まさるのビジネス雑記帳

勉強ノート代わりに書いています。

取締役・監査役選任権付株式について

2009-01-27 11:51:59 | 商事法務

     会社法108条には、異なる種類の株式についての規定があります。1項3号には議決権行使条項付株式、即ち、株主総会において議決権を行使することができる事項について異なる定めのある種類の株式を発行できると規定されています。また、9号には、取締役・監査役(=役員)選任権付株式、即ち、当該種類の株式の種類株主を構成員とする種類株主総会において取締役又は監査役を選任する定めの株式を発行できると規定されています。

     3号と9号は、あたかも別の種類の株式のような規定をしています。しかし、役員選任権付株式は、3号の議決権行使条項付株式の一つの種類と考えればいいですね。行使条項付株式の議決権の内容を、役員選任権にすれば間に合うことです。9号を規定する意味は殆どありません。これは、9号については、委員会設置会社及び公開会社は、役員選任権付株式は発行できない事を規定する為に、わざわざ設けたのだろうと思います。委員会設置会社は、当然指名委員会がありますし、公開会社については所有と経営の分離ということで、特定の株主に選任権を与えるのが不適切と考えたためだろうと思います。(他に、4号の譲渡制限株式については、単に株式の属性であるのに、種類株式であるかのような規定の仕方は、全くおかしい事は既に別のところで述べました)

     役員選任権付株式は、ベンチャーキャピタル(VC)等が、自己の利益の確保を狙って取締役を派遣する為に米国で発達しました。創業者等が議決権の過半数等を有しており、優良ベンチャーなので、なんとか株式を取得したいが、取得価額が高くて持株比率とリスクを上げられないVCとの力関係で、せめて取締役を派遣したいVCと、業界でベンチャー企業育成の実績ある人なら受入れる会社との間の妥協の産物ですね。もっとも米国の株主総会の決議事項は、通常は取締役選任だけで、剰余金の分配は取締役会決議事項ですから、取締役を派遣すれば、剰余金の分配でもその会社内で圧力をかけることが出来るわけですね。

     合弁企業やベンチャー企業等で、この種類株式の株主の利益を代弁してくれる者を必ず選任したい場合に発行される場合が考えられると言われています。少数株主の利益を守るための規定です。議決権の過半数をもっている多数派株主は、その有する議決権行使で役員を選任できますからね。合弁契約で、役員の指名は出資比率に応じて行い、指名された役員が選任されるように議決権を行使する旨の条項を入れますが、これを制度的に株式の内容として取り込んだものです。

     役員選任権付株式を多数の株主に発行すると、普通株と同じようになりますね。この株式は、特定少数者に向けてしか発行出来ないですね。例えば創業者一族等に限定して、この種類株主は取締役3名選任、普通株主は2名選任ということになるのでしょう。あるいは、創業者に1株だけ発行しても良いわけですね。

     例えば、資本金5億円 (払込額全額資本金の場合)発行価額5万円/ 1万株発行のときに、A社:創業者B80%:20%とするときは、1万株を同種の株式にしてそれぞれ引き受け、創業者Bに役員選任権付株式を1株発行すればいい訳ですね。

―この種の株式の株価はどのように算定すればよいのでしょうか。よくわかりませんね。

まあ、この種の種類株式の趣旨は理解しますが、実際の発行(定款の規定)とその後の会社の運営(種類株主総会等)の手間が必要な株式だと思います。創業社長が自分を追い出されないように発行するのも手だとは思います。創業者一族で役員の過半数を選任できるような種類株式を発行すればいい訳ですね。でも多額の出資をしているのに経営支配権を握れないというのも資本多数決の原理に反しています。この種類の株式も、米国のものまねですかね。これが実務でどれだけ利用価値があるのか、よくわかりませんね。

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開業準備行為・設立費用の規定は不備

2009-01-20 00:08:57 | 商事法務

     開業準備行為・設立費用と効果帰属(法28条)については、以下のブログを参照して下さい。今回は、実際上会社を作るときの業務を想定して、法28条の問題を考えて見たいと思います。

   

http://blog.goo.ne.jp/masaru320/d/20080602

     28条は、開業準備行為・設立に関する費用等に関して規定しています。一号=現物出資、二号=財産引受(会社成立後に譲り受ける財産・価額・譲渡人の氏名等を記載・記録)、三号=発起人の報酬等、四号=会社の負担する設立に関する費用について、定款に記載・記録しないと効力を生じないとしています。但し、四号では例外を設けており、定款に記載・記録しなくても、定款認証手数料と施行令5条記載の費用(定款の印紙税・銀行手数料・検査役報酬・登録免許税)は、新会社の費用とすることができるとしています。即ちこれら費用は、発起人が負担しても新会社が成立したときに新会社に請求できますね。発起人側では立替金として処理しますね。法人税基本通達(2-6-2=法人の設立期間中の損益の帰属)でも、これらの費用は新会社の損金として処理することを認めています。また、事後設立の規定(4671項五号)=成立後2年以内におけるその成立前から存在する財産であってその事業のために継続して使用するものの取得で純資産の1/5超の金額の場合は総会特別決議が必要との規定も参照してください。

では、以下のようなものは、どの様に考えればよいのでしょうか?

新会社で事業が速やかに立ち上がるように、発起人がサーバーを購入しソフトウェアを開発している場合。

発起人が、新会社のオフィスを探索し貸主との間で、会社が出来たらその会社のオフィスとして使用する旨を貸主に明示して、貸室賃貸借契約を契約上の地位を会社が出来たら移転する旨を相手に合意して、自ら締結した場合。(場所が決まらなければ新会社の設立登記も出来ないですよね。最近は借主の方が強いので、新会社が出来るまで暫くは待ってくれますけどね)同じ事は、オフィスの什器備品にも当てはまりますが、これは大抵業者が待ってくれます。

新会社の代表印・取引印等の印鑑調整費用等。設立登記に必要な、払込証明書・資本金の額の計上に関する設立時代表取締役の証明書・委任状には、登記所に届け出るべき印鑑を押捺しますね。施行令5条には記載がないですね。なんでやねん?法務省の人は自分で会社作ったこと無いですからね!その他細かいこと言えば、個人の印鑑証明入手の際の手数料、設立登記申請の用紙代、コピー代、登記所に行く交通費とかいろいろあります。

設立登記申請を司法書士に依頼したとき、司法書士の業務は会社成立の日前に大半が完了します。司法書士に手数料を支払わなければなりません。

     会社を作るときは、ビジネスモデルを構想して、顧客・取引先候補にあたり、具体的に立ち上げ方法を検討し、人員・設備を含む事業計画を策定します。事業計画は、社内の意思決定機関で承認されて具体的に動き始めます。順序としては、会社設立伺いの承認、会社名決定、役員人事決定、本店所在地決定、定款作成、登記申請書類の作成、登記、登記完了、銀行口座開設、税務署等への届出等と進んでいきます。登記申請では、当然本店所在地が確定していないとできません。人気のオフィスなどは、すぐに賃貸借契約を締結して、保証金を差し入れ押さえておかないといけません。これと平行して、取引先との契約、社内規則作成、社会・労働保険のアレンジ、従業員の雇用、就業規則作成届出等を同時に行います。

     発起人が行い、新会社に効果が帰属する開業準備行為は、法28によれば財産引受のみですが、効果帰属させるには、a)定款に記載・記録、b)発起人が新会社の為に行う契約である事(顕名主義)、c)発起人に新会社に効果帰属させる権限があること、d)契約が有効であることの4つですね。 でも、財産引受は、原則が検査役の調査が必要ですね(かなり簡便化されましたけどね)。こんな邪魔くさいこと出来ませんね。実際は、(H2年の商法改悪で導入された検査役の調査もなくなりましたので)事後設立で行えば良いですね。

     開業準備行為と言っても、何時から始まるのか、発起人側の業務もあるし切り分けも難しい場合も多い、顕名主義と言っても、新会社の為にとは言えるも、会社名も所在地も未定の段階もありますね。設立期間中の開始時点も実際は難しいですね。あえて言えば雛形の定款を手に入れて、会社名(事前に決めている場合もあるが)、目的等を検討し始めた時点でしょうか?

     では、上記①―④までをどの様に考えれば良いのでしょうか?①については、新会社は事後設立で発起人から取得、②については、契約上の地位の移転・承継等、③④については、施行令5条は限定列挙で規定していますが、まあ、数万-十数万円の印鑑調整費・司法書士手数料等を設立費用としても(頭がりがりのおっさん以外は)誰も文句は言わないでしょう。発起人が立替費用としておいて新会社から回収すれば良いですね。新会社側で費用計上(税務上も損金処理)ですね。しかし、会社法をかなり厳密に遵守するなら、まあ発起人に負担させて、「ありがと」と言って負担してもらう事ですね。

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のれんは償却資産としておく事が妥当

2009-01-13 09:50:38 | M&A

     企業再編(税制適格の持分プーリング法の適用の場合を除く)の際などに計上するのれん(暖簾)について、現在の日本の会計基準では償却資産になっていますが、米国会計基準や国際会計基準では、毎年の減損テストはしますが非償却資産となっていますね。2008.12.26に企業会計基準委員会が「企業結合に関する会計基準」の改正を公表しました。①持分プーリング法は廃止(10.4以降の事業年度から。09.4以降から早期適用可)②負ののれんは、買収した期の特別利益に一括計上としています。しかし、「のれんは、資産に計上し、20年以内のその効果が及ぶ期間にわたって、定額法その他の合理的な方法により規則的に償却する」としており、償却資産としています。私は、妥当な考え方だと思います。

     のれんとは、「ブランド・ノウハウ・取引先関係・従業員の能力等が有機的一体となって収益を生む、当該企業・事業が持つ無形の財産的価値」ですね。尚、税法では定義をしていませんが、一応平均利益金額を上回る「超過収益力」という考え方を取っているようです。(評価・計算については相続税財産評価基本通達の165/166ご参照。持続年数は10年としていますね。)

     のれんをなぜ償却資産としたかについては、「企業結合に関する会計基準」の28/29ページに解説されていますので、詳細はそちらをご覧ください。買収したのれんの価値が永続的に続くことなどありえないですよね。例えば、分かりやすい例として、「マクドナルド」「モスバーガー」「コカコーラ」を買収しても、買収後も継続的にマーケティング・広告宣伝を行ってブランドを維持しなければなりません。買収時点ののれんは、徐々に減価するのです。費用をかけて維持しても、それは計上出来ない自己創設のれんに入れ替わるわけですね。非償却資産とすると、自己創設のれんの資産計上となって不適切ですね。

-   ゼロから新しいブランドを作る場合とか、買収とともにブランドを変えれば大変なコスト・労力・時間がかかります。モスバーガーを買収した日から、もし名前を「ブスバーガー」に変えたら売上は大打撃ですよね。同じ事は、顧客リスト、取引先関係についても言えます。百貨店のクレジットカード等は、会員に絶えず5倍ポイント等のメールを送ってきますよね。

     のれんは、コストをかけて維持・増進するから価値を発揮します。買収時点ののれんは減価します。その減価パターンは合理的に予測可能ではありませんので、継続的に減価する=償却するというのが良いと思います。減損テストしていきなり減損というのは、全くおかしな考え方です。のれんの価値は、外部環境、内部環境、その管理・維持の手抜かりにより徐々に低下します。突然落ちるわけではありません。毎年減損テストをして、毎年少しずつ減損する場合もありますが、これでは恣意がはいりますので、毎年一定のルールで償却するのが合理的です。

     GCAサヴィアングループの渡辺代表取締役は、2009.1.5日経新聞の自社の広告の中で、償却法を継続する姿勢について、「のれんを償却することはM&A実務でみると全く実態を反映しておらずナンセンスだ」と言っていますが、その根拠については記載されていません。勿論買収会社にとってみれば、利益減少要因である償却はしないほうが、短期的にはよいかもしれません。しかし減損会計で一挙に多額の償却するケースもあるでしょう。全く一方的な見方ですね。米国会計基準でも、昔は最長40年の償却資産でした(税法上の損金としては認められなかった)。なぜ、どういった根拠で変更したのか、私は知りません。M&Aの障害になるからでしょうか?

     買収価額の決め方には種々の方法がありますが、要するに

時価ベース純資産 +のれん = 買収価額

    のれんを、昔の日本の算定方法で、例えば、純利益の5年分(過去2年+今年の予定利益+来年以降2年間の予想利益)とした場合、買収すれば当然相互補完・相乗効果が期待できます。この買収効果を見込めば、5年分の利益をのれんとして負担しても、3年ぐらいから買収会社は利益計上できます。それだけ、慎重なM&Aが出来ます。M&Aは、約6割が失敗と言われています。安易な買収と高い買収価額が問題なのです。M&Aのアドバイザーは、買収後の経営に責任等持ちません。報酬を得ればそれでさようならです。買収後に、一番重要な経営が始まります。償却資産とした場合は、安易なM&Aの防止という効果も期待できます。

○ 私は、のれんは国際会計基準や米国会計基準の真似をせず、償却資産のままとすべきだと思います。注記で、のれんを償却しない場合の効果・影響額を記載すれば良いのではないでしょうか。

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株式譲渡契約の会計上の認識について

2009-01-06 13:48:19 | 株式関連

     このブログでは、頻繁に会社法にクレームをつけていますが、今回はちょっと趣き(?)を変えて、「有価証券の売買契約の認識」について、日本公認会計士協会の定める金融商品会計実務指針#22についての「けち」です。この実務指針では、以下の様に定めています。

有価証券の売買契約については、約定日から受渡日までの期間が市場の規則又は慣行に従った通常の期間である場合、売買約定日に買手は有価証券の発生を認識し、売手は有価証券の消滅の認識を行う。ただし、約定日基準に代えて保有目的区分ごとに買手は約定日から受渡日までの時価の変動のみを認識し、また、売手は売却損益のみを約定日に認識する修正受渡日基準によることができる。約定日から受渡日までの期間が通常の期間よりも長い場合、売買契約は先渡契約であり、買手も売手も約定日に当該先渡契約による権利義務の発生を認識する。」

     結論を先に言いますと、上場株券についてはこの処理方法でも構いませんが、未上場企業の株式譲渡については、全くおかしな処理方法ですね。未上場企業の株式譲渡については、契約締結日ではなく、(a) 株券発行会社は、株式譲渡の効力発生要件である株券を交付する日を会計上の譲渡の日とし、また(b) 株券不発行会社の場合は、当事者の定める株式譲渡の日を、会計上譲渡を認識すべき日としないとおかしいと思います。

     株式譲渡の方法は以下ですね。

① 上場株券の株式譲渡:15日に株券電子化(株式等振替制度)により上場株券の株券は無効・廃止されました。「振替株式」になったわけですね。従い、譲渡等の効力は、譲受人の証券会社の口座に、株式数の増加の記載・記録がなされることにより、その効力が生じます。従来の処理は、以下ですね。株式の買い注文が成立(=約定)した場合、原則として購入が成立した日から通常4営業日目(約定日を含みます。T4と言われます)に受け渡しがされます。即ち株券が譲渡され代金が支払われます。個人の場合等は、原則として、買付注文に際して買付代金の事前に預けます。

② 未上場企業の株式譲渡

-1 株券不発行会社の株式譲渡:株式の譲渡は意思表示で効力が生じると解されています。

-2 株券発行会社の株式譲渡:法128条①②の規定は以下です。

1株券発行会社の株式の譲渡は、当該株式に係る株券を交付しなければ、その効力を生じない。ただし、自己株式の処分による株式の譲渡については、この限りでない。

2項 株券の発行前にした譲渡は、株券発行会社に対し、その効力を生じない。

     企業会計は、発生主義・実現主義により認識しますね。発生主義とは、現金を支出した時点でコストを認識するのではなく、経済的事実が発生した時点において認識するという考え方ですね。また実現主義とは、収益を実現の時点で認識するという基準です。

○ 売買当事者の認識はどういったものでしょうか?

  上場株券の場合は、約定日に売買契約が実行された、受け渡しはその事務処理だという認識が一般的ではないでしょうか。特に個人等の場合は、証券会社に事前に購入代金を預けておかないと買注文を出せませんしね。従い、実務指針22通りの経理処理でもよいと思います。

② 未上場株式の売買の場合の当事者の認識はどういったものでしょうか?

-         株券発行会社の場合は、株券の交付が効力発生要件と会社法に規定されていますが、当事者の常識として、株券も渡さずに株式譲渡をしたとは思わないでしょう。通常は、株券交付と株金とは同時履行ですよね。事情があって株金の支払が事後になる場合もあるかもしれませんが、株券交付とともに、買主は代金支払義務を負うことになります。従い、株券の受渡を行う事によって、経済的事実が発生し、収益が実現すると認識しますね。株券の交付だけで株式売買を実行する場合もありますが、事前に株式譲渡(売買)契約を締結し、その中に譲渡株式の内容・金額・株式譲渡の日等を定める場合も多いですよね。株式譲渡契約の締結日は、経済的事実の発生した日ではありません。経済的事実の発生を予定した法律行為を行った日です。どうして、契約日(約定日)を、会計上の認識をすべき日と定めるのか、おかしいと思います。約定日に売買・受渡を実行するケースもありますが、約定日=法律行為の日の後に株式譲渡日(=経済的事実の発生日&収益実現の時点)を定める場合も多いですね。

-  株券不発行会社の場合は株式譲渡は、当事者の意思表示で効力が生じるとされています。親族間の譲渡なら契約書は要らないかもしれませんが、企業間の譲渡なら当然株式譲渡契約書を締結します。その契約書の中に株式譲渡の日を定めます。当事者が、株式譲渡の日と定めた日を会計上認識すべき日とすべきですね。

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おかしな種類株式の規定の仕方

2009-01-01 15:44:41 | 株式関連

     種類株式についての規定が会社法第二編株式会社第二章株式第一節総則の108条に規定されています。これを受けて第四節第三款・第四款(166-173)等にも規定されています。おかしな規定の仕方です。

108①各号に種類株式を規定しています。

-      I,II,IIIは、剰余金の配当、残余財産の分配、議決権行使条件付株式で、内容に差を設けることができるとしています。株式の内容ですから、内容が異なれば異なる種類だと言えますけど、他の内容と組み合わせもできますね、例えば、配当優先株にしても取得請求権等をつけて普通株への転換条項等も付けることもできます。IIIの議決権行使条件付株式を、議決権制限株式として、株主総会の全部または一部の事項について議決権を行使することができない株式であると学者等が定義しています(神田会社法7P74)。条文では「株主総会において議決権を行使することができる事項」と規定しています。「できる」と「できない」は、この場合はコインの表裏なのでそれでも良いのかもしれませんが、ちょっとひっかかります。議決権制限の制限という言葉が良くないのかもしれません。例えば、「この種類株式の株主は、309②の特別決議事項(+特殊決議)については、議決権を有する」と定めると行使できる事項を定めた事になりますね。

-          IVは、譲渡制限株式です。これは、株式の属性であり、単独で成り立ちえません。これを種類株式の一つとして構成するのは、全くおかしな話です。

-          V,VIは、取得請求権付株式、取得条項付株式ですね。これは、株式の種類と言っても、株式の内容と言ってもいいですね。従来は償還株式と言ったものですね。償還株式とか償還請求権付株式となぜ言わなかったのでしょうか。従来は、強制償還株式、義務償還株式、任意償還株式と言っていたものですね。変な用語です。

取得請求権付株式というのは、株主から見たときに会社に取得請求できる権利が付されたものですね。一方、取得条項付というのは、会社から見たときに取得できる株式ですね。V,VIでは、会社側、株主側と見方が異なります。

取得して自己株式として消却する場合、あるいは、株式の取得と引き換えに他の財産(主として他の種類の株式)に転換する旨の規定をします。株式の内容として上記のI,II,IIIの内容・性質を持たせることもできます。例えば、優先配当の優先株式を普通配当・普通の議決権を有する普通株式に転換できる場合等ですね。従来は、転換株式とか転換予約権付株式と言っていたものですね。

取得して自己株式にしても、株式の種類は変わりませんね。消却すればなくなります。転換という、一種の変身する内容を持つものもあります。

引き換えに交付する財産ということで、例えば普通株式に転換しない場合もありますので、転換株式というわかりやすいコンセプトを無くしてしまいましたね。分かりにくくしています。

-          VIIは、全部取得条項付種類株式ですね。100%減資をやりやすくするために設けられた制度趣旨とは異なり、現実的には、SPCを組成して、少数株主を排除して、その100%完全子会社化する方法として利用されていますね。

-          IIXは、拒否権付株式ですね。まあ、あっても良いかもしれませんが、IIIの議決権行使条件付株式の内容として定めることもできると思いますね。

-          IXは、取締役・監査役選解任権付株式ですね。IIIの議決権行使条件付株式の内容の一種として規定すれば足りますね。委員会設置会社及び公開会社は、この種類の株式は発行できないですけどね。

     種類株式の規定は、性質・内容、コンセプトの違い、従来の考え方との一貫性等を無視して、主な種類の株式及び株式の異なる内容を「ごちゃまぜ」にした規定です。この規定の仕方は、「なんやねん!」ですね。I&IIは、株主の権利としては自益権です。IIIは共益権という視点での規定です。IVは属性です。V,VI&VIIは、株式の種類です。IIX&IXは、IIIの議決権行使条件付株式の内容の一つです。全くおかしな規定の仕方です。もっと、考え方に筋の通った規定に変更すべきですね。その切り口としては、以下ぐらいでしょうか、この切り口に、付随的属性として譲渡制限付きか否かということではないかと思います。

1)      剰余金の配当、

2)      残余財産の分配

3)      議決権行使の範囲と内容、

4)      償還株式か否か、どちら側がその請求ができるのか

5)      転換権付きか否かと、何に転換されるのか

もうちょっとすっきりした規定に出来なかったのですかね。

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