まさるのビジネス雑記帳

勉強ノート代わりに書いています。

50-50合弁会社の問題点

2014-03-29 15:47:01 | 商事法務

 

○ よく2社が組んで、50%-50%の合弁企業を設立し事業を開始します。合弁契約の内容としては、出資比率50-50のみならず、取締役派遣人数も例えば、双方とも2人同数計4人指名できると定めます。この場合の問題点として、意思決定がスムーズに行いませんし、事業の推進に不都合が生じます。「双方が、そのノウハウ・技術・人材・資金を対等に出資して、協力して合弁会社を起こして、大きな事業を育てよう」ということは、総論としては良いでしょうが、各論はうまくいかないケースが非常に多いですね。結婚と一緒ですね。創業は易く守成は難しですね。

 

例えば、A社は合弁会社の会長、B社は社長を指名できると決めます。これは、会長・社長は普通一人だからですね。名前は、会長・社長ですが、総理大臣とか社長を2名選出したらどうでしょうか?(会社法上はできますね。定款に、当社は社長を2名選出すると記載すればですね)会社は動きませんね。そういった事が、現実に起こっています。

 

○ 経営支配とは、人(派遣役員・技術者等)、物(提供技術・原料供給/販売先・ノ ウハウ)、及び金(出資金、融資/保証金額)によりなされます。お金だけで考えるべきものではないですね。しかし、お金が重要な決定要素ということで、連結会計基準(227項)では、まずお金で取得する株式の議決権の基準で考えますね。即ち、「議決権の過半数を自己の計算において所有している企業」を連結対象子会社にします。では、50-50の場合は、例外はありますが、基本的には合弁会社は、両方の株主にとり持分法適用会社となり、連結子会社とはなりません。これまた中途半端ですね。 

○ 50-50合弁の場合、Deadlock 条項をどの様に書けば良いか悩みますね。いい解決方法が無いからです。企業が組織的に動くには、指揮官が必要ですが、指揮官が2人居れば、うまく動かないのは常識なのに、50-50合弁を作ってしまうのですね。私に言わせれば、合弁を作るときにハッキリどちらが主導権を握るか(どちらが過半数の議決権を握るか)、きっちり決めて作ること。50-50で、双方が譲歩しないなら、そんな合弁は作らないぐらいでないといけないと思います。大体、上がお互い握手してなあなあで作った後に、いろいろ深刻な問題が出てきて、下が苦労するのが多いですね。

○ 合弁会社の取締役会等がDeadlockに直面したときの解決方法については、2013.5.12の「合弁契約のDeadlock条項」をご参照下さい。欧米の契約では、持株全部を買うか・売るかというドラスティックな方法が多いですが、もっと中間的な方法があってもよいのではと考えています。また、Deadlockを生じさせる問題には、深刻度・程度の差があります。そういった視点から、いくつかのステップを合弁契約に書いておくのも手だと考えています。

・問題点としては、合弁会社の存続に重大な影響を及ぼす事項かどうか?この場合なら、Yes/Noをハッキリさせる、即ち合弁解消の方法を入れることだと思います。

しかし、それ程重大な問題でない場合には、持株の一部買取・売却のcall optionput option条項を記載しておき、特別決議を可決出来ない議決権比率への調整ぐらいでいいのではないかと思います。

あるいは、特別決議を可決できる持株の売却・買取オプションを入れておいてもいいですね。

外国では、議長にCasting Voteできる権利を与える方法もあります。当事者が話し合っておれば、いたずらに時間が過ぎます。これなら手っ取り早い方法ではないでしょうか?

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英文契約に見られるおかしな条項

2014-03-15 22:36:05 | 商事法務

 

  • 英文契約には、一般的によく入れる条項があります。以下等ですね。

    Jurisdiction, Arbitration, Assignment, Breach, Termination, Cancellation, Confidentiality, Force Majeure, Governing Law, Heading, Language, Modification, Entire Agreement, Notice, Severability, Waiver等です。これら一般条項の解説をしているセミナー等も開かれています。英文契約を作成するときに、コピー&ペーストで、過去の例をあまり考えもせず持ってきたりしている例を見ます。これらの中で、時々見かけるおかしな例を2-3あげて見ましょう。

     

  • Termination

    If either party (“defaulting party”) should be dissolved, liquidated or become insolvent or make arrangement with the creditor, the other party shall be entitled to terminate this Agreement forthwith without giving any notice to the defaulting party. ? という条項がありました。通知無しに契約解除できるということですね。でも、通知ぐらいしないと、契約が解除されたか相手方にわからないでしょ。

     

  • Notice:

    All notices and other communications which shall or may be given under this Agreement shall be made in English Language by registered airmail or telefax.--記載した契約のやり取りをE-mail送ってきた会社がありました。

    E-mailと書いて欲しいですね。勿論、法律上の通知等は、registered airmailとすべきかもしれませんが。あるいは、courierでも良いですね。

     

  • LanguageEnglish等と入れる場合:

 

This Agreement shall be executed in English, and such English text shall prevail over any translation thereof.まあ、こういった条項を入れてはいけないという事も無いですけど、あまり意味が無いですね。勿論、少し意味ある場合もあります。仲裁地をフランスパリや中国上海で行う場合、仲裁は英語で行うという条項ぐらいは少しは意味があるかもしれません。

 

  • Assignment:

    簡単な例文としては以下ですね。 None of the parties shall have the right to assign any of its rights or liabilities under this Agreement or this Agreement to any third party without the prior written consent of the other party.この条項は良く見ますね。でも、合弁契約でグループ企業間等で起こる例はありますが、普通の取引契約ではあまりありませんし、仮に行う必要が出てきたときに合意の下に行えば良いですから、あまり意味のある条項ではないですね。親子間の例外を規定するなら、以下のように追加しておけば良いことですね。However, the parties hereto shall be entitled to assign this Agreement to any of its wholly-owned subsidiaries subject to the consent of the other party

     

 

  • NDA(Confidentiality Agreement/Secrecy Agreement)Assignment条項を入れている例を見ます。秘密保持契約に基づき相手に秘密情報を開始します。それに基づき技術情報などをDVD等に格納して開示します。NDAAssign 条項は意味が無いです。契約に基づき開示された情報をAssignする第三者に開示するかどうかが問題なのです。私はNDA契約にはAssignmentの条項は入れません。

  • 契約の性質によっては、Prohibition of Assignment and sub-licensing等と明記すべきですね。一般条項といっても、例文をそのまま持ってきてはいけないのです

  •  

 

  • 弁護士さんに英文契約書の作成を頼むと、彼らのデータベースからcopy & pasteして、不要な条項を入れて増やします(+請求金額も増えます)。また交渉まで弁護士さんにお願いすると、双方の弁護士同士、めったに使用しない条項の枝葉末節の議論を延々として、ちゃりんちゃりんと報酬を増やすことがあります。弁護士さんをきちんとコントロールしておかないと、いい鴨になりかねませんね。

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新興国との技術支援・ライセンス契約

2014-03-02 18:33:33 | 商事法務

 

  • 新興国に進出する場合、新興国企業と合弁会社を設立し、その会社にノウハウ移植の技術支援契約や特許等のライセンス契約を締結する場合があります。一般的に契約は自由と考えても良いでしょうが、注意点としては、(a)中国の場合は「技術輸出入管理条例」その他の法令で規制されている。その他の国でも(b)ライセンス料の支払いについて租税条約通りの限度税率適用の際には、受領する日本の親会社自身の現地国での登録が必要等の規制がある場合がありますのでチェックが必要ですね。

 

 

 

  • 中国企業への技術輸出の注意点は、Jetroが解説を出していますが、注意点を列挙すると、技術輸出入管理条例(強行規定)では、中国への輸入禁止、輸入制限、輸入自由技術を分類し、輸入制限技術の場合は契約締結の前に許可申請が必要ですね。しかし、民間企業の技術の場合は、殆どが輸入自由技術です。この場合は、契約は自由に締結できますが契約登録(地方政府の知識産権局→国家知識産権局)が必要で、登録後登録証が発行されます。この登録証がないとロイヤルティの日本への送金が出来ないですね。尚、ソフトウェアライセンスの場合は国家版権局への登録になります。ソフトをライセンスする際に、暗号かける場合には、政府の許可が要りますし、許可は実際上おりません。つまり、中国では政府が内容を知る(盗む?)ことができる仕掛けになっているのですね。

 

1) ライセンス契約:①独占的実施許諾(ライセンサーも実施できない)、②排他的実施許諾(ライセンシーとライセンサーのみ実施OK)、③普通実施許諾の3種類(日本は、①の専用実施権と③の通常実施権の2種類)

 

2) ライセンサーは、技術供与の正当な権限を有し、供与技術は完全で瑕疵が無く、技術目標を達成できることを保証する。(ソフトウェアはバグがあっても勿論OK

 

3) 改良技術のグラントバックの禁止(ライセンシーに帰属し、共有・無償使用も禁止)、また改良技術を開発することを禁じることも出来ない。

   4) 供与技術の類似技術を第三者から供与を受けることを制限する規定も不当制限として認められない。 

 

 5) 技術供与により生産される製品の原材料・部品等の供給元を制限することも不当  制限とされ、また生産量・品種・販売価格を拘束することも不可。

 

 

 

  • その他の国の企業への技術支援・ライセンス契約締結については、比較的自由だと思われますが、送金にあたり契約書オリジナル等の提示を求められたり、租税条約に定める源泉徴収税の限度税率(普通は10%が多い)適用に当たっては、源泉税は当然技術提供者の所得ですので、当該国での技術提供者の税務登録、更には会社だけでなく担当役員個人の税務登録、現地での税務申告などを義務付ける(インド等)とか、移転価格の証明書を提出を求められる等、契約そのものでは無く、送金・税務で規制をかけている国がありますので、種々の手続きが必要ですね。

  • では、租税条約の限度税率ではなく、普通の税率の源泉税を支払えばどうでしょうか?これについては、日本側の法人税基本通達に規制があります。損金の額に算入できませんね。即ち、1638 (租税条約による限度税率超過税額)では、「内国法人が我が国と租税条約を締結している国に源泉のある所得を有する場合において、当該所得につき当該租税条約に定める限度税率を超える税率により外国法人税を課されたときは、当該外国法人税の額のうち限度税率によって計算した税額を超える部分の金額については、原則としてその還付を受けるまでは仮払金等として損金の額に算入しない」としています。

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