まさるのビジネス雑記帳

勉強ノート代わりに書いています。

従業員持株制度について

2012-09-23 22:13:19 | 企業一般

 

 信託法では「信託」とは、信託契約等を締結して、特定の者が一定の目的(専らその者の利益を図る目的を除く。)に従い財産の管理又は処分及びその他の当該目的の達成のために必要な行為をすべきものとすることをいうと定義されています。一方、民法の組合とは「組合契約は、各当事者が出資をして共同の事業を営むことを約することによって、その効力を生ずる。」とされています。では従業員持株制度は、信託契約なのでしょうか、組合契約なのでしょうか?よく分かりませんね。この辺は、持株制度の管理事務を受託している証券会社の専門家にお聞きしたいです。<o:p></o:p>

 

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  従業員持株制度は、上場企業では9割以上の会社が導入しているようですが、管理事務はかなりのケース幹事証券会社に委託していますね。また、未上場企業でも導入されていますね。この場合、自社で管理事務を行っている場合も、かなりあるようです。では、従業員持株制度とは、従業員が、月ごとなど定期的に、通常は給与の一定額を天引きして拠出し、自社株を購入する制度ですね。510%の奨励金を限度額を定めて会社が出す場合が多いですね。管理事務を外部に出す場合は、その費用は会社負担ですね。<o:p></o:p>

 

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○ ○ 持株会は、法人では無いので、通常は持株会理事長に財産(出資)を拠出しま  す。信託法の定義では、財産の管理などの為に必要な行為というのが拠出の事でしょう。民法の組合では出資と言っています。この場合は、自益権、即ち剰余金配当請求権、残余財産分配請求権は従業員が有しますね。しかし共益権はどうでしょうか?即ち、共益権の中心である議決権はどうでしょうか?理事長が決めるのか、それとも個別の株主である従業員が決めるのでしょうか?またその他の共益権、即ち総会決議取消訴権や取締役の違法行為差止請求権はどうでしょうか?持株会は、奨励金を会社が出しますから、まあ総会決議取消訴権とか違法行為差止請求権などは現実的には、殆ど考えられませんが。一方、自益権でも、持株会という団体の規制がありますので、株式買取請求権を従業員が行使できるのでしょうか?結局は、持株会規則・約款あるいは従業員と理事長の信託契約にも依るでしょうが、あらゆる事を規定するのも不可能ですし、どうも厳密に規定していないケースが多いようです。ただ、現実に問題になるのは、議決権を理事長に任せるかということだけでしょう。剰余金配当請求権は、当然拠出者たる従業員ですね。残余財産分配請求権も従業員ですが、利益剰余金を一杯持って解散ということは、通常はありません。会社がつぶれるときですね。折角拠出して持株会に加入して持株を持っても、価値がなくなり、損しますね。<o:p></o:p>

 

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 信託の発達した米国では、会社法で議決権信託という制度があります。それについては、2011.8.1の私のブログ「米国会社法の議決権信託等について」をご参照下さい。模範事業会社法7.30 Voting Trustsのところに「Conferring on a trustee the right to vote or otherwise act for them」と書いています。基本的にはVoting Rightだけなんでしょうね。しかし、米国では受託者は委託者・受益者の持株の種類・数・氏名・住所をリストとして会社提出しますので、委託者は議決権行使の指図ができる筈ですね。<o:p></o:p>

 

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 日本ではどうでしょうか?株式信託の場合、株式の名義は受託者たる持株会理事長に書き換え、議決権行使も理事長がするものと約定されるのが通例ですね。ですから、基本的には、議決権はOne voiceで不統一行使はしないですね。ですから、従業員は、奨励金と配当が主目的です。また未上場企業でIPOを目指す企業の場合は、将来の上場も期待できます。しかし、一般的には一種の利殖ですね。未上場企業の場合は、退職するときは持株会も退会と規定(この規定は、最判H7.4.25民集17591頁で有効とされている)するのが一般的ですから、拠出金が帰って来ます。<o:p></o:p>

 

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 会社が出す奨励金について、地裁レベルの判例では、「従業員に対する福利厚生の一環等の目的をもってしたものと認めるのが相当」と判断されています。この判決に賛成の学者も多いですが、会社法120(株主の権利の行使に関する利益の供与)に該当するとする学者(田中誠二氏等)もいます。頭が固いですね。利殖だし、社内預金に利子補給しているみたいなもので福利厚生の一環だと考えれば良いと思うのですが。<o:p></o:p>

 

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 いずれにせよ、従業員持株制度というのは、まだまだ論点があり、会社業績に貢献する従業員への配慮という視点から進化が望まれます。<o:p></o:p>

 

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非公開会社のMBOの株式取得価格等

2012-09-17 23:55:07 | 株式関連

 

 今回は、非公開会社のMBOの株式取得価格についてです。上場企業のMBOについては、経済産業省がH19.8.2MBO報告書を出しています。正式名は「企業価値の向上及び公正な手続確保のための経営者による企業買収(MBO)に関する報告書」という長ったらしい名前です。MBO報告書では、上場企業がgoing private即ち、上場廃止を前提に行う場合を想定していますが、ここで言うManagement Buy-outは、その意味通り対象企業の経営者が、自分の持株比率を増やして、自分でコントロールするという場合を想定しています。

 

 全株式譲渡制限会社は、創業者が株式のかなりを持っていることも多いのですが、大企業が、事業企画者を社長に据えて、新規事業を始めた例も多くあります。ところが鳴かず飛ばずだったり、売上規模がいまいちで、大企業の間尺に合わないときとかに、その経営者が(大企業に戻る部署も無くなったりの事情があるときもあるけど)MBOを行ったりするときもあります。100%子会社の場合もあるけど、事業開始の時に合弁にしたり、取引先を入れて少数株主がいる場合もいろいろあります。最近は、大企業も選択と集中、あるいは上場企業の内部統制上の理由もあり中途半端な会社の整理に努めていますので、その会社の経営者がMBOをするというときに、親の方も売却に応じる例も多くなっていますね。

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 非公開企業の場合は、別に発行済み株式を既存株主から取得する場合もありますが、同時にVC・取引先等に第三者割当増資をお願いするとともに、既存株主から株式を取得する例もあります。大企業が、その会社を作るときに頼まれて、ろくにメリットもないのに、まあつきあい出資をさせられた。しかし、経営陣がMBOするので、これを機会に売却してしまおうとする例もあるわけですね。またその対象会社と取引をしている会社等が、新たに株主として資本注入してくれる場合もあります。当然既存株主からの取得では、対象会社にcash injectionされませんから、対象会社にとっては、第三者割当増資の方が良いわけですね。経営者も、既存株の取得とともに新株を引き受ける訳ですね。

 

 では、このときのMBOの買収価格は、どのように決まるのでしょうか。売却側(=主として少数株主)としての最低ラインは、簡単です。譲渡制限会社ですから、株式は簡単に売れません。自分の出資金額プラス十分な金利を載せた金額、あるいは売却時の時価ベース純資産、いずれか高い方ですね。前者は、元本保証プラスαですね。今の定期預金金利よりましです。後者は、税法の問題ですね。低額譲渡が起こらないようにするわけですね。あとは当事者の交渉ですね。売りたさの程度ですね。少数株主ががめついこと言っても、どうせ会社の経営に影響力あるわけでもないし、少数株主側が上場企業なら、四半期毎に評価しないといけないし、最低ラインだけ確保すれば売ってしまえということも、ままあるのですね。少数株主だと、独立した第三者評価機関の算定書など、多額の投資のときは別ですが、たいした金額でもないときは、これで売却お願いしますと言えば、案外最低ラインぐらいで決着しますね。

 

 上場企業対象のMBO報告書では、①株主の適切な判断機会の確保を前提に、②意思決定過程における恣意性の排除、③価格の適正性を担保する客観的状況の確保、④その他(①の見地から株主意思確認を尊重)というまとめ方をしており、MBO 価格については、独立した第三者評価機関からの算定書等を取得するとしていますね。またH1812月には当時の証券取引法の公開買付規制で改善は計られていますし、証券(金融商品)取引所の要請もありますね。MBO報告書では、企業価値の向上するMBOなら良いとしています。相変わらずの単細胞的発想です。私が株主なら企業価値の向上するMBOなら株式を売りませんね。この矛盾の説明はありません。経営者と買収ファンドが裏で、何ヶ月も前から打ち合わせて、株価下落を招く業績下方修正を発表したりする危険性は、勿論理解しますが、売り主も何か意図的・恣意的操作されているのではと思わないのでしょうかね。まあ、上場企業で、この種の問題が起きたのは、H18年の証券取引法改正前に、レックス・ホールディングの案件がありますが、その後はこういった問題は起きていないようですね。

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Vietnam_festival_20120916

 

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遵守されない守秘義務契約

2012-09-01 22:13:40 | 商事法務

 

 日本の契約書の中で、昔(2030年前)と比べて大きく進化?したと思われる契約書は何でしょうか?私は、守秘義務契約書、買収契約書、投資契約書だと思います。事業譲渡契約書や合併契約書は、それ程進化はしていません。ここで進化と言いましたが、別の言い方をすると、英米の契約書のまねをして詳細に書くようになったという事です。今回は、その中の守秘義務契約書を取り上げてみましょう。

 

○ 昔の日本の守秘義務契約書は、「秘密を守ります」という誓約書とか、「相互に秘密は守ります」という簡単な覚書が多かったですが、最近は英米の守秘義務契約のまねをしてかなり詳細に書く例も多く出てきています。詳細に、あるいは厳格に書く必要のある場合も勿論あります。当事者の意識もそうですね。例えばメーカの新製品開発情報等を外注企業に開示して共同で開発をする場合とか、ソフトウェアのソースコードを開示する場合等は、当事者もその秘密情報の大切さを理解していますから、まさに秘密保持契約です。<o:p></o:p>

 

○ しかしながら、契約書としては一通りの条文も書くのですが、どうも当事者の意識もいい加減なときもあります。何でも商談を開始するにあたり、そんなに秘密事項も無いのに、まず守秘義務契約を結ぶ場合も多いですね。まあ、これは契約書ではなく、商談開始の挨拶状みたいなものですね。書き方も、有効期間1年とかという規定が入っていたりします。一年たったら契約終了で、秘密情報をどんどん開示して良いのでしょうか?<o:p></o:p>

 

○ また、秘密保持の対象外の情報の書き方も、全く米国のまねをしている契約が多いですね。即ち、以下の様な英文を日本語にしたものですね。

The obligations of the Receiving Party shall not apply or shall cease to apply to information constituting a part of the Confidential Information which:

(a) is already known to the Receiving Party at the time it is disclosed to the Receiving Party;

(b) is generally known, or becomes generally known, to the public through no wrongful act of the Receiving Party;

(c) has been rightfully received by the Receiving Party from a third party without restriction on disclosure;

(d) is independently developed by the Receiving Party without use of the Confidential Information; or

(e) is required to be disclosed by law, court order, or administrative order.

 

 

 守秘義務契約を結んでも、すぐに会社の秘密情報を他社に漏らす人がいます。実務クラスよりも、契約遵守を求められる経営陣の方が案外守りません。また、多くの守秘義務条項の入った契約書を、いとも簡単に見せる場合があります。M&Aのときとか、自分の会社に投資家から資金を入れてもらおうとするときにVC等に手当たり次第見せる訳ですね。VCの方は当然キチンと調べないといけませんから、その会社の締結している重要契約を全部みせてもらわないと会社の状況・評価ができません。しかし、これは守秘義務違反ですね。それでまたそのVCなりとの投資契約に守秘義務条項を入れる訳ですね。投資を求める会社の人たちは、守秘義務違反を犯しているという意識はあるのでしょうか?またVC側は、守秘義務違反で重要契約書を見せてもらっているという意識はあるのでしょうか?疑問ですね。VCだから調査は当然と尊大に構えていないでしょうか?<o:p></o:p>

 

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 守秘義務契約に、違反により損害を被った場合には損害賠償の義務を入れるケースもあります。でもこんなの現実には無理ですよね。損害額の算出が出来ません。ですから、そのためには違約金とか損害賠償額の予定を入れるケースもありますが、まだそこまで記載している守秘義務契約は希ですね。<o:p></o:p>

 

 一般的に言いますと、技術情報等を扱うエンジニア等は、意識としては守秘義務を持ちますが、協調融資やみんなで赤信号を渡る投資をするVC等の金融業界というのは、どうも守秘義務の意識が低いような印象を持っています。<o:p></o:p>

 

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