まさるのビジネス雑記帳

勉強ノート代わりに書いています。

合弁事業の立上げ

2017-11-24 23:01:14 | 商事法務
○合弁相手と合弁会社(JV)設立に合意すれば、JV会社を設立しますね。JV契約で合意した内容で定款(現地語)を作成するとともに、必要な許認可・届出を行います(JV契約の別紙に定款を添付して、確定するときもあります)。国によっては、例えばインドネシアなどのようにBKPMに承認申請して「外国投資企業設立登録証」の発行を受けて定款(登録証記載の事業内容を目的とする)を作成し、定款を含む会社設立証書を作成し公証を受けます。公証を受けた日が会社設立日になりますね。
それに続いて税務の登録(納税者番号取得)・VAT登録、銀行口座開設、その他一連の手続きがあります。

○一連の手続きが終わると、合弁で製造拠点・工場を作る場合、まず土地の確保が必要ですが、外資系企業については、土地取得に制限がある国が多いですね。また中国・ベトナムのように、所有権ではなく、使用権・借地権のみというのもあります。インドネシアでは土地の所有権はインドネシア国民のみですので、土地上での事業権・建築権・利用権等を設定しなければなりません。タイやフィリピン等も外資系企業には制限があります。しかし、インドのように、外資系企業でも所有権が取得できる国もあります。
一般的に、土地の確保は時間がかかりますし、きちんとした調査が必要です。権利関係のみならず、土地の履歴、過去の使用状況、水回り、水質調査、環境規制等調査事項が一杯あります。

土地の確保と同時並行的に、土地lay out, zoning, civil engineering, 工場設計、エンジニアリング会社・建設会社への契約・発注等、役所関係の手続きがあります。ここで重要なことは、まず予定通り工事が進行しない事です。十分余裕を持たせることが必要です。予想外の事項も起こります。インドの場合は、1年で工場を竣工させると計画しても、普通は2年かかりますね。設備機器納入・設置業者との交渉・契約も、こういった遅れも考慮して締結しましょう。

○JV会社のオフィスは、JV相手のオフィスを賃借する場合も多いですね。オフィス賃借契約、Internet環境等もJV相手の協力を得ます。最初は、人もいませんので、総務(建物建設許認可申請を含む)・経理をJV相手にお願いするManagement Service契約を結びます。

○その他の契約としては、技術支援・ライセンス契約、原料供給契約、販売契約、親子ローンの提供契約(最初は資本金で賄いますが、追って結ぶ場合もありますね。その準備ですね。)、駐在員のアパート賃借契約、出向契約等ですね。

-技術支援・ライセンス契約の注意点としては、JV会社のRoyaltyの支払は、1) 租税条約で優遇された源泉税(例えば10%に軽減されています)をJV会社が差し引いて、株主(技術支援元)に送金すること、2) JV会社は、税務当局から源泉税の納税証明書を入手(都度入手できるところもありますが、3ヶ月に一度しか出さない税務署等もあります)して技術支援元に送付して、技術支援元で税額控除を受けること、3)Royaltyと技術支援の際の経費(飛行機代、ホテル代、交通費等)を混ぜない事。経費は、Royaltyの支払請求書とは別に請求書を発行すること。経費は、立替金請求書で処理する事ですね。もし、Royaltyと経費を一つの請求書で請求すると、その金額から源泉税を引いて送金することになりますので、ややこしくなりますね。

-工場ができ製品の製造が可能な状態になる前提で、将来の原材料・製品販売のために、Offtake AgreementがJV会社と株主(その子会社)等と締結される場合があります。工場で生産された製品全ての引取の契約の際には、引取価格(そのFormula)等、継続的に少しの利益が出せる値決めが重要ですね。仮にJV会社に、多くの利益が出るようでしたら配当金で株主に戻せばいいことですね。

-新設JV会社に、すぐにお金を貸してくれる銀行は無いですから、親子ローンのためのLoan Agreementや、JV会社と株主間で保証委託契約を締結して、株主から銀行に保証書の差入をお願いする、その代りJVから株主に保証料を払う旨の契約を締結する場合もよくありますね。親子ローンや保証委託は、当然出資比率に応じてSeverallyに締結します。ここで、実際上問題になるというか、避けられない問題があります。それは、株主には当然信用力の差がありますので、銀行貸出のために保証状を出しても、銀行からJV会社への貸出金利に差が生じることが起こります。まあ、これは仕方がないでしょうね。そういったところと組んでJV会社を始めたのですからね。

〇 インドは、インド企業と取引のある外国企業にも、インド税務当局への所得の申告が必要ですね。インドは、この規制がしっかりしているといいますか、いい加減にしてくれと言いますか、その後も手間がかかります。DIN(Director Identification No.)をインド企業省から事前に取らないと、インド企業の取締役になれません。DSC(Digital Signature Certificate)の取得も必要です。インドの税務申告では、会社も税務申告書に署名する人のPAN(Permanent Account No.)&DSCの取得も必要ですね。JV契約を締結しただけでは、何も始められないですね。
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中国独禁法の執行強化

2017-11-03 00:09:45 | 商事法務
○ 中国の独禁法は、2008年に施行されまだ10年も経っておりませんが、日本の企業でも課徴金を課されている例も種々あり注意が必要ですね。同法では、競争者との水平的な反競争的協定、メーカと販売者との垂直的な反競争的協定、支配的地位の濫用、反競争的合併等を禁じています。更に、再販売価格の維持の禁止、市場支配的地位を有する企業の価格設定、ダンピング、排他的取引、差別・取引拒否と不公平な取引条件要求(優越的地位の乱用)等を禁じていますね。

○ 中国独禁法13条では、水平的反競争協定の締結することを禁じています。価格協定、生産・販売制限、市場分割、新技術等の購入制限、共同ボイコット等を定めていますが、更に特徴的なことに「国務院独占禁止法執行機関が認定するその他の独占的協定。」というのもあります。ガイドラインもきちんとしていないようです。これだと、恣意的運用が可能ですね。現に摘発事例を見ると、米国、ドイツ、日本、フランス、台湾等の企業がやり玉に挙がっています。中国国内企業では、酒や粉ミルク等の再販価格維持の重要産業ではない企業の「やりすぎ」を摘発している程度ですね。やはり狙い目は、儲けている外国企業ですね。また、組立型産業、典型的には基本設計ができたあとの詳細設計で下請企業と一緒に詳細設計の検討会を行う談合体質の自動車業界ですね。自動車業界の摘発事例では、米国が有名ですね。米国では価格協定は、実際に競争を制限しているか否かを認定するまでもなく全て違法(per se illegal)で刑事罰ですね。ただ再販売価格維持行為(resale price maintenance = RPM)については、合理の原則(rule of reason)により判断され、競争制限的で無い場合は違法では無いという米国最高裁判決はでています。米国では、日本人で米国の刑務所に収監されている人が20人ぐらいいるとされています。

○ 中国の独禁法執行機関は、日本の公取と違い、3つに分かれています。国家工商行政管理総局(SAIC)は、非価格関連の反競争的協定・支配的地位の濫用・権限の濫用等を担当し、国家発展改革委員会(NDRC)は、価格関連の反競争的協定・支配的地位の濫用・、権限の濫用等を担当、中国商務部(MOFCOM)が合併規制等を担当します。つまり、日本等は一般の省庁から独立した独立行政委員会である公正取引委員会やFTCが担当するのですが、中国はまさに担当部局が担当しているところより、当然政策・担当部局の方針に従って運営されているわけですね。ですから、独立性など無い、即ち政策に沿って行われる、これが恣意的運用される原因ですね。また、非価格関連と価格関連が分かれていますが、実際の事例では、これら明確に分かれることはなく両方の要素があるため、例えば、SAICが非価格関連から調べても、ついでに?価格関連も権限を越権して調査しているようですね。

○ 課徴金(罰金)最高額は、通信用半導体の独占企業、米国クアルコムですね。ダントツの約61億元(x17円1000億円)ですね。2番目はMercedesの3.5億元です。これは車の再販売価格維持を理由としています。3番目には日本企業登場です。自動車のワイヤーハーネス等のメーカの住友電気工業で2.9億元です。そのあとは常連の矢崎、デンソー等が続きます。ただ、この調査では、日立に2014.3への抜き打ち調査で、イモずる式で判明したもので、日立は調査に全面的に協力してリニエンシー制度が適用され、免責罰金0ですね。続いて2014.8には日系ベアリングメーカ4社が狙われ、日本精工に1.7億元等の罰金を科しています。

○ クアルコムがダントツで高い罰金を科されたのは、不当な価格設定(失効済の特許にもRoyaltyを課した。クロスライセンスを否定して自分の特許のみにRoyaltyを課した。)、抱き合わせライセンス契約を締結、また不公正な販売条件を課した等の、やりたい放題をしたからですね。

○ ここ数年、中国は独禁法の執行強化を図っています。当然、事業者が海外で中国向けの価格協定・顧客分割を協議しても適用される域外適用(効果が及ぶ国の独禁法が適用効果主義)もされます。従来、独禁法は米国・EUの独禁規制が厳しいとの常識に加えて、中国が要注意国になりましね。
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