まさるのビジネス雑記帳

勉強ノート代わりに書いています。

株主の提案権の期限

2009-06-28 20:32:52 | 商事法務

○ 株主の提案権について、法303条は以下のように規定しています。

I項 株主は、取締役に対し、一定の事項を株主総会の目的とすることを請求することができる。

II項 前項の規定にかかわらず、取締役会設置会社においては、総株主の議決権の百分の一以上の議決権又は三百個以上の議決権を六箇月前から引き続き有する株主に限り、取締役に対し、一定の事項を株主総会の目的とすることを請求することができる。この場合において、その請求は、株主総会の日の八週間(これを下回る期間を定款で定めた場合にあっては、その期間)前までにしなければならない。

・ 旧法232条の2と同じですね。「六月前ヨリ引続キ総株主ノ議決権ノ百分ノ一以上又ハ三百個以上ノ議決権ヲ有スル株主ハ取締役ニ対シ会日ヨリ八週間前ニ書面ヲ以テ一定ノ事項ヲ総会ノ会議ノ目的ト為スベキコトヲ請求スルコトヲ得S56年の商法改正で導入された制度ですね。

○ 一方、株主総会の招集通知は、株主総会の日の二週間前までに、株主に対してその通知を発しなければならないとしています(法299I項)

○ 上場企業については、証券取引所の要求による決算短信の制度があります。東京証券取引所は、平成193月期決算より、重要性に応じて記載を省略できる仕組みを導入することや決算短信の期末後45日以内での開示を求めています。つまり、5月の中旬までに開示しないといけなくなりましたね。できれば、この短信の内容を見てから株主提案出来るようにするのが、親切ですね。

       「株主総会の八週間前までにしなければならない。」というのは、商法の規定を漫然と引き継いだだけですね。何の工夫もありません。

     一般の株主は、総会の開催日は招集通知を受け取ってからわかるものです。勿論定時総会は、3月決算会社は6月下旬とわかりますが(定款にも記載されていますが)、臨時総会など何時開かれるかわかりません。臨時総会で、権利を行使することができる者を定めるための基準日公告は、基準日の二週間前までに、当該基準日及び基準日株主が行使することができる権利の内容を定めた事項を公告しなければならないとしています。

     公告など見ている人がどれだけいるかは、一応別としても、本来なら公告を見てからでも株主提案出来るように工夫しないといけませんね。

     だいたい、8週間前というのが長すぎるのです。4週間までで十分です。特に今は、招集通知の印刷は、データを送信して印刷に回すだけです。版を起こして印刷する訳でもありません。8週間というのは、スピードが遅かった昭和時代の発想です。

     8週間前というのは、請求をうけてから総会開催日を操作できるということです。受けてから総会開催日を決めて、8週間以内なので提案を取り上げなくすることも可能なのです。

     例えば、定款に、「定時株主総会は、毎年6月に、臨時株主総会は、必要に応じて招集する。」という規定のある場合、「定時株主総会は、毎年6月に招集する。株主提案権の請求は、5月末までに本会社になさなければならない」とかとすべきですね。

あるいは、株主は招集通知を受領後3日以内まで、提案権を行使できる」等とすべきですね。招集通知が来ても、過誤訂正の通知などが来ます。それと同じ要領で株主提案の議案を追加すれば良いのです。

○ 株主提案権を設けても、提案しやすいようにするのが筋です。規定を設ければ良いというものではありません。

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その他資本剰余金について

2009-06-21 18:35:03 | 商事法務

○ 会社計算規則H18.2.7法務省令13号)第三編計算関係書類第二章貸借対照表等76(純資産の部の区分)IV&V項では、資本剰余金は、資本準備金とその他資本剰余金に、利益剰余金は利益準備金とその他利益剰余金に区別しなさいと規定しています。

○ 会社法では、445(資本金の額及び準備金の額)IV項で 資本準備金又は利益準備金は「準備金」と総称するとしています。446条(剰余金の額)では剰余金の額の算出を規定していますね。準備金の額は、剰余金算出のときに減算項目となっています。法で言う「剰余金」とは、その他資本剰余金&その他利益剰余金を言っているのでしょうね

○ 全く「へたくそな」規定の仕方です。計算規則で定めるべきものではありませんね。会社法で規定しないといけな事項です。法452条では、「損失の処理、任意積立金の積立てその他の剰余金の処分」という言葉が出てきます。

言葉の統一がなされていません。

○ まあ、それはともかく、「その他資本剰余金」も一定の制限のもとに分配可能な剰余金となります。常識的な考えでは、その他資本剰余金も資本取引により形成された金額、即ち事業の元手であり、これが配当できるというのもおかしな考えですね。

○ その他資本剰余金は、どのようにして算出されるのでしょうか。その増減について計算規則27を見てみましょうIII項は省略)

Iその他資本剰余金の額は、第一款(株式の交付等)及び第四節(吸収型再編に際しての株主資本)に定めるところのほか、次の各号に掲げる場合に限り、当該各号に定める額を増加させることができるとしています。 

資本金の額を減少する場合はその額(全部又は一部を準備金とするときはその額を減じて得た額なんで「全部」が入っているのか不思議?)

準備金の額を減少する場合はその額(資本準備金に係る額に限り、全部又は一部を資本金とする場合にあっては、当該額から資本準備金についてのの額を減じて得た額)

前二号に掲げるもののほか、その他資本剰余金の額を増加すべき場合は、その他資本剰余金の額を増加する額として適切な額何が言いたいのかよくわかりません。

要するに、資本金・準備金を減少させ(原則、総会特別決議&債権者保護手続き必要)、その他資本剰余金とすることができますよということですね。

II項:その他資本剰余金の額は、前三款(一款株式の交付等、二款剰余金の配当、三款自己株式)及び第四節(吸収型再編)に定めるところのほか次の各号に掲げる場合に限り、当該各号に定める額が減少するものとする。

 

・資本金の額を増やすために剰余金の額を減少する場合は、減少する剰余金の額(その他資本剰余金に係る額に限る。)効力発生日とともに総会決議必要。

・準備金の額を増やすために剰余金の額を減少する場合は、減少する剰余金の額(その他資本剰余金に係る額に限る。)効力発生日とともに総会決議必要。

前二号に掲げるもののほか、その他資本剰余金の額を減少すべき場合は、その他資本剰余金の額を減少する額として適切な額

要するに、その他資本剰余金を減少させ、資本金・準備金にできますよという規定ですね。

○ 一方会社法452第三目剰余金についてのその他の処分)では、以下のように定めています。「株式会社は、株主総会の決議によって損失の処理、任意積立金の積立てその他の剰余金の処分(前目に定めるもの及び剰余金の配当その他株式会社の財産を処分するものを除く。)をすることができる。この場合においては、当該剰余金の処分の額その他の法務省令で定める事項を定めなければならない。」

・ これを受け、計算規則第三章剰余金の処分153条では以下規定しています。452後段に規定する法務省令で定める事項は、同条前段に規定する剰余金の処分に係る 増加する剰余金の項目、② 減少する剰余金の項目、及び処分する各剰余金の項目に係る額 とする。」

○ 具体例として、第一三共をあげてみましょう。当社は、関係会社株式評価損を4027億円計上しました。特にインドの製薬会社のランバクシーに係るのれん償却の特別損失が大きいですね。当期純損失が2154億円となりました。すごい金額ですね。でも当社は、2007年4月の完全統合時に「企業結合に係る会計基準」に基づき、旧事業会社のその他利益剰余金を当社の資本等の部に振り替えていたので、その他資本剰余金からの配当でも、実質はその他利益剰余金からの配当だとしています。総会で「その他の剰余金の処分に関する事項」の承認を得ることになっていますね即ち、以下です。

・ 繰越利益剰余金をマイナスから零にするため、「その他資本剰余金」を「繰越利益剰余金へ振替をする総会の議案ですね。

 減少する剰余金の項目及びその額その他資本剰余金 2542億円

 増加する剰余金の項目及びその額繰越利益剰余金  2542億円

第一三共の場合は、昔の利益剰余金の分配かも知れませんが、マルハニチロの場合はどうなんでしょうね

◎ 要するに、その他利益剰余金とその他資本準備金は、総会決議を取れば「剰余金の処分」と称して自由に動かせるんですかね?損益取引で積み上げた利益剰余金と元手から出発した資本取引である資本剰余金を、思想もなく動かして良いんでしょうか?なんだかよくわかりませんね。

計算規則27II項では、その他資本剰余金は、次の各号に掲げる場合に限り当該各号に定める額が減少するものとするとしています。「限り」なんて嘘じゃん。規定の仕方・整合性がおかしいのではないかと思います

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社外取締役等の選任理由と問題点について

2009-06-03 22:50:57 | 商事法務

     2008年12月20日の日経新聞でしたが、ISS(米国のインスティテューショナル・シェアホルダー・サービシーズという議決権行使助言会社)の社外取締役重任議案に対する対応の新基準が導入されるという記事が出ていましたね。ISSでは、日本企業の社外取締役の重任議案の賛否基準として、取締役会への出席率が75%未満の場合、当該役員の重任に反対するというものです。

     楽天が買収を仕掛けた東京放送(TBS)の例を挙げて見ましょう。社外取締役の指名・選任理由としては、H19.6の参考書類では以下のように説明されていますね。また、H20.6の参考書類では取締役会の出席回数はどうなっているのでしょうか。

事業報告の選任理由の説明では、毎日放送(3.23%株主)の山本雅弘会長(13回中6回出席=欠席率54%)、電通(4.89%)の俣木盾夫会長(8/13=欠席率38%)、毎日新聞の北村正任社長(10/13=欠席率23%)、三井物産(2.25%)の機械出身のウツダ社長(7/10=欠席率30%)について、「放送、広告、新聞、商社の企業経営者としての豊富な経験・知識を持つとともに、当社の企業価値の源泉及び事業特性に関する深い理解、及び当社の企業価値の最大化に邁進していただける情熱や豊かな見識を有しており、当社のコーポレートガバナンスの強化、並びに企業価値及び株主の皆様共同の利益の最大化に資するものと判断し」と説明されています。ようこんな嘘書きますな!社外取締役は、自分の会社のことで精一杯でしょうね。露骨には言えないですが、自分の会社との取引の発展の為に役員を引き受けて居るんですね。

 社外取締役に就任している人を分類すると、取引先・取引銀行等の現役経営者、元官僚、学者、弁護士等ですね。社外取締役といえども、まず取締役会への出席義務がありますが、これも十分果たしていないですね。また、取締役会のメンバーとして、内部統制構築義務もあるのですが、社外取締役ですから、社内の事等わかりません。この義務も十分果たせませんね。日本では「独立取締役」等は、殆どいませんね。

- 取引先企業の経営者の場合:

 選任理由の大義名分は、経営者としての経験から大所高所の意見を期待、本当の理由は、仲良しグループ(TBSの場合は、楽天対抗勢力を形成して)を形成して取引先企業間の相互ビジネスの追及

 問題点は、自己または第三者の利益を会社の利益よりも上位においてはならないとする善管注意・忠実義務違反ですね。当然、派遣元の利益を優先します。また、取引関係構築・強化ですから、利益相反関係にあります。

- 学者・弁護士の場合:

 選任理由としては、専門的見地から議案の妥当性等について、法令・定款の遵守、妥当性等の監督義務を負っています。

 問題点としては、法令・定款に抵触する事等、オフィシャルな取締役会議案として上程する馬鹿がどこにいますか。まずそうな事は、裏で隠れて行うのです。弁護士さんが取締役会で活躍した話など私は聞いたことありません。

     例えば、ファミリーマートには、社外監査役はいますが社外取締役はいません。一方ローソンには、社外取締役が3名います。大学教授・人材派遣会社社長と関係会社(筆頭株主)の本部長ですね。社外監査役は2名で内1名は筆頭株主の審査部門の部長ですね。また、例えば、三菱電機(委員会設置会社)では、社外取締役として、グループの商社の会長や銀行の相談役がいます。まあ、皆さんどれだけご活躍になっておられるのでしょうね。取締役会に出席しても社外役員には聞いていても理解できないことが、いろいろ有りますね。何しろ、社外役員ですから社内の事、社内用語、専門外の事、わかりませんね。なぜ、現実に殆ど期待された役割を発揮していない、その上に出席もきちんとしていないのに、何故社外役員重視の風潮が起こるのでしょう。

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