まさるのビジネス雑記帳

勉強ノート代わりに書いています。

未上場企業の買収価格・株式の公正価格

2012-01-21 23:58:15 | 企業投資

 

○  M&A等では、企業の買収価格算出のため、企業価値を算出します。そこでは企業価値=負債資本+株主資本と考え、企業価値から有利子負債を控除したものが株式価値として、株式100%買収のときは、この算出された株式価値を基に買収の対価の交渉をしますね。

 企業価値あるいは株式価値算出には種々の方法があります。大きく分ければ、①資産価値に重きを置くStock重視の方法(時価ベース純資産等)、②フローの利益を重視する方法(EBITDAMultiple等や数字遊びのDCF法)、③上場企業の株式と比準する方法(類似業種・会社比準方式・企業比較法)、④その他の方法―①~③を組み合わせる方法(純資産+のれん方式、PER等を使用する方法等)や、配当還元などの方法ですね。<o:p></o:p>

 

○  私は、以下の点について、少し一般的な考え方と違う考えをしております。

A:企業価値と買収価格、あるいは株式の公正株価とは、混同せずに明確に分けるべきである。

B:未上場企業の株式に果たして公正価格はあるのか?<o:p></o:p>

 

 A: 私のブログでは、以前から「企業価値=付加価値額=社会への貢献度」と主張しています。付加価値額の計算式には、いろいろな方式(日銀方式、財務省方式、経産省方式等)がありますが、「人件費」や「役員報酬+従業員給与手当」が入っています。即ち、企業の価値は、株主では無く、役職員の汗と努力と情熱から生まれるからと考えるからです。付加価値額が企業価値です。

 

もし、付加価値額から買収価格を算出するなら、付加価値額のMultipleとか、今年を含む+/-2年(今年を含む3年ぐらいの角度の高い確かな事業計画での付加価値額。)の即ち5年間(過年度2年を含む)の付加価値額の合計とすれば良いと思います。<o:p></o:p>

 

<o:p> </o:p>

 B:上場企業の株式には、相場があります。企業業績のみならず、世界経済・社会環境・将来性・金融状況等あらゆる要素が株価に凝縮されます。それはそれとして一つの目安ですし、株式を購入使用とすると、その株価になります。TOBの場合は、背景事情(売却を持ちかけたとか、どうしても欲しいとか)が影響しますが、通常はプレミアムが付きますが、一定期間等の株価を基準にします。

しかし、未上場企業の株価はどのように決まるのでしょうか?公正な株価はあるのでしょうか?私は、無いと考えています。勿論評価の方式はいろいろありますし、相続等が発生したときは一定の株価を算出しないわけには行きません。<o:p></o:p>

 

株式評価の専門家という人に算出してもらうこともありますね。まあ、買主側から頼まれれば安い株価を算出します。如何にも公正に株価の算出をしたようなレポートを作って行います。売主側の立場に立てば逆ですね。まあ仮に10億円ぐらいとすると、買主側は5億円、売主側は15億円ぐらいと算出されても高い方の20億円を提示ということもM&Aの世界ではあります。でも100億円ということはありません。オリンパスのケースは別としてですね。まあ、買収・売却価格が数倍の差があるときは、話しがまとまりませんね。

買収価格は力関係と背後事情で決まります。結構大きな影響を持つのが、一番最初にどちらから持ちかけたかということです。経験から言うと、買主側が7.5億円、売主側が15億円というような、2倍の差のときでも、事情にもよりますが、交渉の末まとまる事もあります。結局、「公正な価格とは、当事者がぎりぎりの交渉を行って妥結した価格」ということですね。「公正な価格」を算出しましたという人もいますが、まあ嘘ですね。<o:p></o:p>

 

 

<o:p> </o:p>

コメント (1)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

日韓中小企業の連携を推進しよう

2012-01-15 23:32:52 | 企業一般

 

 日本の大企業の海外移転の動きで気になるのは韓国ですね。東レ、東京エレクトロンやアルバック等ですね。東京エレクトロンやアルバックは、韓国勢と組んで共同開発を行うようです。東レは単独進出でしょうか東レは、韓国中部の亀尾市で炭素繊維工場の建設に踏み切ったようです。東レの日覚昭広社長は韓国進出の理由を「電気代や労務費、税金などを勘案し世界一競争力がある工場ができると判断した」ためだと言っています。

<o:p> </o:p>

 Jetro等の資料を見ると、法人税実効税率は凡そ1/2、産業用電気料金、最低賃金は日本の2分の1から3分の1ですね。

 法人税実効税率 産業電力料金  最低賃金 FTA化率

 日本   40.69% 15.8USセント/kwh US$1386 16.5%

 韓国   24.2%   5.8           585 36.0%

韓国は、EU・米国とFTAを締結しています。従い、日本から輸出するより韓国から輸出すれば関税がゼロになる訳ですね。<o:p></o:p>

 

 サムスンやLGなど韓国勢は、液晶テレビ・パネル、半導体、ギャラクシー等のスマートフォン、太陽光発電装置、LED(発光ダイオード)、有機ELなど最先端の電子分野で日本勢を駆逐し始めていますが、まだその部品供給や製造装置の供給では、日本の技術も結構重宝されているようです。<o:p></o:p>

 

 日本ではニュースとして報道されることは少ないですが、韓国でも頑張っている中小企業がそれなりにあります。中小企業なので、独自技術のある部品産業やIT関連ベンチャーの企業が多いようです。韓国ではご承知の通り1997年に経済危機がありました。これに耐え切れた中小企業、世界競争に晒されているIT企業ですね。厳しき世界経済環境・競争ですから、生き残っている中小企業はそれなりに得意分野を持っているのです。<o:p></o:p>

 韓国は大韓貿易投資振興公社(KOTRA)を持ち、日本地域本部もあります。この組織などを通じて貿易投資振興をしています。そのIT支援センターは、新霞ヶ関ビル18階にありますね。韓国の光る技術を持ったベンチャー企業が入居しています。KOTRAだけで無く、日本では知られていませんが、韓国内で中小企業等の支援を行っている公の組織もあります。そういったところを通じて、ビジネス・企業提携もできますね。<o:p></o:p>

 <o:p> </o:p>

 それなりの技術力やノウハウを持っていても日本に拠点をもっていない韓国の中小企業も結構あるのですね。日本の中小企業とパートナーを組んで、相互補完・相乗効果を発揮して、日韓及び中国等で力を発揮できるのではないでしょうか。<o:p></o:p>

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

取締役会決議による1円ストックオプション付与は違法

2012-01-10 01:29:53 | 商事法務

 ○ ストックオプション付与は無償、権利行使価格は1円という株式報酬型ストックオプションを取 締役・執行役員・理事(一部幹部従業員)に取締役会決議だけで行っている商社があります。これは当然違法ですね。新株予約権の有利発行の総会特別決議が必要です。<o:p></o:p>     

<o:p></o:p>

 

  この条文の解釈について、会社法立案担当者は以下の様に言っています。「発行が有利発行となるか否かは、払込価額が有償・無償のいずれかとされているかとは必ずしも連動しない。払込価額が有償であっても、新株予約権の公正価値を下回る場合には有利発行となりうるし、払込価額が無償であっても、当該新株予約権の交付によってその価値に見合うだけの便益(将来支払うべき金銭報酬の減少とその他費用軽減等の代替効果)を会社が受けていると評価される場合には、有利発行とはならないこともある」<o:p></o:p>

 

 また、他の例えば報酬削減等がある場合には、有利発行とは言えない(公正発行になり総会特別決議不要)という事を言っている人もいますが、例えば、執行役員等は使用人としての地位を喪失した時点で通常の退職給付を得ていますね。それに加えて株式報酬型ストックオプションを会社から付与される訳ですから、退職金を2回もらうことになるのだと思いますね。通常の報酬に加えて権利行使価格が1円のストックオプションをもらうわけですから、上記の説に従っても有利発行の総会特別決議が必要なのではと思います。<o:p></o:p>

 

 まあ、取締役の報酬の部分は、会社法361条の総会承認(普通決議)を取得していますが、1円で行使できる訳ですから当然有利発行であり特別決議承認事項ですね。執行役員・理事への付与は、総会特別決議が必要なのにこれを取得していませんね。

 

 

 M商事は米国基準の有価証券報告書を作成していますが、ニューヨーク証券取引所には上場していません(ロンドンには上場しています)。従い、上場会社マニュアルの適用はありませんが、ニューヨーク証券取引所のListed Company Manual 303.A08 では、株主承認が必要と規定されています。以下ですね。<o:p></o:p>

 

Shareholder Approval of Equity Compensation Plans<o:p></o:p>

 

Shareholders must be given the opportunity to vote on all equity-compensation plans and material revisions thereto, with limited exemptions explained below.<o:p></o:p>

 

Equity-compensation plans can help align shareholder and management interests, and equity-based awards are often very important components of employee compensation. To provide checks and balances on the potential dilution resulting from the process of earmarking shares to be used for equity-based awards, the Exchange requires that all equity-compensation plans, and any material revisions to the terms of such plans, be subject to shareholder approval, with the limited exemptions explained below.(例外事項は省略)<o:p></o:p>

 

 ソニー(ニューヨーク・ロンドン証券取引所上場)は、行使価格をマーケット価格とするストックオプションを親会社・子会社取締役、執行役員・従業員に発行する場合でも、総会決議を取得しています。この姿勢の違いは如何なものでしょうか?<o:p></o:p>

 

  また、公開会社が有利発行に該当しないと勝手に解釈して取締役会決議によって行う場合 でも、株主に対し募集事項の通知又は公告が必要ですね(法240条)。通知・公告を行っているのでしょうか?(チェックしていないので知りませんが)

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

企業の社会的責任と会社法の規定

2012-01-02 20:24:53 | 企業一般

 

○ 企業の社会的責任ということが最近頻繁に言われています。有価証券報告書の虚偽記載、食品偽装、賞味期限改ざんなどの不祥事が多く発生していますからね。これは古くて新しい問題ですね。かつて1981年の商法改正に際し、企業の社会的責任に関する一般規定を設けるべきか議論されたようですが、立ち消えになったようです。理由としては、一般規定を設けても精神規定であり法的強制力を与えるのは困難であるとか、取締役の行為規範を曖昧にして裁量の幅を広げてしまう危険性があるとの理由からのようです。まあ、その割には忠実義務だとか善良なる管理者の注意義務も結構一般的な規定ですけれども。<o:p></o:p>

 

<o:p> </o:p>

○ 企業活動が無いと社会は成り立ちません。現代社会では最も重要な社会の構成単位ですね。また会社には、取引先、製品・役務提供先、株主、地域社会等の多くのステークホルダーが関係します。即ち、大きな会社になれば社会の公器でもあり、また社会に大きな影響を及ぼします。何かしらの会社の基本原則があっても良いのではないでしょうか。ご承知のように、民法の1条には以下のように基本原則が規定されています。民法は、当然自然人だけでなく法人にも適用されますね。

第1条  私権は、公共の福祉に適合しなければならない。

2.権利の行使及び義務の履行は、信義に従い誠実に行わなければならない。

3. 権利の濫用は、これを許さない。 <o:p></o:p>

 

○ では、このような一般規定を設けた場合、法的強制力を与えるのは困難との議論がありましたが、果たしてそうでしょうか?

 ライブドアvsニッポン放送事件の東京高裁の決定で、濫用目的をもって株式を取得した敵対的買収者は株主としての保護に値しない例として、四つの事例が挙げられています株主としての権利の濫用は認められないということですね。少し長いですが該当箇所を引用してみます。「株式の敵対的買収者が、(1)真に会社経営に参加する意思がないにもかかわらず、ただ株価をつり上げて高値で株式を会社関係者に引き取らせる目的で株式の買収を行っている場合(いわゆるグリーンメーラーである場合)、(2)会社経営を一時的に支配して当該会社の事業経営上必要な知的財産権、ノウハウ、企業秘密情報、主要取引先や顧客等を当該買収者やそのグループ会社等に移譲させるなど、いわゆる焦土化経営を行う目的で株式の買収を行っている場合、(3)会社経営を支配した後に、当該会社の資産を当該買収者やそのグループ会社等の債務の担保や弁済原資として流用する予定で株式の買収を行っている場合、(4)会社経営を一時的に支配して当該会社の事業に当面関係していない不動産、有価証券など高額資産等を売却等処分させ、その処分利益をもって一時的な高配当をさせるかあるいは一時的高配当による株価の急上昇の機会を狙って株式の高価売り抜けをする目的で株式買収を行っている場合など、当該会社を食い物にしようとしている場合には、濫用目的をもって株式を取得した当該敵対的買収者は株主として保護するに値しないし、当該敵対的買収者を放置すれば他の株主の利益が損なわれることが明らかであるから、取締役会は、対抗手段として必要性や相当性が認められる限り、経営支配権の維持・確保を主要な目的とする新株予約権の発行を行うことが正当なものとして許されると解すべきである。」<o:p></o:p>

 

<o:p> </o:p>

○ 会社法には内部統制の規定が設けられましたね(36246号)。「取締役の職務の執行が法令及び定款に適合することを確保するための体制その他株式会社の業務の適正を確保するために必要なものとして法務省令で定める体制の整備」を構築しないといけません。法令定款を遵守して企業経営をするのは当然のことですが、企業が社会で果たす重要な役割を考えれば、内向きの内部統制もさることながら、社会に貢献する積極的な方向性等の規定を会社法に設けるのも良いと思います。<o:p></o:p>

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする