まさるのビジネス雑記帳

勉強ノート代わりに書いています。

会社法―剰余金分配規制のおかしな考え方

2007-10-26 00:24:03 | 商事法務

     剰余金分配規制は、株主と債権者との利害の調整を図るためのものであるとか、会社債権者への弁済に支障を出さない為である等と言われています。即ち、会社債権者への弁済と株主への配当とが競合する場合においては、債権者への支払いを優先する事が基本であると言われています。尚、会社法の立案者は、株主と債権者との利害調整コストの減少のためのものと捉えているようです。

○ 私は、こういった(学者の)見解に違和感を覚えます。

(1) 剰余金は確かに株主資本の「その他資本剰余金+その他利益剰余金」から出発していますから、いたずらに剰余金を配当(出資の払い戻し)することなく、株主が拠出した資本を維持しましょうという考え方は理解します。しかし、債権者への弁済・支払い、株主への配当は、いずれも現預金のキャッシュアウトです。支払えるキャッシュがあるかどうかという事と、リスク負担者である株主よりも当然債権者への支払いが優先されると言うことです。

(2) 世の中の、従業員を雇用して事業を行っている会社の99%は、事業を継続しようとしますね。会社は継続企業体(Going Concern)ですね。債権者への弁済が滞った場合は、どうなるのでしょう?まして、株主への配当を行い、債権者即ち自分への支払いを遅らせたらどうなるのですか。当然早晩取引停止ですよね。債権者と取引が出来なくなれば会社が・事業がストップします。まともな経営者なら、株主への配当よりも債権者への支払いを当然優先します。債権者への支払いはMustです。しかし、株主への配当はmustではありません。経営者は、分配可能利益があろうがなかろうが、ともかく債権者にお金を払わないとビジネスが続けられないと意識しています。

(3) 株主への配当については、利益が出ていると粉飾して蛸配当する経営者もいますし、また黒字会社を装わないと銀行も融資を抑えますから粉飾決算を行う会社もありますが、これは次元の異なる話ですね。粉飾会社なら分配規制以前の問題です。バブルの後処理で金融機関が債権放棄をしたこともありますが、これは異常事態・例外事項ですね。

○ 即ち、剰余金分配規制を、「株主と債権者との利害の調整」という発想自体がおかしいと言うことです。前提が違います。弁済が義務の債権者と、別に配当決議をしない限り支払いが義務とならない株主への配当を対立概念で捉える必要など無いと言いたいわけですね。

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日米の剰余金配当の考え方

2007-10-22 00:20:30 | 商事法務

○ 剰余金の算出については前回触れました。今回は、剰余金の配当についてです。会社法4612項に分配可能剰余金の計算式が定められています。(1+2号に掲げる額の合計額)マイナス(3+4+5+6号までに掲げる額の合計額)ですね。

 ① 剰余金の額

 +②承認済臨時計算書類の次の金額

  イ 利益の額

  ロ 自己株式処分の対価額

 -③ 自己株式の帳簿価額

 -④ 事業年度末日後に処分した自己株式の対価額

 -⑤ 臨時計算書類で計上した損失額

 -⑥ 法務省令(計算規則186)で定める額の合計額

・上記③の自己株式の帳簿価額は、剰余金の計算では加算していましたが、保守的に考え分配可能額では減算しています。

     上記②⑤と⑥の一部は、臨時決算を行わなければ関係有りませんので、あまりないと思います。

・ 資本維持の原則に従い、会社債権者への支払いに支障をきたさない為に、分配可能額を法定し、剰余金の配当限度額と自己株式取得による株主への出資の払戻に歯止めをかけるものであると説明されます。

     一方、米国の会社法では分配可能額の規制はどの様になっているのでしょうか。模範事業会社法 § 6.40. DISTRIBUTIONS TO SHAREHOLDERS(c)は以下の様に定めています。

(c) No distribution may be made if, after giving it effect:

(1) the corporation would not be able to pay its debts as they become due in the usual course of business; or

(2) the corporation’s total assets would be less than the sum of its total liabilities plus (unless

the articles of incorporation permit otherwise) the amount that would be needed, if the corporation were to be dissolved at the time of the distribution, to satisfy the preferential rights upon dissolution of shareholders whose preferential rights are superior to those receiving the distribution.

即ち、(1)通常業務で弁済期日が到来したときに支払うべき債務の額を支払えないときは、配当をしてはならない。(2)資産の額が負債の額に必要額を加えた金額より少ないときは、配当をしてはならない、と規定しています。

カリフォルニア州会社法等は、違った規定の仕方をしているようですが、詳細は知りません。

・ キャッシュアウト(金銭債務の支払い実行)という視点から見れば、会社の支払いは、①役職員への報酬・給与の支払い、②取引先(仕入先、銀行等)への支払い・返済、③株主への配当の支払いに分けられますね。①は別として、②への支払いに支障をきたすときは③への配当の支払いを行ってはならないと言うことですね。簡潔明瞭な定めですが、債権者への支払いが可能だと思ったが、予想外に売上が落ちた場合などの事情が発生する場合があります。今後のCash Flow Statement・資金繰表で、どれだけ安全係数というか、保守的に見るかということかと思います。

     日本の会社法と米国法では発想が全く違いますね。日本の発想はBSの貸方である、資金の調達サイドの株主資本を基準に規制しています。しかし株主資本というのは計算上の金額であり、現預金の有り高ではありませんね。一方、米国ではキャッシュフローからの視点で規制しています。

     会社はキャッシュフローで動いています。剰余金の算出や、それから分配可能額を計算しても、キャッシュアウトする時点で支払いに充てる現預金が有るかどうかのほうが重要です。極端な話、分配可能額を計算できても支払うキャッシュが無ければ払えません。やはり、「お金が払えるか」という視点の方が良いんじゃないでしょうか。

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会社法―複雑過ぎる剰余金の算出

2007-10-17 21:51:58 | 商事法務

       剰余金の額についてですが、会社法446に規定されていますね。1-4号の額の合計額から5-7号の額の合計額を差し引いた額としています。1号ではまず最終事業年度の末日における剰余金の額を算出し、2-7号では最終事業年度の末日後の変動額について規定していますね。結局、「その他資本剰余金の額+その他利益剰余金の額」から出発し、これに自己株式の保有額を加えたものですね

○ 年度末の金額算出の1号は以下のように規定しています。即ち、イ・ロの額の合計額からハからホまでに掲げる額の合計額を減じて得た額としています。

  (イ 資産の額 + ロ 自己株式の帳簿価額の合計額)-( ハ 負債の額 + ニ 資本金及び準備金の額の合計額 + ホ 法務省令で定める各勘定科目に計上した額の合計額)

ホの額は、法務省令に委任しています。会社計算規則177条です。1号から2-4号の金額を減じた金額としています。即ち、

(法4461 イ及びロに掲げる額の合計額)―( 4461 ハ及びニに掲げる額の合計額 + その他資本剰余金の額 +その他利益剰余金の額)

       私は、この規定の仕方は明らかに「ちょんぼ」だと考えています。会社法と省令の循環参照です。省令に委任してしまったので無理矢理規則177条を作ったのではないでしょうか。基本は、省令に委任するのではなく会社法だけでしっかり規定すべきです。

       事業年度末日後の規定は複雑です。あまりに技術的で理解を難しくしています。1号を基礎として、加算項目として2 自己株式処分益、3 資本減少額、4 準備金減少額】を加えて、減算項目として5 消却自己株式の帳簿価額、6号 剰余金配当の場合の、イ 配当財産の帳簿価額の総額、ロ 金銭分配請求権を行使した株主に交付した金銭の額の合計額、ハ 基準未満株主に支払った金銭の額、7 計算規則178条に定める勘定科目に計上した額の合計額、の合計額】を減じた額を剰余金としています。

○ 計算規則178は、1-3号の合計額から4-5号の合計額を減じて得た額としていますが、この額は、上記の通り減算項目ですから、プラス・マイナスが逆になります。1号は、剰余金減少額、2号は配当に当たり準備金の計上不足を補う為の剰余金の使用額、3/4/5号は、吸収型再編受入行為、出資不足額が会社に支払われた場合の資本剰余金増加額等です。

       いやまあ読むだけで疲れますね。良くこれだけ、技術的なことぐじゃぐじゃ書きましたね。もっと規定の仕方を工夫して、簡潔わかりやすく出来ないものでしょうか。基本の算式をきちんと書いて、例外的にしか起こらないことは、別途まとめて書いて分かりやすくする工夫が必要です。法務省の立案担当者というプロの人が書いた割には、ハッキリ言って規定の仕方が「へたくそ」です。

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買収防衛策と定款の規定

2007-10-14 23:42:46 | 企業一般

       1010日の日経新聞には、買収防衛策導入企業が400社になった旨報じています。その中で、ブルドックと買収者のスティール・パートナーズの攻防戦を取り上げ、ステールの抗告を最高裁判所が棄却したことに関連して、防衛策の法的効力を巡り、二つのポイントを提示すると解説しています。

       防衛策を発動する際に株主意思を確認するかどうか。400社中341社が総会決議を経ているが、発動時に株主意思の確認を要件としているのは56社と記載。

       発動承認を特別決議とするかどうか。最高裁は総会での防衛策導入の賛成が8割以上(y(約83.4%)であることを重視したと記載。

ポイントは二つだけでしょうか?他にもあるのではないでしょうか?

       ブルドックは、6月の総会の時に、買収防衛策について第6号議案 定款一部変更の件として、急遽定款に規定を設けました。その上で第7号議案として新株予約権無償割当の議案を諮り承認を取得しました。同社の定款19条に、新株予約権無償割当に関する事項の決定についての規定を設けて、この総会の決議は特別決議で行う旨規定を設けました。第6号議案は、即時に効力を生じますから、これに従い第7号議案が承認された訳です。ブルドックは、定款の変更も行い、万全の体制で望みましたね。

○ 会社法2952には以下のような規定があります。「取締役会設置会社においては、株主総会は、この法律に規定する事項及び定款で定めた事項に限り、決議をすることができる。

  買収防衛策を導入した企業で、どれだけの企業が定款に規定を設けたのでしょう。この規定によれば、定款に規定が無ければ決議無効の訴えが出来ますね。

       東京放送(TBS)と楽天のケースはどうだったでしょう。楽天は、株主提案として第5号議案取締役2名(三木谷・増田氏)選任と第6号議案として定款一部変更の件を提案しました。いずれも否決されましたね。定款の一部変更案は、買収防衛策を特別決議で導入しようと言うものでした。買収者が買収防衛策の導入を提案した訳ですね。特別決議で承認されれば仕方が無いと言うことでしょうか?

       定款163項に追加として、下記の規定を設けようとしたものでした。「当会社株式の大規模買付行為に対する対応策(当会社の企業価値・株主共同の利益を損なうおそれのある者による当会社の株式その他の有価証券の取得に対して、事前に導入する新株若しくは新株予約権等の発行、又はその他の手段による対応策をいう)の導入については、株主総会の決議により決定する。本項に定める株主総会の決議は、議決権を行使することができる株主の議決権の過半数を有する株主が出席し、その議決権の3分の2以上をもって行う。」

       日経新聞の論点に戻れば、私は、特別決議の要件に準じて発動時に株主意思の確認をすべきと思います。買収者に持株を売却するのも株主の意思ですから当然ですね。また、400社中341社が総会決議を経ているとの事ですが、これは約60社が取締役会だけで導入していると言うことですね。株主の意思を問うこと無しに導入というのは如何なものでしょうかね。

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取締役会制度は見直しが必要

2007-10-08 23:11:56 | 商事法務

○ 取締役会の役割としては、①業務執行の決定及びその実行②取締役の職務の執行の監督、及び③代表取締役や代表取締役以外で業務を執行する取締役(=「選定業務執行取締役」とします)の選定と解職等ですね。

     いろいろな問題点

(1)   取締役会は無力化・儀式化・形式化していますね。重要案件は、会長・社長・副社長等で構成する経営会議等で決定されます。合議制の機関であり、取締役相互で牽制して議論して妥当な意思決定をしようという趣旨ですが機能していません。株主が選任している訳でもありません。サラリーマン重役ですし、ワンマン社長や会長等が選任、人事権を持っています。派閥が出来ますし、自分に忠誠を誓う側近優遇あるいはネポティズムですね。

(2)   取締役会は業務執行の実行を行う事ができるとされていますが、合議体が実行を行うとはどういう意味かわかりません。例えば合併契約書でも、署名者は代表取締役です。

署名者が、ABC株式会社 取締役会として、取締役の名前が列記してあったり、原本と同一である旨の証明付き取締役会議事録を添付して契約書が締結されているのは見たことがありません。勿論事実の表明・保証の条項に、取締役会の決議がされた旨記載してある契約書はありますが、合議体である取締役会が業務の実行をどのように行うのですか。代表取締役印はありますが、「取締役会印」等見たことありません。

(3)   選定業務執行取締役、例えば調達を任された取締役調達本部長(代表権は無し)が記名捺印した契約書があります。この契約書は、当該取締役が、会社から正式に権限を委譲されて締結したものですね。当該行為については会社を代表して行っていると考えるのが常識です。でも代表権が無いというのもおかしな話ですね。選定業務執行取締役が、自らの責任業務については代表権を有するとか、せめて責任業務を表示してなした行為については、会社は責任を免れることは出来ないとするのが常識です。

(4)  取締役の職務執行の監督を行う事になっていますが、機能していますか?職務執行を行う機関と監督する機関がどうして同じ機関なのですか?

(5)   特別取締役の制度はピンぼけ制度です。以下をご参照下さい。

http://blog.goo.ne.jp/masaru320/d/20070304

(6)   社外取締役等役立たない人を飾りで入れる意味はないですね。取締役会は1ヶ月に一回ぐらいしか開催されませんが、その時のみ出席して議案の書類に目を通すだけで、きちんとした検討など出来る筈無いでしょ。取引先の社長を入れても、自分の会社の事で多忙です。他社のことなど考える余裕などありませんし、また自社との取引に関する議案のときは、利益相反取引の承認が必要な場合もあるでしょう。

     取締役会制度が機能不全を起こしています。その対策として、特別取締役の制度を設けたり、委員会設置会社では社外取締役を必須としたり、監査役の任期を延長したり、社外監査役を必須としたりしています。小手先の制度いじりで、改善の兆し無しです。

○ 根本的に制度・システムそのものを変える必要があるのではないでしょうか。例えば、1) 議決権株10%以上保有の株主は役員指名権を有するとか。2) 累積投票の排除は禁止するとか。3) ドイツの共同決定法ではありませんが、従業員の代表を何人か取締役に指名し、総会で選任してもらうとか、4) 担当業務については代表権を与えるとか、5) 代表取締役選定は幹部による無記名投票制度にするとか等ですね。機能不全が言われているのに、いつまでたっても基本に立ち返った制度改正をしないのは怠慢です。

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会社法―新株引受権の定款規定は有効か?

2007-10-04 00:45:19 | 商事法務

     外国企業との日本における合弁会社で、合弁契約書に株主は新株引受権を有する旨記載していましたが、会社法が出来たので定款を変更しようとしました。定款に「株主は、新株引受権を有する」と書いて有効かどうかわからないので、法202条を引用して「当会社は、株主に株式の割当てを受ける権利を与えることができる。」と変更したら、どういうことかとクレームを受けてしまいました。Pre-emptive rightをどうして与えないのかと。欧米やCaymanの会社の合弁・定款ではPre-emptive Rightってすごくポピュラーですよね。なぜ日本の会社法が変わったのか、おかしい、理由が分からないという文句です。今回の会社法では、多少は世界に通じる内容にしようとしたのではなったのでしょうか?

 公開会社でない会社(=全株式譲渡制限会社)の定款に、上記の様に株主の新株引受権の規定を設けた場合、会社法上有効なのでしょうか?よく分かりません。今度の会社法は、難解というか欠陥というか、理解が出来ない部分がありますね。(無効です。コメントを参照して下さい)

○ 商法旧280-5-2条では、株式の譲渡制限会社の株主は新株引受権を有する旨の規定がありましたね。即ち「株式ノ譲渡ニ付取締役会ノ承認ヲ要スル旨ノ定款ノ定アル場合ニ於テハ株主ハ新株ノ引受権ヲ有ス」です。但し、特別決議で、第三者割当増資が可能でしたね。

○ 法2021項本文では「株式会社は、1991項の募集において、株主に株式の割当てを受ける権利を与えることができる。この場合においては、募集事項のほか、次に掲げる事項を定めなければならない。」としており、更に続けて、

 一 株主に対し、次条第2(申込者の住所・氏名、引受株式数)の申込みをすることにより当該株式会社の募集株式の割当てを受ける権利を与える旨

 二 前号の募集株式の引受けの申込みの期日

2項では「前項の場合には、同項第一号の株主は、その有する株式の数に応じて募集株式の割当てを受ける権利を有する。」としています。

即ち、①会社が募集事項を定め、②株主が申込みをすれば、株式割当を受ける権利を享受できると記載されています。

○ 2023項二では「当該募集事項及び第1項各号に掲げる事項を取締役会の決議によって定めることができる旨の定款の定めがある場合には、取締役会の決議で決定できるとし、三では、公開会社である場合は取締役会の決議、四では、前三号に掲げる場合以外の場合には株主総会の特別決議で決定としています。

 即ち、定款に定めれば、取締役会で、募集事項、割当を受ける権利を与える旨、引受申込期日を定めることが出来ます。

○ 定款で「株主は、新株引受権を有する」と定めても、これが果たして有効か無効は不明です。なぜ、従来の商法で享受できた権利のことをきちんと会社法で規定しないのでしょう。一貫性・継続性即ち何故法的安定性の確保をきちんとしないのでしょう。ハッキリ言って迷惑ですね。

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監査役会・監査委員会の非常勤役員

2007-10-01 00:26:27 | 商事法務

○ 会社法381条では、監査役は、取締役の職務の執行を監査する。また、監査役は、監査報告を作成しなければならないとしています。一方、3622項には、取締役会は、取締役の職務の執行の監督と規定されています。即ち、日本では、二元的監査制度になっており、その違いは下記と言われていますね。

・ 監査(事前・事後の検査)≧監督(事前の検査)

     監査役監査=会計監査を含む業務の違法性監査+著しく不当な場合の妥当性監査

     取締役会=違法性・妥当性の監督

・ 監査役会設置会社では、監査役のうち半数以上は社外監査役でなければならないとしています(3353)ので社外監査役が選任されていますが、多くのケースで公認会計士さんなどに頼んで非常勤の監査役に就任してもらっているのが現状ですね。非常勤の役員は、忙しい人が多いですから、まあ月に一回ぐらいの取締役会のついでに開催される監査役会に出席するぐらいですね。一方、常勤の監査役は、会社の元取締役か元従業員が多いですから、取締役の職務を常勤として監査するのは、身内の人ですね。

○ 委員会設置会社では、業務執行と監査・監督の分担を明確にして、執行は執行役に任せる事になりました。取締役会は、①経営の基本方針の決定、②内部統制の決定、③監査委員会の職務執行の必要事項の決定及び④執行役等の職務執行の監督等を行うことになりましたね(4161項)。従い、本来なら執行役と取締役は兼任禁止にしないと趣旨が徹底しないというか中途半端ですね。しかし、現実は違っていますね。取締役は執行役を兼務(監査委員だけは執行役等との兼務は禁止=4004項。また従業員兼務も禁止=3313項)出来ますので、制度の趣旨とは違っており、委員会設置会社では、取締役と執行役の兼任が一般的に行われています。

・ 監査委員会は、4042項で執行役及び取締役の職務の執行の監査及び監査報告の作成(及び、会計監査人の選任・解任・再任しないことに関する総会議案の内容の決定)を行う事になっています。

・ 取締役会は、上記の通り、監査委員会の職務執行の為必要な事項を定めます(41611号ロ)。決める内容は規則1121項で、監査委員会取締役・スタッフに関する事項、執行役からの独立性に関する事項、監査委員会への報告に関する体制、その他実効的に行われることを確保するための体制です。監査委員会(指名・報酬も同じ)は3名以上の取締役で構成され、人選は取締役会決議で定めますね。委員会の委員は過半数が社外取締役にしないといけません

○ 監査委員も、実態は監査役と同じですね。常勤の監査委員は、元役員か元従業員ですね。非常勤の監査委員(=社外取締役)は、忙しい人が多いですから、まあ月に一回ぐらいの取締役会のついでに開催される監査委員会に出席するぐらいですね。

     会社法では、社外の監査・監督の目が重要として、社外取締役・社外監査役を必須としてこれを重要視して増やしてきました。しかし実態は、取締役・執行役の職務の執行をきちんと監査出来ない人が選任されています。日本では社外役員など増やしても、あまり役に立たないといいますか、制度の趣旨と実態との乖離の増幅が進んでいるようなきがします。

・ 社外役員尊重は、米国の制度の猿まねが原因ですね(米国には監査役の制度はありませんが)。委員会設置会社は、形だけまねて中身が整っていません。米国の取締役会の中の監査委員会委員は、上場企業の場合は、SECのルールで全員社外取締役でなければならないと聞いたことがあります。日本でも、社外役員がきちんと働き、監査役会と監査委員会等がその機能を発揮するにはどうすればよいのか、学者や法務省の立案担当者のみが、いつのまにかピントのぼけた制度を作らないように(もう作ってしまった感じですが)、きちんとした議論・検討を重ねて現行制度を進化させてほしいですね。

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