃げるのも株主の意向・一つの判断です。ブルドックの様に、2/3以上の多数決で、日本的な企業防衛の判断を行ったのは株主ですが、組織規律・運営の基本原理である(単純あるいは2/3)多数決の原理が働いただけでしょ。株主の意向・判断を尊重する。それが過半数とか2/3以上だとそれを尊重する。資本多数決で決められた株主の意思の尊重ですね。即ち、多数派株主が少数派株主の利益を犠牲にするということです。これを株主共同の利益等と呼ぶのはおかしいということです。株主共同の利益というものが最初からあってそれを保護するということではありません。勝てば官軍。その官軍をあたかも株主全部の利益のような表現をするのはおかしいですね。一部の株主の意思は否定・否決されます。株主共同の利益等というごまかし表現は止めてほしいと思います。

0803_008_2

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

取得条項付新株予約権と株主平等・不平等

2008-07-22 16:18:15 | 商事法務

     取得条項付新株予約権が買収防衛策で利用されています。会社法23617号には、「株式会社が一定の事由が生じたことを条件としてこれを取得することができることとするときは、一定の事由が生じた日にその新株予約権を取得する旨及びその事由」等を規定するよう求めています。

○ 有名なケースは、ブルドックソースの件ですね。基準日(2007.7.10)現在の株主に対して、普通株1株につき3個の割合で新株予約権を割り当てました。予約権行使可能期間は、2007.9.1-9.30として、新株予約権行使により普通株式を交付する場合における、1株当たりの払込金額(行使価額)は1円とする。尚、新株予約権の譲渡は、取締役会の承認(譲渡制限付)が必要。

-         取得条項、即ち新株予約権の取得の事由及び取得の条件は、取締役会が別途定める日(行使可能期間前の日=7.24の臨時取締役会で8.9と決定)をもって、株主の同意無く、新株予約権を取得して、その対価として、非適格者=敵対的買収者以外の株主に対しては、予約権1個について普通株式1株を交付する。非適格者に対しては、予約権1個について金396円を交付することができるとしていました。

-         2007.6.24開催の株主総会では、議決権総数の8割以上の賛成でもって可決承認されました。

     ご承知の通り最高裁まで争われましたね。株主平等原則違反と著しく不公正な方法によるものか否かが争われました。最高裁は、1091項の株主平等原則の趣旨は、新株予約権無償割当の場合にも及ぶ。しかし、個々の株主の利益は、企業価値が毀損され、会社利益・株主共同の利益が害されるような場合には、その防止のために当該株主を差別的に扱っても、衡平の理念に反し相当性を欠くものでないかぎり、平等原則の趣旨に反しない。そして、価値毀損・株主共同利益が害されるかの最終的判断は、株主により判断される。本件では、株主は、買収者の経営支配権取得が、企業価値を毀損し、株主共同利益を害することになると、株主が総会で判断し、議決権の約83.4%の賛成で可決されたものである。

- 衡平の理念に反し、相当性を欠くものであるかについては、買収者の持株比率は大幅に低下するが、金員の交付を受けることができることになるので、この理念に反しないし相当性を欠くものでもない。また、金員交付により企業価値が毀損するが、それも買収者以外の大半の株主がやむをえないと判断したものである。また、著しく不公正な方法によるものでもない。

     株主平等原則は、合理的な理由があれば差別を容認しています。新株予約権は、株式ではないけど、株主平等原則の直接の適用はないけれども趣旨は及ぶとしています。学者のなかには新株予約権には及ばないという見解もあるようですけど、ちょっと如何なものでしょうか。合理的な理由としては、役員・従業員であることを条件に行使できる等は納得の行く理由ですね。なにしろその会社の役職員は、企業価値向上に貢献しているわけですからね。新株予約権を株主に与える場合でも、その内容に違いのあることが直ちに違法になるわけではない。例えば、敵対的買収者が20%以上の株式を取得した場合に、その者以外の新株予約権者は、新株予約権を行使できるということも認められるとしています。しかし、買収者へのコンペンセーションは、やはり考える必要がありますね。

     ブルドックのケースでは、買収者には株式ではなく金員が交付されます。①総会の特別決議が通ったからという点が強調されていますが、やはり②金員が交付されるのも重要だと思いますね。まあ、買収者はお金ももらえるし、他の大多数の株主が反対しているから、この決定はやむを得ないと思います。

     しかし、企業価値研究会の買収防衛策の在り方についての2008.6.3案では、買収者が合理的手続きに反し、株主が適切な判断を行う為の時間・情報・交渉機会の確保を認めないなら、あるいは正当防衛的なものは、「金員等の交付を行う必要はない」と言っています。こういう発想は如何なものでしょうか?こんな暴論無いですよね。買収者も、それなりに株式を5%ルールも遵守して)取得してから、あるいは既存の大株主の売却意向を確かめてからTOBを行います。そういったTOBに応じて株式を売却するのも株主の意思です。多額の金員を投じて買収を目指す者に不当に損失を与える発想ですね。株主不平等+不当取扱いだと思います。ブルドックのケースで言えば、スティールは、13-19%のプレミアムを付けて、当初1584/株、その後変更し1700/株でTOBを行いました。彼らの取得価額がいくらなのか知りませんが、仮に1000/株ぐらいとしましょうか。株式分割として株数は4倍、株式の価値は1/4となりました。金員交付は、1株396(=1,584/4)ですね。金員等が交付されないと、買収者は莫大な損失を被ります。企業価値研究会の見解は、違法な事を行っていないにも拘わらず、紳士的なルールに従わない濫用的買収者には、金員等を交付する必要は無いとしています。株式市場では自由に株式売買できます。市場外ではTOBですね(*)。金融商品・株式市場制度の根幹を無視する考え方だと思います。

* 正確には、①60日間で市場外・11名以上・5%以上の場合、②60日間で市場外・10名以内・1/3超の場合、③市場内・立会外・1/3超、④3月内に10%超・うち立会外又は市場外で5%超・1/3超、⑤他者TOB中・1/3超保有者・5%超買付の場合ですね。

0803_030

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

組織再編の株式買取請求時の公正価格

2008-07-14 22:41:50 | 商事法務

       株主に、株式買取請求権が認められている場合としては、①事業の全部・重要な一部譲渡等の決議、②株式譲渡制限の定めをする定款変更決議、③合併決議、④新設・吸収分割決議、⑤株式交換・移転の決議等に反対の場合があります。

       今回は、組織再編の際の、株式買取請求権が行使されたときの買取価格を考えてみましょう。買取価格としては「公正な価格」(785条等)としていますね。旧商法では、営業譲渡等を定めた245条に続いて、245条の2で、「決議ナカリセバ其ノ有スベカリシ公正ナル価格ヲ以テ買取ルベキ旨ヲ請求スルコトヲ得」と規定されていました。つまり、「決議がなかったなら有したであろう」という部分が無くなったわけですね。

       では、単純に公正な価格とした意味は何でしょうか?また、当事者の協議が調わないときは、裁判所に対し価格の決定の申立てをすることができます(786条2項)が、申立者は、どれだけの根拠で申立てられるのか、また、対象会社はそれなりに価格の根拠を用意していますが、これを覆し果たして裁判所が「公正な価格」等を決められるのか、といった疑問等について考えてみたいと思います。

       例えば、吸収合併の消滅会社の場合を考えて見ましょう。合併に反対している訳ですから、理屈としては、合併決議がなかったら有していたはずの公正価格が正しい訳ですね。しかし、法務省の解説(一問一答 新・会社法)では、株主の中には、株式会社が合併すること自体については賛成であるが、合併の結果、対価として交付される財産の割当てには不満足である者も存在しうる。このような株主が株式買取請求権を行使する趣旨は、「合併決議がなかったとすれば有していたはずである公正な価格」による株式買取りではなく、「合併による企業価値の増加を適切に反映した公正な価格」による株式買い取りであるとしています。即ち、公正な価格は、合併による相互補完・相乗効果、即ちシナジー効果を織り込んだ価格と言うことになりますね。

       一番簡単な例として、SPCを組成し、その会社がTOBを行い株式の2/3以上を取得して、対象会社(子会社)を、現金合併で親子・吸収合併する場合を考えてみましょう。2/3以上保有の既存株主が、TOBに応募して対象会社の株式をSPCに売却しています。2/3以上のTOBですからSPCは、応募された全部の株式の買い取り義務がありますが、例えば、10%ぐらいの少数株主が残り、「公正価格」での買取りを求めて買取請求した場合はどうでしょうか(SPCに、対象会社のマネジメントが入るとMBOとなりConflict of Interestの問題が生じますので、このケースは除きます)SPC(消滅会社の株主ですから消滅会社が相手ですが、効力発生日後にあっては、吸収合併存続会社が相手となります)としては、TOB価格以外の主張は無いですね。

・ また、当事会社は、最近は第三者評価を取り付けていますね。即ち法782条1項を受けて施行規則182条の「合併対価の相当性に関する事項」ですね。現金合併ですから、当事会社両者の評価は不要で、対象会社(消滅会社)だけの株式評価をすれば良いですね。

・ TOBの場合は、最近は通常、支配プレミアムとして、TOB公表前の株式の市場価格=時価に2-3割アップした価格で行います(アサヒビールの和光堂株式へのTOB7割アップ)。即ち、TOBに応じない株主も、このプレミアムをエンジョイした価格で買ってもらえます。以前の商法だと、このプレミアムはエンジョイ出来ない事になりますね。これは対象会社の株主には利益になりますが、株式交付の合併の場合には、存続会社の株主の保有割合は希薄化することにもなり、高値過ぎるという批判も出るわけですね。

       「合併対価の相当性に関する事項」について、最近は一流の評価会社の評価書を取るのが一般的ですね。まあ、これも裏ではいろいろあると思われるので、「公正な価格」というと、少し後ろめたい部分も有るのですが、一流どころの作成では、ある程度規律が働きます。また、理論的にはしっかりした方式で算出しますので、裁判所が、果たして「公正な価格」を決定できるのか非常に疑問ですね。

       少数株主としては、特別決議で承認されていますので、もうしょうがない。争っても時間と労力が無駄だということで、泣き寝入りというのが実態ではないでしょうか。やはり、少数株主は保護されませんね。

○ では、買取請求権や裁判所への価格決定申立権というのは、どういう機能を果たしているのでしょうか。これは、要するに、経営者にキチンと評価(公正な価格・合併比率等)して頂戴という圧力になるのでは無いでしょうか。まあ、それぐらいの機能だろうと私は思っています。

0803_037

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

全部取得条項付種類株式による少数株主整理

2008-07-08 00:34:00 | M&A

       100%減資をやりやすくするために設けられた制度趣旨()とは異なり、現実的には、SPCを組成して、少数株主を排除して、その100%完全子会社化する方法として利用されていますね。対価の柔軟化も、SPCを組成して行えば、少数株主を排除できます。総会議案提案権・招集権とか帳簿閲覧権等少数株主権という権利もありますが、1%3%以上保有しても現実的には殆ど何の力も持ち得ませんね。単独又は共同で2/3以上の議決権を確保すれば、「なんでもできる」ようになりました。

* この種類株式の利用として、議決権制限株式として敵対的買収防衛策のアイデアも言われているようですが、私は知りません。ご興味のある方は、葉玉匡美「議決権制限株式を利用した買収防衛策」旬刊商事法務174228(2005)に記載されているようですので、それをご参照下さい。

       今回は、SPCを組成して、普通株式の2/3以上を取得したSPCが、対象会社の普通株式を、全部取得条項付種類株式を利用して、別の種類の株式に転換し(当該会社の株式ですから46114号の分配可能額の規制=財源規制がかかりません)、その際の転換比率を調整することにより、SPC以外の少数株主の保有株を、全て1株に満たない端数となるように決定して、端数部分について金銭を交付することにより排除して、100%完全子会社にする方法について考えてみましょう。

       108条の種類株式の規定の17号では、「当該種類の株式について、当該株式会社が株主総会の決議によってその全部を取得すること」とされています。2項7号では、発行可能種類株式総数に加えて、次に掲げる事項を定款で定めることとしています。

  イ 第171条1項1号に規定する取得対価の価額の決定の方法

  ロ 株主総会決議をすることができるか否かについての条件を定めるときは、その条件

  ・171条から173条では、全部取得条項付種類株式の取得について定めていますね。

       具体的な手続きは以下の通りとなります。2回の定款変更1回の普通株主による種類株主総会の特別決議と、1回の全部取得条項付種類株式取得の為の総会特別決議ですが、これらの決議は1回の株主総会で行う事が出来ると解されていますので、1回の株主総会でまとめて出来ますね。それと、既存の普通株式は、まだ株券発行会社のため株券が発行されていますので、株券提出手続きが必要ですね。

       まず最初の定款変更ですね。定款変更の効力発生は即日ですね。種類株式を発行可能にするためですね。通常の株主総会の特別決議による承認と普通株主による種類株主総会の特別決議による承認(1112)を取得します(反対株主の公正価格による株式買取請求権11612号及び裁判所への取得価格決定申立権172条1項)。

1)      発行可能株式総数を変更します。例えば、「当会社の発行可能株式総数は400万株とし、このうち普通株式は3,999,900株、甲種種類株式100株とする」とするわけですね。

2)      同時に、甲種種類株式の内容を定めます。普通は、残余財産の分配額を適当に定めます。現在の普通株が、全部甲種種類株に転換されますから、無議決権株にするわけには行きませんし、また配当優先株にしても、この甲種種類株だけになりますので、あまり意味がありません。また譲渡制限株にする必要はありません。株主が1社になりますのでね。

3)      更に、種類株主総会の規定を設ける必要がありますね。基本的には、普通株の総会の規定(招集権者・議長・議決権の代理行使・議事録の規定等)を準用すれば良いですね。また、種類株主総会の決議は、324条に規定されています。

       2回目の定款変更ですね。これも上記①の総会と同時に承認をとりますが、効力の発生は、全部取得条項付種類株式全部の取得日&株式交付の効力発生日となります。通常は、株券提出手続き(219条:株券提出公告及び株主・登録株式質権者への通知)に1カ月かかりますので、その後の日を定めますね。具体的な定款の定めの例としては、以下のような感じでしょうか。「(全部取得条項)当会社が発行する普通株式は、当会社が株主総会の決議によってその全部を取得できるものとする。当会社が普通株式の全部を取得する場合には、普通株式の取得と引換に、普通株式1株につき甲種種類株式を10万分の1株の割合をもって交付する。」即ち、10万株未満を保有している株主は、追い出される訳ですね。

③ 全部取得条項付種類株式取得のための株主総会特別決議ですね。171条に規定されています。総会では、取締役は、取得することを必要とする理由を説明し、「当該取得対価が当該株式会社の株式であるときは、当該株式の種類及び種類ごとの数又はその数の算定方法」及び「全部取得条項付種類株式の取得日」等を決定します。

  1株に満たない端数がある場合の処理は、234条に規定されています。裁判所の許可を得て2/3以上保有のSPCへ売却され、SPCが、その端数を買い取ることにより、少数株主を排除する事になります。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

政府系ファンド-Singapore & 台湾

2008-07-03 01:14:13 | 企業投資

     政府系ファンドの設立を、日本でも自民党が検討している様ですね。ということで時々世界の政府系ファンド・投資会社が新聞にも名前が載るようになっています。私は、中東や北欧のファンドについては知りませんので、少し知っているSingapore政府の投資会社=Temasek Holdings (Private) Limited Government of Singapore Investment Corp.(GIC), 及び台湾の国民党の党営事業としての投資会社のことについて、雑談をしてみましょう。

○ Singaporeには、政府系投資会社が2社あります。TemasekGICですね。Temasekは、Singapore国民の年金運用機関ですし、GIC`は稼いだ外貨の運用機関ですね。

-          “Temasek”というのは、現地語で「海に囲まれたところ」という意味で、Singaporeのことです。つまり日本のことを大和(or倭)と言いましたが、そんな感じの言葉ですね。即ち、Temasek Holdings = Singapore Holdingsということです。持株会社としてのシンガポール株式会社ということになります。基本は、国民の年金資産の確実な運用とシンガポールの産業育成、富国の為の投資・運用機関で、今でもシンガポールの政府系企業(Singapore Airline等)の持株会社として株式を大量保有しています。しかし、押し寄せるお金を使って、海外でもいろいろ投資・運用しています。

-          Singaporeは、Malaysiaの1州でしたが、Malaysia政府が、言うことを聞かない、また民族が違う(ラフに言えば、Malaysiaでは、Malay:華人=7:3ぐらい、Singaporeは、華人:Malay:インド系=7:2:1)ので、1965年に見捨てたというか、追い出したという感じで国が出来た訳ですね。確か、独立記念日は89日だったと思います。Lee Kuan Yew氏の強力な指導の下、人民行動党 (PAP = People’s Action Party = Singaporeの庶民は、Pay And Payと呼んでいますけど)の強力な独裁政党の指導のもと、国を発展させるVehicleとして機能しています。彼らのAsset Allocationの一部にPrivate Equity投資もあり、欧米・アジア各国のPartnerと組んで投資をしています。(実は私はそこで働いていたのです)

 

-          GICは、外貨の運用機関ですね。押し寄せるお金で、投資先を探さないといけないので大変です。覚えていることは、19976月頃、どーんとタイの不動産にUS$50m投資しました、その翌月、タイからアジア通貨危機が発生しました。Thai Bahtsは、TB25-26 = 1US$から、981月にはTB54=1US$になりました。半値以下ですね。大失敗投資ですね。

-          TemasekGICか忘れましたが、タイで以前タクシン政権(=タクシン・シナワトラ財閥の総帥)が、外資規制がかかっていた携帯通信会社の株式を、国会で外資規制をはずし、その法律の効力発生直後に、Temasek/GIC`に売却して、タクシン氏ががっぽりもうけた事がありました。当然Singapore政府は、百も承知していたのではないでしょうか。こういうのは、政府系ファンドが行うとは、ちょっと如何なものでしょうかね。

-          まあ、投資会社の人ですから、多少の投資理論、財務の知識がありますが、事業をやったことが無いので、Finance structure等は考えられますが、基本的には、とらぬタヌキ計算の世界です。額に汗して、こつこつの特にメーカの苦労等わからない、金・金の世界の人ですね。政府系だから、若造のくせに尊大な人もいましたね。自分たちは、schemeを工夫して、Middle Risk High Returnを狙うのだとか。まあ、そんな都合の良い投資は無いですね。ある投資候補先の中国企業の人は、Temasekの投資だけは受けたくないと言っていましたね。

     少し台湾にも触れましょう。国民党の党営事業として、台湾の産業発展の為に、国民党は多くの投資会社を持っていました。発足当初は、各産業毎に投資会社を持っていました。中央投資、光華投資、中華開発等十社以上あったと思います。しかし、投資先の台湾企業が、事業を多角化させ、コントロールが利かなくなったので、投資分野の規制は止めて、統合が進みました。中小企業から出発した企業社会ですが、国の重点分野をはっきりさせ、強力に支援して、多くの優良企業ができました。また、必ずしも政府の支援も受けずに、大きな企業グループを形成しているところもありますね(Evergreenとか、Acerとか一杯あります)。

○ 日本政府のファンドは出来るんですかね。まあ、Asset Allocationと投資哲学・運用方針で、運用成績がかなり決まるのではないでしょうか。Private Equity`で言えば、長期の経済動向をつかむ事も非常に大事ですね。具体的には、不況のときに積極投資をして、好況時には、High Risk High Returnは避けることですね。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする