まさるのビジネス雑記帳

勉強ノート代わりに書いています。

法務部の怠慢とプロ意識の欠如

2007-09-26 00:33:07 | 企業一般

       私は時々大企業等の法務部の人とやりとりすることがあります。契約書作成の時などが多いですね。そのとき気になることがあります。勿論、皆さんがそうだとは言いません。優秀な人も多いとは思いますが。

     一般的な特徴は、①まず、タイムリーな返事が来ない。②細かいことに拘る。③殆ど意味のないことを書きたがる。等でしょうか。

・ ともかく、スピードが遅いですね。スピードという重要な競争力が無く、知的ワークの効率性と言う点で、効率を上げようとする意識・向上心も乏しい、更に法務部というのは社内の営業等にたいするサービス機関ですが、サービス精神も乏しい場合も多い。役所化・官僚化している場合も多いですね。ひどいのになると、「法律的に言いますとか。諸説がありまして」等と言って適当なこと言ってごまかす人もいます。

○ 最大の欠点は、適切にあるいはタイムリーに返事が来ないことです。簡単な契約書作成でも、直ぐに1-2週間の時間がたってしまいます。読んでコメントするだけでも、すぐにはしません。契約書を読んで、誤りはないのか、法律的に重要な漏れはないのか、いろいろ頭を巡らします。何度も時間をかけて、一生懸命考えた末、「もしもの場合等とか」の条項を入れます。しかし、こんな条項はめったに発動されることはありません。つまり時間をかけて考えた条項などは滅多に使われません。これ無駄だと思いませんか?トラブルは、それなりに起こるかもしれませんが、大半は営業が交渉で解決します。裁判になるケースなど件数的には極めてまれです。

○ また細かい事やあまり意味の無いことを記載することもあります。例えば、英文の契約で言えば、Headings/Notice等、決まり切った文言を追加したりします。弁護士もこんなくだらない文言を、いろいろ追加するときがあります。まあ、弁護士の場合は、報酬稼ぎというつまらない目的もあるかもしれませんが。あるいは、「知的財産」とは何かとかの定義を書いたりします。添付に例えば契約の目的である特許権や著作権等特定しているのにですね。

       法務部の人は、例えば契約書で「納期限遵守の条項」等を記載しますが、契約書のドラフト作成作業自体タイムリーに行っていない事が多いですね。また何時までに行うという回答もしないケースも多いですね。私に言わせれば、「基本的姿勢・態度がなっていない」ということです。確かに、ある程度の経験も必要です。新米の人などは自分で抱えてほったらかしにせず、周りの先輩などにもお世話になって、きちんと対応するようにして欲しいですね。

       契約書で重要なことは、ほんの2-3条です。それと添付書類に開発内容や代金支払時期などを書く場合は、これも重要ですが、別にこれは法務部が作成する契約文書ではありませんね。営業が決めてきます。契約は大抵類型化していますから、それ程頭を使わなくても作成できます。ライブラリをきちんと整理しておけばコピー&貼り付け、&多少の修正で殆ど作成出来ますし、それで十分です。一応出来上がったのを何度も考えても、そんなにかわるものでもありません。所詮完璧な契約書はないし、完璧にしようとして、いたずらに時間を浪費するのは避けて欲しいと思います。

       例えば、下請けへの発注契約など、下請側では、原材料を手当したり、生産計画を立て人員配置計画も立てています。契約書が出ないからと言って製作開始を遅らすわけには行きません。納期の厳守も求められます。法務部の業務遅延により、発注時の書面交付義務が遅延するときがあります。これは下請法違反ですね。法務部が、法律を遵守しましょうねという契約を書きながら法律違反をする例も有るのです。

       私は、知的労働者の生産性・効率性向上が必要だと思いますが、そういった意識が最も希薄であり、工夫が少ないのが法務部だと思っています。

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資本・損益取引と剰余金の分配

2007-09-23 15:40:49 | 商事法務

       会社法446条には剰余金の計算式が規定されています。決算期現在の剰余金は、資産から負債を差し引いて純資産の金額を出し、そこから資本金・準備金を引いた残額ですね。これは、「その他資本剰余金」+「その他利益剰余金」+「自己株式の保有額」ですね。

       また、剰余金の分配可能金額については、461条に規定されています。昔のように「利益処分」とは言わなくなりました。利益だけではなく、資本取引で生じた差益等を、その他資本剰余金に組み入れれば、これも剰余金となり、分配可能になりますね。

       私には、相変わらずすっきりしません。まあ、資本取引から生じようが損益取引から生じようが、金額は金額だし、配当の中に資本取引から生じた金額が入っても、株主が受け取る配当に色が有るわけでもないから、変わらないじゃないかといえば、まあそうですね。でもちょっと考え方がフレキシブルと言うか、アメリカの考えをそのまま取り入れた(例えば、米国などでは減資差益等も配当可能剰余金ですね)というか、筋が無いような気がしますね。

       資本取引とは、資本の増減、変動、移転など、資本を経営活動に投入し、運用すること無しに、資本が増加・減少・他の形態に転換する取引と言われています。一方、損益取引の考え方は、経営者に委託したのは元手であり、経営者はこの元手をもとに、資産を購入・手当して、製品を作り販売したり、役務を提供して収益を売るという損益取引を行い、利益を蓄積し、蓄積した利益から、留保金額を除き、配当を株主にするというのが利益処分の考え方でした。即ち、資本取引とは、株主と経営者との関係であり、損益取引は経営者と取引先(債権・債務)との関係であり、損益取引で得た利益を、経営者は株主に還元するという関係ですね。会計学では、資本取引と損益取引を、最近の動向は知り得ませんが昔は厳格に区別していた筈ですね。

       経営者は、「その他資本剰余金」から配当を出しても良いんですね。でも、これってもともと株主の元手が始まりですよね。経営者が利益を出さなくても、その他資本剰余金があれば配当ができるということですね。経営者の経営責任を曖昧に出来るのではないでしょうか。もちろんBSへの表示の段階では区別して表記されていますから、わかりますけど、すっきりしない考え方だと思います。

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新株発行でも無増資株式交換は可能?

2007-09-18 00:24:25 | 商事法務

       今回の話は、株式交換完全親株式会社が株式交換の為に新株を発行するにも拘わらず資本金の増加をしないことは可能かという、かなりマニアックな話です。

       企業結合で、対価の柔軟化が5月から始まりました。従い、合併でも株式交換でも、少数株主とか、いやな株主とか排除したい株主等を、子会社から追い出す場合には、現金合併等を行うことが出来るようになりました。一般的に、株式交換は、まったく見ず知らずの会社を完全子会社にすることはないですね。従来からビジネス、人的、資本的に関連する、例えば子会社を完全子会社にする例が多いと思います。しかし、例えば非公開の子会社の経営の自由度を向上させるために少数株主を排除したいが、一方で親会社は上場企業なので、少しぐらい親会社株式を交付しても親会社としては経営の影響を受けないとか場合ですね。

     新株発行を行うけれども資本金を増加させたくない(1株利益は減少する)、また株式交換を実施して100%子会社するが、現金のCash Out を行いたくないという場合、資本金を増加させずに行うことは可能かという事ですね。

     株式を100%取得して、親子合併する場合などは、無増資合併しますが、合併するといろいろ、事業形態が違うとか、組織運営が複雑になるとか、人の統合が難しいので、100%子会社としておきたいときに使えますね。

○ 法445条では株式会社の資本金の額は、原則払込み又は給付をした財産の額とするが、その額の1/2以下の額を、資本準備金として計上することができる、としています。(従いこの規定を利用して、9億円で会社を作っても、半分を資本準備金として大会社になるのを避ける事が出来ます。)

       一方計算規則68条は、ぐじゃぐじゃ規定していますが、自己株式の事を考えなければ「株式交換完全親会社が交付した株式の時価の範囲内で、交換契約の定めに従い、完全親会社の増加資本金の額及び増加資本準備金の額を決め、交付株式の時価から増加資本金の額及び増加資本準備金の額を控除した残額をその他資本剰余金の額とする」と規定しています。

○ 法445条は、株主となる者の払込又は財産給付が必要です。しかし、株式交換の場合は、払込等はありませんね。あくまでも株式の交換です。従い、この規定に縛られる必要も無いと考えられます。規則68条には、「増加資本金の額及び増加資本準備金の額を」まず決める必要があります。

従い、新株を発行しても、増加資本金の額 0円、増加資本準備金の額 0円と決めてしまえば、残り全額を「その他資本剰余金」と計上出来るのではないかと言うことです。勿論株式交換契約書の中に記載する必要がありますが。

  

→法令を見ますと、別に、駄目という規定もなさそうなので、こういった変則的な処理も可能だと思います。

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企業買収ー企業価値基準の判断者の適格性

2007-09-13 23:55:14 | M&A

○ 買収防衛策の発動については20055月の経済産業省・企業価値研究会レポート(P83)によって方向付けられました。即ち、買収防衛策は、企業価値を損なう買収提案を排除するものならOK、高める場合は防衛策を発動しないという「企業価値基準」が適切であり、これをより明確にして企業社会が共有する常識とすることが必要としています。また企業価値を損なうか、防衛策を解除するか否かは、本来なら株主総会で株主が判断すべきであるが、有事では総会を迅速に開催出来ないので、経営者の判断に委ねざるを得ないと述べています。続けてこの基準に沿った防衛策の工夫として、1) 平時導入・開示・説明責任を果たすこと、2) 総会決議で消却可能なものであること、及び3)有事における取締役会の恣意的判断がなされないように、独立社外取締役等のチェック・客観的な解除要件の設定、又は総会の授権といった工夫をすべきとしています。

○ 防衛策の典型はライツプラン(ポイズンピル)ですね。例のTBSでは買収者(楽天)20%超の株式を取得したりTOBをかけたりしたら、防衛策発動すべきか企業価値評価特別委員会」で検討することになっており、先般一応の回答を出しました。20%を少しぐらい超えても楽天は何も出来ないし、先の株主総会でも既存株主はTBSの味方だから、今ここで荒波を出すこともないということで、「濫用的買収者」というレッテル貼らなくても良い。ちょっと静観がすればどうか。わざわざ臨時株主総会開催してもお金も大変だしということですね。この特別委員会のメンバーは、毎日新聞社の北村社長、石油会社の会長、元銀行&現郵政の社長、弁護士、公認会計士&法科大学院教授の方ですね

○ ここでの疑問です。企業価値基準の判断者に判断する能力といいますか、判断の基礎となる知識・経験はありますか?私はそんな判断を適切にする能力が、株主あるいは独立社外取締役等にあるとは思いませんね。

・ 株主は、経営・事業のプロに経営を委託しているわけですね。即ち、自分ではどのように価値を上げられるかわからないから、現経営者に価値上昇(結果として株価上昇・増配を期待)を委託しているわけですね。

・ 新聞社・銀行・石油会社の人が放送とITについての深い経験・知識があるはず無いですよね。即ち普段当該事業に従事していない人に適切な判断がどれだけできるか疑問です。判断材料として、自分を指名してくれた会社からの説明・資料の他に、今回は買収者側の楽天ともインタビューしたようですけれども。まあ、独立性のある社外人とは言えないですよね。独立性を装う社外人だとは思いますが。特にこれから新規にビジネス開拓していく場合等は、専門家でも企業価値を発揮できるかわからないですね。例えば、松下電器がMCAを買収したり、NTT Docomoが海外の通信事業者に莫大な金をつぎ込みましたけれどもうまく行きませんでした。事業をやっている者自身でもなかなか難しい問題ですね。結局は、屁理屈を並べるにせよ、最初から結論を決めて、周りの状況を見て、買収防衛策発動の要否を、被買収者の立場から見て理屈を探すのが実態ではないでしょうか?

○ 実際に価値が向上するにはうまく行って2-3年はかかりますね。放送とITの融合と言われると一見良さそうですがビジネスは地道な積み上げでしかありませんし、知恵も出し汗も出し痛いところかゆいところもきちんと抑え、リスクを背負って推進し徐々に成果が出てきます。うまくいけば価値が上がりますね。(うまく行かないケースも多いですが)。2-3年先には現経営陣が交代している場合もあるかもしれませね。

現経営陣や敵対的買収者は、自分のビジョン・戦略等を株主・独立社外取締役等の素人に説明して、価値が上がりそうだという気にさせないといけません。企業価値が上がるか否かの判断を仰ぐわけですね。

1) これに対して、判断能力の適格性に疑問のある株主の多くは、企業価値基準ではなく、株価が上がって儲かるか(下がっても儲けるプロもいますが)否かを基準に判断する場合が多いのではないでしょうか。しかし、日本の株主は、時として株価だけで判断しません。狩猟民族的なやり方は嫌いだし、攻められている側を助けたいという気持ちも働きますので、米国の様に株価だけで判断しない場合もでてきます。複雑と言いますか、外国人にはちょっと不思議に思えるかもしれません。

2) 判断能力の適格性に疑問のある独立社外者・取締役等は、会社から指名されている訳ですから、普通なら現経営陣の顔を見ながら、その意向を尊重して(建前上は企業価値が上がるとか毀損されるとかの理屈を整えて)判断する可能性が強いということですね。

これって「企業価値基準」なんでしょうか?私には、「やらせ」に見えますけど。

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コーポレート・ガバナンスの効率性

2007-09-09 23:20:17 | 商事法務

○ 東大の神田教授(の『会社法』)によれば、「コーポレート・ガバナンス(企業統治)とは、どのような形で企業経営を監視する仕組みを設けるかという問題であるが、不正行為の防止(健全性)の観点だけでなく、近時は企業の収益性・競争力の向上(効率性)の観点からも、ガバナンスのあり方について世界的な規模で様々な議論がなされている。」と言われています。即ち前半が内部統制のこと、後半が収益性・競争力向上という、一見関連がないと言いますか矛盾しそうと言いますか、なぜこの両方が企業統治なのと疑問もわきそうですね。

・  企業統治については、米国のみならず欧州でもいろんな議論があるようですね。でも米国の議論が一番すっきりしている感じですね。即ち、会社は株主のモノである。従い株主の利益の最大化を目指して経営するものであり、その為には効率的な経営をしなければならない。しかし同時に法令などの遵守もきちっとしないといけない。株主としては経営者をしっかりモニターしないといけないけれども、実際そんなこと出来ないので、経営陣で内部統制をしっかり確立して下さいと考えれば良いと思います。

○ 会社法362(取締役会の権限等) 46号では、 「取締役の職務の執行が法令及び定款に適合することを確保するための体制その他株式会社の業務の適正を確保するために必要なものとして法務省令で定める体制の整備」の決定を取締役会の重要な業務執行としており、同5項で、大会社については、「前項第6号に掲げる事項を決定しなければならない。」としています。

・  これを受けて、施行規則100条(業務の適正を確保するための体制)を定めて、その1項には以下の条項があります。①取締役の職務の執行に係る情報の保存及び管理に関する体制 ②損失の危険の管理に関する規程その他の体制 ③取締役の職務の執行が効率的に行われることを確保するための体制 ④使用人の職務の執行が法令及び定款に適合することを確保するための体制(⑤は省略)

○  いくつかの会社の事業報告を読んでみました。施行規則に従って丁寧に記載しようとしている会社もありますね。しかし、いまいちの会社も多いです。ある企業の事業報告には「社長は、経営の基本方針を示し、具体的な経営目標を定めるとともに、経営計画を策定して効率的に目標の達成に当たっております。――経営目標を最も効率的に達成するよう柔軟な組織編成を行い、適材を配置します。」等としています。しかし体制についての具体的な記載もないし「効率的」に目標達成にあたっていますと書いていますが、「目標達成が効率的」というのはどういう意味なのでしょうか?私にはよくわかりませんね。

・  「職務の執行が効率的に行われることを確保するための体制」と規定されていますので、「効率的に行っていますとか」上記の様な意味不明の言葉が記載されています。こういった文章を読むと、ますます社内が役所的組織になって窮屈・非効率になってきているのではないかと思います。「効率的」という言葉を、事業報告に記載することが効率的なんでしょうかね?おかしいですね。

○  企業統治というのは、上記の様に、企業の収益性・競争力の向上(効率性)の観点もあるのですが、内部統制ばかりが強調されているのではないでしょうか。昔からですが、最近も企業の不祥事が報道されています。遵法は当然ですが、最近は、不祥事の影響もあり、管理部門がやたらとハッスルするというか、慎重になりすぎているというか、あまりに硬直的にすぎるというか、いろいろ社内で追加のルールを作ったりしているのではないでしょうか。困ったものですね。大企業の中には、法令の解釈も超厳格にして、法令で曖昧なときは、営業に当該行為を行ってはならない等となんでもネガティブに指示して、クリエイティブな事をしようとする営業を縛ってやる気を失わせているような管理部門もあるようですね。

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M&A-FAと弁護士の機能

2007-09-03 00:31:14 | M&A

企業間のM&Aで、対象会社が決まり交渉が始まる際に、投資銀行・証券会社等のファイナンシャル・アドバイザー(財務アドバイザー=FA)、監査法人のコンサルティング部門(CPA)及び弁護士を起用することがあります。その際の特にDD(Due Diligence)でのFA及び弁護士の機能について考えて見ましょう。尚、財務DD (Due Diligence)+場合によっては企業価値評価を行ってもらうCPAは除きます。

       企業の買収・合併等の際、最近はアドバイザーの起用が一般化してきています。M&Aのときは、起用して遺漏ないように行うのが当然という認識を持っている経営者が多くなりましたね。でもきちんと彼らの機能を見極めて、起用の可否、適正な対価・報酬で起用することが大切です(外資系投資銀行などは大規模M&Aのとき以外は、Feeの融通性はあまりないですが)。勿論、例えば合併の場合などは、合併承認総会の2週間前の日からの事前開示の備置書類に、合併契約(法782794条、まずあり得ない新設合併の場合は803条)の他に、合併対価とその割当の相当性に関する書類(施行規則18211号、19111号)も含めないといけませし、総会の参考書類にもその概要・一部を記載しないといけません。上場企業の場合などは、FA等の第三者から相当性の意見表明をもらって、相当である振りをしないといけませんので、あまり役立たなくても起用せざるを得ない場合もあると思いますが。

○ FAの機能

:

クライアント(顧客)からみたFAの機能は何でしょうか。

 顧客社内でFAを起用したと言える。―つまり、経営者やリスクヘッジの得意な管理部門、あるいはM&Aは良くわからない等とアレルギー症状を持っている社内の人等に、FAを起用して遺漏ないよう取り進めている振りが出来る。(管理部門等は、「そんな起用は不要、自分が協力する」と何故言わないのでしょう。「起用しろ」というのは「自分は無能です」と言っているようなものです)

       対象先(とそのFA)との面談をアレンジして参加し記帳してくれる。(アポ取り・記帳係り)

③ 対象企業の書類を整理して配達・送信してくれる。(書類整理・配達係り)

④ メッセンジャーボーイをしてくれる。(伝言係り)

 企業価値評価をしてくれる。(計算係り)―企業価値評価等、少し勉強すれば誰でも出来ます。当該事業の内容、機微等も分からずに、BS,PL,Cash Flow、類似会社、類似業種、EBITDA等の数字をもってきて、企業価値あるいは株式評価をしてくれますね。DCF法という数字遊びもやってくれます。

・ これぐらいが機能でしょうか。企業価値評価は別にCPAでもきちんとしてくれますね。

FAですから、M&Aの多少のプロセスは知っていますが対象企業の事業に精通している訳でもありません。どこが事業のポイントなのか重要な調査項目かも一般論しか言いません。分からないからです。特に技術が重要なメーカの場合など原価計算の事も良く知らないFAが多いのではないでしょうか。簿外負債を発見する能力などは持っていません。勿論簿外負債などは、巧妙に行っているので、その会社の中に乗り込んで数ヶ月たって、やっとおかしな事が分かる訳ですから、DD等ですぐに分かるものではないですが。

     上記通りFAの機能は雑用係りです。難しいことを行っているわけでもありません。誰でも出来ます。FAは、M&A契約が締結されると、お金を貰って去っていきます。M&Aの実行、即ち、事前開示書類の備置、総会決議・承認、債権者保護手続き(債権者異議申述の公告・催告書の送付-最近は要件が揃えば、個別催告に代えて新聞で出来るようになりましたが、等)、株券提供公告、公取への届出、登記、存続会社等の膨大な受入記帳や人事手続きは、全て当事会社が行います。

     欧米の投資銀行は、M&Aディールが盛んなときには、莫大な利益を計上します。如何に彼らの役務提供と報酬が不相当か、如何に報酬がバカ高いかの証明ですね。機能に相当する報酬で十分です。FAや弁護士などを起用する際は、いいなりの報酬を認めてはいけません。

       弁護士の機能:

DDにおける弁護士の機能は何でしょうか?結論を先に言えば、機能は殆どありません。

     「重要契約等は、弁護士さんにきちんと見て貰って」等と言う人がいます。別に見て貰っても良いですけれど、それでどうかなるのですか。全くピントがぼけていますね。

重要契約(例えば重要なライセンス契約、基本契約、仕入れ販売等の継続的契約)等は、その会社のビジネス・業務の基本構造です。従って、これをきちっとビジネスDDで調査して、その後の経営を考えないといけません。買収者等の当事者がしっかり調査すべきものです。弁護士は、法律的観点から契約を見ます。契約の内容など、技術的なものは、弁護士にわかりません。そのライセンスが必須なのか、ロイヤルティが適正か、次回の更新時に変更の必要があるのか等は経営上の重要事項でビジネスの判断です。弁護士に、重箱の隅の法律問題を指摘されても締結済みの契約を変更することはまず出来ません。

 ・法務DD等は、弁護士事務所の若手弁護士が担当します。DDを通じて勉強します。弁護士事務所から、彼らの勉強代を貰ってもよいぐらいです。

・ 私が関与したM&Aで、周りの雑音や諸般の事情で弁護士にDDをやって貰ったことが何度もあります。多額の報酬をぼったくられた記憶はありますが、一度も役だった事はありません。

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外国の法制度導入思考の転換を

2007-09-01 00:33:00 | 商事法務

前回に続いて、会社法のクレーマーです。

○ 外国の法制度・知恵・経験・ルールは勿論大いに研究すべきものと思いますが、ルール制定に当たっては、安易な「導入」ではなく、本質的な点は何かを何度も考え議論を重ねて日本に最適なルール・制度を「創設」して欲しいと考えています。即ち、「日本人による、日本の事情を踏まえた世界に誇れる会社制度・会社法・ルールを創出すること」を、日本の立法者・学者・法務関係者は目指すべきだと考えています。まあ、会計基準等は、国際的に統一されたルールの方がよいと思いますが、やはり法制度はその国の実情を踏まえて、望ましい方向性を打ち出すのが良いと思います。

○ ご承知の通り、商法は明治32(1899)に制定されました。いろんな紆余曲折があったようで、ともかく西欧の諸制度導入で近代化を計っていた政府・法典調査会メンバー(梅、穂積、富井各博士その他の方)等もご苦労をされたのではと想像しますし、先人の業績のおかげで今日があるのは十分敬意を払いたいと思います。その当時としてはそれでやむを得なかったと思います。その後、1938(昭和13)にはドイツのGmbHにならい有限会社法を制定しましたね。戦後、米国の強い影響を受け、1950(昭和25)には授権資本制度・株主代表訴訟・無額面株式などの英米法的な制度が導入されました。

○ しかし、この体質と発想が未だに残っています。相変わらずの物まね体質はなんとかならないものですかね。最近の会社法等をみると、各国でどの様になっているかを調査・検討して、日本的な味付けをして、あるいは形式だけをまねて導入しているようです。勿論各国の状況を調査し参考にするのは結構ですが、それが日本に最適か、日本の実情にぴったりか、どうも本質的な議論か欠如している気がしています。

○ 経済産業省・企業価値研究会は、2005.5.27に企業価値報告書を公表して買収防衛策のルール作りを提言しました。報告書の公表までにはわずか9回で一回2時間の議論しかしていません。わずか18時間の議論だけで、日本の企業社会に影響するルールを作ろうというのは如何なものですかね? 内容は、日本は敵対的M&A・防衛策のルールについて知恵と経験が不足しているので、欧米の例を検討して少し日本的味付けをして「導入」、しかも欧米と類似のルールを導入すればグローバルスタンダードに合わせられるという発想です。委員の方は、事務当局の用意したストーリーに乗って、一ヶ月に一回開かれる会議で単にコメントを述べただけではないでしょうか。

・ 何故、例えば週3回ぐらい時間制限無しで徹底的に議論しないのでしょうか。会社は誰のものか、企業価値とは何か、欧米のDCFDiscounted Cash Flow)という考え方自体日本に適切か、授権資本制度の枠組みや、経営陣が株主を選べる第三者割当制度の問題点もきちんと考えた上で、誰の利益をどの程度保護すべきか、どのように調整するか等を「自分の考えに基づき」十分議論すべきだと思いますね。

 私は、こういった「導入という発想」自体が気に入りません。この発想はハッキリ言って止めて欲しいと思います。自分の頭で徹底的に考え創出するという発想・態度・思考の欠如だと思います。「日本発世界に通用するデファクトスタンダードを自ら創出する」という発想の立法者・商法学者は日本にいないのでしょうか?もっと自分の頭で考えて自分の意見を持って、これを基に議論して一層努力して新しい日本に最適なルール作りを目指して欲しいと思います。

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