まさるのビジネス雑記帳

勉強ノート代わりに書いています。

米国独禁法の概要②-域外適用

2013-03-22 23:12:41 | 商事法務

 

 前回米国独禁法の特徴として4つあると言いました。その中で、今ひとつ分かりにくいものに域外適用(Extraterritorial Application)があります。今回は、この域外適用についてです。域外適用される局面というのは、以下の4つの切り口から考えることが出来ます。

 対人管轄権(Personal Jurisdiction-jurisdiction over the persons involved)

 事物管轄権(Subject Matter Jurisdiction ? jurisdiction over the offence)

 証拠範囲(Discovery Jurisdiction ? jurisdiction over the evidence, “off-shore evidence”)

 執行範囲Enforcement Jurisdiction ? jurisdiction as to relief/ enforcement<o:p></o:p>

 

 

 上記の4つのJurisdictionを具体的に見ていきましょう。

① 対人管轄権とは、日本の法人(親会社)に対して、Minimum Contact Testを行い、Minimum Contactがあれば、米国の裁判所が日本法人に管轄権を持つということになります。

②は、日本法人の日本における行為に対して、米国独禁法が適用されるということです。(事物管轄-Effect Test

③は、日本法人が日本に保有している証拠を提出する(証拠範囲―Control Test

④は、日本法人が敗訴したときは、日本法人に対して執行されるということです(Asset Test<o:p></o:p>

 

 

 では、それぞれについて見ていきましょう。

① Minimum Contact ? 米国子会社と共謀して独禁法違反をしたり、米国子会社を日常的に管理監督しておれば日本の親会社への米国の裁判所の管轄権が及ぶと言うことです。

② Effect Test ? 「たとえ外国で行われた行為であっても意図された効果(intended effect)が、米国の通商に及んだ場合は、反トラスト法が適用されると言うことです。これについては、Foreign Trade Antitrust Improvement Act of 1982にて、米国内の通商・輸入取引又は米国居住者の輸出取引に a direct, substantial, and reasonably foreseeable effect」を与える場合にのみ適用されることとされています。

 証拠範囲―米国司法省・FTCのチャレンジを受けた米国子会社あるいは訴訟当事者は、その保有しControlする全ての関係書類(all relevant documents)を提出しないといけません。この点当事者でない日本の親会社に、通常の証拠調べは及ばないのですが、残念ながら米国子会社のall relevant documentsには、日本の親会社とのやりとりの文書が含まれてしまうということです。

<o:p></o:p>

 ④ 執行範囲ですが、刑事事件について外国に居住する外国人に対して、米国独禁法違反で刑事手続きを執行されることは無いですね。ハワイ等に遊びに行けばアウトですけどね。但し、民事事件で外国人に金銭給付判決が下りたときは、外国で執行する道は開かれています。日本では一定の条件の下に外国判決の執行を認めていますね。 

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米国独禁法の概要①

2013-03-15 22:55:50 | 商事法務

 

 米国独禁法を少し勉強しようと新宿の紀伊国屋に行ったら、「アメリカ独占禁止法第2版」という分厚い本が売っていました。きちんと書いている本なので、これは読んだらすぐに眠たくなるし、第一まともに読まないので、買うのをやめて、ネットサーフィンをして自分で簡潔なサマリを作った方が良いなということで、今回は米国独禁法の体系概要です。勿論独禁法ですので、ガイドラインとか個別の判例が参考になるのですが、その前に前提の枠組みをきちんと整理しておかないとということで、今回は枠組みについてです。

 

 まず、連邦反トラスト法の4つの特徴です。

(1)広範なカバー:日常の取引から合弁・企業買収・合併まで広汎な範囲に適用。

(2)厳格性:司法省を中心として特に刑事事件に重点をおいて運用されます。また、私訴においては3倍賠償という懲罰的賠償が課されます。

(3)判例法:日本の公正取引委員会も最近は少し機能していますが、米国の訴訟社会、裁判・法律社会を反映して、司法省・FTC(Federal Trade Commission)による活発な運用の他、私訴も多く提起され、これらの裁判を通じてcase lawとして発達した。従い、具体的な判例をきちんとマスターしないと、法令だけ見てもわからない。

(4)域外適用:外国における米国反トラスト法違反にも適用されており、EU独禁法の特徴でもあり、世界中で事業を展開する企業にとっては、米国のみならず、その域外適用、EU独禁法まで考慮したビジネス等の展開が必要であること。<o:p></o:p>

 

<o:p> </o:p>

 米国反トラスト法は、①Sherman Act、②Clayton Act及び③FTC (Federal Trade Commission) Actの三つから成り立っています。<o:p></o:p>

 

 Sherman Act =The Sherman Antitrust Act (1890)→1条と2条の抜粋です。

Section 1. 取引を制限するものは違法:

Every contract, combination(結合) in the form of trust or otherwise, or conspiracy(共謀), in restraint of trade or commerce (取引を制限する), is declared to be illegal (違法). これらの行為を行ったものは有罪・重罪として、企業の場合は$10,000,000以下、個人の場合は, $350,000以下の罰金又は3年以下の禁固,あるいは両方を課す。→具体的には、Price Fixing(価格協定)、市場・顧客分割(Market Division/Customer Allocation)及びGroup Boycott(集団的ボイコット)が、典型的な違法行為(Hardcore violation)となります。<o:p></o:p>

 

Section 2. 独占は重罪:

Monopolize(独占), or attempt to monopolize(独占する企て), or combine or conspire with any other person or persons(他者との結合・共謀)は有罪・重罰。(罰則は1条と同じ)<o:p></o:p>

 

<o:p> </o:p>

 Clayton Act = The Clayton Antitrust Act (1914)→主要条文の抜粋

Sherman Actでは、競争に対する実際の制限(actual restraint)が要件とされているのに対して、Clayton Actでは、競争を弱める傾向(tendency towards lessening competition)のみで違法性を認め、反競争的効果をもたらす可能性ある行為を萌芽の段階で摘み取ろうとしていますIncipiency doctrine. 但し、特定のcategoryの行為のみ対象)

2Discrimination in price, services, or facilities. the effect of such discrimination may be substantially to lessen competition or tend to create a monopoly in any line of commerce, or to injure, destroy, or prevent competition with any person

3条:Sale, etc., on agreement not to use goods of competitor. whether patented or unpatented. fix a price charged therefor, or discount from, or rebate upon, such price, on the condition, agreement, or understanding, the effect of such lease, sale, or contract for sale or such condition, agreement, or understanding may be to substantially lessen competition or tend to create a monopoly in any line of commerce.

7Acquisition by one corporation of stock/assets of another .

the effect of such acquisition may be substantially to lessen competition, or to tend to create a monopoly.

これをチェックする方法として、Pre-merger notification(企業結合事前届出制度)がありますね。尚6条では、反トラスト法は労働組合には適用されない旨の規定があります。<o:p></o:p>

 

<o:p> </o:p>

 FTC Act

5. Unfair methods of competition unlawful; prevention by Commission

(a) Declaration of unlawfulness; power to prohibit unfair practices;

Unfair methods of competition in or affecting commerce, and unfair or deceptive acts or practices in or affecting commerce, are hereby declared unlawful..<o:p></o:p>

 

Sherman/Clayton両法によって規制されない分野まで規制の対象としている点―単独行為  も対象として、Incipiency doctrineを徹底している点に特徴があります。

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Tag Along & Drag Along条項の濫用

2013-03-03 11:10:46 | 株式関連

 

 最近の海外の株式・投資にまつわる契約、即ち合弁契約(株主間協定)や投資契約には、いわゆるTag Along (Co-sale) right条項とこれの裏表一体のDrag AlongBring Along)条項が入ることが多くなりました。これにならって国内のVC等も、投資契約の中で、似たような条項を入れるようになりました。日本の会社法にも自社株を会社に買ってもらって自己株にするときに、このTag Alongの類似条項があります。この条項は、Financial Investorが投資先から逃げて資金回収をはかる為に考え出された条項だと思っております。私は、きちっと事業を行うことを前提とした合弁等の事業投資を行う企業(Strategic Investor)の契約には必ずしも適切な条項ではないと思っています(勿論、状況によっては適切な場合もありますが)。この条項は米国のVC等か考え出したもので、ものまね好きの日本のVCが取り入れています。今のところ国内の事業投資家の投資契約には、渉外弁護士の知識経験をもった人にドラフティングを頼めば別ですが、まだあまりこの種条項は入っていないように思います。<o:p></o:p>

 

 

 Tag along right ? 例えば、創業経営者が過半数を持つ会社に、10-20%なりの投資をしたVCの投資契約に、創業者が株式を第三者に売却するときに、売却しようとする創業者は、その売却にVCも参加して保有株式を、持株比率に応じた売却する権利を与えるもので、創業者との投資契約に規定されます。買主である第三者は、当然契約当事者ではありませんから、VCは嫌いだからお前から株は買わないと言ったときに、どうするか迄は一般的には規定していません。勿論、規定の仕方はありますね。創業者は第三者に自社株を売却して、比率に応じた株式を、創業者自信が購入する義務を負わせるという手当も考えられます。<o:p></o:p>

 

○ Tag along類似の条項は、会社法にも規定されています。但し、特定株主から合  意の上、会社が自社株(自己株)を取得する場合ですね(従い、株主間だけの契約では駄目で、会社も契約当事者になる)。特定株主から株式を取得しようとする場合は、①他の株主に、自己を売主として追加するよう請求できる権利を与えています。しかし、②会社法156条で総会決議事項とされ、また309条で特別決議事項 となっていますし、③その総会では、特定株主の議決権は排除されますね(160)。株主平等といいますか、不公平排除の規定ですね。但し、自己株取得ですから財源規制が働きます。<o:p></o:p>

 

 Drag Along (Bring along) ? 上記のTag alongは権利ですが、こちらは義務ですね。少数株主の売却参加義務ですが、売却する株主から見れば、少数株主を道ずれ出来る権利です。創業者が、持株全部を第三者に売却するとき、他の全ての少数株主に、同時に売却義務を課す、創業者と少数株主間の契約に見受けられる条項です。買収者が100%買収を希望するときに有効ですね。仮にこの条項が無くても、買収者が2/3以上の株式を取得すれば、種々の方法で追い出されますので、VCに取っては手っ取り早く売り飛ばして、投資資金を回収する手段ですね。

 

 上記のように、Tag along & Drag alongの条項は、基本的にはVCが投資資金を回収する手段です。長期的信頼関係に基づき、合弁パートナーと合弁事業を行い、こつこつと田んぼ(事業)を育てる農耕民族の日本のメーカには不向きな条項ですね。こういった類いの合弁契約には、Pre-emption rights on new share issuesとか、Right of first refusalぐらいの規定で、良いのではないでしょうか。<o:p></o:p>

 

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