まさるのビジネス雑記帳

勉強ノート代わりに書いています。

持株会社経由の投資の得失

2013-01-27 20:43:30 | 企業一般

 

 日本企業もどんどん国際化し、中国に1つの子会社(独資・合弁等)だけ保有しているというのも少なくなって来ました。また中国のみならず、東南アジア各国に複数の拠点を持つ企業も多くなってきました。同時に、現地子会社にかなり権限を与えて、現地の事情に沿った経営を行わざるを得ない状況にもなっています。ということで、欧州・米州・中国・東南アジア等に地域を統轄する持株会社を設立し経営する例も出てきている様です。ということで、今回は地域統轄会社をその地域の持株会社として設立する場合の得失を、中国の例を中心に考えて見ましょう。<o:p></o:p>

 

 

 例えば、中国に製造拠点を設けて日本向け輸出を行っていたが、マーケットとして中国市場を狙う場合は、当然現地企業にそれなりの裁量を与えないと機能しません。東南アジアでも一緒ですね。シンガポールに地域統轄会社(シンガポールのRegional Headquarterの優遇は主として税制優遇)を設ける例ですね。ではどんな得失があるのでしょう? その他いろいろな事情・戦略があると思いますが、思いつくものだけを書いてみましょう。<o:p></o:p>

 

<o:p> </o:p>

 中国の例:

1) 中国でそれなりの製造・販売拠点等を持っている会社(中国では1つの会社は許可を受けた1種類の業務=経営範囲しか従事できないですから複数の拠点になります)は、中国政府が優遇策を打ち出し持株会社の設立促進を狙っていますね。「外国投資家が投資により投資性公司を設立・運営することに関する規定(商務部令2004年第22号)とその補充規定」に定められています。この投資性公司を保有すれば、経営範囲を広く出来ますし、傘下企業への投資、グループ内企業の原材料調達や販売、アフターサービス、傘下企業の人事労務・総務代行等の広範囲な事業範囲が認められます。<o:p></o:p>

 

2) 一方、面白いことに、中国の国有企業や私企業でも、中国では無く逆にCayman等の外国に持株会社を設立し、その傘下として中国国内に投資する例も結構ありますね。一応、元は中国企業ですが、形式的にはCayman企業ですから、中国における外資系企業としての優遇策を受け経営コストを削減するのとか、将来資金調達を香港証券取引所や米国Nasdaqに上場を行う事等を目的に、中国外で持株会社を設立する訳ですね。<o:p></o:p>

 

3) 中国では投資性公司を設立すると優遇は受けられますが、何でも許認可ですしやはり時間・労力がかかります。中国企業がやっているように、香港法人等を経由して中国に100%子会社を保有すると非常に便利ですね。香港の中間持株会社に第三者の資本を簡単に入れたりできますから。<o:p></o:p>

 

<o:p> </o:p>

 中国以外で一般的に中間持株会社を設立する得失には、どんなものがあるでしょうか?

1) メリットとしては、① 孫会社からの配当を中間持株会社で留保して機動的に再投資に回せる。②投資先国に連結納税制度があれば、投資先国のグループ全体で節税メリットが得られる。③中間持株会社の借り入れ等に親会社が一本で保証すれば、中間持株会社から孫会社への融資を行う事が出来、一件ずつ行う手間が省ける。<o:p></o:p>

 

2) 一方デメリットとしては、①持株会社の業績が悪化しない限り減損処理が出来ない。②孫会社の著しい業績悪化・撤退は中間持株会社側で処理する必要がある。

これぐらいでしょうか?

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

海外投資の資本等のチェックポイント

2013-01-13 11:41:06 | 企業投資

 

 海外で事業を行うとき、製造拠点なのか、販売拠点なのか、相互補完・相乗効果のあるパートナーがいるかどうか、経営主体は誰か等、山ほどの検討事項があります。

ステップとしては、調査を重ね「着想⇒予備計画⇒実行計画⇒現地政府許認可取得⇒会社設立・建設・操業準備⇒操業」という順序になりますね。

これらの検討の中で、お金=「投融資と配当・利子・税務という切り口」での検討も必要ですね。ということで、今回は、これらのチェックポイントについて思いつくところを列挙しました。足りないところ、漏れているところがあればご指摘お願いします。<o:p></o:p>

 

 会社を設立する場合:

(1)  投資形態:

a. 日本の本社から投資するか、海外の新設又は既設子会社から投資するか?

―租税回避国経由というのもありますが、これには既にタックスヘイブン税制もありますね。しかし、必ずしも税務のみでは無く、Singapore等にRegional Headquarterを作り分権経営を進めるというのもあります。あるいは中国に外商合資企業を作る場合、香港やケイマンに会社を作ってこれを合弁にして、中国子会社はその合弁会社の100%子会社とする形態もあります。一種の中間持株会社を作ってそこ経由100%子会社とするわけですね。こうすると既存株主間の持株変動や新規株主は中間持株会社の調整ができて簡単です。中国は許認可主義ですから、中国内の会社の持分譲渡等は、最短で23ヶ月かかりますからね。

b. 現地での優遇税制等が受けられる形態になっているか?<o:p></o:p>

 

(2) 現地税制:

a. 出資と融資の比率(過少資本問題)やその得失を検討したか?

b. 創業当初の損失想定額と期間及び繰越欠損金の期限を検討したか?

c. 適用可能な現地優遇税制は何か(中国等の様に、省・市レベルも検討必要)?

d. 親子間の取引があるときの移転価格の問題が生じる可能性の検討をしたか?<o:p></o:p>

 

 配当を受け取る場合:

a. 現地法人の日本親会社への配当をどのように考えるのか?

- 合弁の場合にはDividend PolicyLegal Reserve後のDividend Payout Ratio等取りきめ)についても合弁契約に記載する例も多い。将来の設備投資の為に留保するというのも一つの考え。

b. 平成21 年度税制改正にて、外国子会社の利益の日本国内への資金還流を促進する観点より、従来の間接外国税額控除による二重課税排除の方式に代えて、外国子会社配当益金不算入制度が導入されました。日本親会社が外国子会社から受ける配当は、その配当(源泉税控除前)の95%が益金不算入とされますが、この益金不算入制度の適用対象となる配当に係る現地の源泉税については、日本の直接外国税額控除の対象外となり、損金にも算入されないので、親子の合算で税額・税率を減らすことを検討する。<o:p></o:p>

 

 企業買収を行う場合:

a. 日本の親会社が株式・持分を取得するか、中間持株会社を第三国に作って(又は既存の第三国子会社経由)買収するか?

b.  現地に会社を設立して、その会社に資産買収を行わせるか、あるいは株式・持分を取得させるか(逆三角合併とか将来の三角合併とか)?

c.  税務上償却できない資産があるか?ある場合は、どんな圧縮方法があるか?

d. 被買収会社に繰越欠損金があるか、ある場合は、それを節税に利用出来るか?<o:p></o:p>

 

 融資・保証を行う場合:

a. 融資・資本の得失を十分検討したか?

b. 現地で過少資本の問題は生じないか?

c.  現地銀行からの借り入れに際し、親会社が保証を行い差入保証料を徴収する場合、この保証料は現地法人側で損金算入できるか?

d. 金利率・保証料(率)は、税法上の問題を起こさないレベルか?<o:p></o:p>

 

 事業から撤退(清算・売却)の場合:

a. 清算・売却に伴い、相手国で課税されないか?

b. 残余財産分配を株主にできるか?(中国では、残余財産分配金を株主へ海外送金する送金許可を下ろしませんね)

これぐらいでしょうか?<o:p></o:p>

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

海外子会社への出資・融資と過小資本税制等

2013-01-03 14:19:18 | 企業一般

 

 海外子会社に資金提供する場合、出資と融資の割合をどのように考えるか、またその税制面での扱いをどのように考えたらいいのでしょうか?また、出資を過小にして親子ローンを増やすと、親会社では利息収入を得ますが、これを規制する過小資本税制もありますので、これなども考慮に入れて、出資・融資の割合を考えないといけません。<o:p></o:p>

 

<o:p> </o:p>

 ① 親子ローンの場合、外国子会社側では、融資の対価である利息(現地源泉所得課税が発生する場合があることに注意)は、適正なものである限り外国子会社側の経費として損金算入できますが、出資の見返りである配当は、基本的には利益(剰余金)を出し、その税引後利益の処分となります。② 本邦の親会社側では、利息収入は財務収益であり、この利益も含め課税所得が発生すれば税金を支払います。一方、外国子会社からの配当については、95%が益金不算入とされ基本的には(みなし経費相当の5%を除き)課税されません。③ これは20094月より日本でも導入された外国子会社配当益金不算入制度ですね。子会社の利益配当について、日本の親会社へ配当を行った場合には、親会社が日本において課税を受けないことから、以前の外国税額控除制度のときと比べて、基本的には外国に会社を有する日本企業は全世界ベースでの実効税率の引下げを行うことができるようになったと言えます。しかし、外国子会社配当益金不算入制度の適用を受ける配当に課される当該国の配当源泉税は、日本の親会社においては、当然損金不算入であり、また外国直接税額控除の対象外であり、配当源泉税が課される国に子会社を有する場合には、その分だけ(源泉税が課されない場合と比べて連結ベースで考えれば)税率が高くなるということが生じます。また、融資の利息支払いも現地源泉所得課税が発生します。こういった事等を総合的に検討する必要がありますね。<o:p></o:p>

 

<o:p> </o:p>

 過小資本税制(thin capitalization rule)とは、親会社が外国子会社を設立・保有する際に、過度に資本を小さく設定して、必要な資金を親会社からの借入金で賄うことで、親会社への利息支払いを多くし、法人税課税を回避する行為を防ぐための税制ですね。米国では、負債対資本の比率を1.51.0としています。しかし、新興国、例えばインドネシア、インド、ベトナム等では、まだ明確な規定は無いようです。<o:p></o:p>

 

<o:p> </o:p>

 尚、配当の益金不算入を受けられる外国子会社とは、以下の要件を満たす外国法人を言います。① 日本の親会社により、発行済株式・持分等の25%以上の株式・持分等を保有しており、② かつその保有期間が配当の支払義務が確定する日以前6ヵ月以上継続していることですね。<o:p></o:p>

 

<o:p> </o:p>

 中国の場合を見てみましょう。ご承知の通り、会社の設立、組織機構変更、株式・持分保有者変更等全て、管理監督当局の許認可が必要です。投資の総額、資本金の額を最初から規制しています従い、中国子会社では過小資本税制はありませんね。

投資総額 US$3.0m以下  最低資本金比率 70%

 3.0m超~10.0m以下          50

   10.0m超~30.0m以下          40

   30.0m超~                1/3<o:p></o:p>

 

投資総額(Total Investment)及び登録(注册)資本の額(Registered Capital)は、許認可証である批准証書(批准?? pizhun zhengshuCertificate of Approval)に記載されています。また、この批准証書(&営業許可証=???照 yingye zhizhao、資本検査報告=???告、その他)は、あらゆる許認可申請のときに必要ですから、出資・融資の割合は、上記の範囲にしないといけませんからね。中国は、賢い人(がめつい人?)が多いので、こういう規制も導入済みですね。

<o:p></o:p>

Dsc_0166_2

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする