まさるのビジネス雑記帳

勉強ノート代わりに書いています。

資本金・準備金減少と債権者保護手続②

2009-11-23 00:24:55 | 商事法務

     資本金・準備金の減少については、法447条・448条に規定されていますね。いずれの場合も、原則として債権者保護手続が要求されています(449条)。今回は、この債権者保護手続の意味は殆ど無い。この場合の債権者保護手続は不要とすべきだという議論です。資本金・準備金の額を減少させて、「その他資本剰余金」の数字を作って、分配可能剰余金として、株主に分配したり、株主から自社株式を買い取る、即ち出資の払戻等に利用しますね。昔の言葉で言えば、減資差益ですね。

     資本金・準備金の減少は、例外もありますが、原則として総会決議ですね。資本金の減少は特別決議(309II)で、準備金の減少は普通決議です。この承認決議をとった上で、債権者保護手続を行います。債権者保護手続が不要な場合は、①減少する準備金の額の全部を資本金とする場合、②準備金のみを減少する場合で、1) 定時総会で決議し、かつ2) 減少額が(総会の日における)欠損の額(*)を超えない場合ですね。

*  総会の日(前日最終)現在の欠損の額って分かるんですかね?不思議ですね。決算やったことのない人のたわごと?ですかね。試算表作って、決算調整しないとできないと思うんですがね。臨時決算するのでしょうか?取締役会承認で計算書類が確定できる会社なら総会の前日を臨時決算日として決められますが、総会の日には間に合わないですね。休眠会社に近い会社なら出来ますが、ある程度の会社の場合は不可能です。総会で計算書類を承認・確定する会社は、定時総会の日の前に臨時決算日を持ってくることはできませんね。(だいぶ横道にそれました)

     上記以外の場合は債権者保護手続が必要ですね。債権者保護手続には実務上35-40日かかりますね。①資本金等の減少の内容、②計算書類を公告した官報・日刊紙等の日付と掲載ページ(会社計算規則152条)、③ 債権者が一定の期間内(最短1ヶ月)に異議を述べることができる旨を官報に公告し、かつ知れている債権者には各別に債権者異議申述催告書を送付しないといけません。ただし、定款所定の公告方法が日刊新聞紙又は電子公告の場合は、その公告に加えて官報にも公告すると各別の催告は不要となりますね。この債権者保護手続の完了の日が、資本金等の減少の効力が生じ日ですね。その後資本金の減少の手続を行った事等を証明する添付書類(公告掲載紙、債権者名簿、催告書サンプル等)を添えて変更登記申請しなければなりません。邪魔くさいですね。なお、資本金の額は登記事項ですが、準備金の額は登記事項では無いですね。

○ だいたい、こんな公告見ている債権者がいますか?公告では要旨しか掲載しません(計算規則138条以下)。仮にそういった公告を見た債権者がいても、そんなもの見て会社の資金繰りが分かるわけもありません。殆ど何の意味もない公告です。

     そもそも、貸借対照表の純資産というのは、資産マイナス負債の計算上の数字です。会社が現実にお金を払えるかどうかということとは関係ありません。資本金・準備金の減少というのは、その純資産の中身の数字を上下させるだけで、現実にお金が会社から出て行くわけでもありません。債権者にとって重要な事は、自分の債権の弁済日にその会社が弁済できる現金・預金を有しているかです。売掛金・買掛金の正常な営業循環で資金繰りが付くかです。即ち、その会社のキャッシュフローが重要であって、貸借対照表の純資産の部の数字が重要ではありません。力関係の強い債権者なら、弁済を確保するために保証金・譲渡担保・連帯保証人、その他相殺、債権譲渡等いろんな債権担保を確保する手段があります。この確保の手段がメインであって、会社法にいう債権者保護などというものは、現実的には殆ど保護機能がありません。

     まあ異議を述べたときは、債権者に対し、弁済し、相当の担保を提供し、又は当該債権者に弁済を受けさせることを目的として信託会社等に相当の財産を信託しなければなりませんが、そんな異議を唱えれば、弁済して次回から取引お断りですね。銀行などの債権者は、とっくに資金繰りが回る、債権確保できるかをきちんと調べています。

     資本金等の減少のときの債権者保護制度は、上記の通り殆ど意味がないのです。早く廃止して欲しいと思います。

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役員報酬の公表

2009-11-16 23:26:34 | 企業一般

       新聞によれば、金融庁は金融商品取引法の内閣府令を改正し20103月期から上場企業などに役員報酬の公表を、有価証券報告書で義務付ける方針との事ですね。方向としは結構な話ですが、どこまで真剣にやるのでしょうね。差し当たり①役員報酬総額のほか、②支払形態や③報酬額の決定方法の開示だけのようです。これではあまりに不十分ですね。何の進歩もありません。会社法施行規則121条と殆ど同じです。役付役員以上は、役員報酬の個別開示をして欲しいですね。

       取締役の報酬等については法361条に規定されています。(監査役は387条)取締役の報酬、賞与その他の職務執行の対価として受ける財産上の利益(=「報酬等」)については、定款に定めていないときは、総会決議による。総会決議では、確定額のときはその額、確定していないものについてはその具体的な算定方法、金銭でないものについてはその内容を定める事になっていますね。

       委員会設置会社は、報酬委員会がお手盛りで決められますね。一応、事業報告には、報酬内容の決定に関する方針を定めて記載しないといけませんが、きっちりやっているという振りをするということですね。取締役報酬は優秀な人材を確保し、監督機能を有効に機能させるため、また執行役報酬は、優秀な人材を確保し、業績向上のインセンティブとして有効に機能させるため等と記載しています。こんなもん書いたことになりませんね。

       事業報告の内容を定めた施行規則1211項四及び六では、以下のように定めています。が、恐らく大半の会社が、下記の四のイの記載しかしていませんね。

 当該事業年度に係る会社役員の報酬等について、下記区分に応じ、下記の事項 

 会社役員の全部につき取締役、監査役等ごとの報酬等の総額を掲げることとする場合は、取締役、監査役ごとの報酬等の総額及び員数

 会社役員の全部につき当該会社役員ごとの報酬等の額を掲げることとする場合は、当該会社役員ごとの報酬等の額

 会社役員の一部につき当該会社役員ごとの報酬等の額を掲げることとする場合は、当該会社役員ごとの報酬等の額並びにその他の会社役員についての取締役、監査役等ごとの報酬等の総額及び員数

 各会社役員の報酬等の額又はその算定方法に係る決定に関する方針を定めているときは、当該方針の決定の方法及びその方針の内容の概要 

       公表の方針について、伝統的経営者側には根強い抵抗があるようですね。何か後ろめたいことがあるのでしょうか?そうなんです。あるんです。日本の伝統的企業でトップに上り詰めた人は、必ずしも実力・実績・成果でその地位を得た人ではないですからね。それだけ会社に儲けさせたと、周りもその貢献を認めて納得している人では無いからです。実力会長・社長に取り入って、その後釜になった人も居ますね。大規模なM&Aに失敗したら責任とるとカッコ良いこと言ったくせに、数百億円も減損処理しても、社長は会長になった会社もあります。おまけに誰が見てもいまいちで能力のないのを執行役員にしたりしています。自分達を支える派閥形成もやってるわけですね。

○ 日本の伝統的大企業は、実力主義で役員になったりしません。自分の上司が偉くなって引き立ててくれた。その派閥でうまくやった。あるいは風見鶏でうまく立ち回った。社内政治でうまく立ち回った。ともかく運がよかった。会社では無く、社長・会長に尽くした。まあ、ある人によれば昔某ガス会社などはひどかったようです。公共企業のくせに。岡田時代の三越もそうだったかもしれません。いまだに程度の差はあるにしてもこういった風土の伝統的大企業もまだありますね。

       報酬の算定基準もきちっ基準が無い会社も多そうですね。従来の慣行等もありますが、ルールがきちんとしていません。役員以上には、会社への貢献とか言って、権利行使価額1円でストックオプション等をやったりしている会社もあります。しかも有利発行なのに総会の特別決議も取らずにですね。これは会社法違反です。

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矛盾放置の監査役制度

2009-11-11 00:32:23 | 商事法務

○ 監査役制度ほど機能していない制度も無いですね。原因はどこにあるのでしょうか。簡単です、法務省・学者(法制審議会会社法部会)の怠慢・放置・無作為が大きな原因の一つです。

       監査役の職務と権限は、取締役の業務執行の法令・定款違反と著しく不当な行為をチェックすることですね。即ち、取締役の裁量的判断の妥当性のチェックはしません。監査を行い報告にまとめないといけません。職務を執行する為に、調査権と子会社調査権(子会社は正当事由があれば報告・調査を拒む事が出来ます)を有します。義務としては、取締役会への出席と不正行為、法令・定款違反の事実・行為を発見したときは、取締役会(取締役会非設置会社は取締役)に報告をしなければいけません。

○ 矛盾している点・放置されてきた点をいくつか挙げてみましょう。

1)     計算書類というのは、公正妥当かどうかです。即ち公正妥当な会計処理の基準に合致しているかどうかです。妥当性チェックの権限を監査役に付与しないで、会計監査もやれとはどういうことですか?定款の規定で監査権限を会計監査に限定された監査役は、何をするのですか?会計監査のなかに何故妥当性監査をいれないのですか?

2)      社外監査役を増やして来ました。月に一度ぐらいしか来ない社外監査役に、どうして法令・定款違反の監査が出来るのですか?社内事情に詳しく。かつ社内のネットワークを持たなければ、どの部門で、どんな悪さをしているか・しようとしているか等わかりません。

3)     取締役会は正式の会議です。正式の会議で、違法なことやりますよなどという馬鹿なことを議題に計る取締役がいますか?

4)      内部統制は、監査役制度の無いアメリカの制度です。アメリカの猿まねです。なぜ日本では監査役を利用しなかったのですか?業務に組み込まれて構築されるから取締役の業務執行だと考えたのですか。統制環境・統制活動・情報と伝達・モニタリング等の内部統制の要素は監査役がきちんとやるべきですね。

5)      法令・定款違反の事実・行為を発見したら、それをやってる取締役がいる取締役会に報告するのはおかしくありませんか?取締役会ではなく、直接他の取締役に報告できる制度を作るとか、株主に報告出来る制度などが必要ですね。

6)      監査役の指名は代表取締役がしている例が多いですね。総会に選出議案を出すには監査役(会)の同意が必要ですけど、自分を選んでくれた取締役が指名するのを反対できますか?

○ 小手先の目くらましの監査役制度の変更は、頻繁に行われてきましたね。1993年に社外監査役を導入、2001年に要件を強化し員数を増やしましたね。監査役会の制度も作りました。任期については、もう行ったり来たりの何の思想もないですね。1950年に2年を1年に短縮し、74年にもとの2年に戻し、93年に3年に延ばし、2001年で4年に伸張されました。どうしようとしているのか、どういう方向性を目指すのか、全く不明です。

○ 内部統制制度構築の絶好の機会もあったのに、なぜこの機会を監査役に与えなかったのですか。なぜ、日本に導入するときに、会社法も現代化・大改正のときに、きちんと考えなかったのでしょうか?米国の制度を少し簡略化しただけの猿まねです。こういう発想・対応しか、日本の学者・法務省は出来ないのですか?

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資本金0円の不思議

2009-11-03 22:32:49 | 商事法務

     H13年の商法改正で額面株式が廃止され、株式数と資本の額との関係が切断されましたね。つまり資本減少のために株式数を減少させる必要はなくなりました。同時に大きなポイントとして、減資差益が生じる場合(=その他資本剰余金)には、それを分配可能額としましたね。

     会社法445条では、資本金の額は、「設立又は株式の発行に際して株主となる者が当該株式会社に対して払込み又は給付をした財産の額」としており、その1/2を超えない額は資本準備金とすることができるとしています。即ち、資本金と資本準備金は、払込又は給付した財産の額、通常はお金ですから、元手として拠出された・調達された時点の金額を意味するわけですね。しかし(金銭出資を前提に)資産としては借方の現金・預金になるわけですね。

○ 会社法では会社成立後に減少することができる資本金・準備金の額については制限を設けていません。従い、必要な手続をとれば、資本金・資本準備金の額をいずれも零とすることができます。資本金で言えば法447条ですね。同条では、総会決議で資本金の額を減少することができるとしています。

1項 ① 減少する資本金の額

     ② 減少する資本金の額の全部又は一部を準備金とするときは、その旨及び準備金とする額

     ③ 資本金の額の減少がその効力を生ずる日

2項 前項①の額は、同項③の日における資本金の額を超えてはならない。

 

○ 4472項で、資本金の全部を準備金とすれば、準備金はあっても資本金0円の会社ができるわけですね。この規定は不思議な規定ですね。「資本金額を超えて資本金の減少をする人が世の中に居て始めて、そんなことは出来ませんよ」というのなら分かるんですが。そういう人はいるのでしょうか? 資本金というのは現存額ではなく、そういう資本が過去に拠出されたという記録の金額表示ですね。ですから、資本金の減少というのは、(分配可能剰余金捻出等という目的がある場合もありますが)言ってみれば過去の資本金拠出の記録の一部抹消ですが、確かに理屈上数字遊びという視点から言えば全部抹消まで出来ますけどね。資本金という金額表示はプラスしかないというのが私の理解だったのですが、立案担当者の人は進んだ?というか算数の好きな人が多かったのでしょうか?引き算してもマイナスは出来ませんよと‘ご丁寧な規定’も入れてくれています。

○ 448条には準備金(資本準備金・利益準備金)の額の減少の規定がありますね。上と違うのは、準備金を資本金とすることができるとしています。BSで言えば、下に持っていくことも上に持っていくこともできると言うことですね。準備金を減らして資本金の増額をするなら分かりますね。そのために準備金の全額を資本金にして、準備金を0円にすることも可能ですね。

○ 株式の数との関係が遮断されましたから、例えば、発行済株式数1万株 資本金0円ということが生じるわけですね。確かに、純資産の額としては、経営不振で利益剰余金がマイナスとなり、0円以下即ち債務超過とかもありますが、元手であり拠出額である資本金を0円まで資本金減少した会社は見たことありませんね。私は資本金0円に違和感を感じますね。でも誰か挑戦して、資本金0円でBS公告出せば、(倒産の場合等を除き)珍しい会社になれますね。

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