まさるのビジネス雑記帳

勉強ノート代わりに書いています。

監査等委員会設置会社等について

2015-06-24 23:29:33 | 商事法務
○ 今度の会社法改正の中での重要な改正の一つとして、新たな制度設計として監査等委員会設置会社制度の創設があります。実際の会社経営に従事していない頭の良い方が、社外取締役等の確保に難点があり、あまり利用されていない委員会設置会社制度を考慮して、従来の監査役(会)設置会社と委員会設置会社(=指名委員会等設置会社に名称変更)の中間的な形態の委員会を作って、ガバナンスが少しでも機能する形態として創設したようです。法務省の担当者は頭も良いので、精緻な改正内容になっていますね。しかし、私としては、またまた変な制度を作ったと思います。
 
○ H14にも、重要財産委員会という制度ができましたが、殆ど利用されてないで消えましたね。今回の制度も、いまのところまずまずの採用意向が表明されているようですが、今後どこまで普及するか疑問ですね。米国のサルまねの委員会設置会社制度ですが、米国では会社法では決まっていませんね。会社法例えば模範事業会社法では、「§ 8.25. COMMITTEES (a) Unless this Act, the articles of incorporation or the bylaws provide otherwise, a board of directors may create one or more committees and appoint one or more members of the board of directors to serve on any such committee.」ぐらいしか決まっていません。慣行の発達とNYSE等の証券取引所の上場ルールで決まっていますが、報酬・指名・監査委員会という3つの委員会を作れという硬直的な定めはしていません。日本は、なぜこんなに綿密にきちんと制度設計をするのでしょうか?お上が決めないと、民間企業は能力が無いから、手とり足とり定めてあげないといけないと思っているのでしょうか?

○ まあ、日本の企業は、取締役会の下に各種機能別委員会を独自の制度として設置して権限を与えるのは、あまり慣れていないかもしれません。でも、例えば、取締役会の下に、投融資委員会、(執行役員等の)人事委員会等を、会社法の機関ではありませんが設けていた企業がありましたけれども。では、自分で独自に制度設計するのに躊躇する企業のために、法務省・経産省共同で、研究会報告書でも作成して、いろんなパターンの委員会設置会社を設計し公表すればいかがでしょうか。昔買収防衛策作成のために企業価値研究会が、報告書を作成して公表しました。そのようなことを行って、企業に「監査等委員会」のみ必須で、指名・報酬委員会等は自由に設計できる設計例を提示して、各企業に選択してもらえば良いと思うのですが

○ 日本の会社は、トヨタ等一部を除き、(1) 自分で考えない。(2)定款も全株懇モデル通り、(3)宝印刷・プロネクサスの専門印刷会社さんのひな形通りということで、金太郎飴ですね。取締役の責任免除の定款変更でも、「取締役(業務執行取締役等である者を除く。)との間に、」とモデルに記載されると、弁護士に相談して、弁護士も、この辺のことは2流とアソシエイトクラスが考えるので、責任回避根性と知識・経験不足から、安易にモデル定款通りの定款変更を推奨します。これは改正法2条15号で「業務執行取締役等」の定義を「当該株式会社又はその子会社の業務執行取締役若しくは執行役又は支配人その他の使用人をいい、-」等と定義したからですね。
しかし、大抵の会社は、自分の会社の実態を踏まえて「業務執行取締役でない取締役」との間、と書けば十分なのではないでしょうか?こんな「取締役と書いて(業務執行取締役等である者を除く。)等という異常な日本語を使うことがおかしいのです。日本では取締役は大半が業務執行取締役ですし、数では取締役≦業務執行取締役等と常識的には考えます。括弧の中の方が広い概念という書き方はおかしいですね。

○ 監査機関についてまとめると、以下ぐらいでしょうか。
1) 監査役会設置会社の監査役会の監査役:任期4年,3名以上半数以上が社外,常勤者要、報酬は総額を定款・総会決議で個人別は協議(お手盛り可能)
2) 監査等委員会設置会社の監査等委員会の取締役:任期2年(他取締役1年)、3名以上で過半数が社外、常勤者不要、報酬は総額を定款・総会決議で個人別は協議(お手盛り可能)
3) 指名委員会等設置会社の監査委員会の取締役:任期1年(他取締役も1年)、3名以上で過半数が社外、報酬は取締役の総額を定款・総会決議で個人別は報酬委員会の協議(お手盛り可能)

まあ、制度が精緻といいますか、オタク的といいますか、ますます複雑・難解な学者の趣味の世界の会社法になっていく感じです。ですから、自分で考えて工夫などして間違っていたらと考え、猿真似金太郎規定が増えてくるわけですね。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

米国M&A Asset Deal契約の落とし穴条項

2015-06-12 23:58:32 | M&A
○ M&Aに手慣れた米国大企業の入札式部門売却、即ちAsset Dealでは、一次入札に通過すれば、売主からAsset Purchase Agreementの契約ドラフトを買主候補に提示して、二次入札価格とともに、(買主がマークアップした)契約書の修正版の提出を求められます。多くのカウンターをすれば不利に取り扱うよという脅しの文言付の2次入札手続手順書も送付されます。

○ 相手方提示のAsset Purchase Agreementですので、売主に非常に有利な内容が多いですが、その巧妙な内容に、日本の大手法律所(mhm等)の自称M&A専門弁護士も気づきませんし頼りになりません。特に以下のような実務上の重要点は、弁護士は殆ど知見をもたないので要注意です。
(1) 価格計算formulaと譲渡財産との間に差、即ち買収金額算定の根拠となった資産よりも譲渡される資産を巧妙に少なくしていることに気が付かない。
(2) Asset Dealですから、買主側で受皿会社を用意して従業員を引き受けないといけませんが、社会保険・年金等についての知見はない。
(3) 固定資産の承継や地方税である固定資産税等の税務知識もない。

○ もう少し具体的に記載してみましょう。
① Asset Dealですので、closing date現在の財産(承継資産―承継負債)の額は確定しません。事後的に確定して事後精算が発生します。買収価格としては、入札で提示した基本買収価格(Base purchase price)にclosing dateのNet (現金は承継しない)working capitalを加えて、これからclosing date debtの金額を差し引いた金額になります。
Working capitalを加える、即ちその重要な中身としてはAccount Receivables(A/R)がありInventory等の金額と合算しaccount payableを差し引いて算出します。しかし、ある契約のドラフトを見たら譲渡しないExcluded assetとして、all account receivablesと記載していました。即ち、買収金額算定にはA/Rを加えるのですが、承継対象資産からは除外されていたのです。数人のチームを組んで莫大な報酬を支払っている弁護士さんからは何の指摘もありませんでした。

② 従業員の承継については、結構詳しく記載している契約書ドラフトがあります。承継後1年間は待遇を悪くしてはいけないとか、同等のEmployee benefitsを求めるものもあります。中でも大変なのがasset dealですから年金制度の承継ができません。年金には旧制度の確定給付年金(Defined Benefit Plan=DB)と確定拠出年金(DC=Defined Contribution Plan=401(k))があります。DBなど掛金は会社負担ですが、DCは、枠組みは企業が設計しますが(日本と異なり)米国では個人拠出であり、会社は個人拠出に応じて一定限度までmatching contributionを行います。従いmatching contribution部分は、買収価格の調整でできますが、あくまでもメインは個人拠出ですので、買収会社で制度設計してその個人に加入してもらわないと継続はできません。このあたりの知見は弁護士にありません。買収会社を新規に設立する場合は、どんなに頑張っても類似制度制定までに半年は必要です。制度が無い場合は、60日以内にIRA(Individual Retirement Account)という個人退職勘定へ給付額を移管すれば、引続き非課税メリット(=課税を繰延べ)を享受できますが、各従業員個人で行ってもらうことになります(59.5歳前の引出&転職・退職に該当します)。

③ Asset Dealですので、お客様との契約の承継(契約上の地位の承継)については個別に手続きが必要となります。また許認可(製造業の場合は多いですね)についても自動で承継できるわけではないので個別承継手続きが必要です。ここで注意すべきことは、固定資産譲渡などで州政府などが譲渡税を徴収するのですが、契約書ドラフトでは、さらっと買主負担と記載していることもあります。当然お金を貰う売主負担が当然だと思いますので注意が必要ですね。

他にも、個々の契約では、いろいろ注意点が出てきますね。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする