まさるのビジネス雑記帳

勉強ノート代わりに書いています。

少数株主整理・排除の方法

2008-06-28 21:04:30 | 企業一般

     対価の柔軟化によって、吸収合併・吸収分割・株式交換では、対価として、例えば合併の場合、消滅会社の株主へ、存続会社の株式では無く、その親会社の株式、他社の社債、金銭等でもよくなりました。財産的価値があるものなら何でも良くなりましたね。従い、金の延べ棒、ダイヤモンド、商品券、ガソリン券(?)でも良くなりましたが、やはり大半の株主が納得する対価ということだとお金ということでしょう。

     対価の柔軟化を別の面から見ると、株主の追い出しが出来ると言うことですね。例えば、SPCを作って、対象会社を現金を対価として吸収合併すれば良いわけですけど、他にも方法がありますので、少しまとめて見ようと思います。

     主なものとして、①全部取得条項付種類株式を利用する方法、②現金合併方式、③吸収分割方式、④株式併合方式、及び⑤単元株制度の導入を取り上げてみましょう。

① 全部取得条項付種類株式を利用する方法

・ 対象会社の現在の普通株式に全部取得条項を付して、現在の株主から保有株式を取得できる準備をする。

・ 当該種類株式を全て取得するのと引換に別の「新」普通株式又は種類株式を交付する付議案件を総会で決議する。

     その際、新普通株式のくくり、即ち旧株と新株の転換比率を調整することにより、保有株の少ない株主の新普通又は種類株式の数が、1株に満たない端数となるように決定する。

     当該株主は、買取請求権や裁判所への価格決定請求権を持つが、結局は現金を受領して、株主権を失うことになる。

② 現金合併方式

     既存会社又はSPCを組成して、株式の2/3を有力株主から取得して、対象会社を消滅会社として、合併させる。

     消滅会社の株主に、存続会社の株式を交付する通常の合併ではなく、消滅会社の株主に現金を交付する現金合併を行う。

     反対株主は、「公正な価格で買い取るよう」株式買取請求ができますね。現金合併ですから、当然1株いくら払うかは、合併決議のときに株主に提案されますから、この価格に不満のある人が買取請求しますね。当然会社と株式の価格について協議は整いませんので、裁判所に対し、価格の決定の申立てをすることになりますね。

③ 吸収分割方式

     対象会社を分割会社(分割される会社)として、既存の会社又はSPCを吸収分割承継会社として、対象会社の全部又は一部の事業を、承継会社・SPCが吸収する。分割でも、全部の分割も可能という規定になっていますね。

     但し、この方式は分割後でも、分割会社が抜け殻として残り、この会社の解散決議・清算手続きが必要となりますね。

     反対株主は、上記と同様株式買取請求権がありますね。

④ 株式併合方式

     例えば、現在の対象会社の株式を100対1で株式併合を行い、100株を1株にしてしまえば、100株未満保有の株主の議決権等を取り上げることが出来ますね。

     一株に満たない端数処理としては、235/234条に規定されてますね。市場価格のある株式は、市場価格で売却又は買い取りですが、市場価格が無ければ、原則は、競売して代金を分配します。

⑤ 単元株制度の導入

・ 例えば、50株保有の株主の議決権を取り上げようとする場合は、100株を1単元として、1単元=1個の議決権とすればいいわけですね。しかし、好きなように単元のくくりを決められません。一応、1単元にくくれる株数の上限としては、会社法施行規則34条で、「法第188条第2項に規定する法務省令で定める数は、千とする。」と規定していますので、1万株=1単元にはできませんね。ただ、単元未満の株式数を保有している株主も株主として自益権は保有し続けますね。

少数株主保護とか少数株主権とか言われていますが、やはり少数株主は、会社への影響力も無いし、大株主に翻弄される存在ですね。

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エクイティ・デット・スワップの利用

2008-06-20 17:12:53 | 企業投資

     デット・エクイティ・スワップ(Debt Equity Swap=DES」)ではありません。エクイティ・デット・スワップ(Equity Debt Swap=”EDS”とする)ですね。即ち、債務の株式化ではなく、株式の債務化ですね。今度の会社法で出来るようになりました。では、どのような場合に利用できるのか考えて見ましょう。

○ EDSの前に、まずDESを見てみましょう。日本でも負債過多で業績が悪く金利返済に苦しんでいた企業の財務リストラで何件か実行されましたね。現物出資の規制に関する207で、検査役調査が不要の場合を規定した9項の第5に、以下のように規定しています。「現物出資財産が株式会社に対する金銭債権(弁済期が到来しているものに限る。)であって、当該金銭債権について定められた第199条1項3号の価額が当該金銭債権に係る負債の帳簿価額を超えない場合:当該金銭債権についての現物出資財産の価額」。つまり金銭債権を券面額以下で出資する場合には調査不要としているが、弁済期が到来しているものに限るという制約を課しています。券面額を越える場合は、検査役の調査がいるわけですね。

-         券面額を調査不要の場合の最大額にするというのは金銭債権評価の客観性という点ではわかりやすいですね。(立案担当者は、評価の適正性について問題が生じないからと言う言い方をされているようですが。適正性というのがいまいちよく分かりませんが)

-         また、弁済期の到来について、会社側で期限の利益を任意で放棄する事で、この要件を満たすことは可能であると、立案担当者は言っているようです(商事法務1741号26頁。相澤哲・豊田祐子「株式」に記載されているらしいです)。但し、期限の利益放棄について善管注意義務違反にならないか検討が必要との事です。これについて、学者の一部では規定が無意味になるとか(更に有利発行規制の存在・検査役調査の存在意義という根本問題にまで言及される人もいますが:東大藤田教授)という理由で、反対論もあるようですけれども、期限の利益の放棄は、一方で金利の節約、企業の差し迫った状況、タイミングの重要性等もあり、経営判断事項であり当事者がOKすれば、既存株主も助かりますから、別に認めても良いのではと思います(学者は会社がおかしくなっても責任取ってくれませんね)。

     では、次にEDSについてですね。会社法1071項では、発行済株式全部の内容として、①譲渡制限、②取得請求権付株式、③取得条項付株式として定めることが出来るとしています。そして2項では、その株式の内容を定款で定めなければならないとしています。

-          2項二号(取得請求権付株式)ロでは定款に規定する内容として、以下の規定があります。「イの株式一株を取得するのと引換えに当該株主に対して当該株式会社の社債(新株予約権付社債についてのものを除く。)を交付するときは、当該社債の種類(第六百八十一条第一号に規定する種類をいう。以下この編において同じ。)及び種類ごとの各社債の金額の合計額又はその算定方法」

-          ハでは新株予約権、ニではイとロの足し算である新株予約権付社債、ホでは、これら以外の財産、即ち他社株式・他社の社債・現金その他の財産(=財産ですから、金の延べ棒、ダイヤモンド、商品券、最近高騰しているガソリン券?でもいいかもね)、の場合に、その内容を定款で定めましょうと規定しています。

-          2項三号では、取得条項付株式について、上記と同じ定めをしています。

     それでは、どういった場合にこのEquity Debt Swap(EDS)が必要となるのでしょうか? DESが、負債過多の会社ですから、その逆ですね。即ち資本過多の会社ですね。

-利用の一例を挙げましょう。 銀行からの融資は担保などいろいろ条件が付きますし、また金利も高いです。ベンチャー企業等開業後2-3年は、銀行はお金を貸してくれません。キチンとしたファンドからしっかりEquityで資金を集めて、事業が軌道に乗るまで、Equityベースの財務構造を持ちましょう。事業が成長軌道に乗れば、運転資金等の短期借入は銀行からも借りられるようになります。そのときまだ過大資本の場合なら、資本の一部を社債の長期借入金にしましょう。IPOが射程距離になってきたら、ファンドは、この社債とEquityを組み合わせて、パッケージでVCに一部売却して出資金の回収をしましょう。持株比率を下げましょう。そうしないと上場しても株式は簡単に売れません。VCには、社債と株式を購入してもらうわけですね。社債がついてますからダウンサイドリスクを押さえて、株式で上値をねらえます。株価を少し高めに設定する事も可能かもしれません。こういった場合に、Equity Debt Swapが使えますね。

社債だけではなく、新株予約権とか新株予約権付社債等の利用も考えられますね。

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おかしな基準日の規定

2008-06-14 23:20:00 | 商事法務

       会社法124条には、基準日の規定があります。そして4項には、おかしな規定があります。

1.株式会社は、基準日を定めて、基準日において株主名簿に記載され、又は記録されている株主(以下この条において「基準日株主」という。)をその権利を行使することができる者と定めることができる。

2.基準日を定める場合には、株式会社は、基準日株主が行使することができる権利(基準日から三箇月以内に行使するものに限る。)の内容を定めなければならない。

3.株式会社は、基準日を定めたときは、当該基準日の二週間前までに、当該基準日及び前項の規定により定めた事項を公告しなければならない。ただし、定款に当該基準日及び当該事項について定めがあるときは、この限りでない。

4.基準日株主が行使することができる権利が株主総会又は種類株主総会における議決権である場合には、株式会社は、当該基準日後に株式を取得した者の全部又は一部を当該権利を行使することができる者と定めることができる。ただし、当該株式の基準日株主の権利を害することができない。

       法務省の解説(一問一答 新・会社法)によれば、「基準日後に組織再編が行われた結果、新たに株主となった者などに議決権行使を認める機会を与えようとする実務のニーズに対応するものである。」と説明されています。更に、この場合も株主平等の原則への配慮は必要であり、例えば、同一の新株発行によって株主となった者のうち、一部の者だけを基準日株主とすることは、この原則違反になると思われると言っています。

       何故、こんな変な規定を設けたのでしょうね。実務のニーズに対応したと言っていますが、そんな勝手なニーズは無視すべきですよね。やはり、一律に行わないと混乱しますよね。「基準日株主の権利を害することが出来ない」とありますから、この規定が適用されるのは、基準日から3カ月以内に、取締役会決議で出来る株式交換(総会決議不要の簡易手続きの場合等)や第三者割当増資(公開会社の場合)等で、新規に株主になったり、持株数を増やした株主などが考えられますね。全株式譲渡制限会社の場合は、第三者割当増資は総会特別決議ですから、別に良いですけれどもね。

       3月末日を基準日として、6月に定時総会を開催する場合、「物言ううるさい株主」の議決権比率を希釈化するために、急遽取締役会決議で、取引先に割当増資をする。勿論正当な目的を装って行うわけですけどね。その取引先も、逆に第三者割当増資をして、株式相互持合をするということも考えられますね。経営陣保身の方策で、既存株主、特に反対株主の声を押さえる手段として利用できそうです。

       また、全部のみならず「一部を当該権利を行使することができる者と定めることができる。」としています。こんな規定があると、一部の株主を不平等に扱えます。私は、株主不平等と経営者保身を擁護しかねない規定だと思っています。

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全部取得条項付種類株式は出来損ないの株式?

2008-06-07 00:23:06 | 商事法務

○全部取得条項付種類株式とは、法務省の解説(「一問一答 新・会社法 法務省大臣官房参事官 相澤 哲編著」)によると、2以上の種類の株式を発行する株式会社における、そのうちの1つの種類の株式の全部を株主総会の特別決議によって取得することができる旨の定款の定めがある種類の株式としています(171条1項、108条1項7号)。いわゆる100%減資等を円滑に行うために、株主全員の同意を得ることなく株式の全部を取得する制度に対する要望と、株主の利益保護とを勘案したものということです。

・続けて、以下の様に解説しています。

-普通株式に全部取得条項を付けるためには、株式の内容を変更する旨の定款変更をするために、特別決議が必要+全部取得条項付種類株式の種類株主総会の特別決議が必要(111条2項、324条2項1号)。

-全部取得条項付種類株式は、取得条項付株式のように定款に権利内容の重要な事項が全て明確になっているわけでは無く、定款で全部取得条項を付した時点で、取得対価等の権利内容が決定されていない場合もあり、取得対価等を取得の決定のための総会の特別決議で定めるとしています。(そうは思いませんね。こんな種類株式を発行するときは、既に債務超過状態ですから、取得対価は無償とか1円とか決められるのが普通ではないかと思います)。

-取得条項付株式の取得の場合は、重要な事項(取得対価等)は、既に定められているので、後は一定事由(条件)を充たす日(168条1項)や取得する株式(169条1項)を定めればよいので、(取締役会設置会社では)取締役会(取締役会の無い会社は総会普通決議)で決定できるとしています。(でも取得条項付株式を発行するときは、事前に定款に規定されていない限り、定款にその内容を規定しますので、その場合は、種類株式発行会社である場合を除き株主全員同意の特殊決議ですね(110&111条)。事務的な一部の事項だけ取締役会で決められるわけですね)。

-全部取得条項付種類株式の総会では、取得する必要性の説明をした上で、分配可能額(財源規制)の範囲内(461条1項4号)での対価の内容・対価の割当に関する事項・取得日(171条1項)を決定するとしています。

○株式の消滅を意味する株式の消却は、昔の商法では、例えば、資本の減少と共に行いましたね。しかし、会社法では、株式の消却を、①自社株式を取得して自己株式にして、②自己株式を消却するという、二段階方式に整理しました(178条)。即ち、資本金の額の減少と株式の消却の関係を切り離しましたね。

○よくわからないですね。この種類株式は。

・2以上の種類の株式の発行会社での種類株式としながら、全部取得し消却する100%減資用の株式としています。もう1種の株式は残りますよね。全種類の全株式の100%減資ではないですね。この株式は消却して消滅しますが、他の種類の株式は残りますね。

・100%減資は、普通は債務超過の会社が行いますよね。にも拘わらず財源規制をしています。そんな財源は無いですね。これでは100%減資ではないのではないでしょうか。まあ、普通は無償取得してその取得株式の消却ということになると思います。

・取得条項付株式と全部取得条項付種類株式の違いは、①特別決議で決めるべき重要な事項、即ち取得対価等の権利内容が決定されているかどうか、②平時に定めておくか、債務超過等の緊急時に定めるかではないしょうか。

・ということは、普通の取得条項付株式についての規定で、当たり前のことですが「取得対価等の重要な事項は、株主総会の決定&総会決議は特別決議とする」とすれば、わざわざ全部取得条項付種類株式という、変種の株式類型を定める意味がどれだけあるのか疑問が生じますね。

○では、どういった場合にこの種類株式が利用出来るのでしょうか?

【想定内の利用―この例は知りません】

普通の会社は、普通株式のみ発行の会社ですね。この会社が債務超過の状態に陥ったけれども、スポンサーが登場して再建しようとする場合等の特殊なケースでしょうか。再建のため既存株主の保有株式は全部消却(100%減資)という場合のときですね。まず会社が、定款変更により新たな種類の株式発行を可能とし、これに従いその種類の株式をスポンサーに対して発行する。既発行普通株式については、全部取得条項付種類株式とする定款変更の決議を行う。総会決議を経て、会社が全部取得条項付種類株式となった旧普通株式を無償で取得しその上で全部を消却すると、スポンサーに新たに発行された種類株式だけが残るという場合でしょうか。でも、私は、これも取得条項付株式でできると思うのですけどね。取得条項付株式が2種類必要なときは、甲種・乙種とすればいいのではないでしょうか。

【想定外の利用―実例が数件ぐらいあるのではないでしょうか】

・TOB等で2/3以上の普通株式を取得して、総会特別決議を通じて定款変更&議案決議を行い、普通株式をこの種類株式にした上で会社が取得し、身代わり株式として交付する普通株or種類株のくくりを調整して=1株未満にして、少数(特に個人)株主を排除する為に利用されていますね。

・株式併合と類似ですね。違いは、この種類株式を利用した場合は、株式買取請求権や取得価格決定申立が出来ますが、株式併合の場合は出来ませんね。でも実際は殆ど同じではないかと思います。つまり、株式のくくりを調整して,追い出すことには変わりがありませんからね。株式併合のときは、端株をまとめて売却してその売得金を分配しますね。確かに権利が違うかも知れませんが、少数株主が権利行使して争うのは、バカバカしくてしませんから、現実的にはお金を渡されて排除される訳ですね。

・但し、税務上は扱いが違うかも知れません。(法人税基本通達2-3-1等)。この辺のことはよく知りませんので、ご存じの人は教えて下さい。  

(株主を追い出す手法をsqueeze outと呼んでいます。しかし、正確には少数株主を法的に排除する手法はfreeze outで、事実上排除するのがsqueeze outと言うとも言われています。私は、どっちでも構いませんけどね。)

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開業準備行為・設立費用と効果帰属

2008-06-02 14:37:54 | 商事法務

     開業準備行為・設立に関する費用等に関連する規定が会社法28条にあります。わかりにくい規定です。判例・学説もいろいろ有るようです。28条では、一号=現物出資、二号=財産引受、三号=発起人の報酬等、四号=会社の負担する設立に関する費用について、定款に記載・記録しないと効力を生じないとしています。但し、四号では例外を設けています。即ち定款に記載・記録しなくても、定款の認証手数料と施行令5条記載の費用(定款の印紙税・銀行手数料・検査役報酬・登録免許税)は、新会社の費用とすることができます。即ち発起人が負担しても新会社が成立したときに新会社に請求できますね。発起人側では立替金として処理しますね。

○ まあ、施行令に記載の無い費用でも、実際は新会社に負担させている例がありますね。例えば、会社成立前に役務提供の大半を行う司法書士の手数料とか、会社設立事務協力を行った会社の報酬等ですね。これは厳密にはグレーの領域ですが、まあやむを得ない範囲でしょうか。

○ 財産引受(*)は、開業準備行為の一種ですが、「財産引受以外の開業準備行為」もあります。「財産引受以外の開業準備行為」については28条では規定していませんし、会社法には規定がありません。従い、新会社に効果を帰属させることは出来ないですね。

       財産引受とは、発起人が会社の為に、会社の成立を条件として特定の財産を譲り受ける旨の契約を言いますね。例えば、「○○株式会社発起人代表XX株式会社」が、新会社が使用するサーバをコンピュータ会社へ発注・売買契約を締結して、その効果を直接新会社に帰属させる場合等ですね。仮に、発起人がお金を支払っても立替金であり、新会社に請求(立替金請求書)し、発起人に立替金を支払っても、新会社での支払先は直接コンピュータ会社になりますね。財産ですから、会社が成立し、支払うまでは、資産(サーバ)/負債(未払費用)となります。

     発起人の行為の効果が成立後の会社に帰属するのは、その行為が設立中の会社の機関として、かつ機関としての「権限の範囲内」でなされた場合に限られますね。「権限の範囲」については諸説があるようですが、学説の多数と判例(最判S42.9.26民集2171870頁)では、開業準備行為については、法定の要件を満たした財産引受だけが例外的に発起人の権限に含まれるとしていますね(最判S28.12.3民集7121299頁)。

     整理して考えて見ましょう。以下のような視点で考えるとわかりやすいのではないでしょうか。

     開業準備行為(財産=資産+負債の取得か、それとも費用の支出か否か)か、設立に関する費用かどうか?

     開業準備行為で、発起人が(新会社が使用する)資産として取得してしまったかどうか、それとも財産引受の要件を具備して資産を取得する契約を締結した段階かどうか?(開業準備行為の費用は、新会社に帰属せず、発起人の責任となる)

 発起人の法律行為の効果が新会社に帰属するには、原則として、発起人は、顕名主義、即ち「○○株式会社発起人代表XX株式会社」として、当該行為を行わなければならない。

-         開業準備行為では、発起人は、財産引受を除いて新会社の為にこれを行う権限は無いとされています。従い、財産引受の要件を満たさなければ、その効果は新会社ではなく、発起人に帰属する。但し、一旦発起人が自ら資産を取得して、新会社に譲渡することはできる(純資産の1/5超の金額の場合は、4671項五号(事後設立)の規定が適用)。

-         設立に関する費用については、発起人の行為の効果は、定款記載の範囲内で、かつ検査役調査で認められた範囲で新会社へ帰属し、新会社はその費用を負担する。それ以外には効果は帰属せず、発起人自身の責任となる。但し、法令に記載されている印紙税・登録免許税等は定款記載・検査役調査不要で、発起人が負担しても立替金として新会社に求償できる。

○ ついでに、税務上はどの様に考えるのでしょうか。参考までに法人税基本通達の関連規定を記載しておきましょう。

2-6-2(法人の設立期間中の損益の帰属)法人の設立期間中に当該設立中の法人について生じた損益は、当該法人のその設立後最初の事業年度の所得の金額の計算に含めて申告することができるものとする。ただし、設立期間がその設立に通常要する期間を超えて長期にわたる場合における当該設立期間中の損益又は当該法人が個人事業を引き継いで設立されたものである場合における当該事業から生じた損益については、この限りでない。

法人税法は、基本法である会社法フォローですね。設立期間中=定款認証、印紙等の費用は、設立後の会社の損益として申告する事ができる。しかし、通常要する期間を越えて長期にわたる場合、その期間の損益は、この限りでない=設立後最初の事業年度の所得の金額の計算に含めて申告することは出来ないというのがこの規定ですね。

尚、「会社成立前の事業に関する損益については、設立準備に伴って必然的に生じる損益を除き(上記)、会社に帰属しないのが原則」というのは、当たり前の事なので、法人税法には記載がありませんね。

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