まさるのビジネス雑記帳

勉強ノート代わりに書いています。

監査役会の機能強化

2015-07-20 09:08:56 | 商事法務
○ 取締役の職務執行を監査して、業務の適正を確保しガバナンス強化をするために、この20-30年間、法制審議会の先生方が行ってきたのは、監査制度の形をいじることでした。まず監査役の任期の年数を延長する2→3→4年と小手先改正、その次には米国上場会社が上場規則で行っている委員会制度の導入を、会社法に取り入れた委員会設置会社制度ですね。今回は、監査等委員会設置会社という制度を導入し、従来の委員会設置会社は指名委員会等設置会社と名称を変更しました。その間には重要財産委員会などという変な制度を作ったりしましたね。米国では、社外取締役が一般的で社内の取締役はCEOのみという会社も多いですが、背景・企業風土等も異なるにも拘わらず、それらを十分検討分析し適切な制度を創設する努力がなかったですね。日本の会社法の監査制度の特徴は、「仏作って魂入れず」即ち、形ばかり作って中身が整っていないことですね
この制度改革と社外取締役の導入がガバナンス強化の2大方向性ですね。でも、今回の東芝の不祥事では、委員会設置会社の社外取締役の監査委員は、監査の知識・経験もない外務省出身者等でした。これは形作って中身の伴わない会社法を作った、法制審議会等の委員の責任もあると思います。

○ では中身を作るには、監査役の選任方法の変更と権限を強化すればいいのですね
・まず選任方法ですが、監査役は株主総会で選任されます。しかし、選任の前の指名は誰が行っているのでしょうか?主として代表取締役ですね。取締役になれなかった人に、まあもう少し役員として会社に残しておいてあげましょうということもあります。監査役の指名は、株主の上位3社なり5社、あるいは10%以上の株式保有株主なり株主が指名すればいいのです。そして総会で選任すれば良いのですね。・2つめとしては監査役会の権限強化です。これには参考となる制度があります。ドイツ等の監査役会ですね。共同決定法で労働者の代表も大会社では半数まで監査役になります。これと同じような制度としては、オランダ法の影響を濃厚に受けたと思われるインドネシアにコミサリス会(Komisaris= Board of Commissioners)という制度がありますので、それについて少し書いてみましょう(というか、オランダの制度は知らないので)。

○ インドネシア会社法108条は以下となっております。尚、日本の監査役会と異なり独任制の機関ではなく、コミサリスはコミサリスの構成員でコミサリス会決議に基づき行動する義務があり、監督業務執行に完全な責任(full of responsibility)を負います。日本の監査役は責任など負ったことないですね。
Boards of Commissioners shall supervise management policies, the running of management in general, with regard to both the Company and the Company’s business, and give advice to the Board of Directors.コミサリス会の招集・開催頻度・議事・決議については定款で定めます。
1) 定款で定める一定の法律行為には、コミサリス会の承認が必要です。例えば、100億円以上の投資には、承認が必要とか、株主総会決議未満の重要事項について同会の承認を必要と規定することが可能です(ドイツの監査役会と似ていますねね)。117条1項「Articles of association may determine the grant of authority to Boards of Commissioners to give approval or assistance to Boards of Directors in the performance of certain legal actions.」

2) 総会の委任を受けた場合には、取締役の報酬を決定する事も出来ます。96条1/2項「(1) Provisions concerning the amount of the salary and allowances for members of Boards of Directors shall be stipulated by GMS resolutions.
(2) The authority of the GMS contemplated in paragraph (1) may be delegated to the Board of Commissioners.」

3 )一定の理由がある場合には、取締役の業務執行を一時的に停止させ総会でその当否を審査させることができます。106条は以下の様に規定しています。
(1) A member of a Board of Directors may be suspended by a Board of Commissioners, giving the reasons therefor.
(2) The member of the Board of Directors concerned shall be informed of the suspension contemplated in paragraph (1) in writing.
(3) A member of a Board of Directors who has been suspended as contemplated in paragraph (1) does not have the authority to carry out the tasks contemplated in Article 92 paragraph (1) and Article 98 paragraph (1).
(4) Within a period of no more than 30 (thirty) days after the date of the suspension a GMS must be convened.
(5) The member of the Board of Directors concerned shall be given the opportunity to defend himself/herself in the GMS contemplated in paragraph (4).
(6) The GMS shall confirm or revoke the resolution for suspension.
(7) In the event that the GMS confirms the resolution for suspension, the member of the Board of Directors shall be dismissed.
(8) In the event that when the period of 30 (thirty) days has passed the GMS contemplated in paragraph (4) has not been convened or the GMS has not been able to adopt a resolution, the suspension shall be void.


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機能不全の指名委員会等設置会社

2015-07-06 22:04:09 | 商事法務
○ 委員会設置会社、2003年4月の商法特例法で、委員会等設置会社として導入され、その後会社法で「等」を抜いていましたが、今回の会社法改正で「監査等委員会設置会社」制度の創設に伴い、指名委員会等設置会社と名称変更されましたね。これは学者先生が、米国の上場企業で主として上場規則等で規制されている一般的な委員会制度を日本に持ち込み会社法に規定した制度ですね。目的は、コーポレートガバナンス強化の一環として導入したものですが、同じような制度として、全く機能せずいつの間にかに消えてしまった重要財産委員会という制度もありました。これは「仏作って魂入れず」とも言えますが、原因は逆で、魂が分からない学者先生が仏を作るから機能しないのですね。委員会制度が出来る前は、小手先の制度変更である監査役の任期の2年から3年に、そして4年と延長しました。このときの学者の言い分は、長期的に会社を監査できるようにすることが重要と言っていましたが、委員会制度を作ったら任期が1年に短縮されていました。手のひらを返したように、1年の制度も作りました。

○ 学者先生は頭の良い人ですが、1) 米国に留学して、米国型制度に洗脳されている人が多い、2)想像力が乏しくユニークな制度の立案創設力が無い、3)ドイツの共同決定法や監査役会制度の知識が無いということで、安易に制度を弄り回している感じです。委員会設置会社制度が、「いまいち」なので、今回「監査等委員会設置会社」制度を作ったのですね。会社法は重要な社会基盤ですから、長期的・本質的・多面的な観点と共に柔軟性が要求される難しい制度ですね。世界的には、1)米国型の委員会制度型、2)取締役会と監査役会が同レベルの国(実際は、機能しない監査役(会)を持っている日本・中国など)、3)ドイツのような取締役会の上部組織としての監査役会制度を持つ国(ドイツ・インドネシア等)の3つでしょうね。

○ 不適正会計が明るみにでた東芝は、指名委員会等設置会社ですね。監査委員会委員の社外取締役は、斉藤聖美(日系新聞・ソニーに4年・モルガンスタンレー等)、島内憲(外務省)・谷野作太郎(外務省)ですね。経歴を見て、「監査」が分かる人ではないですね。「飾り」です。監査委員会委員長は、東芝出身の久保誠取締役です。米国のエンロンにも日本のオリンパスにも立派な飾りの人がいましたね。

○ 現場が不適正会計を行っている事のチェックは、内部統制が効いていないということもあるでしょう。現場の意識の問題もあるでしょう。東芝ですから当然内部統制も行っている筈です。しかし、現場の責任者にとってみれば、どこをどのような操作をすれば、どのように社内を誤魔化せるかわかります。
  監査委員会の監査委員の社外取締役は、非常勤も多く、月に1度ぐらい出社して、事務当局の作成した、差しさわりの無い社内報告の説明を受けるだけでしょう。業務の経験もなく、企業会計の経験・知識も無い監査委員等ごまかすのは分けない事です。
  少し考えれば、監査委員会等が機能を発揮しないことぐらい誰でもわかります。これを制度として組み入れ会社法に規定するというのは如何でしょうか?制度設計自体がおかしいのですね。
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