まさるのビジネス雑記帳

勉強ノート代わりに書いています。

国境を超える株式交換・移転

2010-02-21 22:56:59 | 企業投資

  株式交換とは既存の会社が完全親会社になる手続きであり、株式移転は完全親会社になる会社を新たに設立する手続きですね。Share Exchangeですね。海外ではこういった手法は、国境を越えて頻繁に利用されていますので、今回はその話ですね。既存の会社との株式交換は、既存の会社が事業会社のケースが多いかもしれませんが、株式移転のケースは持株会社を設立するケースが多いでしょうね。即ち、持株会社を海外に作るということですね。

  具体的には、例えば、中国国内に100%子会社を有し、その会社で事業を行っているが、この会社に出資・株式取得を検討する第三者に持分や株式を譲渡する場合、中国の会社の場合は、管理監督機関に種々の書類(株式譲渡契約・申請書・各種議事録等等)を提出して許認可を取得しないといけませんし、結構手間ですね。ですから、これを避けるため、中国の100%子会社を直接保有するのではなく、香港、ケイマン、バミューダ、BVI(British Virgin Island)等に持株会社を設立しておいて、その会社に中国国内の子会社を保有させておいて、これらの持株会社の株式を新株主等に譲渡することが考えられますね。(これらの国は、いずれも租税回避地ですので日本のタックスヘイブン税制上は要注意ですね)。

  他にも例えば、香港証券取引所に上場できる企業は、中国、香港、バミューダ、ケイマンの会社ですね。ですから、本社香港で、実際の事業は中国で種々会社を持って行っている会社が、香港・あるいは米国NASDAQ等への上場を考える場合に株式移転して持株会社を設立し、その持株会社を上場させますね。バミューダの会社を持株会社にする場合は、税法上の理由で、もうひとつ中間持株会をBVIに作る例が多いですね。

即ち、持株会社(Investment Holding Company)の階層ができる訳です。

Bermuda法人(これを上場させる)→BVI→傘下香港・中国企業

となるわけですね。上場が射程距離になってきたら、BVIに親会社を作っておいて、その傘下に香港・中国企業群を置くわけですね。そしてIPO直前に株式移転でBermuda法人を作り、IPOBermuda法人で行わせ、Bermuda法人を上場会社にするわけですね。

  この辺のアレンジは、香港にはインフラが全部整っています。証券会社も慣れたものですし、法律事務所も大手なら手慣れたものです。銀行も、HSBC等がアレンジの手伝いをしてくれますからね。Bank of Bermudaとかも香港には支店がありますね。

  中国に事業拠点をお持ちの会社も、単純に日本の親会社の子会社にするのでは無く、一工夫されてはいかがでしょうか。(でも、この場合国際税務戦略がなかなかたいへんですけどね)

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債権者保護手続は見直し必要

2010-02-14 14:48:20 | 商事法務

       資本金の額の減少や、合併・会社分割(株式移転・交換は例外を除き不要)などを行うときには、ご承知の通り債権者保護手続が要求されます。資本金の額の減少の場合は、単なる純資産の金額変更ですから、それによって資産・負債の内容が変わるわけでもありませんし、債権者にとり一番重要なキャッシュフローが変化するわけでもありません。しかし、合併などの場合は、財務内容が大きく変わりますし収益力もかわります。ということで、異議ある債権者は申し出るよう公告し、知れたる債権者には個別催告しなければなりません。異議のある債権者には、弁済・担保提供・弁済用財産の信託等をしないといけません(「債権者を害するおそれがないとき」は不要となりましたけれども)公告・催告を怠るとか異議を無視したりすると、債権者は合併無効の訴えを提起することができます(法82827/8号)。ただし、公告については、昔と違い例外が設けられました、即ち官報に加え会社公告紙か電子公告で公告するなら、個別催告は不要となりましたね。

       資本金の額の減少、合併・会社分割等の登記をする際には、添付書類として、①「公告及び催告をしたことを証する書面」や、②「異議を述べた債権者に対し,弁済若しくは担保を供し若しくは信託したこと又は資本の減少・合併などをしてもその者を害するおそれがないことを証する書面」が要求されています。

法務省は、債権者が異議を述べ、弁済などを行った件数がどれだけあるのかきちんと開示・公表すべきですね。多分殆ど異議を述べられたケースはないのではないでしょうか。私も、昔、債権者名簿を作成したり、債権者異議申述催告書を作成・送付したりしました(その当時は個別催告のみで例外は無し)。一件も異議は来ませんでしたね。また、催告書を受領したときもあります。捨てるのは気がひけたのですぐにァイルして終わりです。

       個別催告の際には債権者名簿をまず作成します。債権者名簿は、日本では月末で決済する場合が多いですから、月末の最終の買掛金リストや金融機関からの借り入れをベースに作成しますね。「知れたる債権者」ですから大変です。会社にとって債権者と認識できる人は全てです。会社費用で頼んだお弁当代の仕出し屋さん、会社の前のガソリンスタンド屋さん等も含むと解釈されています。(まあ、実際は、この辺は債権者名簿から落としますけどね)。ここの債権者は、実際上は、金融機関や大口の買掛先だけで十分なのですがね。ですから例えば資本金の5%以上の額の金銭債権を有する債権者等に限定したほうが良いと思いますね。また、債権者としては、金銭債権の債権者だけを対象としないとね、弁済など出来ないですからね。

○ 公告も例外として、官報&会社公告紙への公告でもOKとなりましたが、こんな公告見てる債権者いますかね?。上場企業の場合は開示ルールで当然開示しますし、新聞でも報道されるでしょうから分かりますが。未上場企業同士の合併等の公告が新聞の端にときどき乗っていますけど、こういった公告を見ている人は少ないでしょう。

実際は、取引先については、営業マンが報告しますし、金融機関についてはきちんと事前に経営陣等が説明しますね。また、合併等の場合は、合併が実現したときには、その旨の挨拶状等も出されますね。

       ということで、今の債権者保護手続は、制度として改善の余地が大きいと思いますね。

では、どれぐらいの、またどういった手続きが適切なのかは、どれぐらいの異議が出されているのか等の実態を把握する必要があると思います。法務省はきちんと開示すべきでしょうね(法制審議会会社法部会の審議などでは開示されているのでしょうか?私の知る限りそんなことは無いと思います)。実態が分からないのに判断ができないですね。

でも、まあ、一例を言えば以下ぐらいでしょうか。

債権者保護手続きについて、略式合併の場合は不要とすればいいでしょうね。簡易合併の場合は、存続会社側は不要でしょう。また、公告については、ろくに見もしない官報&会社公告紙公告よりも、資本金の10%以上とか5%以上の金額の資金借入先、買掛先等の債権者に限り、個別催告を行うようにするというのが良いのではないでしょうか。

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事業譲渡とは何か

2010-02-07 22:25:56 | 商事法務

       事業譲渡については、会社法467条等に規定されています。特別決議の必要な事業譲渡は、事業の全部、又は重要な一部の譲渡ですね。旧商法245条の営業譲渡の規定と同じです。営業譲渡人の競業の禁止については商法16条(旧商法25条)に規定されています。

       では「事業(営業)譲渡とは何か」ですが、最大判S.40.9.22民集1961600頁では、以下とされています。「商法にいう営業の譲渡と同一意義であつて、――、詳言すれば、①一定の営業目的のため組織化され、有機的一体として機能する財産(得意先関係等の経済的価値のある事実関係を含む。)の全部または重要な一部を譲渡し、②これによつて、譲渡会社がその財産によつて営んでいた営業的活動の全部または重要な一部を譲受人に受け継がせ、③譲渡会社がその譲渡の限度に応じ法律上当然に同法(旧商法)25条に定める競業避止業務を負う結果を伴うもの」

       学説の多数説は、上記最高裁判例と同じようですね。即ち上記の①②③を要件としています。でも最近は上記の②③を要件としない学説も有力になりつつあるようです。尚、参考までに事業譲渡の対価としては、簡単には、「譲渡資産―譲渡負債=財産+のれん(=営業権:得意先関係等の経済的価値のある事実関係等)」になりますね。

       相変わらず学説というのはピンボケが多いですね。事業譲渡で最も大切な事を忘れています。それは事業に従事している人が、譲受側に移って同一事業を行う事です。

人、物(財産)、技術(資産)、情報(知恵)を有機的一体として譲渡する訳ですね。勿論会社法ですから、従業員の事は規定しませんから分からないわけでもないですけれどもね。人が移らなければ事業譲渡にはなりません。人が移らなければ単なる事業用財産の譲渡です。財産を利用し、得意先関係を維持し、ノウハウを使うのは誰ですか?今までその事業に従事していた人でしょ。その人が継続して譲渡先で仕事に従事しないと事業譲渡はできません。

       上記の③の競業避止義務は、譲渡人・譲受人間で取り決めればいいわけですし、事業譲渡の要件ではありません。①について、一般的には事業用財産を譲渡します。しかし、別に譲渡しなくても譲渡先に全部賃貸(リース)すれば出来ますね。平成2年の時代錯誤的商法改悪で事後設立を裁判所選任検査役調査にしたのを逃れるために、有名大企業の新設大規模子会社で、不動産はなじみの鑑定士に鑑定評価をやってもらい懇意な弁護士に証明書を出してもらい、それ以外の資産は全部リース会社をからませて、土地・建物等の不動産以外の工場(膨大な建物付属設備・機械・装置類)を丸ごと全部新会社にリースしたケースがありましたね。②を要件としない学説があるようですが、その内容は知りません。「譲受人に受け継がせ」ではないですね。事業譲渡の契約ですから、譲受人が契約しますね。②は本来なら「譲受人が有機的一体となった財産を譲受」とすべきですね。

       人が譲受人側に移って今までの事業に従事するわけですね。しかし、譲受人側の給与・待遇・賞与レベル、厚生年金保険(代行返上しているか、していないかの制度の違い)、企業年金・厚生年金基金の制度の違い、退職金算定基準の引継等簡単に行きません。さようならと言って転籍ではいろいろ問題も出てきます。ですから3年間は出向等という緩和処置を行って、人を譲渡人から譲受人に移ってもらう例なども結構ありますね。

       尚、会社分割の場合は、「会社分割に伴う労働契約の承継等に関する法律(平成12531 103号)」が出来ていますね。イギリス等では営業譲渡(Business Transfer)の場合でも、それに従事している人も譲受人側で継続雇用義務が条件になっているようです。会社法の学者先生は、事業譲渡は人が移らなければ事業譲渡ではないという基本的な事を前提に会社法の解釈をより高度なものにして欲しいですね。

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