まさるのビジネス雑記帳

勉強ノート代わりに書いています。

新日鉄住金の合併比率算定の問題点

2011-09-25 23:08:23 | 企業一般

 

 924日の日経新聞では、新日鉄住金合併の合併比率、即ち消滅会社である住金の株式1株に対して交付する存続会社新日鐵の株式は、0.735株であるとされたことについてのコメントが記載されています。また、両社は922日にプレスリリースを行い、合併比率について財務アドバイザー(FA)の分析概要を公表しています。今回は、こういった合併比率算定の前提には欠陥がありますので、その指摘をしましょう。また、日経新聞の記事も相変わらず不適切ですので、併せてその点も指摘しましょう。<o:p></o:p>

 

 合併比率算定について、新日鉄は、財務アドバイザー(FA)の三菱UFJモルガンスタンレー、メリルリンチ日本証券、みずほ証券及びJPモルガンの4社からフェアネス・オピニオン(=財務的見地から妥当または公正である旨の意見書)を取得し、住金はSMBC日興證券、ゴールドマンサックス、ドイツ証券及び大和証券キャピタルマーケットの4社からフェアネス・オピニオンを取得しました。日本の主なFA総出演ですね。<o:p></o:p>

 

 両社とも上場企業ですので、市場株価は一つの目安ですから当然合併比率算定の一つの方法ですね。他には類似企業比較分析とDCF法等もされています。DCF法は、前提の置き方一つでどうにでもなる数字遊びの方式ですが、米国では一般的ですので、米国かぶれの投資銀行の好む手法ですね。類似企業比較法の類似企業は、高炉であるJFE・神戸製鋼しかありませんね。他は電炉ですからね。<o:p></o:p>

 

 合併比率算定の問題点

1) 有価証券報告書等の公表データから算出します。しかし、これが同じベースで作成されていないと思います。住金と新日鉄では、給与水準・体系、年金の設計、年金の積立不足、広大な土地等の不動産の簿価の基準等が違います。即ち、財務諸表の前提が違うのです。前提が違うのに、「財務的見地から妥当または公正」とどうして言えるのですか?砂上に楼閣を築いています。<o:p></o:p>

 

2) 「フェアネス・オピニオン」という言い方もおかしいですね。これらのFAは、天下の新日鉄と住金の合併ということで、自分から各社にすり寄って起用をしてもらったものです。即ちFAのお客様だし、これらのお客からFAは報酬を得るのです。報酬をもらう先への意見書がどうして妥当・公正と言えるのですか。こんな欺瞞と誤魔化しはありません。やらせです。<o:p></o:p>

 

3) 財務的見地から妥当・公正と言っていますが、市場株価分析は、財務的見地からではありません。市場価格の分析です。<o:p></o:p>

 

4) 第三者のフェアネス・オピニオンは、きちんとやりました。適正ですよということを装うため方策です。別にFA等起用しなくても、こんな計算は誰でもできます。当然新日鉄・住金ぐらいならそういった人材は山ほどいます。両者併せて8社のFAに算定をしてもらうはやり過ぎです。これもFA間の競争・売り込みがきつくて、FAの絞り込みが出来なかったのでしょう。<o:p></o:p>

 

○日経新聞の記事:

日経新聞の記事は不適切・不正確な事がしばしばあるのですが、今回の報道もそうですね。時価総額は、住金が新日鉄の52%なのに、それでも比率は0.735になったと言っています。時価総額は、比率算定には関係無いですね。(EPSの事も記載していますが、EPSは確かに比率算定には関係してきますが)

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内部統制と監査役の権限・義務

2011-09-19 22:12:25 | 商事法務

 

 久しぶりに会社法の「けち」ですね。今回は、内部統制と監査役の権限・義務との関連がきちんと整理されていない。この辺をもっと体系的に整合性をもって整理して欲しいということです。そもそも、内部統制の制度というのは、米国のSOX法の猿まねです。ご承知の通り米国には、取締役会の委員会としての監査委員会はありますが、監査役の制度がありません。こういった制度の違いを無視して、十分な検討・議論もなく導入したのが内部統制です。勿論、内部統制の構築義務は取締役の義務ですし、監査役は監査・チェックがその権限であり義務ですから、自ずから役割は異なっていますけれども。<o:p></o:p>

 

 内部統制の目的は、1) 業務の有効性・効率性、2)財務報告の信頼性3)法令遵守、4)資産の保全ですね。取締役としては法令に記載されるまでも無く、あるいは善管注意義務・誠実義務の範疇で取り組むべきことです。<o:p></o:p>

 

 内部統制については、会社法36246号に規定しています。「取締役の職務の執行が法令及び定款に適合することを確保するための体制その他株式会社の業務の適正を確保するために必要なものとして法務省令(=施行規則100条)で定める体制の整備」。第5項で、大会社である取締役設置会社では、内部統制を決定しなければならないとしています。 私に言わせれば、法令及び定款に適合することを確保するための体制が、監査役制度だと言うことです。監査役は何のために存在するのですか?取締役になれなかった人の名誉的なポストですか? 監査役の権限また同時に義務は「法令・定款違反又は著しい不当性の有無のチェック」です。会計監査人と併せて、上記の内部統制の目的の2)と3)はチェックできます。即ち、取締役が構築し、その監査は監査役・会計監査人が行えば良いのです。また4)の資産の保全も不当なら監査役が指摘すれば良いのです。

 上記の1)の業務の有効性・効率性は、当然行わなければ国際競争に勝てませんね。取締役の当然の義務です。この業務は、工場の生産など会社の一切の業務が本来なら入るのですが、施行規則100条③には「取締役の職務の執行が効率的に行われることを確保するための体制」とされていますので、事業報告書をサンプル的に見ると、中身無しあるいは意味不明の記載が多いですね。何が言いたいねん!と言いたくなります。「職務執行の効率化の必要がある場合は、社内規定を随時見直します」(帝人)とか「取締役の業務分担を決議し、取締役の職務の執行が効率的に行われることを確保する」(東急電鉄)等と記載されています。

 会社法の監査役の規定も、きちんと整理して欲しいですね。「不正の行為」不当な事実」「著しく不当な事項」「会社の目的の範囲外の行為」これらの言葉は、それぞれどのように解釈すればいいのでしょうか? 即ち、以下に規定されている内容ですね。

 監査役の取締役(会)への報告義務として、法382は、「取締役が不正の行為をし、若しくは当該行為をするおそれがあると認めるとき、又は法令若しくは定款に違反する事実若しくは著しく不当な事実があると認めるときは、遅滞なく、その旨を報告」としています。

 監査役の総会への報告義務として、法384は、「取締役が総会に提出する議案、書類その他法務省令で定めるものを調査し、法令若しくは定款に違反し、又は著しく不当な事項があると認めるときは、その調査結果を報告」としています。<o:p></o:p>

 ・ また、監査役による取締役の行為の差止めとして、法385は、「取締役が会社の目的の範囲外の行為その他法令若しくは定款に違反する行為をし、又はこれらの行為をするおそれがある場合において、当該行為によって会社に著しい損害が生ずるおそれがあるときは、当該取締役に対し当該行為をやめることを請求することができる。」としています。

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ドイツ企業のガバナンス

2011-09-11 23:44:56 | 企業一般

 

 ドイツの社会的市場経済(Social Market Economy)について勉強しました。中国の社会主義市場経済(Socialist Market Economy)と言葉は似ていますが、全く違いますね。「コーポレート・ガバナンスと経営学」(ミネルヴア書房)(P.166)には以下の定義が記載されています。日本も、米国のまねばかりするのではなく、こういった考え方を積極的に導入すべきだと思います。

「第二次大戦後のドイツ連邦共和国における社会経済体制の基本理念。自由な経済活動に基づく市場経済を基本としつつも、働く人の生活や権利など社会的な公正も同時に追求しようとする考え方で、ドイツの経済成長を支えてきた。この考え方は、ヨーロッパ連合においても受け継がれている。」<o:p></o:p>

 

 この考え方を背景として、ドイツ型の企業モデルが形成されています。ドイツの株式会社(AG)の一番の特徴は、監査役会(Aufsichtsrat)が①強力な監督権限を持っていることと、②労働側から選任される者を監査役会メンバーに加えることの二つですね。即ち、株式会社 (AG) では株主総会で選任される監査役会構成員とは別に、労働側代表の監査役会構成員が選任されます。ドイツの共同決定法によれば、従業員が501人~2000人以下の場合には、監査役会メンバーの1/32000人超の場合には1/2を労働側から選任することが規定されています。労働側が選任する監査役会メンバーには、企業外部の労働組合代表と企業内部の従業員組織の代表及び管理職の代表が含まれます。産業別労働組合・従業員組織・管理職員が、選任委員会を組織して選任しているようです。<o:p></o:p>

 

○ 監査役会は監査・監督が業務ですから、通常の業務執行には関与しません。業務執行は、取締役会=執行役会(Vorstand)が執行しますが、監査役会は取締役の人事権(任免権)や取締役会の意思決定に対する同意権を留保できます。即ち、定款又は監査役会により、一定の取引をするには監査役会の同意を要する旨定めます。同意権は、即ち、同意しないことにより拒否権となりますね。<o:p></o:p>

  

○ 労働者側から監査役を選任するといっても、いきなり選任できるわけでもありません。労働者側の基礎的な組織がないと無理ですね。その基礎的な組織が労使協議会の制度ですね。労使協議会については、JETROWEBには以下の様なことが記載されていました。<o:p></o:p>

 

(1)労使協議会とは、1972年に施行された「事業所組織法」に基づき、労働者代表が経営参加と共同決定の権利を持つこと、及び情報開示を共有する代わりに、労働組合が事業所組織法に従うことが定められているドイツの企業内組織制度です。 <o:p></o:p>

 

(2)同法の適用対象となるのは、中堅あるいは大規模な株式会社、有限会社、株式合資会社、協同組合、相互保険会社などで、企業単位ではなく従業員5人以上の事業所単位で協議会の設置が義務付けられています。<o:p></o:p>

 

(3)労使協議会の目的は、労働者の地位に影響を及ぼすあらゆる経営の情報を開示・協議し、同意を得ることにあり、構成メンバーは開示された情報について守秘義務を負います。<o:p></o:p>

 

(4)EU全体でも1994年に欧州労使協議会指令が採択され、同指令に基づく各国国内法制化が進んでいます。 <o:p></o:p>

 

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米国企業の役員の名称・選定等

2011-09-04 18:50:01 | 商事法務

 

 米国企業では役員の名称として、CEO=Chief Executive Officer(最高経営責任者), COO=Chief Operating Officer(最高執行責任者),CFO=Chief Financial Officer(最高財務責任者)等が一般的ですね。まねし好きの日本企業も、最近はこれに倣ってきていますね。この他、CIO=Chief Information Officer とか、CTO=Chief Technology Officerもありますね。では、米国の有力企業の多くが形式的な本社を置くデラウェア州会社法では、どのように定めているのでしょうか?同会社法142条の抜粋は以下ですね。

 

○ 142 Officers: titles, duties, selection, term, failure to elect ; vacancies.

 (a) Every corporation organized under this chapter shall have such officers with such titles and duties as shall be stated in the bylaws or in a resolution of the board of directors which is not inconsistent with the bylaws and as may be necessary to enable it to sign instruments and stock certificates which comply with §§ 103(a)(2) and 158 of this title. One of the officers shall have the duty to record the proceedings of the meetings of the stockholders and directors in a book to be kept for that purpose. Any number of offices may be held by the same person unless the certificate of incorporation or bylaws otherwise provide.

この規定では、タイトルも付随定款や取締役会決議で定めることができるとしています。ですから、別にBylawsCIO=Chief Inchiki Officerを最高経営責任者とすることもできるかも?。日本でも会長、社長、副社長、専務、常務などの呼称は、定款で定めますが、会社法で別に決まっているわけではないですね。ですから隊長でも、酋長や組長でも好きなように定めれば良いのですが、現実的には慣習的呼称がありますから、あまり突飛な事も無理ですね。<o:p></o:p>

 

(b) Officers shall be chosen in such manner and shall hold their offices for such terms as are prescribed by the bylaws or determined by the board of directors or other governing body. Each officer shall hold office until such officer's successor is elected and qualified or until such officer's earlier resignation or removal. Any officer may resign at any time upon written notice to the corporation.

上記の通り、役員の任期についても、特に法律には規定は無いようです。ただ実際は付随定款で、一般的に1年と定められ、定時株主総会終了後の取締役会で役員は選任されますね。

 

 役員の選定についてですが、米国では取締役会によって選定されますね。尚、少し話がずれますが、取締役会の主な業務は、現在では、①役員の選定、②利益配当の決定、③株主総会の招集とその提出する議案と書類の決定などですね。日常業務の決定は取締役会の委員会が行なっているということですね。また、日本でも、取締役会は、会社法の規定の関係で決議していますが、実際は経営委員会、投資委員会、人事委員会等の組織を設けて日常的業務処理を行ない、取締役会では、実質的な討議を行なわず形式的に議案を上程してぽんぽん承認して議事録を残す議事録作成機関になっている場合がありますね。米国では、委員会が決めたことはそれでファイナルとして、後付の形式的な取締役会議事録作成はしていないようですね。<o:p></o:p>

 

○ 元に戻って、模範事業会社法では、どのように規定しているのでしょう。基本的にはデラウェア会社法と同じですね。参考までに以下の通りです。ただ、カリフォルニア会社法等は違う規定の仕方をしているようですので注意が必要です。

§ 8.40. OFFICERS

(a) A corporation has the officers described in its bylaws or appointed by the board of directors in accordance with the bylaws.

(b) The board of directors may elect individuals to fill one or more offices of the corporation. An officer may appoint one or more officers if authorized by the bylaws or the board of directors.

(c) The bylaws or the board of directors shall assign to one of the officers responsibility for preparing the minutes of the directors’ and shareholders’ meetings and for maintaining and authenticating the records of the corporation required to be kept under sections 16.01(a) and 16.01(e).

(d) The same individual may simultaneously hold more than one office in a corporation.

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