まさるのビジネス雑記帳

勉強ノート代わりに書いています。

米国の辞任・退職契約書

2017-03-01 22:21:30 | 商事法務
〇 米国在日系企業・現地法人で、長く勤務した米国の経営幹部・従業員が、辞任・退職するときに退職契約はどの程度作成されているのでしょうか?米国企業では、幹部の退職の際には、殆ど締結されているのではないでしょうか?その契約書の中の重要規定は、Stock Optionを持っている人の、付与済(vested)のstock optionは当然として、planに従って付与予定のstock optionとその行使(exercise)をどの様にするかの規定が重要なのですが、日系企業の場合は、仮に親会社の日本企業が上場企業であってもstock optionを、現地法人の現地幹部に与えていないのが普通ではないでしょうか?

〇ということで、stock optionの規定のない、日系現地法人幹部の退職契約書は、どんな内容盛り込めばいいのでしょうか。一例を記載してみましょう。

〇 主な規定は以下ぐらいです。
・退職日:いつ辞めるのかの日ですね。役員の場合は辞任日です。これを記載しないとはじまりませんね。
-これにより、退職日までの給与は、less ordinary and necessary withholding taxes等の条件で払いますよという規定をいれますね。
- また、既に生じた給与Accrued Salary とPaid Time Off(有給休暇分の給与支払額等)も支払いますと約束します。

退職給付:日系企業の場合は、Stock optionが無いので、それに代わり今までの期間の労働の対価として退職一時金等を払う例が多いのかもしれません。
 退職年金については、有名な確定拠出年金である企業型の401kがありますね。59.5才に達すれば引き出せます。これは、退職者個人の年金(なのでportable)で、会社としては個人拠出の金額に、一定限度でmatching contributionを損金処理できますね。

・費用出費のReimbursement
:退職職員が、接待費等の立替をしていたら、それをreimburseする旨の規定も入れます。

健康保険の継続の有無:米国では、退職後18ヶ月、従来の退職者本人+家族の健康保険を継続出来ます。保険料は原則本人負担となります(他社に就職したらその時点で打ち切り)。Comprehensive Budget Reconciliation Act of 1986 ("COBRA")で決まっています。米国では、医療費が高いので、これは退職者にとり助かる制度ですね。

・Employee Covenants: 日本でも、退職時に守秘義務等の誓約書を出す場合がありますね。米国の退職契約書には詳細を入れます。
-守秘義務。Non-solicitation(引抜き禁止)。一定期間のnon-competition。規定違反の場合の救済方法。

・協力義務(退職後、会社として協力が要る場合の協力)やNon-disparagement(悪口防止)。

・Release of Claims(クレームからの解放):この中で退職者のwaiveと会社をreleaseを規定するのは、連邦法であるAge Discrimination in Employment Act ("ADEA")ですね。この規定の中に、「Employee has been given a period of 21 days within which to consider the terms of this Agreement」という規定も入れて、会社が押し付けたものでは無い。退職者の自主判断ですという趣旨の規定も入れます。

・その他、会社の財産PC等の返還。退職者が発明した特許などがあれば、それらの処置の規定も要れます。

〇 上記の規定などが標準ですが、さらに退職者は退職契約の内容を十分理解している、あるいは弁護士と(会社費用で)打ち合わせたうえで締結する事なども入れますね。

まあ、大体これぐらいでしょうか。
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