まさるのビジネス雑記帳

勉強ノート代わりに書いています。

開業準備行為中の費用とその負担

2010-04-26 00:45:05 | 商事法務

  開業準備行為・設立に関する費用等に関連する規定が会社法28条にあります。定款に記載・記録しないと効力を生じないとして、①現物出資、②財産引受(*)、③発起人の報酬等、④会社の負担する設立に関する費用の四つを規定しています。但し、④では例外を設けています。即ち定款に記載・記録しなくても、定款の認証手数料と施行令5条記載の費用(定款の印紙税・銀行手数料・検査役報酬・登録免許税)は、新会社の費用とすることができます。即ち発起人が負担しても新会社が成立したときに新会社に請求できますね。発起人は、一時的に立替金勘定として処理しますね。

○ まあ、施行令に記載の無い費用でも、実際は新会社に負担させている例がいろいろあるようですね。今回は、そういった点、即ち開業準備行為について述べて見たいと思います。開業準備行為について、会社法では財産引受しか規定がありません。「財産引受以外の開業準備行為」について、会社法は規定していないのですね。開業準備行為は、いろいろあって規定の仕方が難しいからでしょうか?あるいは、新会社成立前のことですから、会社法としてあまり関係がないと考えているのでしょうか。私に言わせれば資本維持の原則にも関連する事項を含んでいると思うのですが。

* 財産引受とは、発起人が新会社の為に、会社成立を条件として特定の財産を譲り受ける旨の契約を言いますね。例えば、「○○株式会社発起人代表XX株式会社」が、新会社が使用するサーバをコンピュータ会社へ発注・売買契約を締結して、その効果を直接新会社に帰属させる場合等ですね。仮に、発起人がお金を支払っても立替金ですね。

○ 開業準備行為と言っても、「費用の発生(費用が主ですね。収益も発生することも例外的にはありますが。法人税基本通達2-6-2(**)の規定では損益を念頭に置いていますね)」と「資産(発起人が製作して新会社に譲渡する場合を含む)の取得」がありますね。資本維持の原則から言えば、発起人からの費用請求について過大・水増し請求をさせない規制が必要だと思いますね。資産取得に関しては法46715号に、「成立後二年以内におけるその成立前から存在する財産であってその事業のために継続して使用するものの取得。」については「事後設立」として、特別決議を求めています。発起人等が新会社に資産を譲渡する場合、水増し・過大請求して、他の株主等の利益を害することを防ぐ為に事後設立の規制(H2=1990~現在の会社法が施行されるまでは、原則検査役の調査が必要でしたね)がありますが、費用の過大請求についての規制はありませんからね。

  発起人の行為の効果が成立後の会社に直接帰属するのは、その行為が「設立中の会社の機関」として、「権限の範囲内」でなされた場合に限られますね。「権限の範囲」について、学説の多数と判例(最判S42.9.26民集2171870頁)では、開業準備行為については、法定の要件を満たした財産引受だけが例外的に発起人の権限に含まれるとしていますね(最判S28.12.3民集7121299頁)。ですから、その他の行為は「設立中の会社の機関」として行うわけではないですね。

○ 費用の発生と請求:例えばオフィス=本店所在地探しでもいろいろ経費がかかります。不動産屋さんへの媒介手数料、交通費、あるいはその人件費もコストですね。不動産屋さんの媒介手数料を発起人が立て替えて(***)、後から新会社にもたせている例もありますね。印鑑調製費などもそうですね。

会社成立前に発生している費用を、発起人がいったん支払って、設立後の新会社に請求するわけですね。発起人が立替金勘定を計上して、立替金として新会社に請求するわけではないのですね。自分の会社の費用として処理して、その費用を新会社に請求するわけですね。新会社での帳簿上の負債の発生の認識は、発起人からの請求書の記載日(又は請求書受領日)ですね。実際に費用が発生したときではないですね。

→発起人等はやろうと思えば自分の利益分をたんまり乗せて新会社に請求できますね。それについて、上記の通り会社法ではどのように考えるかですね。

  資産の取得:よく起こる例としては、新会社が使用するシステムを、親会社=発起人が事前に開発することがあります。ソフトウェアの会計基準も整備されました。開発要員の労務費等も含めて取得価額として無形固定資産となります。これを事後設立で新会社に譲渡すればいいですね。

** 法人税基本通達262(法人の設立期間中の損益の帰属):法人の設立期間中に当該設立中の法人について生じた損益は、当該法人のその設立後最初の事業年度の所得の金額の計算に含めて申告することができるものとする。ただし、設立期間がその設立に通常要する期間を超えて長期にわたる場合における当該設立期間中の損益又は当該法人が個人事業を引き継いで設立されたものである場合における当該事業から生じた損益については、この限りでない。

*** オフィス賃貸借契約:発起人が賃貸借契約を締結し、その契約上の地位を譲渡し、併せて保証金等を、新会社が発起人に保証金を返す等を行う場合もありますね。

   

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合弁契約と定款

2010-04-18 18:37:23 | 商事法務

  合弁事業を始めるときは、合弁契約を締結しますね。この合弁契約に盛り込む主な事項は、だいたい以下ですね。

     設立趣旨・目的

    新会社の概要(目的・商号・本店所在地・発行株式数と発行価額等・資本金・資本準備金・出資比率等・役員・資金調達・株式の譲渡制限)

    新会社の経営・運営・株主との協力(技術援助契約・原材料供給契約等・資金協力)

    一般条項(損害賠償・合弁解消事由等)

  新会社の経営について、どこまで記載するでしょうか?殆ど記載していない合弁契約もありますね。単に合弁会社を設立するためですね。でも合弁会社設立で重要なことは、設立してからの経営ですねその経営について方向性や株主との関係について、きちっと書いてほしいですね。総会の特別決議事項・普通決議事項、取締役会の特別決議事項等をきちんと規定して、それに従った定款を添付して契約を結ぶ場合もありますね。

○ 取締役会で一番重要なことは、「経営計画・予算の策定・承認及びこれを推進・実行することですね。」会社法362条に取締役会の権限等の規定がありますが、「経営計画」とは書いていませんね。まあ、小さな会社にはそんなものどうでも良いかもしれませんが、やはりきちんと事業をするわけですから、合弁契約で、「経営計画の策定」等を取締役会の特別決議事項として規定した方がいいですね。

  合弁契約の作成のときに、同時に定款も作成してほしいですね。本に載っている普通の定款雛形を持ってきて、会社法通りというのもありますが、やはりそれでは芸がありません。合弁契約作成のときに、きちんと定款も作成しましょう。

  合弁契約を作成し、その中に、総会・取締役会の特別決議事項、普通決議事項きちんと規定しましょう。そしてそれをきちんと定款に落としましょうということです。日本では、合弁契約と定款を別々に作成しますが、例えば中国の外商合資企業等の場合は、合弁契約書の会社法の部分は、そのまま抜き出して定款(Articles of Association)としますね、それを工商局に提出して許認可をもらいます。なかなか便利な方法ですね。(中国では、許認可が必要と、許認可取得にいろいろ一杯書類を用意しないといけないのが難ですが、合弁契約と定款という点では、合弁契約で定めたことが定款になる、即ち定款自治が行き渡っていると思います)。合弁契約を結ぶときは定款も同時に作成したいですね。

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上場会社の株主の株主間協定と独立性

2010-04-04 01:29:57 | 企業一般

  上場企業の株主の間で協定を結んで、上場企業の行動をどれだけ縛れるかを考えて見ましょう。上場企業ですから、株主は多数いますね。ですから一部の株主間だけで協定を結ぶ訳ですね。

  まず基本的なところからですが、株主間協定に対象会社が契約当事者として入れるでしょうか?これは無理ですね。一部の株主とだけ企業の経営行動について約束する訳ですから、経営の独立性を害する訳ですね。少なくとも建前上はですね。

  建前上という変な言い方をしました。即ち、工夫すれば、特定の株主がそれなりの影響を与える事が出来るわけですね。どんな場合でしょうか。即ち、企業の経営に影響力ある事項は、人(役員)、物(技術・原材料提供・販売)・金(出資比率等)ですね。これらを組み合わせれば、実質かなりの程度まで、一部の株主が対象会社の経営をコントロールできる訳ですね。経営の独立性等と言っても、独立性が希薄な場合もそれなりにあるのですね。有価証券報告書では、経営上の重要な契約等で表示することになっていますね。

  では、株主等が対象会社をコントロールすることができる場合は、どんな場合でしょうか?

典型的なケースは、オーナー会社の場合ですね。オーナーが2-3割とか、あるいは極端な場合は過半数の株式を保有していたら、株主からの独立性などありませんね。また、業績不振会社の場合は、銀行が5%未満しか株式を保有していないのに、債権者として経営に関与しますね。株主としてではなく、債権者として、対象会社のインサイダー情報を取得する訳ですね。勿論守秘義務を負いますけれどもね。

  普通は、上場審査において、独立したガバナンス体制が整っているか審査されますね。ですから上場準備段階で、親族が名目的な役員なりのケースは排除されます。役員の個人会社との不明朗な取引も整理されます。ただ、残るのは株主と対象会社となるわけですね。株主と対象会社ですから、議決権でコントロールする訳ですね。これなら文句は言えませんね。

  では、普通の場合はどうでしょうか。東証の上場規則などで、上場企業の株主の株主間協定を規制するルールはありませんね。なかなか規制が難しいから(対象会社の知らないところでもできます)でしょうか。直接規制するルールはありませんが、間接的には、大量保有報告書とか、適時開示ルールで「その他会社の運営、業務、財産又は上場有価証券に関する重要な事項」として開示を要請されますね。株主間協定ですから、普通は株主が提出する大量保有報告で開示されますね。

  2-3例を挙げましょう。

1)    イオンのダイエーの株式の大量保有報告には、以下のように記載されていますね。

「①提出者は、丸紅()(以下「丸紅」という。)、丸紅リテールインベストメント()(以下「MRI」という。)及び丸紅フーズインベストメント()(以下「MFI」という。)の間で締結した平成1939日付株主間契約書に基づき、提出者が有する35,969,500株、丸紅が有する36,645,394株、MRIが有する19,903,900株及びMFIが有する1,739,150株につき、一定の要件が満たされるまでは、一定の事項につき特定の方法で議決権を行使すること、並びに一定の要件が満たされるまでは株式の譲渡等が禁じられること等について合意している。

②提出者が保有する甲種類株式29,860,000株は、平成19510日以降、発行価額と同額(但し、一定の調整が加えられることがある。)にて、発行会社の普通株式に転換請求することができる。また、甲種類株式は株主総会において議決権を有し、利益配当請求権は有さず、残余財産請求権は普通株式に劣後する。」

2)  三井物産の旭テックの株式の大量保有報告には、以下のように記載されていますね。

「提出者とアールエイチジェイ・インターナショナル(RHJ International)との間に発行者の役員の選任に関する議決権行使の合意が存在する。」

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