まさるのビジネス雑記帳

勉強ノート代わりに書いています。

MOUについて

2014-10-20 22:13:51 | 商事法務
○商談がある程度進んだときとか、場合によってはこれから重要商談に入る際にMemorandum of Understanding (MOU =了解覚書)を結ぼうといわれる時があります。英文契約は、一般的に類型化・パターン化されておりますね。しかし、MOUは、あまり類型化されておらず、その時々の状況に応じて作成するので、Copy & Paste+アルファで作成するわけにはいかないですね。即ち、手間がかかるんですね。

○英文契約(和文契約でも同じですが)は、一般的に記載内容が類型化されていますね。以下簡単な例をいくつか言います。
・売買基本契約(+DistributorとしてのAppointの条項があればDistributor Agreement)なら、対象商品、個別契約、数量、価格(値決め方式)、支払い、貿易取引条件(Incotermsなど)、検収、その他一般条項、
・ライセンス契約なら、Grant of License, Royalty, Royalty算定方法、支払い、Title, Confidentiality, Indemnification +一般条項
・合弁契約・株主間契約なら、設立会社概要、出資比率、株主総会、取締役会、融資保証、+一般条項
・買収契約(株式取得)なら、定義、株式譲渡、Closing条件、Closing, Rep. & Warranty, Indemnification+一般条項等を記載します。

○ところが、MOUはケースバイケースが多いです。しかし、あえてMOUを作成する場合を挙げてみましょう。売買契約等の単純な契約ではMOUを作成する例は多くはないのですが、それでも重要な骨子が固まった時点で、MOUを作成する場合があります。MOUは最終契約ではないので、単純な契約の場合は、二度手間になるんですが、まあ当事者にはそれぞれの社内事情もありますから、MOUを作ろうということもあります。

○MOUを作成する場合の例:
1)一番変な例は、商談開始に当たり、内容を秘密にするためにNon-disclosure Agreement(NDA)を結びますが、それをMOUだと言っている人がいました。重要商談を行います。その内容をConfidentialにしましょうということですね。まあ、MOUと呼んではいけないというルールはありませんので、当事者の自由ですね。

2)提携交渉の大まかな枠組みとスケージュールを擦り合わせるMOU。これは時々ありますね。JVをする場合などは、まずMarket Survey/FSを共同で行い、その後に
JV設立を検討する。その内容と今後の大まかなschedule、それとその間は他社と交渉をしないという内容です。Confidentialityとexclusivityは、bindingになりますね。

3)ネゴベースでの買収交渉、特に複雑な買収(例えば、Asset PurchaseとStock Purchaseの両方ある場合など)で、主な条件について共通認識ができたときに、今までの共通認識をMOUという形でまとめることがあります。これがホントのMOUですね。価格の決定方式、Asset Purchaseの場合は、対象資産、引き受けLiabilityのアウトライン、売主のProduct Liabilityの買主の承継の有無、Warranty (Claim処理方法)、代金支払い方法、Rep. & Warrantyの概要、closing condition,pension承継方法、Shared Service (Transitional service)ぐらいまで記載するMOUもあります。詳細なTerm Sheet といった感じです。これをもとに、Definitive Agreement(DA)を作成する前提ですね。

4)その他、MOUではないですが、類似のものとして差出方式の、Letter of Intentなどもありますね。DAのアウトラインを記載して、これに従いDAを作成しましょう、但し、もう少しこういった点をDD(Due Diligence) 行いますよというのもありますね。これにはDA締結までは、Exclusiveで他社と交渉してはならないという条項を入れるのが普通です。ですからその部分と内容はconfidentialという部分は、legally bindingですね。

まあ、こんな感じでしょうか。

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インドの会社の新株発行・株式譲渡

2014-10-12 15:17:48 | M&A
○ 今回は、インドの非公開会社の株式譲渡についてです。先進国では、株式譲渡は当事者間だけで行い、会社に対抗するためには、株主名簿の名義書換を求めれば良いですが、新興国では、所定の譲渡証書等を用いて会社登記局等に譲渡内容を届出しなければならないケースが多いです。そのとき殆どStamp Dutyを払わないといけません。ということで、一例としてインドでの非公開会社(Private Limited)の新株発行・株式譲渡についてみて見ましょう。

○ インドの非公開会社の新株発行・株式譲渡の注意点は以下ぐらいです。
  1) 設立時の株主(=発起人&株式引受・払込人)以外の第三者に新株発行(例えばシンガポール在の子会社)を行うには、インド証券取引委員会(SERI)登録のカテゴリーIマーチャントバンカー又はChartered Accountant(勅許会計士)が算定する公正価格で発行する必要がある。
  2) 発行済株式を譲渡して譲渡益を得たときは、インドの課税権が及び譲渡益課税が発生する(中国などと一緒ですね)ので、納税しなければなりません。
  以下具体的に見てみましょう。

 ○ 株式の発行・譲渡価格
  非上場株式の譲渡価格については、ご承知の通り悪名高い非居住者差別条項がありますね。①居住者から非居住者に対して内国会社の既存株式を譲渡する場合、内国会社が非居住者に新株を発行する場合、②非居住者が居住者に既存株式を譲渡する場合、インド証券取引委員会(SERI)登録のカテゴリーIマーチャントバンカー又はChartered Accountant(勅許会計士)が、DCFという数字遊び手法で算定する公正な価値(何が公正なのか不明)を基準価格として、①の場合は基準価格以上の不公正価格で株式譲渡・発行、②に場合は基準価格以下の価格で株式譲渡とされていますね。
 ・譲渡して譲渡益が発生した場合は、譲渡人は当然譲渡人所在国での課税に服しますが、インドの会社の株式譲渡の場合は、上述の通りインドでも課税されます。では、インドの会社の株式を保有するケイマン等の会社の株式を譲渡した場合はどうでしょうか?これについては、有名なVodafone事件があります。高等裁判所まで課税権が及ぶとしましたが、最高裁では、課税権は及ばないとしました。でもその後、そういった場合でも、過去に遡って課税権は及ぶという法律ができているようです。

 ○ 株式譲渡
  株式譲渡について、こんどの新会社法(The Companies Act, 2013)では56条に規定されています。FormNo.SH-4のSecurities Transfer Formで行うわけですね。これを譲渡人・譲受人は、譲渡実行後60日以内に株券を添えて対象会社に提出し、対象会社は、このSH-4を会社登記局(ROC: Registrar of Companies)に提出して、確認を受けます。SH-4の記入欄を見ると、Father’s/ Mother’s / Spouse name等と記載があります。個人間の株式譲渡のケースを想定しているのでしょうね。Visaの申請等でもそうですが、父の名前等の記入を求められます。おもしろいですね。会社の場合はありませんので、「N/A=not available」と記載すればいいのですね。いずれにせよ、これに譲渡人・譲受人は署名行い、かつCorporate (Common) Sealを押捺しなければなりません。
 ・英法系の会社は、通常業務以外の株式取得などは、取締役会の決議で授権が必要ですね。従い、取締役会決議を証明する書類(又は授権者が権限を有する旨のCertificate等)を出すことになります。
 ・しかし、日本の場合は、大企業は権限規定で、取締役会決議の要る重要取引、代表取締役の権限で出来る場合等を規定していますので、多額でない場合は、取締役会決議をせずに株式取得する場合も多いですね。また代表取締役は、一切の業務を行う事ができますので(法349条)、代表取締役の署名だけでOKですね。インドの弁護士に聞くと、日本の制度を知りませんので取締役会決議が必要といいますね。
 ・取締役会決議を証する書面はROCには提出しませんので、別に対象会社のSecretaryがOKする書類、即ち「代表取締役には本件取引を承認する権限を有する旨」のCertificate等を適当に作ればいいのですね。
 ・SH-4には、Corporate Sealの押捺が必要ですが日本ではCorporate Sealはありませんので代表取締役印で良いですね。会社名も書いてありますので。
 ・新興国の場合、よくありますが、インドでも譲渡証書にstampを貼って、stamp dutyを納めます。

○ その他の必要書類
  対象会社からは、上記の通り、SH-4の署名者が署名権限を有する旨の書類提出を求められますが、その他に譲受人がきちんとした会社であることを証明するために定款・登記簿を求められます(譲渡人は既に提出済)。日本の会社の場合は、定款・登記簿を英訳して、アポスティーユを取得して(インド大使館での領事認証は不要)提出することになりますね。
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米国M&A契約の落とし穴条項

2014-10-01 21:45:28 | M&A
○ 米国企業の入札方式の買収案件では、最終買収候補に選ばれたときには売主企業側から買収契約書のドラフトが送付されてきて、これを買収側が一部修正(先方原稿に書き込むという意味でMark-upと言われています)して修正案を提示して契約交渉の詰めが行われます。売主が用意しますので、当然売主側に有利な条項が多いのですが、中には一見売主が有利なのかわからない条項やTrickyな条項が含まれています。米国では、それに気づかない、修正しない買主側がその責任を負えばよいという発想なのでしょうか?M&Aは、性善説で行ってはいけないということですね。米国では弁護士も含めて結構cheating society (ちょろまかし・ごまかし社会)という面があるのではないかと思っています。今回は、一見すると分からない落とし穴条項(勿論個別の契約で違うのですが)のいくつか(気づいた範囲ですが)を、取り上げて見ましょう。

1) Data Roomの情報
「Data roomで開示された一切の情報は、買主にdisclosed, provided, deliveredされたものとする。」という条項⇒膨大な資料を手分けして見ても、現実的には、どこにリスクがあるのかわからない場合が多いのではないか。しかし、きちんと見て、それなりのヘッジをしないわけには行かない。売主提示ドラフトには、「the disclosures in each Disclosure Schedule are exceptions and qualifications to the representations, warranties and covenants set forth in the Definitive Agreement (DA)」(ここでのQualificationsというのは「制限」という意味です)と、親切に?書いてあるものもあるので、Disclosure Scheduleも含めて、きちんと丁寧に読まないといけません。売主は、ひっかけ/Tricky条項をDisclosure Scheduleに忍ばせているケースが時々あります。要注意です。
注意:a.DDで見つけたリスクは、買主として認識しているので、売主の表明保証対象外となる。Disclosure Scheduleで明確に表明保証対象外とするむね確認する。
b.表明保証の各論ではなく、一般論で仮にカバーされていても、買主が知っている場合には、表明保証責任違反としては認められない可能性が高いので注意が必要。
c.「買主が知っていたとしても売主は、表明保証責任を免れない」という規定が契約書の入れば良いが、そんな規定を認める売主はいない。

2) Rep. & Warrantyの限定
「表明保証条項に規定した以外の事項は、一切表明保証しない」という条項⇒これはカウンターが必要ですね。修正として、表明保証は、重要な点で真実正確で、かつ重要事項は全てカバーされているとしないといけないですね。

3) Actual Knowledgeという限定
例えば、「Seller’s Actual Knowledge of Bill Clinton, xx, xx 」と記載。 これは、売主のBill Clinton,xx,xxが実際に知っていたことに限定(knowledge qualifier)されます。しかも、その立証責任を買主が負う事になります。この立証責任はかなり困難だと思います。日本でも、不祥事のときに経営トップが、「知らなかったとか記憶にありません」と言い逃れしますね。これは経営者ではないですね。仮に知らなかったとしても経営者として知るべきであったことは当然含まれるように、また人の限定をしてはいけませんね。

4) Material Adverse Effect (Change)=MAC条項の濫用
法令(税法・環境法令も含む)違反、ビジネス、表明保証等についてMaterial Adverse Effectを及ぼすことはしていないとか、closingの条件としてMACに該当する事実が起こっていないという条件をいれます。即ち軽微なものがあっても、その責任は負わないとか、軽微な事が発生してもclosingは予定通り行うという条項があります。当然、売主と買主側が考えるMACには、大きな隔たりがあります。売主側は、経済状況・為替相場の大きな変動があっても、これはMACに該当しないので契約実行を求めますが、買主側にとっては、これら経済状況・為替変動などは、事業の見通し・買収額の変動に大きな影響を与えるとしてMACに該当すると考えるでしょう。どこまでをMACとして定義するか検討・交渉して決める事項です。例えば買主の場合なら、Closing直前までに15%以上の為替が不利に変動したらMACに該当する等としておかないといけません。相手のdraftのまま見過ごしてはいけないですね。

5) Indemnificationの規定
Closing date後、売主が表明保証違反等により買主に損害を与えた場合、そのindemnification(補償)をどの範囲で行うのか規定が設けられます。普通は、個別案件の損害額と、これが積み重なった総額の損害額の2つの視点から損害賠償額の補償の規定がなされます。また総額についても買収額の20%とか15%とかのCapがはめられるのが普通です。
① 一件当たりUS$1万以上の場合はその全額で、かつ総額が$10万以上の場合には、の全額を補償する。例:1件5万ドルの損額が11件の場合=$55万の補償
② 一件当たりUS$1万以上の場合はその全額で、かつ総額が$10万以上の場合には、$10万を超える部分のみ補償する。55-10=$45万の補償
③ 一件当たりUS$1万以上の場合は、1万ドル超過分のみで、総額が$10万を超える場合は全額を補償する。4万x11=$44万の補償
④ 一件当たりUS$1万以上の場合は、1万ドル超過分のみで、総額が$10万を超える場合は、その超過額を補償する。4万x11=$44万-10万=$34万の補償
 規定の仕方によって、補償額がことなりますので、注意が必要です。


○ 一般的な落とし穴は上記ぐらいだと思います。しかし、個別案件でしばしばTrickyな条項に会います。Asset deal(=closing dateの譲渡財産額で価格調整)で、事前に取り決めた運転資本額をClosing dateの運転資本額で調整する案件がありました。運転資本額が増大すれば買収価格(支払額)が増える条項です。運転資本額のDisclosure Schedule記載の計算式にはAccount receivable(A/R)が入っていますが、譲渡資産にはA/Rが入っていません。つまり売主は、A/Rを意図的に増やして、その分受取額をかさ上げ、ねこばば出来るのですね。日米の一流法律事務所の自称M&A専門弁護士が数人担当していました。どうでもよいDisclosure Schedule(closing date現在でup-dateされるもの)を丹念に調べてしっかりfeeを取られましたが、こういった買主にとり重要な事項の指摘はありませんでした。

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