まさるのビジネス雑記帳

勉強ノート代わりに書いています。

会社法―帳簿閲覧権と守秘義務

2007-05-13 00:26:46 | 商事法務

久しぶりに会社法についてです。会社法ってほんとつまんない法律ですね。

     取引先との間で守秘義務契約(NDA)を結び、取引を秘密にしようと決めましたが、株主が帳簿閲覧権を行使して、株主に取引の存在と概要がわかってしまいました。これは守秘義務契約違反になるんでしょうかね?

     会社法433条には、3%以上の議決権を有する株主に会計帳簿の閲覧・謄写等の権利を認めています。2項では一定の場合を除き拒否できないとなっていますので、商法よりはだいぶ前進したかもしれません。 旧商法時代は、閲覧・謄写権を持っていても、その理由を開示しろと言って、実際上見せないよう邪魔することが多かったですからね。

     ここでの疑問です。(開示文書の範囲については広義に解釈するもの=非限定説から狭く解釈するもの=限定説まで諸説がありますが)試算表のみならず総勘定元帳・補助元帳の全部又は一部は通常は開示対象文書でしょう。そこには取引先・請求内容が記載されます。更に証憑まで見せてしまうと、取引概要まで株主にわかってしまうということです。更に支払いを請求書等を発行せず、契約書だけで行うと契約書も開示対象文書になる可能性もあります(限定説では、契約書・信書等は特に会計帳簿の記録材料として使用された場合のみOKとしているようです。判例は限定説が多い。また法人税確定申告書は含まれないとした東京地裁決定H1.6.22判時13153頁などが有るようです)。契約書まで見せてしまうと、個別取引の詳細まで株主にわかってしまいます。

     1) 取引先と厳密な守秘義務契約が存在し、取引概要あるいは内容も秘密にしましょうとか、取引自体も秘密にしましょういう取り決めがあると、守秘義務違反の恐れがありますね。 守秘義務違反の場合の損害賠償等も規定するケースが多いですが。もっとも、守秘義務違反の損害賠償というのは、損害を証明する事が非常に困難ですけどね。

大会社では部署ごとに契約をつめますが、当然会社名で契約します。法務部があっても、膨大な契約間に矛盾が無いか等チェックしませんし、帳簿閲覧権の事まで念頭に置いて守秘義務契約等作成しませんね。ところで冒頭の疑問ですが、個人情報保護法等は、法令で開示が認められているものは開示しても法令違反ではないとしていますので、まあ違反ではないのかもしれませんがね。

2)
 開示が義務づけられる計算書類(株主・債権者・親会社社員の閲覧・謄写等 法437&442条。尚、いわゆる決算公告-440条、は大半の非公開企業ではされていませんね)を除き、会計帳簿・会計に関する資料はその会社の秘密情報です。なぜ、開示を受けた株主に守秘義務を負わせないのでしょう。



帳簿閲覧により、個別取引の概要まで株主にわかってしまいます。そこまで知る権利を株主に与えるなら、守秘義務を当然課すべきですね。帳簿閲覧権を行使しようという人は、必ずしも善良な株主では無いですし、不純な目的もありますからね。


3)
 旧商法時代は、判例及びかなりの学説が、開示理由を具体的に記載する事を要求していたようですね。「取締役の不正行為の疑いに関し調査するため」等は具体性に欠けるという見解です。例えば、「使途秘匿金の明細を調べるため」等の理由ではどうでしょう。会社としては、これらの理由に対し「どうぞどうぞ見て頂戴」といって書類を出せますか?出せませんよね。いろいろけちをつけて見せませんでした.。しかし、こんどの会社法では、一定の事情以外は、閲覧・謄写請求を拒否出来ないとしました。どれだけ改善されているかまだ分かりません。拒否理由に該当する者が、「はい該当します」と言って 請求する者もいないですよね。

請求する株主が本当の理由を具体的にどこまで言えるかも疑問です。また調査する為に開示請求するのであって、調査前にどれだけ具体的な事が言えるかも疑問ですね。

守秘義務と引き替えに、必ずしも具体的な理由がなくても開示請求に応じるようにしないと機能しないと思うのですが。


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