まさるのビジネス雑記帳

勉強ノート代わりに書いています。

元本保証の株式買取OK?―最高裁判決

2010-07-18 21:58:02 | 株式関連

     日本的な株価算定・株式買取が是認されましたね。アパマンショップホールディング(=HD)の子会社株式の買取価格を巡り、株主が経営陣に損害賠償を求めた株主代表訴訟の上告審判決で、最高裁第1小法廷は715日、株主側の請求を認めた二審東京高裁判決を破棄し、経営側逆転勝訴の判決を出しました。実に変な理屈の判決ですね。

     評価額1万円前後の株式を、5年前の払込金額と同じ5万円で買い取っても、「事業再編の効果による企業価値の増加も期待できたことからすれば、-- --  著しく不合理であるとはいい難い。」と判決は述べています。これじゃ元本保証ですね。株式って元本保証の金融商品でしたっけ??また、「設立から5年が経過しているにすぎないことからすれば、払込金額である5万円を基準とすることには、一般的にみて相応の合理性がないわけではなく」とも判決は言ってますけど、株式買取価格は、払込金額が基準になるというものおかしいし、「5年が経過しているにすぎない」というのも大正・昭和時代の時間感覚ですね。私には5年も経過しているのにと思いますが。

・ まあ、勿論分からないことはないですけどね。ビジネスにメリットのある取引先に頼んで、少数株主になってもらう。経営にも口出ししないおつきあい出資。少数株主に、「元本+金利、あるいは元本だけ戻して、今後も宜しく」っていうことは、実は結構あるんですね。理屈はおかしいけど。

     事案の概要は以下のようですね。アパマンショップHDは2006年、月決めマンション事業を手がける傘下の「アパマンショップマンスリー」(2001年頃設立で、HDが66.7%株主)を完全子会社とする事を計画。マンスリーの少数株主は、①フランチャイズ事業加盟店等と、②紛争が生じ買取申し出に応じない株主がいた模様。①の株主については、株主の払込金額の1株当たり5万円(総額1億5800万円)で買い取り、②の紛争株主とは株式交換で強制的に上場企業のHDの少数株主としたようです。

     上記②では紛争株主保有株式を株式交換しますから、監査法人2社から交換比率算定書を取得。1社の評価額は9,709円、もう1社の評価額は、類似会社比較法で、6,56119,090円とされたようです。

     上記評価額のマンスリーの株式を、HDが5万円で①の株主から買った訳ですね。ということで、HDの株主が、経営陣はHDが不当に高く株式を買ってHDに損害を与えた、即ち、HDの取締役は善管注意義務違反があり、取締役は任務を怠り、会社法4231項により、会社に対して損害賠償責任を負うということで、HDの株主代表訴訟を行ったわけですね。

     HDの経営会議では、1)完全子会社とする必要がある。2)円滑な事業遂行を図る観点から、株式交換ではなく、可能な限り任意合意の買取を行う。3)買取価格は、払込金額である5万円が適当とされたようです。弁護士意見は、経営判断の問題であり法的に問題ないこと、任意買取における価格設定は、必要性とのバランスの問題であり、合計金額も高額ではない、加盟店との関係を良好に保つ必要性があるのであれば許容範囲であるとの意見だったとこのこと。ということで、①の株主から1株5万円で3,160(15800万円)を買い取り、②の株主に対しては株式交換で、マンスリーの株式1株につきHD0.192株の割合をもって割当交付されました。

     弁護士の意見も面白いですね。「任意買取における価格設定は、必要性とのバランスの問題」と言っています。その通りですね。いろいろ株価算定の方式はありますが、結局力関係、売りたさと買いたさの程度と背後事情によって(非上場株式の)株価は決まりますからね。法的にはこれで問題ないでしょう。でも税務上問題が生じる場合がありますから注意が必要でしょう。

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おかしな委員会設置会社制度

2010-07-04 19:12:57 | 商事法務

     久しぶりに会社法「けち」シリーズです。今回は委員会設置会社制度です。会社法212号に「委員会設置会社=指名委員会、監査委員会及び報酬委員会を置く株式会社をいう。」と定義されています。これはアメリカの会社のモデルを取り入れたものですね。監査役(会)がありません。その替わり取締役会の内部委員会の一つとして監査委員会を設けています。従来は、監査役制度のみでしたね。監査役制度はドイツ会社法にならっていますが、ドイツでは、監査役会が取締役の選任・解任権限を有しているので、「ドイツもどき」でしたね。

     米国では、取締役会の内部組織として委員会を設置することが慣行として行われていますね。しかし指名・報酬・監査委員会の3つの委員会を設置するとは規定されていません。取締役会の決議で適切な委員会を組成できます。日本では会社法で3委員会を設置すると規定してしまいました。アメリカのものまねですので、「アメリカもどき」ですね。日本の会社法では、ガバナンス組織について、中途半端の2つの制度を採用しています。どっちつかずもいいとこですね。

     模範事業会社法Chapter 8 Director and Officersの規定を抜粋してみましょう。

§ 8.25. COMMITTEES

(a) Unless this Act, the articles of incorporation or the bylaws provide otherwise, a board of directors may create one or more committees and appoint one or more members of the board of directors to serve on any such committee.

(d) To the extent specified by the board of directors or in the articles of incorporation or bylaws, each committee may exercise the powers of the board of directors under section 8.01.

§ 8.01. REQUIREMENT FOR AND DUTIES OF BOARD OF DIRECTORS

(b) All corporate powers shall be exercised by or under the authority of, and the business and affairs of the corporation managed by or under the direction of, its board of directors, subject to any limitation set forth in the articles of incorporation or in an agreement authorized under section 7.32.

上記のように、取締役会が適切な委員会を組成できます。そして、その委員会に決定を授権できますね。

     会社法404条には委員会の権限等の規定(以下抜粋。一部省略)があります。1項「指名委員会は、株主総会に提出する取締役の選任及び解任に関する議案の内容を決定する。」21号は、監査委員会は、「執行役等(=執行役及び取締役)の職務の執行の監査及び監査報告の作成」を行い、3項では、「報酬委員会は、361条(取締役の報酬等)1項(定款に規定又は総会決議)の規定にかかわらず、執行役等の個人別の報酬等の内容を決定する。」としています。委員会は取締役会の内部組織ですが、これら事項は委員会の決定がファイナルで、取締役会で覆すことは出来ないですね。委員の過半数を社外取締役としたからというのが根拠のようですけれども。ですから社外取締役でも「お友達」を選任してもらい、総会決議も無しに、自分と仲間の報酬について「お手盛り」も自由ということですね。

○ 会社の経営には、この3つの委員会では不十分ですね。会社の長期戦略を決める「経営戦略委員会」とか投資を決める「投資委員会」などが必要でしょう。製薬会社などは研究開発の方向性・テーマなどの研究開発委員会を組成しても良いでしょう。しかし組成しても、そこでの決定はファイナルにはなりません。あらためて取締役会で再度決議しないといけません。委員会設置会社の取締役会の権限については、4161項に規定されています。1号イでは、「経営の基本方針」を取締役会の権限としています。したがい「経営戦略委員会」を設けてもファイナルには出来ないというのは、その通りなのですが、投資委員会の決議はファイナルにしても良いのでは無いでしょうか。

     つまり会社法の規定の仕方がおかしいのです。私なら、経営の基本方針は取締役会決議事項としますが、その他については委員会を取締役会が組成権限を持つ内部組織として組成してそこに決定権限を授権しますね。

○ 監査委員会は監査役を無くしたので仕方が無いですが、指名委員会と報酬委員会というのがおかしいですね。この2つの委員会は年中業務を行うのですか?指名と報酬を決めるときだけでしょ。定常組織ではありません。また、例えば、議決権の2-3割を保有している株主が登場すると、当然取締役を指名しますよね。指名委員会が誰を指名しようが関係がありません。役員報酬についても、総会で上限額を決めるべきです。お手盛りになります。報酬委員会は不要でいいのではないでしょうか。あるいは仮に設けても、報酬委員会は、総会決議案の策定までですね。(実際は、事務当局が案を作成するので、報酬委員会のファンクションはあまりないです。まあ、個別開示は、まだまだ日本では受け入れられないので、総額と1億円以上は個別開示ぐらいでしょうけど)。ともかく委員会制度は中途半端で、きちっとした方針・考え方の整理の出来ていないおかしな制度ですね。

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