まさるのビジネス雑記帳

勉強ノート代わりに書いています。

米国の個人年金・DC等

2016-11-06 02:45:52 | 商事法務
〇 米国でM&AをAsset Dealで行うとき新設会社を設立して従業員を承継する場合、或いは企業集団の1社を買収するときなど、その企業集団の年金から抜けるとき、従業員の年金制度をどの様にするかは重要な課題となります。ある有名なFAや弁護士事務所と一緒に仕事をしたときに、FAのPartnerのおばはんが、「Day Oneからやれば良いですね」とか言っていました。制度設計だけでも、頑張っても半年はかかりますね。弁護士のにーちゃんも、会社のBSへの退職給付債務の計上はどれだけされていますかとFAに聞いていました。勿論FAのおばはんは答えに窮していました。そもそもそんなこと何も考えていないですものね。持ち運びできる制度です。個人のアカウントで、会社はMatching Contributionを損金処理しているのでBSに書いてるはずないでしょ。ほんまにあほかいな、理解してないですね。M&Aでは、Top Managementも重要ですが、従業員の処遇を改悪できないのが一般的ですから、重要問題ですね。Asset Dealでは、DA(Definitive Agreement)に従業員の承継についてかなり詳細に規定する場合もあるのですね。

〇 個人年金は、①会社が枠組み・制度設計しますが、転職先に持ち運びができる(転職先に制度がないと持ち運びできない)ということで有名な確定拠出年金(DC=Defined Contribution Plan=税法の401kに規定)があります(日本の企業型確定拠出年金制度とは違います)。他に、②IRA (Traditional IRA)=Individual Retirement Arrangementと、③ Roth IRAがあります。

〇 IRAは、年金拠出時の拠出額について連邦税(Federal Income Tax)が非課税であり、また運用益も非課税(年金受取時まで繰延)です。年金受取は59.5才を過ぎて引き出すときに課税されます。それ以前の引出には追加課税されます。当然税法ですから非課税限度額があります。2014年は、50歳未満は年間$5,500、50才以上は$6,500ですね。

〇 Roth IRAは、上記と異なり拠出時の拠出額に課税されます。運用益には課税されません。また年金受取時にも非課税です。どちらを行うかは退職者の個人の選択・事情によります。将来年金を受け取りときには、勤労所得は無いので、普通の従業員は、受取時低税率(連邦個人所得税率10%~35%)が適用されるIRAを選ぶのが多いようですね。

〇 401kは会社が制度設計して、その中から従業員が選びます。他の制度として上場企業はESOP(Employee Stock Option Plan)がありますね。でもESOPは会社が替わると承継できないですね。401kは、持ち運びができる制度ですが、制度設計は企業が行うという点は日米同じです。しかし、日本では企業が拠出します(他の確定給付型を実施していない企業の限度額は月5.5万円。併存型は月2.75万円が限度額)が、米国では個人が自分の給与の中から拠出し、企業はこれに対応したMatching Contribution(一定限度まで損金算入可)を拠出します。拠出限度額は、IRAの3倍、賃金からの天引きで年間$18,000 (50歳以上は+$6,000)となっています。

〇 DCのメリット・デメリットとしては以下。
 企業側:メリットとしては、掛金の追加負担無し(積立不足が発生しない)。投資リスクを負わない。デメリットとしては、資産運用良好でも掛金負担の軽減なし。加入者毎の詳細な資産運用の記録・管理が必要。
 加入者側:メリットとしては、転職時のポータビリティが高い。加入者毎の年金資産把握が可能(個人別勘定)、運用方法・資産構成割合の選択が可能です。デメリットとしては、投資リスクを負う。退職後の収入が不安定となる等です。

〇 DCの特徴を整理すると以下です。
・DCの4要素:①制度設計、②運用商品(何種類もの選択肢を用意)、③手数料(個人勘定のRecord keeping等の負担)、④従業員への説明・定期報告義務
・ERISA法上の義務:企業は加入者に対し、①Min.3種類以上の性格の異なる投資対象を提供、②3ケ月に1度投資対象変更の機会提供、③投資決定に十分な情報を提供

〇 59.5歳前の引出&転職・退職:59.5歳到達前に支給を受けると、通常所得税+10%の追加課税。401Kプランの実施企業から未実施企業へ転職したり、59.5歳未満で会社を中途退職した場合などは、60日以内にIRA(Individual Retirement Account)の個人退職勘定へ給付額を移管すれば、引続き非課税メリット(=課税を繰延べ)を享受できます。

そんなところでしょうか。
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米国・EU独禁法のアジアへの潮流

2016-11-02 22:38:58 | 商事法務
〇 昔から米国の独禁法(Anti-Trust)、EUの競争法(Competition)は厳しいことで有名ですね。しかし、この10年の間にアジア各国でも独禁法・競争法が制定され、また執行事例が、中国(2008年施行)・インド(2009-11年)・シンガポール(2006年)・インドネシア(2000年)・マレーシア(2012年)等で起こっています。タイは1999年に施行された筈ですが、執行事例は無いようですね。一番要注意の国は、勿論中国ですね。外資系企業は監視されていますし、ガイドラインも制定されているようですが、僕は当局の恣意的・政治的な言い掛かり運用がされていると思っています。例えば、中国独禁法13条は、価格・生産量・市場分割協定は禁止、14条は再販売価格の決定等を規定していますが、15条では13条・14条の広汎な不適用が規定されています。また、13/14条にはいずれも、「国務院独占禁止法執行機関が認定するその他の独占的協定。15条にも、(6) 「外国との貿易及び対外経済協力における正当な利益を保障するためである場合」(7)「法律及び国務院が定めるその他の事由」と規定されていますので、国務院の意向(恣意?)に左右されるということでしょうか。

〇独禁法の規制は、①価格カルテル・顧客市場分割等の共同行為、②単独行為の独占排除、③合併・事業譲受等の企業結合(チェックの為の事前届出等)の3つの態様がありますね。

〇米国の独禁法は、(a)価格カルテル・市場分割・入札談合等、法律上当然違法(per se illegal)と、(2)合理の法則(Rule of reason)に照らして正当化の理由が無い場合は違法という考え方ですね(horizontalな共同生産販売等とverticalな再販売価格設定・抱合せ取引・排他条件付取引等=尚、日本では不公正な取引方法ですね)。EU独禁法も、カルテルは原則違法ですね。日本では、カルテルを当然違法とはしていません。2条2項6号では、「公共の利益に反して、一定の取引分野における競争を実質的に制限することをいう。」また、日本独自の規制としては優越的地位の濫用禁止でしょうか。

独禁法違反の制裁ですが、米国は民事(3倍賠償)・刑事罰、EUは民事、行政罰(但し、各国の独禁法で刑事罰を規定しているところがあります。)、日本は民事、刑事罰、行政罰の3つともありますね(民事・刑事罰は件数としてはあまりないですね)。米国の刑事罰は、DOJ (Department of Justice)とFTC(Federal Trade Commission)が担当ですね。米国での運用もどうもアジア系(日系・韓国系)企業の摘発が多いみたいでね。米国では、カルテルは刑事事件となり、企業だけでなく担当者個人&その上司も起訴の対象です。日本在住の担当者は、当然米国の刑罰権は及ばないのですが、最近は企業が当局と司法取引(Plea bargaining)して、刑を軽くしてもらって米国で服役する例も出て来ていますね。EUのカルテルへの制裁は、①企業に対する行政上の制裁金(裁量権を保有しており多額になる傾向がある)であり個人が処罰されることはない(但し、各国の競争法で刑罰規定のある国がある)、②カルテル認定に当たり価格に関する情報交換レベルであっても違反と認定される可能性があること、③違反者を企業単独では無くグループ単位で捉える、即ち親会社も連帯責任とされるということでしょうか。

独禁法の特徴は、域外適用(効果主義)ですね。その行為の効果が及ぶ国の当局に規制の権限がある考え方です。ある製品の米国でのマーケットシェアー1位・2位の企業が、タヒチ島に行って、米国での販売先への価格カルテルを決めたときは、米国独禁法が適用され、Per se illegalで違法となります。

〇特に最近一層注意を要するのは国際カルテルですね。国際的な企業間で、一国・複数国を対象とした、①価格カルテル、②顧客分割・市場分割カルテル、③マーケットシェアー調整、④生産数量カルテル、⑤入札談合等が行われた場合は当然違法です。

〇日本の公取は、効果主義に基づく海外事業者に対する法執行が甘い・軟弱なので、経団連等は、厳正な法執行を求めていますね。

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