まさるのビジネス雑記帳

勉強ノート代わりに書いています。

内部統制―企業の役所化と非効率化

2007-12-19 00:32:56 | 企業一般

内部統制整備について、いろいろやかましいですね。大企業では、内部統制の専門の組織を作ったりして対応しようとしているところもありますね。

○ 内部統制の根拠は、会社法36246号の規定、即ち4項では「取締役会は、次に掲げる事項その他の重要な業務執行の決定を取締役に委任することができない。」とし、6号で「 ①取締役の職務の執行が法令及び定款に適合することを確保するための体制の整備、及び②その他株式会社の業務の適正を確保するために必要なものとして法務省令で定める体制の整備」を求めています。そして②を受けて、施行規則100で、①職務執行に係わる情報の保存及び管理に関する体制、②損失の危険管理に関する規定とその体制、③職務執行が効率的に行われる事を確保するための体制等が規定されています。この規定は、大会社以外は任意ですが、大会社は決定しなければならなくなりました。

       体制の整備については、企業規模、業種等の事情も勘案して、適切な体制で良いとされています。

     また、金融商品取引法の24条の44で、有価証券報告書と併せて内部統制報告書の提出義務を課し、かつ193条の2で、内部統制報告書に監査証明を受けなければならないと規定されています。

     内部統制とは、基本的に、①業務の有効性及び効率性、②財務報告の信頼性、③事業活動に関わる法令等の遵守並びに④資産の保全の4つの目的が達成されているとの合理的な保証を得るために、業務に組み込まれ、組織内の全ての者によって遂行されるプロセスをいい、1) 統制環境、2) リスクの評価と対応、3) 統制活動、4) 情報と伝達、5) モニタリング及び6) ITへの対応の6つの基本的要素から構成される、と定義されています。

     一言で言えば、企業の業務について、そのリスクをしっかり分析し、またチェック&バランスを「見える化」したプロセスコントロールを利かせて、企業の行動・財務・IT等の信頼性を確保しようとすることだと思います。しかし、実態はどうでしょうか?上場企業では、ある程度きちんとしたことをしないといけません。膨大な社内規則もありますので、これをベースに構築し、かつ継続的なチェックをしていけば良いのではとも思います。

     しかしながら、実態はどうでしょうか。プロセスコントロールの為にいろいろ社内規則を制定したりしています。何かあればまずいということで、なんでもかんでも社内コントロール部門に相談したり、法務部門や税務部門等に相談するようになっていないでしょうか。これら社内管理部門は、相談されれば内部統制強化の世の中、きちんと検討しようとしますが、サービス精神も無い、知識も経験も不足しており、タイムリーに返事もしないことも多いでしょうね。事務が滞ることは無いでしょうか。また、社内規則など一杯制定されても、読みもしないし何が書いてあるかの関心もないのが普通ではないでしょうか。会社の中には、手帳に入れられるように要点をまとめたものを作って、社員に常時携行するよう言っているところがあります。中身も読まずに携行しろというのは如何でしょうか。相変わらず、形だけ作って中身が充実しませんね。

     重要な事は、やはり経営者の高度の倫理観と企業文化だと思います。報告・連絡・相談がきちんと機能しているか。法令遵守が企業風土として定着しているのか。マイナス情報ほど直ぐに報告されるシステム・社風があるのかといったことではないでしょうか。

     施行規則10013号の規定「職務の執行が効率的に行われることを確保するための体制」等は、どこの企業の株主総会の添付書類を見ても、どうも如何かなというのが多いですね。比較的真面目に記載しようと努めている会社もありますが「経営計画を策定して効率的に目標達成に当たっております。」云々と簡単に済ませているところもあります。

「効率的にやっております。」と文章にすることが効率的なのでしょうかね。こんな文章を書いている人が、本当に「効率的」と思っているのでしょうか?不思議ですね?

  

0712031

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会社法―監査役の規定について

2007-12-13 00:53:46 | 商事法務

       監査役の職務と権限は、取締役の業務執行の法令・定款違反と著しい不当な行為をチェックすることですね。即ち、取締役の裁量的判断の妥当性のチェックはしません。監査を行い、これを報告にまとめないといけません。職務を執行する為に、調査権と子会社調査権(子会社は正当事由があれば報告・調査を拒む事が出来ます)を有します。義務としては、取締役会への出席と不正行為、法令・定款違反の事実・行為を発見したときは、取締役会(取締役会非設置会社は取締役)に報告をしなければいけません。

○ 監査役の監査の対象を、公開会社以外の会社(監査役会設置会社又は会計監査人設置会社を除く)では、定款の規定で、監査権限の範囲を会計監査に限定する事が認められています。

       会計監査人は、計算書類等の監査をする者ですので、監査対象が計算書類等ですが、対象が限られるだけで、権限としては監査役と同列に考えられますね。即ち、職務を執行する為に、会計帳簿の閲覧権を有し、報告を求めることが出来、子会社調査権を有します。

○ 計算書類等の監査等については、436で以下の様に規定しています。

1 監査役設置会社(監査役の監査の範囲を会計に関するものに限定する旨の定款の定めがある株式会社を含み、会計監査人設置会社を除く。)においては、前条第二項の計算書類(貸借対照表、損益計算書&会社計算規則91条に定める株主資本等変動計算書及び個別注記表)及び事業報告並びにこれらの附属明細書は、法務省令で定めるところにより、監査役の監査を受けなければならない。

2 会計監査人設置会社においては、次の各号に掲げるものは、法務省令で定めるところにより、当該各号に定める者の監査を受けなければならない。

 一 前条第二項の計算書類及びその附属明細書 監査役及び会計監査人

 二 前条第二項の事業報告及びその附属明細書 監査役

       会社法施行規則129では、監査役の監査報告の内容について定めていますが、同条2項では、「前項の規定にかかわらず、監査役の監査の範囲を会計に関するものに限定する旨の定款の定めがある株式会社の監査役は、前項各号に掲げる事項に代えて、事業報告を監査する権限がないことを明らかにした監査報告を作成しなければならない。」と規定しています。

○ 436条1項は欠陥規定ですね。括弧書が「ちょんぼ」です。なぜこんな書き方をするのでしょう。「計算書類及び事業報告並びにこれらの附属明細書は、監査役(会計監査限定監査役を含む)の監査を受けなければならない。」と言いながら、規則129条で、「事業報告を監査する権限がないことを明らかにした監査報告書を作成」と言っています。法律の規定を規則が変更しているとも読みとれます。矛盾していますね。

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株主の資格と株式の譲渡制限

2007-12-10 00:11:50 | 商事法務

       株主の資格を特定の者(例えば会社の従業員)に制限することは許されないとされています。しかし株式に譲渡制限をしてしまえば、実質的に株主の資格を制限できますね。発行済株式の全てを譲渡制限にして、譲渡には会社(株主総会、取締役会、代表取締役等)の承認を要するとする場合ですね。あるいは、取締役会等の承認を要する場合を制限して、例えば現在の株主以外の者、会社の従業員以外の者、または外国人に株式を譲渡する場合には取締役会等の承認を要すると定款に定めることもできますね。

       勿論、法令で株主の資格を制限する場合は許されます。株主を制限する方法、あるいは株式の譲渡を制限する方法は、①株主の資格を直接制限する場合、②一般的な方法として譲渡自体に承認を要する場合、③譲渡は自由だが、株主名簿への記載を制限・拒否できる場合の3通りでしょうか。

       その他特殊の方法として、取得条項付株式として、一定の譲渡(例えば外国人に譲渡)する場合には会社が取得条項を発動できるとする方法もありますね。

・ 国際石油開発帝石HDでは、政府(経済産業大臣)が甲種類株式たる黄金株を保有していますが、「当会社は、甲種類株式が公的主体(=国又は国が全額出資する独立行政法人)以外の者に譲渡された場合、取締役会の決議により、当該譲受人の意思にかかわらず、金銭の交付と引き換えに甲種類株式を取得することができる。なお、甲種類株主は、甲種類株式を譲渡する場合には、当会社に対して、その旨および相手方の名称を、事前に通知しなければならない。(当社定款22)」としています。

○ 具体例をいくつか挙げてみましょう。

(1)    建築基準法では、指定確認検査機関の公正中立要件の確保の為に、制限業種(建設・不動産・建築材料・工事管理業の製造・供給・流通業者)に該当する株主の有する議決権の比率は1/3以下に制限しています。

(2)    金融商品取引法では、金融商品取引業の内閣総理大臣への登録の際に株主についても申請書に記載させ欠格事由があれば、登録拒否する旨の規定がありますね。即ち法29-4では、20%(一定の場合は15%)以上の議決権を有する主要株主に欠格事由があれば、登録が出来ない即ち当該事業が出来ないという規制をしていますね。

(3)  「日刊新聞紙の発行を目的とする株式会社の株式の譲渡の制限等に関する法律」では、1条で株式の譲渡制限等の規定があります。即ち、「時事に関する事項を掲載する日刊新聞紙の発行を目的とする株式会社にあつては、定款をもつて、株式の譲受人を、その株式会社の事業に関係のある者に限ることができる。この場合には、株主が株式会社の事業に関係のない者であることとなつたときは、その株式を株式会社の事業に関係のある者に譲渡しなければならない旨をあわせて定めることができる。」としています。

(4)  放送法52条の8にも規定があります。これを受け、例えば、(株)東京放送(TBS)の定款9条では、外国人等の株主名簿への記載又は記録の制限としています即ち、株式の取得を直接制限していません。株主となってもよいが、株主名簿への記載を制限できる。即ち、会社側から株主として扱わないことができるとしています。これは放送法の規定に従っているわけですね。ユニークな方法ですね。株主となっても意味を成しませんね。上場株ですから譲渡は制限できない。自由に売買して下さい。でも株主名簿への登録は認めません。これでは取得する意味がありませんね。配当も貰えません。実に変な規定の仕方です。

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会社は誰のためのモノか

2007-12-05 13:12:46 | 企業一般

       会社は誰のものかではありません。「誰のためのモノか」です。一言で言えばステークホルダーのモノですね。即ち、主なステークホルダーは、以下の3者ですね。

1)      お客様&取引先-:お客様が気に入ってサービス・製品を買ってくれないと会社は存続しません。また、その会社は、他の会社(仕入元とか銀行等の取引先)のお客様ですから、お客様は循環するわけですね。

2)      役職員:企業の価値を創造するのは役職員以外いません。役職員が働いて付加価値を生み、価値ある製品・サービスをお客様が購入してくれてはじめて企業が存在するわけですね。

3)      株主:事業を起こす元手の提供者ですね。資本が無いと事業が出来ません。

これら3者に加え、国や地方公共団体、あるいは地域住民、投資家等も加えると、社会の為に存在する。従い、存在価値は、社会への貢献であり、また社会のためのモノ、即ち社会の公器ということになります。

       米国ではどれだけ、「会社は誰のためのモノか」という議論・考え方が確立しているのか知りません。「会社は誰のモノか」と言われると「株主のモノ」という単純な考え方が一般的かもしれません。もっとも、「株主のモノ」と考えても、年金基金等も株主ですから、周り回って従業員も間接的に所有者と言えるとは思いますが。

○ 企業価値には、いろいろな見方があります。従業員の立場から見た企業価値、顧客から見た企業価値、投資家・株主から見た企業価値があります。また、存在意義という社会学的な見方もありますが、どうも世間一般では、企業価値の単なる一面である経済的価値&投資家・株主から見た価値ばかり強調され、企業価値の極大化を、即ち、例えば株式時価総額(+有利子負債のエンタープライズバリュとかFCFの現在価値の総額等という見方もある)を上昇させることであり、これが経営者の責務であるような言い方をしている人がいます。あまりに単細胞の発想です。

       会社は誰のためのモノかを考えるときに、非常に示唆に富む理念を標榜し・体言し・実践している米国の会社があります。ジョンソン・エンド・ジョンソン(J&J)ですね。J&Jのコアバリューは、「我が信条(Our Credo)」ですね。企業理念・倫理規定として、J&Jが果たすべき4つの責任とその対象を明確にしています。↓これによると4つの責任を宣言しています。(4つ目だけ原文そのまま)

  

http://www.jnj.co.jp/group/community/credo/index.html

    

第一の責任は、我々の製品およびサービスを使用してくれる医師、看護師、患者、そして母親、父親をはじめとする、すべての顧客に対するものであると確信する。

    

第二の責任は全社員に対するものである。社員一人一人は個人として尊重され、その尊厳と価値が認められなければならない。社員は安心して仕事に従事できなければならない。待遇は公正かつ適切でなければならず、働く環境は清潔で、整理整頓され、かつ安全でなければならない。

     第三の責任は、我々が生活し、働いている地域社会、更には全世界の共同社会に対するものである。我々は良き市民として、有益な社会事業および福祉に貢献し、適切な租税を負担しなければならない。我々は社会の発展、健康の増進、教育の改善に寄与する活動に参画しなければならない。

     我々の第四の、そして最後の責任は、会社の株主に対するものである。事業は健全な利益を生まなければならない。我々は新しい考えを試みなければならない。研究・開発は継続され、革新的な企画は開発され、失敗は償わなければならない。新しい設備を購入し、新しい施設を整備し、新しい製品を市場に導入しなければならない。逆境の時に備えて蓄積をおこなわなければならない。
これらすべての原則が実行されてはじめて、株主は正当な報酬を享受することができるものと確信する。

日本の会社の中には、米国の軽薄な企業文化に染まりかけている会社もありますが、J&Jのような模範とすべき会社もありますね。

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社外取締役と企業統治

2007-12-01 00:35:23 | 企業一般

       社外取締役の起用は、コーポレート・ガバナンスで重要な意義を持つ等と言われています。取締役会にて、経営監督機能を発揮して、経営者や特定の利害関係者から独立した意見を表明し判断が下すことが出来、経営の監督ができるということらしいですね。そして、真に企業価値の向上に資するものであるという理屈です。

     独立取締役の定義・報酬・能力要件等については、日本取締役協会の社外取締役委員会が200510月に、「独立取締役コード」を公表しています。↓

http://www.jacd.jp/report/051013_01report.pdf

       1121/22日の日経新聞では、社外取締役の報酬額や低水準の出席率について記事があります。報酬額の最高は、コマツの2966万円からNTTデータやNTTドコモの様に、従業員を社外取締役にしているので報酬無しまでいろいろあるとの事です。また、出席率については「出席率が低い企業には、それでも企業統治が機能しているとする根拠が聞きたい」というコメントが載っています。また、「そもそも時間がないと分かっている人を選任するメリットがあるかの」という事も記載されています。

       私に言わせれば、そもそも(一部の例外を除き)社外取締役が企業統治機能を発揮できるわけが無いと考えています。理由は以下などですね。

1)      社外取締役は、その会社の事業が分からない素人です:社外取締役は、通常取締役会しか出席しません。会社で起こっている主なことぐらいは分かりますし、世間一般の健全な常識ぐらいは表明できるかもしれませんが、議案とされる具体的な案件についてきちんと、適法性・妥当性等について意見など表明できません。その会社の現場、現実を十分に知らない素人の意見表明です。少しぐらい勉強しても、証券アナリストの勝手な意見と同程度の意見です。例えば、三菱電機の事業報告書には、社外取締役5名全員「-- 見地から/観点から、当社経営に対する有益な発言を行っております。」と同じ文章が書いています。(独立取締役コードでは、実質的な独立性について疑義が生じやすい場合として、株式保有関係、取引関係等が推察される場合と記載されています。社外取締役でも、独立取締役とは言えない人もいますね)

2)      社外取締役は多忙な人が多い:社外取締役は、こういった経歴のりっぱな人を起用していますと社外に言える人を起用します。無名でもきっちり業務を行う事が出来る人が起用されていません。飾りの人です。こういった人は、それなりに忙しい人が多いです。事前に配布される資料等まともにしっかり読む人など殆どいないでしょう。せいぜい事務局の人の事前ブリーフィングぐらいで概要をつかむ程度です。HOYAPentaxのように、あれ程マスコミに騒がれれば、あわててキチンと読むかもしれませんが。

3)     大企業では取締役会は儀式ですね:議題について重要な案件などは実質的に経営委員会等別のところで決まっています。既に、実質が決まって、会社法上の要件を満たすためだけの取締役会で、社外取締役が意見表明しても、「ありがたいご参考意見」で、判断に影響する事はありません。

4)     違法行為は裏で行われる:粉飾は、巧妙にかつ表に出ないように行われますね。2-3人の幹部(カネボウでは社長と副社長)とその部下によって行われるのが一般的です。粉飾を行おうとする事を、取締役会等で「粉飾やりまーす」等と馬鹿なこと言う筈ないですよね。社外取締役が取締役会に出席して、話を聞いているだけで違法性・妥当性の監督などできる筈がありません。

5)     取締役会はオフィシャルな会議です:本当は多少違法あるいは妥当でなくても、取締役会の資料・議事上は適法・適正であると仮装するのが常です。例えば、取引先と組んで期末に利益操作をすることがあります。裏で買い戻しの約束をしても、社内の会議に提出する書類は、重要契約の内容等です。実は裏の覚書があって翌期買い戻しの約束をしているんですよとは言いません。翌期になって、そのとき理由が生じて新たに発生したふりをして、こっそり処理すればいいわけですね。

私も、会社を経営していましたが、社外取締役は、取締役会で雑談・世間話はしていましたが、ビジネスでは殆ど役に立ちませんでしたね。まあ、シンパ作りぐらいの意味しかなかったですね。また現在は、逆にある会社の取締役会に出ていますが、その会社の大きな動きと業績は分かりますが、貢献という意味では殆どありません。アウトサイダーが重要な意義を持つと考えること自体が誤っているのではないかと思います。

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