まさるのビジネス雑記帳

勉強ノート代わりに書いています。

米国子・孫会社の合併と買収の手法としての逆三角合併 その(3)

2020-04-05 23:49:08 | M&A
〇 今回は前回に続いて合併ですが、買収の手法としての逆三角合併について具体的なに考えて見ましょう。前提として、現金合併であり、現金は、日本の親会社から買収VehicleとしてDelawareに設立するSPCに送金とします。勿論、米国に地域統括会社(RHQ)があれば、その会社がSPCを設立して、RHQが対象会社の株主から株式取得して対価を支払うという方法もあります。

〇 契約書のタイトルは「Agreement and Plan of Merger」ですが、契約当事者が3社になります。日本の親会社(“Parent”)、親会社の100%子会社である新設の買収目的会社Merger Subsidiary(”Merger Sub”=Delaware州の会社)及び買収対象会社(the “Company”=これもDelaware州の会社)とします。この契約は、合併という手法による会社買収ですので、その内容は、 合併契約 & 買収契約の両方の内容を盛り込むことになります。買収契約の概要は、https://blog.goo.ne.jp/masaru320/m/201309 をご覧ください。また、合併契約の概要は、前回のブログを参照してください。
この契約では、買収と合併をつなぐ規定が入ります。即ち、買収のClosingとMergerの関係、対象会社の基本定款・付属定款、役員、合併の効力発生と資本金(Merger Subと対象会社の資本金)、それと対象会社=Companyの株主へ、株式と交換して買収代金支払いの規定等が入ります。この代金支払いは、Parentの指名するPaying Agent経由行う等の規定が入ります。主な規定を見てみましょう。実際は、優先株を発行していたり、Stock Optionがあったりして、いろいろな規定が入りますが、本件は普通株しか発行していない単純なケースの前提です。

〇 具体的な条文に入る前に、以下注意点です。
1) 日本の(現金)合併との違い:日本でも現金合併ができるようになりましたが、会社法749条では、「存続会社が吸収合併に際して消滅会社の株主に対してその株式に代わる金銭等を交付するときは、当該金銭等についての次に掲げる事項---」としています。即ち、存続会社の株主は、その保有株式に変更なく継続して株主です。日本では出来ませんが、米国の逆三角合併では、存続会社の株主に現金等を交付して株主としての地位を喪失してもらいます。
2) 米国では合併のスキームにより課税・非課税が決まる場合がある先にInternal Revenue Code 368(a)- Tax Free Reorganizationを指摘しました。例えば、米国にRHQがあるので、これの子会社=Merger Subを設立して行えば良いのではないかという考えが出てくるかもしれません。しかし、税法が要注意です。日本の親会社がMerger Subを設立して、合併により存続会社の既存株主保有株式をCancelし、これに代わる身代わり株式を取得する。即ち、買収対象会社を一旦日本の親会社の子会社にして、この子会社株式をRHQに現物出資することにより、Tax Free Reorganizationができる場合があります。

〇 買収資金と株式の流れはどのようになるのでしょうか?
契約当事者は、日本のParent, Merger Sub and 買収対象会社(the “Company”)の3社ですね。ですから合併契約書締結前にParentは、100%子会社のMerger Subを設立します。別に設立時は資本金US$1.00ぐらいで、簡単・ありふれた基本定款・付属定款で設立しておけば良いですね。合併のとき、即ちCompanyがParentの100%子会社になったときに、Parentの意向に沿ったCompanyの定款変更をすれば良いのですね。
- 買収資金の流れは、Parent⇒Merger Sub ⇒合併⇒Company⇒Companyの株主となります。
- Companyの株主保有株式の流れは、Companyの株主⇒Company⇒(身代わり株式が)Parentに渡り、Parentの100%子会社となります。
理論上は、合併の効力発生時ですが、実際は株券の交換等もあり時差が生じます。株券と交換でCompanyからCompanyの株主にお金(株式買取代金)が渡り、その身代わり株式がParentに渡るというわけですね。
                        (以下(4)に続く。)
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