まさるのビジネス雑記帳

勉強ノート代わりに書いています。

中小企業の私募債の発行

2012-08-26 22:09:27 | 企業一般

 

 無名の中小企業の資金調達としては、銀行の融資、株主・取引先あるいはVC等への新株発行が一般的ですね。社債ということになれば、公募が出来る筈も無く、親会社等の縁故者に引き受けてもらうしか無かったですが、安定したキャッシュフローが中期的に期待できる企業に対して、最近は銀行等が私募債(「銀行引受私募債」とも呼ばれています)の発行の手伝いをして、機関投資家との仲介をしてくれるようになりましたね。単なる銀行融資よりも儲かるからでしょうね。というわけで、今回は中小企業の私募債の発行についてです。米国等の会社法にはありませんが、日本の会社法には社債の規定がありますね。勿論これに従って社債を発行するわけですけど、普通の中小企業にはなじみの無いことですので、その概要を書いてみましょう。<o:p></o:p>

 

<o:p> </o:p>

 

 募集社債(金融商品取引法でも「有価証券の募集」とか「有価証券の私募」という用語を使用しています。少し会社法とコンセプトが違いますので注意が必要)を発行するには、募集株式の発行の場合と同様に、まず取締役会を開催して、会社法676条・規則99条に掲げる事項(募集社債の総額・各募集社債の金額・利率・償還方法及び期限・利息支払方法及び期限、その他の事項)を定め、総額引受の場合(679条で前二条の適用排除)を除き、これを申し込もうとする者に対して通知(677条)して引受の募集を行い、申込者に対して割当(678)を行います。そして申込者は社債の払込を行います(原則は1度で応募額全額)。即ち、銀行等に総額引受を行ってもらえば、引受の募集・割当などの手続きは不要になります。<o:p></o:p>

 

<o:p> </o:p>

 

 また、社債の発行では、702条では社債管理者の設置を義務づけています。即ち、「社債を発行する場合には、社債管理者(銀行・信託会社等)を定め、社債権者のために、弁済の受領、債権の保全その他の社債の管理を行うことを委託しなければならない。」しかし、但書きで例外を規定し、各社債の金額が1億円以上である場合、規則169条で「社債の総額を当該種類の各社債の金額の最低額で除して得た数が50を下回る場合」即ち、50口未満(1人が1口だと50人未満になり、公募・私募と同様)の場合は、社債管理者の設置は不要ですね。<o:p></o:p>

 

<o:p> </o:p>

 

 無名の中小企業が社債を発行しても機関投資家は興味を示しません。しかし、銀行保証が付けば銀行の信用力がありますので、機関投資家も引受をします。ですから、発行会社は仲介をしてくれる銀行に保証委託をします。これで自分の信用力を銀行の信用力に変えることができる訳ですね。機関投資家は安全な投資になります。従い、社債の利率は低くなります。銀行はリスクを負いますが、保証料をしっかり戴きます。例を挙げると、現状だと3年のMTN(中期社債)の利率は0.5%だけれども、保証料は1.5%取れるわけですね。<o:p></o:p>

 

<o:p> </o:p>

 

 株券でもそうですが、社債でも振替社債の制度があります。これを「社債、株式等の振替に関する法律」662号を利用して、「社債の発行の決定において、当該決定に基づき発行する社債の全部についてこの法律の規定の適用を受けることとする旨を定めた社債」とするわけですね。66条では、振替機関が取り扱う振替社債についての権利の帰属は、振替口座簿の記録により定まるものとしています。即ち、譲渡・質入れ等は、口座管理・振替機関の管理口座に記録すれば効力が生じますね。また券面も発行しません。<o:p></o:p>

 

<o:p> </o:p>

 

 中小企業の銀行引受私募債の特徴は、① 社債発行等やったことの無い発行会社の為に、銀行等が事務の受託を受け(事務受託料をもらう)、②銀行等が総額引受を行い(総額引受契約を結び引受料をもらう)、③募集社債の総額を各募集社債の金額で除(割り算)して50口(50人)未満の私募にして社債管理者を不要にして、目処の適格機関投資家に引き受けてもらい、④銀行等が保証料を取って保証をする、そして⑤振替社債を利用して流通性を確保する。―この5つでしょうか。

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

監査報告書の非常勤監査役と責任

2012-08-19 22:23:53 | 商事法務

 

 中小企業で非常勤の監査役がよく選任されます。そしてその監査役の名前で、計算書類の最後に監査報告書が添付されています。上場企業の場合は当然監査役会の監査報告書で常勤と非常勤(社外)の監査役の連名で監査報告書が出されますね。いろいろな会社の監査報告書を見ると、非常勤監査役が本当にどれだけ監査したのか、勿論取締役会ぐらいには出席しているでしょうけど疑問に思います。いつも殆ど無限定適正意見(unqualified opinion)ですね。オリンパスだってそうでしたね。4年ほど前に荏原製作所の非常勤監査役(警察庁出身のO監査役)が監査報告で、「コンプライアンス上、重大な疑義があるので、本事業報告を承認しない。」としたことがニュースになりました。ニュースになるぐらい珍しい出来事だったのですね。<o:p></o:p>

 

<o:p></o:p>

 

 

 監査を行うには、監査の方針を立て、実施計画を立てて実施しなければなりませんが、非常勤監査役でそういったことをキチンとしている監査役は非常に少ないのではないでしょうか。大半は会社が作成した事業報告書・計算書類(会計監査人のいる上場企業は会計監査人の報告をうのみにして)を見て、その根拠を十分に調べずに(というか実際は調べても簡単にはわかりませんが)適正意見の報告書を作成しているのではないでしょうか。<o:p></o:p>

 

<o:p></o:p>

 

 

 監査役も当然会社に対して善管注意義務(330条民法644)を負い、それに加えて会社法に規定された義務として、①取締役の不正行為の取締役会への報告、②取締役会への出席、③総会への提出議案・書類等の調査義務と、法令・定款違反等がある場合の総会への報告義務を負います。またこれらの任務懈怠責任(423条)も負います。オリンパスの例で言えば、取締役会で諮られた著しく不当な買収をきちんと調査してその結果を総会で報告すべきだったでしょうね。また、上記①の規定もあるのですが、非常勤監査役はせいぜい取締役会に出席するのがやっとですから、取締役が陰で不正行為を見つけられる可能性は非常に限られていますね。<o:p></o:p>

 

<o:p></o:p>

 

 

 また監査役(等の役員)には第三者に対する損害賠償責任(=法定責任)の規定もあります。42923号では「監査報告に記載し、又は記録すべき重要な事項についての虚偽の記載又は記録」としています。この法定責任の重要なポイントは、立証責任を転嫁していることですね。即ち、民法709条の不法行為責任では、請求者が損害の発生について役員に故意・過失があったことを立証しなければなりませんが、請求者が監査報告の虚偽記載を主張し立証すれば、監査役の任務懈怠行為及び悪意・重過失を主張立証する必要がなくなり、監査役は自己が無過失であることを立証しない限り、その責任を問われるということです。無過失の立証は一般的には困難ですね。整理しますと、請求者は任務懈怠の立証責任、故意過失の立証責任、損害の立証責任を負っていますが、このうち前者の2つの立証責任が軽減されています。<o:p></o:p>

 

<o:p> </o:p>

 

 監査役の監査報告書というのは、大体ひな形が決まっています。中小企業の簡単なひな形から、大企業・上場企業のひな形までいろいろあるようですね。ひどい例では中小企業の名ばかり監査役が、何の監査もせず判子を押すケースも多いですね。これも虚偽記載ですね。監査せずに監査報告を提出している訳ですからね。では上場している大企業ではどうでしょうか?勿論監査役会ですから常勤監査役は、一応監査をしています。しかし、同時に非常勤の社外監査役がいます。非常勤監査役の中には弁護士もいますし、それなりに有名で多忙な人も多いですね。この監査報告書にも嘘がある場合が多いですね。例えば、子会社がある企業の監査報告書は、ほぼひな形通り「子会社については、子会社の取締役及び監査役等と意思疎通及び情報の交換を図り、必要に応じて子会社から事業の報告を受けました。」と記載されています。ある会社では、会社法務専門の有名弁護士が社外監査役を務めていました。その大企業は国内外200社ぐらい連結子会社を持っています。その有名弁護士も監査報告書に捺印しています。しかし、常勤・非常勤監査役が、これら子会社とその監査役と意思疎通及び情報の交換を図っているわけ無いですよね。海外の子会社も多いです。毎週海外出張しても子会社監査等できない規模ですね。これも嘘ですね。ひな形をまねるのではなく、もう少しキチンと書いて欲しいですね。ともかく監査報告書というのは、嘘が多いですね。

Dsc_0134_3

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

監査・監督委員会設置会社制度の新設

2012-08-11 10:54:46 | 商事法務

 

 法制審議会会社法制部会は、8月1日に「会社法制の見直しに関する要綱案(案)」を公表しました。6日の日経新聞では、「多重代表訴訟、制約多く」と「社外取締役義務化見送り」の記事がメインで、監査・監督委員会設置会社制度の新設については、殆ど触れられていません。<o:p></o:p>

 

 

 社外取締役については、例外(例えば、親会社の主管部門の責任者等)を除き機能しないということは、このブログで何回か述べました。また、会社法で定めるべき事とは思われません。むしろ累積投票排除の定款規定を廃止する方がまだ機能すると思います。社外取締役とするか独立取締役とするか、その構成などは上場規則などで考えれば良いことだと思います。多重代表訴訟については、持株会社が増えているので、範囲は別として導入自体は良いことだと思います。<o:p></o:p>

 

 

 この要綱案には、変な制度の新設が盛り込まれております。監査・監督委員会設置会社の制度です。監査・監督機能強化の流れの中で、機関として監査・監督委員会を作ろうという発想のようです。現行の委員会設置会社と監査役会制度を足して半分にしたような制度というか、監査役会設置会社の監査役会を取締役会の中に入れ込んだ制度ですね。<o:p></o:p>

 

 

 監査・監督委員会設置会社では、監査・監督委員会を置く。取締役会と会計監査人を設置する。監査役は置かない。委員会設置会社は、監査・監督委員会を置いてはならない。業務執行取締役(=代表取締役+選定業務執行取締役)が業務を執行するというのが枠組みですね。

監査・監督委員会の委員は取締役ですが、委員会の過半数の委員は社外取締役、総会決議は、他取締役と区別して選任、解任は特別決議、任期は2年で、一般の取締役の任期は1年としています。<o:p></o:p>

 

 

 監査・監督委員会設置会社の取締役会の権限としては、経営の基本方針等と「重要な業務執行の決定」と既存の取締役会の職務(法3624項各号)であり、これらの決定は取締役に委任できません。即ち、監査・監督の部分以外は、既存の取締役会設置会社と考え方は一緒です。委員会設置会社では、代表執行役・執行役の選任を取締役会が行わなければならないですが、この監査・監督委員会設置会社では、執行は既存の取締役会設置会社と同じです。考え方としては、監査・監督の部分だけを切り出して委員会を新設するという発想だからですね。<o:p></o:p>

 

 

 私は、今回の会社法制部会の要綱案は如何にも、発想の乏しさ、硬直的、仏作って魂入れず、役所的と言った日本の審議会の悪い特徴が出た要綱案だと思います。

既存の委員会設置会社の制度に柔軟性を持たせれば済むことです。指名委員会や報酬委員会がどれだけ機能しているのですか、実態をどれだけ調査したのですか?会社法制部会は、多分実態調査をすることも無く頭だけで考える人が多いのではないでしょうか?<o:p></o:p>

 

指名委員会・報酬委員会でも過半数は社外取締役です。しかし、会社の事情に疎い社外取締役が、社内の誰が次の役員として良いか、社内の報酬体系を熟知して自分たちの適切な報酬額を決めてるか疑問です。結局指名・報酬委員会では、1-2人の社内出身取締役が実質決めており、社外取締役はそれに単なるお墨付きを与える役しか果たしていないのではないでしょうか。例えば、東芝の例を見てみましょう。指名委員は、取締役会長の西田さんですね。報酬委員は、西田さんと取締役代表執行役社長の佐々木さんですね。要するに、会長・社長が決めているのです(但し、東芝ぐらいの大企業になると報酬などは一定の社内ルール基準があるのでそれを基にしていると思いますが)。これじゃ従来の日本の取締役会設置会社と変わらないですね。監査委員会は、管理部門統括の前副社長の村岡さんです。即ち、取締役会設置会社で言えば、取締役副社長を退任して、常勤監査役になったということです。<o:p></o:p>

 

 

 要するに、監査・監督委員会設置会社制度という珍妙なものを作るのでは無く、機能がどれだけ発揮されているか疑わしい現在の委員会設置会社制度を変更し、これに柔軟性を持たせて、監査委員会だけを必須にして、後はそれぞれの会社に制度設計を任せれば良いことです。委員会設置会社は、米国のまねをしたものですが、米国の会社法(例えば模範事業会社法)には、3委員会等の規定はありません。取締役会は委員会を設置することができるとしか規定していないので、その会社の状況に応じたいろんな委員会を設置することができます。米国の委員会設置会社の形は会社法ではなく、New York 証券取引所の上場会社マニュアル(303A)等で、決まっているのです。取締役会の過半数は独立取締役(同マニュアルに定める独立性の要件を満たす)とする。監査委員会は、3名以上の独立取締役だけで構成、独立取締役のみからなる指名(推薦)委員会・コーポレートガバナンス委員会を設置すること、報酬委員会も独立取締役のみで構成すること等が規定されているからなのですね。

 

<u1:p></u1:p>

 今回の要綱案を見ると、日本の法制審議会・会社法制部会というのも、柔軟な発想が無い役所機関かと思います。<u1:p></u1:p><o:p></o:p>

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

事業経営者と投資ファンドの発想の違い

2012-08-01 20:55:24 | 企業一般

 

 最近は少なくなっていますが、この数年前まで投資ファンドが上場企業の株式を大量に取得し、更にTOBをかけたりしていましたね。例えば、有名なケースでは、米系投資ファンドのスティール・パートナーズ・ジャパンが2007518日、ブルドックソースに対して株式公開買付け(TOB)を開始しました。これらのニュースを読むにつけ、事業経営者とファンドとの発想の違い、行動原理の違いというものを感じます。上場企業の経営者は、ファンドの行動原理を良く理解して、取引先などの安定株主作りをしないといけないと思います。現に長期保有の個人投資家作りなどを行っている会社もありますね。<o:p></o:p>

 <o:p> </o:p>

○ 企業は、顧客に製品・サービスを提供して事業を拡大します。一つの事業を大きく育てるのに、一部のIT企業を除けば5年はかかります。特にメーカなどは、要素技術の開発期間等を考えれば、まともな事業に育つまで10年はかかります。経営者は、長期的視点が必要ですし、継続的な設備投資を考えれば十分な留保が必要です。<o:p></o:p>

 <o:p> </o:p>

 

 投資ファンドは、長期的視点に立った投資をすると口先で言っているファンドでも、34年とかの長さで考えるのが通常ですね。スティール・パートナーズの代表が、自分たちの投資は「長期的視野に立って企業価値を高めようとしている」等と言ってますが、彼らは当然投資先企業の企業価値ではなく、自分のポートフォリオの価値を優先し、最大化しようとしますね。<o:p></o:p>

 

 

 経営者に取ってみれば、ファンドから「配当を増やせ」「資産を効率的に利用しろ」等とプレッシャーをかけられても、「何言うてんね」ですね。「要求だけして誰が価値をあげてんのか」ですね。また証券アナリスト等もいろいろ言いますが、そんな雑音に惑わされては企業を経営できません。キチンとした経営者なら、外部の人にとやかく言われなくても、自分の会社の事は百も承知です。自分の会社の事を日夜考えているのです。<o:p></o:p>

 

<o:p> </o:p>

 ファンドが出来ることは限られています。企業経営など出来ません。そんな能力はありません。出来ることは、①財務リストラの手伝い(資金提供・資本/借入のDERの調整)②同業他社・相乗効果のある企業も買収して統合を計る、又は他の提携先を紹介する③経営者を見つけてきてすげ替える(但し、簡単にはそんな経営者は簡単には見つからない)の3つです。事業を育てる事など出来ません。<o:p></o:p>

 

<o:p> </o:p>

 経営者のメインの仕事は、事業を拡大し、新規事業を育て企業を経営することです。ファンドは、あくまでも利回り・IRR(内部収益率)の世界です。長期的視点で投資をしている等と言っても、しっかり儲けるチャンスがあれば、さっさと逃げてしまいます。即ち、狩猟民族ですから獲物を食い尽くせば逃げますが、事業経営者は、経営者を交替することがあっても、農耕民族ですから田圃を捨てて逃げるわけには行きません。<o:p></o:p>

 

<o:p> </o:p>

 会社を上場させるということは、農耕民族の世界に狩猟民族の世界を持ち込むことです。長期的視点の事業拡大・育成と、短期的に株価を上げてキャピタルゲイン等をファンドに与える、相矛盾する行動の世界に入ることですね。今では持ち合いの世界がかなり薄れました。昔は、銀行が資金提供した、麻布自動車(渡邊喜太郎氏)・ブーピッケンズとか、光進の小谷氏、秀和の流通株買い占めなどは「私利私欲の投資」でしたが、最近はファンドです。即ち背後に、がめついリターンを要求する投資家ですが、元はと言えば、年金基金等でみんなのお金です(ただ、今までのところは米国等の年金基金等が多いですが)。個人でもこつこつ地道に仕事をする自分と出来れば一杯お金を得たい自分がいます。少し小金ができると株式投資をしたりします。会社も上場企業になると、企業経営者という立場と、証券市場に株券を上場しているという立場も出てきます。矛盾する立場を持つというのは、個人も企業も一緒でしょうか?<o:p></o:p>

Dsc_0118_3

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする