まさるのビジネス雑記帳

勉強ノート代わりに書いています。

各国会社法の機関設計その②

2013-08-23 20:59:19 | 商事法務

 

前回の続きです。

 次はドイツですデュッセルドルフ日本商工会議所のWEBを参考にさせてもらいました。日本は100年以上前にドイツの制度を取り入れました。その後、各国の事情により別々の進化というか試行錯誤がなされ、それぞれ分化しています。

 

 ドイツでは1870年に商法ができ84年にかなりの改正が行われて、その後1937年に商法から分離され株式法として単行法化されました。しかし、株式会社は、中小企業や外国会社の現地法人(100%子会社)では使い勝手が悪いということで、有限会社が発達しました。

 

 会社法を作成・改正するときに、他国の会社法を参照するのは当たり前ですが、何時の時点のどの国の会社法を真似たか(一般的に、旧植民地は、会社法のみならずその他制度も支配国の例が多い)ということと、その後どのように発達・分化したかということで、細かに見れば各国の会社の機関設計は異なりますが、根っこをみれば、いくつかのパターンに分かれるが、根本的な考え方はあまり変わらないとも言えるのではないでしょうか?<o:p></o:p>

 

 日本はドイツ商法を真似て作成されたといいましたが、そのドイツ商法は、はっきりわかりませんが、年代順を見ればオランダの民法典や商法典を参考にしたのかもしれません。オランダ自体は、一時フランス領だったこともありフランス法の影響もありますがローマ法なども取り入れて1838年には商法典が出来ていたようです。オランダでは1928年に株式会社法として単行法化されています。オランダの法律では、閉鎖会社の株主総会の強行法的な権利として,定款変更権,取締役・監査役の選解任権,年次報告書の決定権等が規定してあるようです。英国法が、英連邦の国の会社法として取り入れられていますが、インドネシアの会社法(Board of Directorsだけではなく、監督管理機関としてのBoard of Commissioners = Commissaris(蘭)= Komisaris (インドネシア語)を設置する義務等)は、オランダ法の影響を強く受けているようです。<o:p></o:p>

 

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 ドイツの株式会社 (AktiengesellschaftAG)では、取締役(Geschaftsfuhrer)について定款で1名と定めない限り2名以上で取締役会を組成されます。監査役会(Aufsichtsrat)は常置機関でメンバーは3名以上で3の倍数で最大21名までとされています。有限会社 (Gesellschaft mit beschränkter HaftungGmbH)は、共同決定法の規制(500名以上の従業員)が適用されない限り監査役会の設置は任意ですので不要にできます。監査役会を設けなければならないときは、監査役の人数の1/3以上は従業員代表でなければならないとされているようです。また、株式会社の場合は株式(持分)の譲渡は原則自由なので、持分の譲渡を制限するときは有限会社となります。<o:p></o:p>

 

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 ドイツでは、監査役会は変遷を経て監督機関として明確になり、1937年株式法により、監査役会が必ず取締役を選任することになりました。監査役会は、適法性監査のみならず妥当性監査も行います。最近では、取締役に対する助言機能も付与され業務執行への関与を深めているようです。監査役は株主総会で選任され、解任は特別決議(3/4以上多数決)でなされ、任期は5年で、取締役との兼任は禁止されています。監査役会は、取締役業務規定を策定する権能を持っています。業務規定には、一定の行為(年次計画・投資・借り入れ等)については監査役会の同意を要する旨等が定められます。昔、ダイムラーベンツが三菱自動車への出資をめぐり、最終的に監査役会が同意せず、結局三菱グループが救済に乗り出したのは、この例ですね。監査役会は、取締役を最長5年任期で選任し、また取締役会議長を指名することもできます。監査役会は、年度決算・事業報告・利益処分案等を検査し、それらの結果及び監査役会の義務履行の状況を株主総会に報告します。また株主総会招集権等も持っています。<o:p></o:p>

 

  上記のように、ドイツでは監査役会が強い権限を有しています。日本では、まだまだ監査役・監査役会は機能していないことは周知の事実ですし、委員会設置会社もどれほど機能しているのか疑わしいいですね。日本では、社外取締役等が参加する取締役会は形式的決議の場として、実質は、社長室会・経営会議等で決まっている場合も多いでしょう。委員会設置会社を見ても、指名委員会委員を弁護士・学者等(一例:東芝の小杉氏=委員会委員長や伊丹氏等)の社外取締役が勤めていても、適切な人を指名できる筈も無く、会社の用意する案、その会社出身の委員が実質取り仕切り、説明をするだけで、社外取締役の委員は丸呑みの感じです(7/29の日経ビジネスでは、「トップ人事抗争に揺れた東芝」と記載されています)。指名委員会という形式的なお墨付き機関を作っても中身がないのです。社外取締役の活動状況は施行規則124条により事業報告書に記載される事になっていますが、同条4号ハの社外役員の意見により決定が変更された内容の事業報告など見たことありません。お金ももらえるし飾りの人が多いのでしょうね。<o:p></o:p>

 

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 会社法が期待する機能を各機関がどれだけ発揮しているか難しいですね。中国の監事のように殆ど名目的となっている例もあります。例えば、創業社長系&株主の会社では、大王製紙のように全く機能していませんでした。会社法の制度設計だけの問題ではなくて、その会社固有の事情、経営者、役員の持つべき高度の倫理観の程度、その社会の文化、風土、意識とかいろいろなものが関係しているように思います。<o:p></o:p>

 

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各国会社法の機関設計その①

2013-08-17 13:23:15 | 商事法務

 

 今回は、各国会社法に定める会社の機関設計についてです。株主(持分保有者)総会の最高意思決定機関及び会計監査人等の外部を起用する部分は除きます。ポイントは、I)戦略・方向性を含む業務執行の意思決定機関、II) 意思決定を具体的に実行する業務執行機関、及びIII)業務執行を監督・監査する機関の3つをどのように設計するかです。これは3つが分立するのではなく、相互連携して3つの機能を発揮するということ、3機関連立を効果的に行う設計をするということです。また、これら機関のメンバーの株主総会での選任方法としては3つあります。(1) 日本では、取締役・監査役は株主総会で選任されます。(2)米国では、取締役を選任し、取締役会で、監査委員会のメンバーを選任(日本の委員会設置会社も同様)し、また執行機関である役員を選任します。(3)ドイツでは、まず監査役会メンバーを選任します。監査役会メンバーが執行機関等である取締役を選任します。日本、米国、ドイツ等について述べてみましょう。<o:p></o:p>

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 まず日本は、2種類ありますね。従来型の①取締役・取締役会・代表取締役・監査役(会)と米国式を取り入れた委員会設置会社での②取締役・取締役会・委員会・代表執行役・執行役ですね。

取締役会は、上記I)とともにIII)を行う機関ですね。監督という視点から言うと取締役が他の業務執行取締役(=代表取締役・選定業務執行取締役)の監督もするという建前となっていますが、実際は財務担当役員等を除いてなかなか機能せず、主として社外取締役(独立取締役)に期待される権限&責任でしょう。委員会設置会社では、業務の基本事項(委員会メンバーの選定・執行役の選任も含む)の決定は取締役会が行いますが執行は執行役なので、取締役会の主業務は、委員会メンバー・執行役の監督であり、実際上は監査委員会が執行役・取締役の監査を行います。<o:p></o:p>

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 日本の株式会社の機関設計は、ドイツ系と米国系を合わせた二重構造ですね。日本は、各国の制度を自国に適するようにアレンジして、これを旨く昇華させるのが得意の国ですが、会社法については消化不良・ごちゃごちゃですね。梅謙次郎などによりドイツ商法を基本にして策定された商法(会社法)が1899M32)年に公布されました。その後1950(S25)年に米国の制度を取り入れ授権資本制度や取締役会法定等を定め、1990年ごろから頻繁に商法改正を行い、委員会等設置会社制度導入、そして有限会社法等も取り込み、会社法として単行法化して2005 (H17) 法律第86号として成立し、2006(H18)5月に施行されました。<o:p></o:p>

 

 

 次は米国です。各州会社法により少し違いはありますが、大体以下ではないでしょうか。取締役会、取締役会により取締役をメンバーとして組成される(取締役会の下部機関である)委員会、日常業務の執行については取締役会によって選任されるCEO等の役員が機関ですね。ただ、委員会には取締役会の授権により、意思決定を行う委員会があります。また監査は監査委員会(audit committee)によって行われます。委員会は、日本では硬直的ですが、自由に設置できます。ですから財務委員会(finance committee)もありますし、役員の業務執行を監督し併せて執行も行う執行委員会(executive committee)等もあります。会社法で詳細に規定している訳ではなく、慣行的な部分もあります。尚、NYSEでは上場の条件として社外取締役だけで構成される監査委員会設置を義務付けています。 特徴は、取締役会が全ての会社の権能(All corporate powers)を持つということ、即ち、上記のI),II)&III)とも取締役会を頂点として、その下に授権された範囲の意思決定、業務執行、監査・監督を行う組織を、会社法の範囲でかなり自由に設計できるということです。模範事業会社法8.01(b)では以下のように規定されています。<o:p></o:p>

All corporate powers shall be exercised by or under the authority of, and the business and affairs of the corporation managed by or under the direction of, its board of directors, subject to any limitation set forth in the articles of incorporation.

<o:p></o:p>

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英国法系会社法の総会出席者の頭数による決議

2013-08-10 22:32:45 | 商事法務

 

 日本の会社法308条には「株主は、株主総会において、その有する株式一株につき一個の議決権を有する。」と規定しています。出資額に応じて議決権を与えるのが公平だと考えられているためですね。ご承知のとおり資本多数決の原則です。米国各州の会社法でもそうですね。この資本多数決の原則は、株式会社(あるいは有限会社でも出資額に応じて)の世界的な基本原則と思っている人も多いと思いますが、今回は、そうではないですという話です。英国及び英連邦の国の会社法では、議決権ではなく、株主総会出席者の頭数による決議が原則のようですね。勿論、付随定款等で、頭数原則を排除して資本多数決に一般的にしていると思いますが、なぜ総会出席株主の頭数多数決が原則になったのか、その辺の事情をご存知の人がいたら教えて欲しいと思います。具体的に、英国会社法とMalaysia会社法の2つを見てみましょう。インドの会社法等も頭数が原則ですね。<o:p></o:p>

 

 

 英国会社法(Companies Act 2006) 284 Votes: general rules(2) &(3)

(2) On a vote on a resolution on a show of hands at a meeting?

(a) every member present in person has one vote, and

(b) every proxy present who has been duly appointed by a member entitled to vote on the resolution has one vote.

(3) On a vote on a resolution on a poll taken at a meeting?

(a) in the case of a company having a share capital, every member has one

vote in respect of each share or each 10 of stock held by him, and

(b) in any other case, every member has one vote.

 

法律英語というのは変ですね。柱書では、on, on,ononの連続ですね。英法では、株主はmemberと呼んでいますね。show of handsとは挙手によって決めるということです。またsharestockとを使い分けています。Stockとは1種の単元株みたいなもので、学者先生の日本語訳は「不定額面株式」とされています。尚、米国ではSharestockは同じと考えても良いと思いますが、英法系では同じものではないですね。また、日本の会社法の政府の英訳では、株式全体を示すときはStockとし個々の株式を示すときはshareとしています。<o:p></o:p>

 

 

 Malaysia Companies Act 1965 147条には以下のように規定されています。

Section 147. Quorum, chairman, voting, etc., at meetings.

(1) So far as the articles do not make other provision in that behalf and subject to section 55?

(a) two members of the company, personally present shall be a quorum;
(b) any member elected by the members present at a meeting may be chairman thereof;
(c) in the case of a company having a share capital?

(i) on a show of hands each member who is personally present and entitled to vote shall have one vote; and

(ii) on a poll each member shall have one vote in respect of each share held by him and where all or part of the share capital consists of stock or units of stock each member shall have one vote in respect of the stock or units of stock held by him which is or are or were originally equivalent to one share<o:p></o:p>

 

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中国影の銀行のリスク負担者

2013-08-01 00:17:48 | 社会・経済

 

 中国の影の銀行(シャドーバンキング)について、NHKのクローズアップ現代や日経ビジネス(722日号)などで、リスクがあるとの指摘がされています。日経ビジネスによれば、2009年末に1兆元だった理財商品の残高は、20133月末現在82000億元(約131兆円)にまで拡大したとしています。融資平台が、地方政府の指示でインフラや不動産開発を行っている。デフォールトになったときに誰が損失を負担するか不明瞭と述べています。<o:p></o:p>

 

 

 影の銀行の仕組みは以下であり、オフバランス(銀行のBS上に表示されていない)になっていると言われています。<o:p></o:p>

△個人・企業 

↑理財商品販売↓投資

△銀行・信託会社

↓投資・融資↑返済(デフォールトの可能性)

△融資平台(プラットフォーム)

↓不動産等に投資・融資↑償還・返済<o:p></o:p>

 

 

○ ○ 日経ビジネス等では、専門家のコメントが記載されていますが、肝心な点については触れられていません。なぜ銀行がお金を貸しているのにオフバランスになっているのかという点です。実は、これは銀行がお金を貸していないからなのです。<o:p></o:p>

 

・ 中国のオフバランス取引には2種類あります。信託会社が大衆向けに資産運用商品(*)を販売する信託融資と銀行が仲介を行う委託融資です。このうち資産運用(=理財)商品について、2005年には約600の販売が2010年末には約12,000まで増えたようですが、この商品は大衆向けであるところから、2010年末以降、中国銀行業監督管理委員会(=銀監会)が規制に乗り出し、急激に減少しました。従い現在は、銀行の委託融資が膨らんでメインになっていると思います。<o:p></o:p>

 

*銀信合作:商業銀行が信託会社を通じて組成された資産運用商品を顧客に販売し、その資金を不動産開発等を行っている地方政府系企業等に貸し出すこと。<o:p></o:p>

 

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 オフバランスなので銀行のBSに表示されません。しかし201012月に中国人民銀行が、「社会融資総量」規制を行い、従来把握していなかった銀行のオフバランス資産の報告義務を課し、また一部のオフバランス資産を預金準備率の積み立て範囲に含めました。

(尚、融資総量規制には、株式・債券市場を経由した資金調達を含みますが、中国では、まだこの調達は萌芽期で未発達です)。従い中国の中央銀行である中国人民銀行はオフバランス取引のボリュームもある程度把握していると思います。<o:p></o:p>

 

 

 中国では、企業が企業に融資を行うことは法律で規制されています。即ち、会社は会社に資金を貸せないのです。銀行の委託融資とは、企業が自分の資金を、銀行に委託して貸し付けるのです。銀行は、受託手数料として0.3%とか1.0%とかを乗せて企業に貸し付けますが、リスクは自分の資金を貸し付ける貸付者が負います。即ち、銀行の業務収益は受託料であって融資額ではないのです。ですからオフバランスにできるのです。<o:p></o:p>

 

 

 過去の有名な例は、広東省政府系の広東国際信託投資公司(GITIC)の破綻があります。でたらめな投資、オフバランス取引を行い、1998年に中国人民銀行の命令で閉鎖されました。資産215億元、負債363億元でした。破たん処理は、個人に対する未払金は元本返済だけ(金利は対象外)、その次は未払賃金、社会保障福祉費、税金に充当し、法人債権者には貸付元本の12.5%のみ返済。即ち、87.5%が切り捨てられたわけです。その法人債権者は外国債権者、多くが日本の銀行でした。当初、地方政府系でもあり、政府が面倒を見るという甘い見方をしていた日本の銀行は、バッサリ切り捨てられたわけです。この時期19972000年に、人民銀行により閉鎖を命じられたのは、他に中国農村発展信託投資公司、その他の投資公司等があります。当時の債権者=貸付者は外国の銀行でしたが、現在の委託融資の貸付は中国で早めに大都市で不動産業等を行い儲けた企業等かもしれません。<o:p></o:p>

 

 

 リスク負担は、一次的には余裕資金などを銀行経由委託融資している企業が負います。これが中国発金融危機に発展するかは、シャドーバンキングの実態をある程度つかんでいる人民銀行が、他山の石としての日本のバブル時代の融資、米国のサブプライムローン等の違い・状況をよく研究し、合わせて中国経済の冷え込みをきたさない様にしながら、先手先手と手を打つかどうかということになると思います。<o:p></o:p>

 

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