まさるのビジネス雑記帳

勉強ノート代わりに書いています。

Escrow Agreementについて

2014-08-14 01:20:53 | 商事法務

 

  • 日本では、一部土地取引などを除きあまりポピュラーではありませんが、信託の発達した英米では結構見られる取引にEscrow Agreementがありますので、今回は、そのEscrow Agreementについてです。では、どんなケースで見られるでしょうか。

     

 

  1. M&Aの例えばAsset Purchaseでは、当然closing date(譲渡実行日)にはPurchase Priceは確定しません。Closing dateに、Asset & Liabilitiesを譲渡しますが、流動資産・負債はいつも動いていますので、事後的にClosing dateの譲渡資産・負債を確定し事後にAdjustment行います。しかし売主は、やはりClosing dateに譲渡代金を要求しますね。一方買主は、払いすぎるわけにも行きません。お金が一旦売主に払い込めば簡単には戻してもらえない可能性があります。従い、予定譲渡金額が約1億ドルなら5%5百万ドルをEscrow Agentである銀行に口座を開設して、その口座を通じて事後調整を行う場合があります。このときには、売主・買主間のM&A契約で、Escrow Agreement(買収契約本文で明記して、Exhibitとして添付)規定する場合が多いです。

     

  2. 例が多いのが不動産取引ですね。日本でも、更地にしてから購入するという条件がある場合には、譲渡の実行が先になります。売主としては更地にしたけど、買主がもうやめたでは「どういうことか!」となりますので、大きな取引には時々利用されます。大きな取引に限られているのはEscrow Agent(信託銀行)の手数料・費用が結構高いからです。50億円の取引なら、下手をすると1000万円ぐらいはかかります。これには銀行の手数料に加えて、土地取引の内容を弁護士がチェックする、そういった費用もかかるからですね。英米では、売主は不動産権利証(title deed)を、買主側は購入代金+諸経費をEscrow Agent(銀行)に預託して、条件が成就したときに、銀行が権利証と代金・諸経費の引渡しを同時履行する内容のEscrow契約を結びます。

 

    3.その他の例としては、穀物の売主が買主に穀物を収穫時期が来たら引き渡すと  いう契約で、買主が売主に、穀物栽培・成育代金を融資する場合などにもEscrowが使われます。

 

  • Escrow Agreementの内容

  1. Escrow契約の内容を見てみましょう。契約の構成は、①銀行のEscrowの標準約款(Escrow Agreementの内容)、と② 当該案件用のEscrow Agreementです。売買当事者と銀行間の3社契約で、Agreementだけの場合と、覚書+取引保全信託契約証書の2つの内容の契約を結ぶ場合があるようです。①の標準約款の内容はカットして、②の主な内容です。

     

  2. 契約の内容:

    買主は、委託者&収益受益者であり、売主が元本受益者、銀行が受託者ですね。元本が引渡予定金額ですね。預金ですから利息が生じますが、利息まで相手に渡しては払いすぎになるので、その部分は委託者が収益の受益者になります。

    ・銀行で口座を開設する(既にその銀行に口座を持っている場合が多いので、その口座から、新規に開設するEscrow口座に代金を振り替えする場合が多い)

    ・銀行に信託報酬を払いますので、その信託報酬の計算方法の規定。

    条件が成就したとき等の銀行のレポートの送付先・通知先を規定

    ・その他の内容は、基本的に全て約款通りとなります。

     

    これぐらいでしょうか。

 

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インドネシア会社法の監査役会

2014-07-09 22:41:26 | 商事法務

 

  • ドイツでは監査役会が強い権限を持っていますね。監査役会の権限を規定すれば取締役会の決定事項もキャンセルできます。昔、ダイムラーベンツが三菱自動車に出資することを承認した取締役会の決議を否決しましたね。この監査役会の制度はオランダの民法典や商法典を、参考にしたのではないかと思っておりますが、同じオランダ商法典を参考にして作成された会社法としてインドネシア会社法にも監査役会(Board of Commissioners)の制度があります。今回は、その監査役会の話です。インドネシア企業との合弁契約をいくつか見ましたが、この監査役会を、日本の実質権限を持たない飾りだけの監査役会と同視して、殆ど権限を持たせずに、株主総会で選任されるという形式をまねて監査役会を組成している契約がありますね。本来の趣旨は違うんですよね。

     

  • インドネシア会社法のBoard of Commissioners(=コミサリス(Komisaris)会)の規定は、108条から121条に規定されています。日本の監査役(監査役会)の機能は、勿論監査ですが、中身は取締役の業務執行が法令・定款に違反又は著しく不当かをチェックし指摘することですね。しかし、コミサリス会の職務は、会社の目的に沿った形で経営方針や経営の実行を監督(supervise)し、また取締役会へアドバイスする事だとしています。日本の監査役会よりもはるかに広範な権限を有します。職務遂行に当たっては、good faith & prudentな行動を求められ、監督業務執行に完全な責任(full of responsibility)を負いますし、過失責任も負います。また日本の監査役は、独立して判断(独任制)できますが、コミサリス会は単独では行動できません。コミサリス会決議に従った行動が求められますし、責任は連帯責任(jointly and severally)となります。員数は、1人以上で2人以上のときは監査役会を組成します。

     

  • では具体的にどういった権限を持つかは、定款で定めないと仏作って魂入れずなんですが、実はあんまり皆さん魂を入れていないようです。具体的には定款で定めれば良いのですが、定めていない例が多いようですね。1171項は、次のように定めています。「Articles of Association may determine the grant of authority to Boards of Commissioners to give approval or assistance to Boards of Directors in the performance of certain legal actions.」。理由としては、取締役会の上に、取締役会を監督・アドバイスする機関を作ると、機関に屋上屋を重ねるという感じだからでしょうか。また、取締役も監査役も株主総会で選任されますし、二重の手続きを踏むのは面倒だからでしょうね。

     

  • でも折角こういった制度もありますし、取締役会レベルではなく、高度の政治的な判断などはコミサリス会で決められるようにしてはどうかと思います。では、コミサリスには誰が適任なのでしょうか?合弁会社なら合弁会社の株主の会社の会長などでしょうね。合弁契約が5050%で、取締役の指名人数も同数のときなどは、Dead Lockになる議題などもありますね。そういったときはコミサリス会の判断を仰ぐというのは如何でしょうか?

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企業統治の在り方と監査等委員会設置会社

2014-06-03 21:27:14 | 商事法務

 ○ 今回の会社法制部会の見直しは、1部 企業統治の在り方、2部 親子会社に関する規律及び3部 その他 からなっていますね。今回は、このうち企業統治の在り方について述べます。企業統治・機関設計については、意思決定・執行・監査監督という3つのポイントから、どのように設計するかですが、経団連・日本取締役協会という、一部の団体の提言等も踏まえて、視野の狭い要綱案が出来ました。こういった組織論に加えて、企業統治の議論では、社外取締役の導入圧力があり、従来抵抗してきたトヨタ・キャノン・新日鉄住金等も導入していますが、まあこれは、どうせ役立たない、期待などしていないけど、1-2人ぐらい入っても、意思決定に影響があるわけないから、形式的に入れておこうということでしょうか。 

 

 

○ 今回の会社法改正では、あまり利用されていない委員会設置会社制度(「指名委員会等設置会社」に名称変更予定)屋上屋を架して、監査等委員会設置会社(当初は「監査・監督委員会設置会社」となっていましたが「監査等委員会設置会社」に変更)を設置するとの事です。委員会設置会社にいったん移行した上場企業は、70社ぐらいあったと思いますが、約1/5不都合ありで監査役会設置会社に戻しています。なぜ普及しなかったのか、どの様に改善・修正すればよいのかという視点ではなく、失敗の上塗りの制度設計ではないかと思います。

 

○ では、どういった点が問題なのでしょうか。

 1)  法制部会の委員は、会社法学者、弁護士、判事+民間の飾りが少しという構成で会社法学 者がメインです。選任は全く頑迷固陋でピンボケです。企業統治は、企業組織・人事論を専門とする経営学者の方が多面的で実証的な意見が多いのではないでしょうか?法学者は、企業統治のプロですか?頭法律で、組織を作っても機能しないのではないでしょうか?その証拠として委員会設置会社制度の失敗例があります。 

 

 

2)  委員会設置会社は、米国の制度の猿まねです。しかも、米国の各州の会社法では、指名・報酬・監査委員会等は一切定められていません。委員会を設置できるとしていますが、その内容は定款自治ですね。この3委員会はNY証券取引所等の上場規制です米国では上場企業用のルールを、日本では会社法に規定しました。仏作って魂入れずというか、形だけまねたのですね。即ち、米国の取締役は、株主の代表ですが、日本の取締役は、従業員の代表がメインですね。企業風土の違い、会社組織の歴史を踏まえない発想です。また、米国の制度がグローバルスタンダードと考えること自体が誤りです。ドイツの監査役会・共同決定法等という、機関設計もあります。こういったグローバルな発想もありません。

 

 

3)  社外取締役が、監査・報酬・指名という職責を果たせるという、現実性の乏しい仮定の認識に基づいている。一か月に一度、会社の役員室にやってくる役員に会社の実態が把握できる筈が無い、現場・現実・実務無視の発想です。たんに、役員会の直前に送付されている議事内容の紙を読んだだけで何がわかるというのですか?指名・報酬委員会等は、既にあるその会社の内規等の解説を事務当局から受けて、「うんうん」と了承しているだけではないでしょうか。

 

 

4)  事業報告書では、取締役会での、社外役員の発言の状況、社外役員の意見により事業方針・決定が変更されたときは、その内容を記載しないといけません(施行規則124条4号)→上場企業の事業報告書はEDINETで閲覧できますね。この内容を全部調べたのですか?私は、数社の事業報告書を読んだ限り、社外取締役は、「有益な助言・発言をした」等という、何もしていないという事を示す建前文言しか見ることができません。こういった調査・実情把握も不十分なまま、会社法学者が頭だけで考えたものが、今回の企業統治の考えですね。法学者は、法律的な組み立てを行うエンジニアであって、企業統治を広く深く多面的に見る専門家ではないのです。

 

 

○ 最適な企業統治の在り方は、規模・歴史・株主構造・企業文化と風土・業種等を踏まえて企業自らが考えて設計すればいいものです。会社法はそういった企業統治の枠組みを整備すればいいのです。従い、会社法では、取締役会は、委員会を設置して、取締役会の機能・権限を一部委譲できると規定する事(委譲出来ない部分も、委員会設置会社のように規定すればよい)とすれば良いのです。

しかし、各企業では、自分に合った企業統治の委員会を設計できるだけの能力が無いのが現状です。従い、かつて経済産業省・法務省が合同で、買収防衛策の指針を出したら、これに沿って買収防衛策を無批判に導入した企業が多くありました。それの例のように、例示の企業統治のパターンを、いくつか用意してあげれば、そのどれかを弁護士と相談して採用するでしょう。

 

 

 

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米国倒産法とExecutory Contract(未履行契約)

2014-05-17 11:50:43 | 商事法務

 

  • 米国の取引先が倒産したときに、未だ履行されていない契約(executory contract)はどうなるのでしょうか?というのが今回のテーマです。会社再建型のChapter 11では、会社の事業は継続されますね。また、未履行契約ですから、倒産企業が、これを履行すればお金が入ってきますし、倒産して履行どころではないという企業もあるでしょう。

     

  • この点については、倒産法365Executory contracts and unexpired leasesの規定があります。例外はありますが、(a)項にthe trustee, subject to the court’s approval, may assume or reject any executory contract or unexpired lease of the debtor.」という規定があります。即ち、裁判所の承認を条件として、管財人は、契約を履行しても、拒否してもよいということになっています。再建型では、取引を継続しないと事業再建は出来ません、相手方にとっては不安はありますが、倒産会社が、主要取引先なら、管財人が履行を選択したらこちらも履行することになるでしょう。

     

  • では、管財人が履行を拒否した場合、他方当事者はどうすればいいのでしょうか?継続的な契約であるライセンス契約については、365(n)ではライセンシーに、契約を終了させる((1)(A))か存続を選ぶ((1)(B)項)かの選択権が与えられています。特許の使用権を得て、それで生産等行っている会社にとっては、やはり終了すると生産できないという自体も考えられますからね。従い、ライセンサーが倒産しても、ライセンシーは継続してライセンスの使用が出来ます。しかし、制限が生じますね。

     

  • (1)(B)以下の規定を引用(一部カット)して見ましょう。

 

(B) to retain its rights (including a right to enforce any exclusivity provision of such contract, but excluding any other right under applicable nonbankruptcy law to specific performance of such contract) under such contract to such intellectual property, as such rights existed immediately before the case commenced, for?

(i) the duration of such contract; and

(ii) any period for which such contract may be extended by the licensee as of right under applicable nonbankruptcy law.

 

(2) If the licensee elects to retain its rights, as described in paragraph (1)(B) of this subsection, under such contract?

(A) the trustee shall allow the licensee to exercise such rights;

(B) the licensee shall make all royalty payments due under such contract for the duration of such contract and for any period described in paragraph (1)(B) of this subsection for which the licensee extends such contract; and

 

(C) the licensee shall be deemed to waive?

(i) any right of setoff it may have with respect to such contract under this title or applicable nonbankruptcy law; and

(ii) any claim allowable under section 503 (b) of this title arising from the performance of such contract.

 

  • 制限としてspecific performance特定履行を請求することはできなくなります。即ち、ライセンサーは特定履行の義務から免れることができます。特定履行とは、ライセンス契約に、ライセンサーの義務として、第三者による特許権侵害を排除する義務、継続して技術援助(ソフトウェアの場合は保守契約の内容が記載されている場合)を行う義務、改良発明を継続的に開示する義務等がなくなります。言ってみれば、倒産を申し立てた・申し立てられた時点でフリーズして、その時点の使用権をライセンシーは継続的に使うことになります。

     

  • ライセンシーは、契約期間中、ロイヤルティーの支払義務を負い(特定履行が出来なくなった分どうするんだということまでは記載していません)、ライセンサーに対する相殺の行使が制限されます。

     

  • 共有IPについて、日本の特許法73条では、共有者全員の合意がなければ、譲渡、専用実施権、通常実施権の許諾が出来ませんが、米国では、他の共有者の同意なく処分が可能なようですね。

 

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インド会社法の役員報酬規制

2014-04-13 16:02:13 | 商事法務

 

  • 日本では赤字企業の取締役でも不祥事を起こさない限り、きちんと報酬を得ていますね。しかしインドでは利益を稼げない会社の取締役は報酬を得るべきではないとされています。今回は、昨年成立し、今年4月からかなりの部分が施行された、インド The Companies Act,2013の報酬規制について書いて見ましょう。インドの会社の類型としては、公開会社(公開=上場という意味ではない)、非公開会社、みなし公開会社の3種類です。1956年会社法では、100%子会社を除き日本の親会社が上場企業ならインド子会社は、非公開会社であっても「みなし公開会社」とされて、取締役の報酬規制に該当して、これを満たせない場合はインド中央政府の承認を取得しなければならなかったですね。新規に進出した日系自動車部品会社の役員の人は、この中央政府承認を取られた人もいるのではないでしょうか。もっとも日本からの派遣役員は、別途日本払い給与を出向元会社が、日本の口座に振り込むとか、厚生年金保険を日本で継続しておかないといけないとか、いろいろ背後事情もありますが。

     

  • こんどの2013年会社法では、公開会社・非公開会社を問わず、報酬額規制が適用され、原則としてインド政府の承認を取らないといけないのですが、承認取得を要するのは一定額以上の場合だけとされていますので、殆どのケース承認不要になるのではないでしょうか。但し、役員就任前のインドでの居住条件も、公開・非公開会社に両方に適用されるようになりましたので、こちらは政府承認を取得せざるを得なくなりましたね(Section 196 &197 Schedule V Part Iに、取締役の資格として法令違反で判決を受けていない者、21歳以上・70歳未満の者& 居住者であること等を規定があり、Part IIに報酬額規制の詳細があります)

 

 

  • 報酬額規制は、①利益の出ている会社と利益の無い会社、②公開会社なのか非公開会社なのかという切り口で捉えられています。会社法のChapter XIII Appointment and Remuneration of Managerial Personnel Section196以下に規定されています。

     

    • Public Companyの場合は、全取締役(非常勤込み)の報酬額は、当該期の純利益の11%を越えないとされています。Net profitであってgross profitから差し引いてはならないとし、さらにその計算方法まで規定されています(198条以下)。また更に11%以下であっても、常勤取締役(Managing Director, whole-time director等)一人の報酬額は5%以下であり、常勤取締役全員の報酬額は10%以下とするとしています。非常勤取締役への報酬額は1%以下とされています。

       

    • Shedule V Part II Section IIには、利益の無い会社の取締役報酬規制が規定され、(A)(B)いずれか以下限度を超えないときは政府承認不要としています(not exceeding the higher of the limits under (A) or (B)ですが、 (B)は、新設現地法人への取締役就任には関係ないので、以下では(A)のみ記載)

      (Crore=Rp1000,Lakhs=Rp10. Less than a year=Pro rata. 総会特別決議で承認された場合は、2倍までOK)

       

      Effective Capital Yearly Max Remuneration

  1.  Negative or less than 5 crores 30 lakhs

  2. 5 ? 100 42

  3. 100-250 60

  4. 250 corores and above 60 + 0.01 of effective capital in excess of Rs.250 crores

 

 

上記の条件:(i) 指名報酬委員会のある上場企業では、その委員会承認と取締役会決議

(ii) 指名前年度に、金銭債務の支払不履行のないこと。

(iii) 3年超ではない期間の報酬支払いであり、総会特別決議承認を得ること。

(iv) 一定事項(省略)を記載した総会招集通知がなされていること。

 

  • この次のSection (=Schedule V Part II Section III)では、新設会社(7年以内)や更正会社の場合は上記限度額を超えて支払い可能としていますが、同時に厳しい開示条件等もあり、これを守るのは難しいので、Section IIIの適用はあきらめた方が良いでしょう(他の会社から報酬を受けとってはいけないという条件があり、出向元企業が、現地での報酬との差額を負担して日本で払っている場合等です)。

     

  • 上記のSection II & IIIの報酬額は、以下を除外できるという規定がSection IVに定められています。- 厚生年金(Provident Fund contribution)保険料、任期終了時の有給休暇の買取。更に、外国人(expatriate)の場合は、子供教育手当、外国在子供教育の休暇手当、海外休暇手当(home countryへのleave travel concession)等を除外してよいとしていますが、上限や、飛行機はEconomyだとかいろいろ制限が課されていますので、詳細をチェックしたい方は、会社法原文をご覧下さい。

     

  • 報酬額は、Auditor or Secretarycertify して且つ会社登記局(Registrar)への報告書中の記載事項でfiling しなければならないことになっています。

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50-50合弁会社の問題点

2014-03-29 15:47:01 | 商事法務

 

○ よく2社が組んで、50%-50%の合弁企業を設立し事業を開始します。合弁契約の内容としては、出資比率50-50のみならず、取締役派遣人数も例えば、双方とも2人同数計4人指名できると定めます。この場合の問題点として、意思決定がスムーズに行いませんし、事業の推進に不都合が生じます。「双方が、そのノウハウ・技術・人材・資金を対等に出資して、協力して合弁会社を起こして、大きな事業を育てよう」ということは、総論としては良いでしょうが、各論はうまくいかないケースが非常に多いですね。結婚と一緒ですね。創業は易く守成は難しですね。

 

例えば、A社は合弁会社の会長、B社は社長を指名できると決めます。これは、会長・社長は普通一人だからですね。名前は、会長・社長ですが、総理大臣とか社長を2名選出したらどうでしょうか?(会社法上はできますね。定款に、当社は社長を2名選出すると記載すればですね)会社は動きませんね。そういった事が、現実に起こっています。

 

○ 経営支配とは、人(派遣役員・技術者等)、物(提供技術・原料供給/販売先・ノ ウハウ)、及び金(出資金、融資/保証金額)によりなされます。お金だけで考えるべきものではないですね。しかし、お金が重要な決定要素ということで、連結会計基準(227項)では、まずお金で取得する株式の議決権の基準で考えますね。即ち、「議決権の過半数を自己の計算において所有している企業」を連結対象子会社にします。では、50-50の場合は、例外はありますが、基本的には合弁会社は、両方の株主にとり持分法適用会社となり、連結子会社とはなりません。これまた中途半端ですね。 

○ 50-50合弁の場合、Deadlock 条項をどの様に書けば良いか悩みますね。いい解決方法が無いからです。企業が組織的に動くには、指揮官が必要ですが、指揮官が2人居れば、うまく動かないのは常識なのに、50-50合弁を作ってしまうのですね。私に言わせれば、合弁を作るときにハッキリどちらが主導権を握るか(どちらが過半数の議決権を握るか)、きっちり決めて作ること。50-50で、双方が譲歩しないなら、そんな合弁は作らないぐらいでないといけないと思います。大体、上がお互い握手してなあなあで作った後に、いろいろ深刻な問題が出てきて、下が苦労するのが多いですね。

○ 合弁会社の取締役会等がDeadlockに直面したときの解決方法については、2013.5.12の「合弁契約のDeadlock条項」をご参照下さい。欧米の契約では、持株全部を買うか・売るかというドラスティックな方法が多いですが、もっと中間的な方法があってもよいのではと考えています。また、Deadlockを生じさせる問題には、深刻度・程度の差があります。そういった視点から、いくつかのステップを合弁契約に書いておくのも手だと考えています。

・問題点としては、合弁会社の存続に重大な影響を及ぼす事項かどうか?この場合なら、Yes/Noをハッキリさせる、即ち合弁解消の方法を入れることだと思います。

しかし、それ程重大な問題でない場合には、持株の一部買取・売却のcall optionput option条項を記載しておき、特別決議を可決出来ない議決権比率への調整ぐらいでいいのではないかと思います。

あるいは、特別決議を可決できる持株の売却・買取オプションを入れておいてもいいですね。

外国では、議長にCasting Voteできる権利を与える方法もあります。当事者が話し合っておれば、いたずらに時間が過ぎます。これなら手っ取り早い方法ではないでしょうか?

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英文契約に見られるおかしな条項

2014-03-15 22:36:05 | 商事法務

 

  • 英文契約には、一般的によく入れる条項があります。以下等ですね。

    Jurisdiction, Arbitration, Assignment, Breach, Termination, Cancellation, Confidentiality, Force Majeure, Governing Law, Heading, Language, Modification, Entire Agreement, Notice, Severability, Waiver等です。これら一般条項の解説をしているセミナー等も開かれています。英文契約を作成するときに、コピー&ペーストで、過去の例をあまり考えもせず持ってきたりしている例を見ます。これらの中で、時々見かけるおかしな例を2-3あげて見ましょう。

     

  • Termination

    If either party (“defaulting party”) should be dissolved, liquidated or become insolvent or make arrangement with the creditor, the other party shall be entitled to terminate this Agreement forthwith without giving any notice to the defaulting party. ? という条項がありました。通知無しに契約解除できるということですね。でも、通知ぐらいしないと、契約が解除されたか相手方にわからないでしょ。

     

  • Notice:

    All notices and other communications which shall or may be given under this Agreement shall be made in English Language by registered airmail or telefax.--記載した契約のやり取りをE-mail送ってきた会社がありました。

    E-mailと書いて欲しいですね。勿論、法律上の通知等は、registered airmailとすべきかもしれませんが。あるいは、courierでも良いですね。

     

  • LanguageEnglish等と入れる場合:

 

This Agreement shall be executed in English, and such English text shall prevail over any translation thereof.まあ、こういった条項を入れてはいけないという事も無いですけど、あまり意味が無いですね。勿論、少し意味ある場合もあります。仲裁地をフランスパリや中国上海で行う場合、仲裁は英語で行うという条項ぐらいは少しは意味があるかもしれません。

 

  • Assignment:

    簡単な例文としては以下ですね。 None of the parties shall have the right to assign any of its rights or liabilities under this Agreement or this Agreement to any third party without the prior written consent of the other party.この条項は良く見ますね。でも、合弁契約でグループ企業間等で起こる例はありますが、普通の取引契約ではあまりありませんし、仮に行う必要が出てきたときに合意の下に行えば良いですから、あまり意味のある条項ではないですね。親子間の例外を規定するなら、以下のように追加しておけば良いことですね。However, the parties hereto shall be entitled to assign this Agreement to any of its wholly-owned subsidiaries subject to the consent of the other party

     

 

  • NDA(Confidentiality Agreement/Secrecy Agreement)Assignment条項を入れている例を見ます。秘密保持契約に基づき相手に秘密情報を開始します。それに基づき技術情報などをDVD等に格納して開示します。NDAAssign 条項は意味が無いです。契約に基づき開示された情報をAssignする第三者に開示するかどうかが問題なのです。私はNDA契約にはAssignmentの条項は入れません。

  • 契約の性質によっては、Prohibition of Assignment and sub-licensing等と明記すべきですね。一般条項といっても、例文をそのまま持ってきてはいけないのです

  •  

 

  • 弁護士さんに英文契約書の作成を頼むと、彼らのデータベースからcopy & pasteして、不要な条項を入れて増やします(+請求金額も増えます)。また交渉まで弁護士さんにお願いすると、双方の弁護士同士、めったに使用しない条項の枝葉末節の議論を延々として、ちゃりんちゃりんと報酬を増やすことがあります。弁護士さんをきちんとコントロールしておかないと、いい鴨になりかねませんね。

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新興国との技術支援・ライセンス契約

2014-03-02 18:33:33 | 商事法務

 

  • 新興国に進出する場合、新興国企業と合弁会社を設立し、その会社にノウハウ移植の技術支援契約や特許等のライセンス契約を締結する場合があります。一般的に契約は自由と考えても良いでしょうが、注意点としては、(a)中国の場合は「技術輸出入管理条例」その他の法令で規制されている。その他の国でも(b)ライセンス料の支払いについて租税条約通りの限度税率適用の際には、受領する日本の親会社自身の現地国での登録が必要等の規制がある場合がありますのでチェックが必要ですね。

 

 

 

  • 中国企業への技術輸出の注意点は、Jetroが解説を出していますが、注意点を列挙すると、技術輸出入管理条例(強行規定)では、中国への輸入禁止、輸入制限、輸入自由技術を分類し、輸入制限技術の場合は契約締結の前に許可申請が必要ですね。しかし、民間企業の技術の場合は、殆どが輸入自由技術です。この場合は、契約は自由に締結できますが契約登録(地方政府の知識産権局→国家知識産権局)が必要で、登録後登録証が発行されます。この登録証がないとロイヤルティの日本への送金が出来ないですね。尚、ソフトウェアライセンスの場合は国家版権局への登録になります。ソフトをライセンスする際に、暗号かける場合には、政府の許可が要りますし、許可は実際上おりません。つまり、中国では政府が内容を知る(盗む?)ことができる仕掛けになっているのですね。

 

1) ライセンス契約:①独占的実施許諾(ライセンサーも実施できない)、②排他的実施許諾(ライセンシーとライセンサーのみ実施OK)、③普通実施許諾の3種類(日本は、①の専用実施権と③の通常実施権の2種類)

 

2) ライセンサーは、技術供与の正当な権限を有し、供与技術は完全で瑕疵が無く、技術目標を達成できることを保証する。(ソフトウェアはバグがあっても勿論OK

 

3) 改良技術のグラントバックの禁止(ライセンシーに帰属し、共有・無償使用も禁止)、また改良技術を開発することを禁じることも出来ない。

   4) 供与技術の類似技術を第三者から供与を受けることを制限する規定も不当制限として認められない。 

 

 5) 技術供与により生産される製品の原材料・部品等の供給元を制限することも不当  制限とされ、また生産量・品種・販売価格を拘束することも不可。

 

 

 

  • その他の国の企業への技術支援・ライセンス契約締結については、比較的自由だと思われますが、送金にあたり契約書オリジナル等の提示を求められたり、租税条約に定める源泉徴収税の限度税率(普通は10%が多い)適用に当たっては、源泉税は当然技術提供者の所得ですので、当該国での技術提供者の税務登録、更には会社だけでなく担当役員個人の税務登録、現地での税務申告などを義務付ける(インド等)とか、移転価格の証明書を提出を求められる等、契約そのものでは無く、送金・税務で規制をかけている国がありますので、種々の手続きが必要ですね。

  • では、租税条約の限度税率ではなく、普通の税率の源泉税を支払えばどうでしょうか?これについては、日本側の法人税基本通達に規制があります。損金の額に算入できませんね。即ち、1638 (租税条約による限度税率超過税額)では、「内国法人が我が国と租税条約を締結している国に源泉のある所得を有する場合において、当該所得につき当該租税条約に定める限度税率を超える税率により外国法人税を課されたときは、当該外国法人税の額のうち限度税率によって計算した税額を超える部分の金額については、原則としてその還付を受けるまでは仮払金等として損金の額に算入しない」としています。

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Delaware LLC法上の役員の義務

2014-01-18 22:59:33 | 商事法務

 

 日本の会社法では、役員には善管注意義務(会社法330条により委任の規定が適用→民法644)が課されており、また忠実義務(会社法355)が課されています。最高裁は、「忠実義務は、民法644条に定める善管注意義務を敷衍し、かつ一層明確にしたもの」(どこが明確やねん!)と得意の言葉遊びで誤魔化しています。<o:p></o:p>

 

 

 米国でも同じような注意義務が取締役に課されています。模範事業会社法では、取締役はFiduciary dutyを負うと直接規定した条文は無いようですが、action not in good faithに対して責任を負うと規定しています。また、New York Business Corporation Actでは、§717 Duty of Directors (a)柱書に以下のように定めています。<o:p></o:p>

(a) A director shall perform his duties as a director, including his duties as a member of any committee of the board upon which he may serve,  in good faith and with that degree of care which an ordinarily prudent person in a like position would use under similar circumstances.  In performing his duties, a director shall be entitled to rely on information, opinions, reports or statements including financial statements and other financial data, in each case prepared or presented by:<o:p></o:p>

 

 

  では、LLCの役員(manager)の義務として、同様な注意義務を負うのでしょうか? 

New York Limited Liability Company Lawでは、§ 409. Duties of managers.として以下のように規定しています。

  (a) A manager shall perform his or her duties as a manager, including his or her duties as a member of any class of managers, in good faith and with that degree of care that an ordinarily prudent person in a like position would use under similar circumstances.

要するに、会社法と同じ義務がLLCの役員に課されています。<o:p></o:p>

 

 では、企業が良く使うDelawareLLC Actでは、Managerの責任はどのように規定しているのでしょうか?

Subchapter XI. Miscellaneous §18-1101. Construction and application of chapter and limited liability company agreementには以下の規定があります。<o:p></o:p>

(d) Unless otherwise provided in a limited liability company agreement, a member or manager or other person shall not be liable to a limited liability company or to another member or manager or to another person that is a party to or is otherwise bound by a limited liability company agreement for breach of fiduciary duty for the member's or manager's or other person's good faith reliance.<o:p></o:p>

 

即ち、出資者(Member)Manager(役員) for the member's or manager's or other person's good faith reliance.についての信認義務違反については責任を負わなくてもよいということですね。つまり例えば自分が事業開発担当で、他に管理担当役員がおり、その人・部下等がぐるになって粉飾決算してもその責任は負わなくてもよいということです。従い、自分が悪意に基づき信認義務違反をしたときは、やはり責任は負うのではないかと私は考えています。<o:p></o:p>

 

また、同条の(a) には、以下の規定があります。 

(a) The rule that statutes in derogation of the common law are to be strictly construed shall have no application to this chapter.

「コモンローを修正した制定法は厳格に解釈されなければならないというルールは、本章には適用されない」と記載されています。実は、この箇所の意味が私にはわかりません。米国Pillsbury Winthrop Shaw Pittmanの秋山New York州弁護士は、「コモンローによって課され得る他の一切の義務にかかわらず、各構成員は、当該契約に従って行為を行う限り、何らの責任も負わないものとされている。」と米国M&A法概説(P170)で述べておられますが、やはりコモンロー上の健全な常識・良識の義務は適用されるのではないかと、私は考えています(そうでないと、やりたい放題ですよね)。<o:p></o:p>

 

 日本の企業がDelawareLLCに出資する場合は、limited liability company agreementには、米国企業会計のGAAPに従った経理を行うこと、Managerの忠実責任、役員の権限と義務等の詳細を規定する必要があるのではないでしょうか。<o:p></o:p>

 

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米国州外会社の営業許可と州税の課税

2013-12-15 17:42:27 | 商事法務

 

 例えば、Delaware州で会社を設立しNey York州で営業活動を行う場合はどのようにすれば良いでしょうか。また営業を旨く行えば所得が発生しますが、その課税等はどうなるのでしょうか? 今回は、これらのことを考えて見ましょう。

 

 州外会社の営業許可取得:これは模範事業会社法に規定されています。§ 15.03. APPLICATION FOR CERTIFICATE OF AUTHORITYですね。Certificate of Authorityが営業許可証の事ですので、この営業許可証を州務長官(Secretary of state)に申請すれば良いですね。申請に際しては、下記の(a) (1) ?(6)の事項を記載し、また(b)で設立した州から会社の存在証明書(certificate of existence)を添付しないといけませんね。

 

(a) A foreign corporation may apply for a certificate of authority to transact business in this state by delivering an application to the secretary of state for filing. The application must set forth:<o:p></o:p>

(1) the name of the foreign corporation or, if its name is unavailable for use in this state, a

corporate name that satisfies the requirements of section 15.06;

(2) the name of the state or country under whose law it is incorporated; 

(3) its date of incorporation and period of duration;

(4) the street address of its principal office;

(5) the address of its registered office in this state and the name of its registered agent at that office; and

(6) the names and usual business addresses of its current directors and officers.<o:p></o:p>

 

(b) The foreign corporation shall deliver with the completed application a certificate of existence (or a document of similar import) duly authenticated by the secretary of state or other official having custody of corporate records in the state or country under whose law it is incorporated.<o:p></o:p>

 

 

 州外会社の課税米国では法人所得税は、連邦・州のそれぞれで課税されますね。州の法人税率は州ごとで異なります。高い税率を設定している州・地方自治体もあれば、テキサスやネバダ、ワシントンといった州のように州法人所得税の存在しない州もありますが、州法人所得税が存在しない、又は税率が極端に低い州では、売上税(=州政府管轄)や固定資産税(*)、あるいはその両方が高い場合が多いとの事で注意が必要ですね。勿論、法人所得税は、その法人が、その州で稼得した所得に対してのみ課税されますね。<o:p></o:p>

*JetroWebに以下の記載がありました。

固定資産税の主な対象は、不動産や動産、無体財産に分類される。不動産はすべての州で課税(税率は様々)されるが、動産と無体財産については州によって大きく異なり、機械や装置、線路や電塔に課税する州もあれば、動産や公益施設には課税しない州もある。固定資産税は、市場価値に税率を掛けて四半期ごとに徴収される場合が多い。

<o:p></o:p>

Dsc00759

 

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米国のLLCについて

2013-12-07 11:44:37 | 商事法務

 

 米国のLLCについては、キチンと理解していなかったので、ちょっと勉強しました。これについては、改訂統一LLC法(Revised Uniform Limited Liability Company ActJuly 2006版)及び、会社法と同じように会社側にfriendlyで結構利用されているDelaware州のLLC(Limited Liability Company Act. Delaware州のwebに、直近版のSep.18,2013版が掲載されています)が参考になると思いますが、DelawareLLC法は、会社法と同じように頻繁に修正されており、骨格をみるには統一LLC法を見たほうが良いかもしれません。

<o:p> </o:p>

 

 LLCの特徴であるパススルー課税の選択権(法人課税を選択するか、パススルー課税を選択するか。いわゆるCheck-the-box regulation)については、LLCについてClassification Election(種類選択)をして、IRSForm8832を提出しなければなりません。これについては、IRSwebLLC部分提出の解説をしている部分を参照してください。尚、Form8832は、連邦税のことですので州税については別途調べる必要がありますね。また、日本の国税庁は、米国のLLCを外国法人として認めています。これについても該当webを参照してください。<o:p></o:p>

 <o:p> </o:p>

 

 LLCの特徴としてよく言われるのは、上記パススルー課税の他に、法人格を保有・出資者の有限責任定款自治・経営の柔軟性出資形態の自由性持分の譲渡制限存続期限の設定(当初は税法の関連で30年でしたが最近はその規制は無いようです)、原則最低2名の出資者等ですね。出資については現物出資がされる例も多いようです。また分配も原則は出資割合ですが、理由があれば自由に定める(例えば、出資は少しだが、特殊才能ある人により事業が成り立っている場合は、その人への配分を多くする)こともできます。<o:p></o:p>

 

 

 現物出資について、IRSの規制では、含み益ある資産を会社に出資する場合は、資産と株式との交換取引と看做され、市場価値と簿価との差額が出資者の売却益として課税されますが、議決権株式・それ以外の株式とも80%以上取得し、当事者が損益取引と認識しない(資本取引として経理処理。)すれば、簿価―簿価で資本取引(つまり課税の繰り延べ)が出来ます。会社の場合は80%ですが、LLCの場合は、それ以下の持分比率でも簿価-簿価でやっているようですが、このへんのIRSの規定がどうなっているのか、知っている人がおれば教えて下さい。<o:p></o:p>

 

<o:p> </o:p>

 LLCでは、株式会社と異なり、例えば出資者=社員をMemberと呼びます。いくつかのKey Wordを、DelawareLLC Act§ 18-101. Definitions. から引用してみましょう。また、Delaware LLCの場合は、会社法と同じように、実質上の本社は、他の州において形式的に、Registered OfficeRegistered AgentDelaware州におきます。<o:p></o:p>

 

 

1) 設立証明書"Certificate of formation" means the certificate referred to in § 18-201 of this title, and the certificate as amended.<o:p></o:p>

 

2) 出資"Contribution" means any cash, property, services rendered or a promissory note or other obligation to contribute cash or property or to perform services, which a person contributes to a limited liability company in the person's capacity as a member.<o:p></o:p>

 

3) 出資者間契約"Limited liability company agreement" means any agreement (whether referred to as a limited liability company agreement, operating agreement or otherwise), written, oral or implied, of the member or members as to the affairs of a limited liability company and the conduct of its business. A member or manager of a limited liability company or an assignee of a limited liability company interest is bound by the limited liability company agreement whether or not the member or manager or assignee executes the limited liability company agreement.<o:p></o:p>

 

4) 役員(マネジャー)"Manager" means a person who is named as a manager of a limited liability company in, or designated as a manager of a limited liability company pursuant to, a limited liability company agreement or similar instrument under which the limited liability company is formed.<o:p></o:p>

 

5) 出資者(社員)"Member" means a person who is admitted to a limited liability company as a member as provided in § 18-301 of this title.<o:p></o:p>

 

<o:p> </o:p>

また、会社名表記については§ 18-102. Name set forth in certificate.に以下のように規定されています。 

The name of each limited liability company as set forth in its certificate of formation: (1) Shall contain the words "Limited Liability Company" or the abbreviation "L.L.C." or the designation "LLC"

<o:p></o:p>

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Force Majeure (不可抗力)条項について

2013-11-24 21:36:59 | 商事法務

 

 東日本大震災や今回のフィリピンの台風により工場が被災して出荷出来なくなれば、これは誰の目にも明らかな不可抗力(acts of Godで、売主は免責ですね。民法415条(債務不履行による損害賠償) では「債務者がその債務の本旨に従った履行をしないときは、債権者は、これによって生じた損害の賠償を請求することができる。債務者の責めに帰すべき事由によって履行をすることができなくなったときも、同様とする。」ですから、履行不能になったけれども、債務者に帰責事由が無い場合には、債権者は損害賠償請求をすることができません。<o:p></o:p>

 

 

 UCCでも規定されています。§ 2-615. Excuse by Failure of Presupposed Conditions.

Except so far as a seller may have assumed a greater obligation and subject to the preceding section on substituted performance:<o:p></o:p>

(a) Delay in delivery or non-delivery in whole or in part by a seller who complies with paragraphs (b) and (c) is not a breach of his duty under a contract for sale if performance as agreed has been made impracticable by the occurrence of a contingency the non-occurrence of which was a basic assumption on which the contract was made or by compliance in good faith with any applicable foreign or domestic governmental regulation or order whether or not it later proves to be invalid.

 

(b) Where the causes mentioned in paragraph (a) affect only a part of the seller’s capacity to perform, he must allocate production and deliveries among his customers but may at his option include regular customers not then under contract as well as his own requirements for further manufacture. He may so allocate in any manner which is fair and reasonable.

(c) The seller must notify the buyer seasonably that there will be delay or non-delivery and, when allocation is required under paragraph (b), of the estimated quota thus made available for the buyer.

  

 上記のような規定がありますが、一般的に売主に安易に不可抗力を認めると買主が不利となります。従い、履行不能が生じても法律上当然に免責が認められる場合は、非常に限定されていると言われています。<o:p></o:p>

 

 

 ではどうすれば良いのでしょうか?それは、契約書に出来るだけ多くの例を挙げて不可抗力条項を入れておくことですね。そうすれば、法律で認められている範囲を超えて、契約で不可抗力を認めてもらえる場合も多いと思います。例えば、ポピュラーな不可抗力条項は以下ぐらいではないでしょうか。
 
Either party shall not be liable to the other party for failure or delay in the performance of any of its obligations under this Agreement for the time and to the extent such failure or delay is caused by riot, civil commotions, wars, hostilities between nations, governmental laws, orders or regulations, embargoes, actions by the government or any agency thereof, acts of God, storms, fires, accidents, strikes, sabotages, explosions, or other similar contingencies beyond the reasonable control of the respective parties.<o:p></o:p>

 

 

 最後に同種のother similar contingenciesと書いています。この部分の解釈則は、前者と同種・同類のもののみに限定すべきという解釈則が働きます。従い異種類のものは不可抗力から除外されるので注意が必要ですね。この同類解釈則のことをRule of ejusdem generisと言うと英米法辞典に書いていました。

<o:p></o:p>

Dsc_0290

 

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英米の契約書のCorporate Seal

2013-11-09 11:40:25 | 商事法務

○最近は、英文契約書でCorporate Seal(正式な会社印)の押捺された契約書を見なくなりましたね。M&Aの契約書等の重要契約にも押していません。仮に相手が押捺してきても、日本側では会社印は普通は押しませんね。こういう場合は、日本側では会社印(角印・社判)ではなくて、代表取締役印を押せば良いと思います。代表印なら、代表取締役の行為であり、日本では業務に関する一切の裁判上又は(=and/or)裁判外の行為をする権限がありますし、その権限に加えた制限は、善意の第三者に対抗することができませんのでね(349)<o:p></o:p>

 

<o:p> </o:p>

 

 英米では、代表取締役という機関はありませんね。会社の権能は、定款等の制限に従い、取締役会によって行使されるか、取締役会の授権に従い行使されます。模範事業会社法8.01(b)には、以下のように定めています。

(b) All corporate powers shall be exercised by or under the authority of, and the business and affairs of the corporation managed by or under the direction of, its board of directors, subject to any limitation set forth in the articles of incorporation or in an agreement authorized under section 7.32.<o:p></o:p>

 

<o:p>

</o:p>

 

 ということで、買収契約のRepresentations & Warrantiesの一つの項目として、例えば以下のようなAuthorizationの規定が入るわけですね。

The Seller has full corporate power and authority to execute and deliver this Agreement and to consummate the transactions contemplated hereby, and the execution, delivery and performance of this Agreement by the Seller has been duly authorized by all necessary corporate action of the Seller and this Agreement has constitutes the legal, valid and binding obligations of the Seller, enforceable against the Seller in accordance with its terms.

しかし、もし相手方がCorporate Sealを押してきたら、上記のような文言は不要になります(勿論入れても良いのですが)。<o:p></o:p>

 

<o:p>

</o:p>

 

 Corporate Sealを押すには、英米では取締役会の承認が必要だからですね。この会社印は、会社のOfficerであるSecretaryが管理します。Secretaryは、会社法の定める任務と責任を負いますが、この任務の一つとして、会社の行為が、法令、基本定款・付属定款に合致しているか、きちんとした手続きがなされているかをチェックし確認しなければなりません。つまり取締役会の承認を確認してから、Corporate Sealを押すことになります。Corporate Sealの押された書面は、取締役会によりauthorizeされたものという推定(presumption)を受けるわけです<o:p></o:p>

 

<o:p>

</o:p>

 

 Corporate Sealの押印といても、日本のような朱肉はありません。小豆色のろう(封蝋)をたらして、その上に刻印式のSealを押すわけですね。こんど欧米企業と重要契約を締結するときに、Corporate Sealを押してくれと言って見ては如何でしょうか?<o:p></o:p>

 

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会社法改正-子会社株式等の譲渡

2013-11-01 00:21:12 | 商事法務

 

 先のブログで、監査・監督委員会設置会社制度の創設は馬鹿げていると言いました。今回は、「親会社による子会社株式等の譲渡」についての「けち」です。法制審議会会社法制部会で決定された要綱案の該当箇所(P14)には、下記のように記載されています。<o:p></o:p>

 

 

 「株式会社は,その子会社の株式又は持分の全部又は一部の譲渡をする場合であって,次のいずれにも該当しないときは,当該譲渡がその効力を生ずる日(以下3において「効力発生日」という。)の前日までに,株主総会の特別決議によって,当該譲渡に係る契約の承認を受けなければならないものとする。<o:p></o:p>

 

  当該譲渡により譲り渡す株式又は持分の帳簿価額が当該株式会社の総資産額として法務省令で定める方法により算定される額の5分の1(これを下回る割合を定款で定めた場合にあっては,その割合)を超えないとき。<o:p></o:p>

 

② 当該株式会社が,効力発生日に,当該子会社の議決権の総数の過半数の議決権を有するとき。<o:p></o:p>

 

 

 現行会社法467条(事業譲渡等の承認等)の規定で、総資産の1/5超の資産を譲渡する場合の特別決議による承認と同じ趣旨で、企業グループ・連結で考えれば株式譲渡等でも同じではないかという事で、会社法改正に盛り込まれたものだと思います。米国の模範事業会社法でも同じような規定をおいています(§12.02)<o:p></o:p>

 

<o:p></o:p>

 

 この要綱案っておかしくないですか?「いずれにも該当しないとき」と言っています。つまり①にも②にも該当しないときという意味ですよね。①では「1/5を超えないとき」と言っていますので「該当しないとき」とは「1/5を超えるとき」ですので、これに加えて②でも該当しないときは総会特別決議が要るということですね。従い、②のケースでも①と同様に、「議決権総数の過半数を有しないとき。」と記載しないといけないと思いますね。即ち、今の「過半数の議決権を有するとき」では、「該当しないとき」は「有しないとき」ですから、10%や20%の場合に総会特別決議が必要となり、50%超の株式譲渡は特別決議不要となりますね。要綱案の書き方が「ちょんぼ」しているのでしょうか?

会社法制部会の委員には、有名大学の多くの教授、有名東京地裁判事等錚々たる人が就任しています。要綱案をきちんと読んでるんでしょうかね?<o:p></o:p>

 

 

 株式による会社支配権の移動は、事業譲渡等と違って、やはり迅速性が必要なのではないでしょうか。確かに独禁法の企業結合の事前届出制度ができて(昔は事後の株式保有報告でしたが)、一定規模以上の場合には、20%/50%超の場合には30(届出日は届出書を公取に持ち込んだ日ではないので要注意)の取得禁止期間が出来ました。子会社株式譲渡で、特別決議が必要となると、大きな企業では総会開催に2ヶ月必要ですし、迅速性が無いですね。また、会社法で定めると小さな企業集団の小さな規模の株式譲渡にも総会特別決議が必要ですね。確かに株主の意向を無視して経営陣が行う危険性はありますが、有力株主には事前説明をして、内諾を得てから行うのがビジネス界の常識ですから、わざわざ会社法で規定することもないと思います。

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 株式譲渡だと抜け道が出来るのではないでしょうか。例えば、100%子会社の売却ですね。まず50%を売却して、翌日に1株を別の会社、あるいは買収企業の関係者個人に第三者割当増資をすれば、旧親会社は50%未満になりますね。いろんな規制が出来ても、いろいろ違法ではない抜け道ができるものです。

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シビル・ローとコモン・ロー/衡平法

2013-10-19 22:24:15 | 商事法務

 

 世界各国の法体系は、英国が起源のCommon Law(英米法・判例法)とフランス・ドイツ(古くはローマ法)を起源とするCivil Law(大陸法・制定法)に分けられますね(その他に、社会主義法、イスラム法もありますが、一切知りません)。ここでは、公法(Public Law)/刑事法(Criminal Law)との対比で使われるCivil Law(民事法)ではなく、法体系としてのCivil Law等の話です。また、Civil Lawとの対比ではCommon Law (広義)と言われますが、広義のCommon Lawは、狭義のCommon LawEquity(衡平法)に分かれますね。今回は、広義のCommon LawCivil Law、及び狭義のCommon LawEquityの話です。<o:p></o:p>

 

<o:p></o:p>

 

 Civil Lawは制定法ですから法典があります。ですからわかりやすいですね。勿論法典の各条文の解釈にもいろんな解釈ができる場合がありますので、それを補うのは判例法ということになります。Common Law(広義)は判例法だと言われますが、Civil Lawとの対比で言う場合は、判例法だけでなく制定法も含めた英米法の全体を言います。この場合は判例法というと誤解を招きます。<o:p></o:p>

 

<o:p></o:p>

 

 Common Lawは、EnglandCommon Law courtが下した判決が集積してできた契約法・不法行為法・不動産法(=Civil Lawで言えば民法典のカバーされる領域)刑事法分野の判例法体系であり、その特徴は陪審審理を用いることと、民事事件では金銭賠償による救済を原則とすることでした。しかし、これでは適切な救済の与えられない場合もあり、衡平と正義の見地から救済を得て当然とするものが、国王に請願し、それが国王の下での統治作用の機関であるLord Chancellor(大法官)に送付され、これが大法官裁判所(court of Chancery)となり、陪審審理を行わず、Injunction(差止命令)やSpecific performance(特定履行)などで救済を計りました。この分野がEquityでありでは信託法が形成・発展しました。<o:p></o:p>

 

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 Common Lawの訴訟とEquityの訴訟は上記の通り別々の裁判所で取り扱われてきました、またCommon Lawは厳格な手続を採用してきたのに対し、Equityの訴訟では比較的柔軟な手続運営がされてきましたが、両方の融合が進み、現在では、両方の訴訟手続に余り違いは無いようですが、今でも、英米法の中でCommon LawEquityの違いは広く認識されており、陪審審理の有無で現実的な違いが生じています。<o:p></o:p>

 

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 米国も、英国からCommon LawEquityを承継しましたが、現在では、連邦裁判所及び大半の州(デラウェア州を除く)で、Common Law訴訟とEquity訴訟の手続は統一されていますが、陪審審理が認められるかという点で、まだ違いが残っているようです。デラウェアの大法官裁判所(Equity裁判所)では、会社、信託、不動産、契約等の訴訟を管轄しています。<o:p></o:p>

 

<o:p> </o:p> 

 Common Lawは判例法と言われていますが、判例法が確立しているのは上記の通り民事法では民法の分野です。従い、英米には日本の民法典に類するものはありません。しかし、商法典等はあります(統一商法典・会社法等)。だから、判例法の国だからといって、法典のある分野は当然法典優先ですね。つまりこの点は英米法も大陸法も同じなのですね。

<o:p></o:p>

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