まさるのビジネス雑記帳

勉強ノート代わりに書いています。

Joint and Several Liabilityについて

2011-01-26 22:56:18 | 商事法務

  今回は、大昔英文契約書に接したとき、「Joint and Several Liability」という言葉に出くわしました。なんじゃこれ? Joint=共同ですね。Several=「それぞれの」という意味ですね。英文契約書を読むと、どうも「連帯債務」という意味らしいと言うことが分かりました。今回は、英文契約書でときどき出くわす、Joint and/or Several Liabilityの話です。

  多数当事者の債務関係では、”Joint Liability”, “Joint and Several Liability”, “Several Liability”の3つの態様がありますね。結論を先に言いますと、それぞれ、日本法の類似概念として、「不可分債務」、「連帯債務」、「分割債務」と考えれば良いのではないでしょうか。しかし、最近では、Joint Liabilityは、Joint and Several Liabilityと殆ど同じ扱いになってきている様ですね。

  Several Liability

  これは、簡単ですね。例えば、「XYは、Aに対して、それぞれUS$1,000支払う」というものですね。即ち、Aは、合計US$2,000の債権を保有していますが、Xに対して$1,000Yに対してUS$1,000しか請求出来ません。

・債務は、各債務者毎に独立しており、債権・債務の数は、債務者の数だけ存在することになりますね。従い、請求・訴訟は、債務者毎に個別になりますし、債務者1人に対し債務免除しても、他の債務者の債務には影響しませんね。

  Joint and Several Liability

これは連帯債務ですね。即ち債権・債務の数は1つですね。債権者Aは、債務者X,Y,Zの三者に対して履行の請求が出来ますし、例えばxにのみ債務の全部の請求ができますね。X,Y,Zは、Aに対する関係では(金銭債務の場合は)全額を支払わねばなりませんね。債務者一人に対する免除は、当該債務者の負担部分を減じた残りの債務を、それ以外の債務者が負担します。また、一人の債務者が全額を負担した場合、他債務者には、各自の負担部分(Contribution)を負担するように請求出来ますね。

  Joint Liability

これは不可分債務なのですが、結論を言いますと、米国ではJoint and Several Liability (連帯債務)と同じになっています。この債務は、債権者と債務者集団間では、一つの債権債務関係であり、これを厳格に考えると債務者全員を一括して訴えなければならないなど厳しい条件でした。しかし、Joint and Several Liabilityと性質は同じであるにもかかわらず、債務が、いずれであるかと判断されることにより、履行の強制方法が異なったものになるのは妥当ではないし、また債権者保護の視点なら言って融通性がかけるのではないかということで、結局Joint and Several Liabilityと同じ扱いになったということですね。

  上記なので、結局、Several Liabilityなのか、Joint and Several Liabilityなのかということですね。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

子会社の親会社株式の取得と処分

2011-01-16 13:56:12 | 商事法務

  子会社は親会社の株式取得が禁止されていますね。勿論、企業再編、例えば合併の消滅会社が、自社の親会社株式を保有したりしておれば、取得せざるを得なくなるので、そういった場合は例外的に保有を認めていますが、これも相当の時期にその有する親会社株式を処分しなければならないとしています(法135条。施行規則23条)。

  昔は、自己株式の取得は、原則禁止。止むを得ない場合はOKでしたね。それが、株式消却や従業員対策(ストックオプション)などの為にする取得もOKとなり、2001年の議員立法の商法改正で、自己株式取得の目的・数量の制約も無くしました。今の会社法は、これを引き継いでいます。制約としては、手続きと財源及び開示の規制ですね。特に重要な規制は財源規制ですね。では、自己株式取得がOKになったのに、子会社による親会社の株式取得は禁止されたままですね。どうしてなんでしょうね?

  子会社による親会社株式の取得禁止の条文は、1981年の商法改正でできました(旧商法211-21)。この規定は、自己株式取得の原則禁止の条項があるため、これを潜脱するため、子会社を使って親会社株式を取得した会社があり、これが訴訟で争われたので、この規定が出来たのですね。訴訟は、完全子会社を使って親会社株式を取得させた事例です。結論は勿論、駄目ということですね。即ち自己株式取得禁止が潜脱されるからというのが理由でした。(最判平5.9.9民集47-7-4814

  自己株式取得が、財源規制等があるにしても出来るようになった。それにも拘わらず、子会社による親会社株式取得は禁止されたままですね。認めても良いと思うのですが、まあ、もし認めると、財源規制などが連結ベースで考えないといけないし、親子関係の把握を、間接も含めて考えると複雑になりますからね。技術的にかなり難しくなるからというのが理由でしょうか。

  子会社保有の親会社株式は、「相当の時期に処分しなければならない。」としています。速やかにではないですね。「相当の時期」というのも会社により事情が異なりますので、2~3カ月ということもあるでしょうし、2~3年というのもありでしょう。「相当の時期」というのは、現実的には相当いい加減でしょう。勿論、企業再編の対価として交付するために取得した親会社株式は、合併の効力発生日に大半が身代わり株式として交付されますが、この場合でも余裕をもって親会社株式を取得しておくでしょうから、残余の親会社株式は残って、後ほどこれを処分しなければならないですね。相当の時期といのは処分の機会が到来したらぐらいの意味ではないかとおもいます。

  なぜ、「相当の時期」等といういい加減な規定を設けたのでしょうか?自己株式の場合には、消却・売却等の処分の期限・時期なんて定めていませんよね。別に、親会社株式を持っていても議決権を有する訳でも無いですね。では自益権はどうなんでしょうね。剰余金の分配等ですね。別法人なので配当はもらわないとね。別に子会社と言っても40%以上で子会社にしている場合もありますから、他にも株主がいますのでね。親といえどもお金は別扱いということにしておかないと困りますね。

  親会社が自己株を取得するには剰余金の財源規制が効きますね。これを潜脱するには、個人で資本関係なく会社を作って、これに買わせればいいですね。そして、その後子会社と合併する等の方法も考えられますね。親が合併するのは手間ですが、子会社等の合併は簡単にできる場合も多いですからね。この場合は財源規制も効きません。裏技ですね。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

紛争解決手段としての仲裁の利用

2011-01-04 00:50:40 | 商事法務

  日本の契約書では、紛争解決については、よく裁判所について合意管轄の規定がありますね。例えば、本契約に関し、訴訟の必要が生じた場合には、東京地方裁判所を第一審の専属的合意管轄裁判所とする。」等ですね、民事訴訟法の原則通り「被告の普通裁判籍の所在地を管轄する裁判所の管轄」とする場合もありますが。ところが国際間の契約では、よく契約書に仲裁の規定が設けられます。即ち「仲裁合意*」ですね。ということで、今回は仲裁の話です。

*仲裁合意:既に生じた民事上の紛争又は将来において生ずる一定の法律関係(契約に基づくものであるかどうかを問わない。)に関する民事上の紛争の全部又は一部の解決を一人又は二人以上の仲裁人にゆだね、かつ、その判断(以下「仲裁判断」という。)に服する旨の合意をいう。(仲裁法21項)

  まず日本の仲裁法(平成1581日法律第138号)についてですね。仲裁法は、仲裁地が日本国内にある場合について適用(31)されますが、3条2項では、「141項及び15条の規定は、仲裁地が日本国内にある場合、仲裁地が日本国外にある場合及び仲裁地が定まっていない場合に適用する。 」としており、また同3項では、「第八章の規定(=仲裁判断の承認及び執行決定は、仲裁地が日本国内にある場合及び仲裁地が日本国外にある場合に適用する。 」としています。第8章の最初の条文である45条では「仲裁判断(仲裁地が日本国内にあるかどうかを問わない。)は、確定判決と同一の効力を有する。ただし、当該仲裁判断に基づく民事執行をするには、次条の規定による執行決定がなければならない。」として、海外でなされた仲裁判断についても確定判決と同一の効力を認めていますね。

諸外国でも、ニューヨーク条約加盟国では同様に外国でなされた仲裁判断(裁定)の効力を認めていますね。主要国は全て加盟国ですね。尚、加盟国一覧は、UNCITRALWEBでチェックしてください。↓

http://www.uncitral.org/uncitral/en/uncitral_texts/arbitration/NYConvention_status.html

○仲裁の性格・メリット・デメリット

(1) 性格

・公権力による解決ではなく、第三者たる私人による実務的見地による紛争の解決

・仲裁判断が法律上禁止されるものは仲裁になじまない。(例えば独禁法違反等ですね。但し、米国では例外があるようです)

(2)メリット

1)   迅速であること

2)   費用が安いこと

3)   手続きが簡単であること(国際取引紛争に関する面倒な裁判管轄の問題も無い)

-->

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

英米企業の取締役の代理権

2011-01-01 08:10:54 | 商事法務

  最近のブログで、取締役の権限や代表取締役の事を記載しました。今回は、それのおまけで、英米企業の取締役の代理権の事を書いてみましょう。

英米法系の国の企業と、通常の取引(=Ordinary Course of Business)ではない契約書には、Representation & Warranty (事実の表明・保証)の規定を設けて、以下のような文言がありますね。例えば、株式譲渡の契約書等にですね。

Upon the Closing, the Company shall have all requisite legal and corporate power and authority to execute and deliver this Agreement.

即ち、会社は、本契約の締結権限を有する旨の表明・保証ですね。日本の契約書では、こういった条項は入りません。勿論、この種の契約書は代表取締役の署名や記名捺印が普通ですけれども。なぜ、わざわざ契約を締結するのに、締結権限ありと記載するのでしょうか。理由は簡単です。通常は、取締役といえどもサイン権限が無く、サインするには取締役会等で承認を得てサインする必要があるからですね。(例外としては、捺印証書=Deedがありますが、これも取締役会承認事項。これはまた別の機会にでもブログに書きましょう)。ということで、今回は、英米企業の取締役の権限・代理権等についてです。

  イギリス法系の国(英国、インド、オーストラリア、シンガポール、マレーシア等)

代表取締役という制度はありません。

・取締役会(Board of Directors)が、会社の一切の業務を行う権限があるとされています。

・取締役会は、合議体であり、日常業務を取締役会でいちいち行う訳にはいきませんので、取締役会はその権限の一部をManaging Directorに委譲し、日常の業務執行はManaging Directorが会社を代理して行います。

日本と異なり、Managing Directorを登記する制度はありません。

Managing Directorの権限は、普通は付属定款(*)に記載されていますが、法令上は、付属定款に記載されている場合を除き、都度取締役会決議により定めるということになっていると思います。

  イギリス法系では、基本定款は、Memorandum of Association、付属定款は、Articles of Association、アメリカ法では、基本定款は、Articles of Incorporation、付属定款はBy-lawsと呼んでいるようですね。

  アメリカの会社の場合(以下の条文は模範事業会社法)

会社は自然人と同様に全ての行為を行えますね(**)。取締役会が、会社の経営(業務執行)の意思決定を行い、業務の執行はOfficersが行いますね。日本は、この形式だけを猿まねして委員会設置会社制度を設けましたね。

Officerには、CEO (Chief Executive Officer),COO(Chief Operating Officer),Secretary, Controller, Treasurer (まだPresidentを使っているところもありますね)

§ 8.40. OFFICERS では、「 A corporation has the officers described in its bylaws or appointed by the board of directors in accordance with the bylaws.」としています。Directorは、株主総会にて選任されて取締役会を構成しますが、Officerは取締役会によって選定されますね(総会で選任される場合もあり)、そして取締役会により委任された業務を執行します。

Officerの義務は以下ですね。§ 8.41. DUTIES OF OFFICERSに規定されています。

Each officer has the authority and shall perform the duties set forth in the bylaws or, to the extent consistent with the bylaws, the duties prescribed by the board of directors or by direction of an officer authorized by the board of directors to prescribe the duties of other officers.

Officerは、bylawsや取締役会により授権された権限を持ちますね。従い、例えば株式売買契約書にサインする権限が付与されているかわからないから契約書に冒頭のような文言を入れるわけですね。

  * § 3.02. GENERAL POWERS

Unless its articles of incorporation provide otherwise, every corporation --- and has the same powers as an individual to do all things necessary or convenient to carry out its business and affairs, including without limitation power (3.02の柱書の部分のみ)。会社の能力(Corporate Capacity)は定款所定の目的によって制限され、目的外行為は無効であるというultra vires rule (能力外の原則)は、米国では極めて限られていますね(§ 3.04. ULTRA VIRES参照)。

  Ordinary Course of Business=通常業務(通常の営業取引等)の場合は、英米とも仮に権限を与えられていなくとも、当該契約書にサインする権限ありと信じた事が、合理的・妥当なら、黙示的に権限を与えられていると看做されて、取引の安全を計るわけですね。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする