まさるのビジネス雑記帳

勉強ノート代わりに書いています。

のれんは償却資産としておく事が妥当

2009-01-13 09:50:38 | M&A

     企業再編(税制適格の持分プーリング法の適用の場合を除く)の際などに計上するのれん(暖簾)について、現在の日本の会計基準では償却資産になっていますが、米国会計基準や国際会計基準では、毎年の減損テストはしますが非償却資産となっていますね。2008.12.26に企業会計基準委員会が「企業結合に関する会計基準」の改正を公表しました。①持分プーリング法は廃止(10.4以降の事業年度から。09.4以降から早期適用可)②負ののれんは、買収した期の特別利益に一括計上としています。しかし、「のれんは、資産に計上し、20年以内のその効果が及ぶ期間にわたって、定額法その他の合理的な方法により規則的に償却する」としており、償却資産としています。私は、妥当な考え方だと思います。

     のれんとは、「ブランド・ノウハウ・取引先関係・従業員の能力等が有機的一体となって収益を生む、当該企業・事業が持つ無形の財産的価値」ですね。尚、税法では定義をしていませんが、一応平均利益金額を上回る「超過収益力」という考え方を取っているようです。(評価・計算については相続税財産評価基本通達の165/166ご参照。持続年数は10年としていますね。)

     のれんをなぜ償却資産としたかについては、「企業結合に関する会計基準」の28/29ページに解説されていますので、詳細はそちらをご覧ください。買収したのれんの価値が永続的に続くことなどありえないですよね。例えば、分かりやすい例として、「マクドナルド」「モスバーガー」「コカコーラ」を買収しても、買収後も継続的にマーケティング・広告宣伝を行ってブランドを維持しなければなりません。買収時点ののれんは、徐々に減価するのです。費用をかけて維持しても、それは計上出来ない自己創設のれんに入れ替わるわけですね。非償却資産とすると、自己創設のれんの資産計上となって不適切ですね。

-   ゼロから新しいブランドを作る場合とか、買収とともにブランドを変えれば大変なコスト・労力・時間がかかります。モスバーガーを買収した日から、もし名前を「ブスバーガー」に変えたら売上は大打撃ですよね。同じ事は、顧客リスト、取引先関係についても言えます。百貨店のクレジットカード等は、会員に絶えず5倍ポイント等のメールを送ってきますよね。

     のれんは、コストをかけて維持・増進するから価値を発揮します。買収時点ののれんは減価します。その減価パターンは合理的に予測可能ではありませんので、継続的に減価する=償却するというのが良いと思います。減損テストしていきなり減損というのは、全くおかしな考え方です。のれんの価値は、外部環境、内部環境、その管理・維持の手抜かりにより徐々に低下します。突然落ちるわけではありません。毎年減損テストをして、毎年少しずつ減損する場合もありますが、これでは恣意がはいりますので、毎年一定のルールで償却するのが合理的です。

     GCAサヴィアングループの渡辺代表取締役は、2009.1.5日経新聞の自社の広告の中で、償却法を継続する姿勢について、「のれんを償却することはM&A実務でみると全く実態を反映しておらずナンセンスだ」と言っていますが、その根拠については記載されていません。勿論買収会社にとってみれば、利益減少要因である償却はしないほうが、短期的にはよいかもしれません。しかし減損会計で一挙に多額の償却するケースもあるでしょう。全く一方的な見方ですね。米国会計基準でも、昔は最長40年の償却資産でした(税法上の損金としては認められなかった)。なぜ、どういった根拠で変更したのか、私は知りません。M&Aの障害になるからでしょうか?

     買収価額の決め方には種々の方法がありますが、要するに

時価ベース純資産 +のれん = 買収価額

    のれんを、昔の日本の算定方法で、例えば、純利益の5年分(過去2年+今年の予定利益+来年以降2年間の予想利益)とした場合、買収すれば当然相互補完・相乗効果が期待できます。この買収効果を見込めば、5年分の利益をのれんとして負担しても、3年ぐらいから買収会社は利益計上できます。それだけ、慎重なM&Aが出来ます。M&Aは、約6割が失敗と言われています。安易な買収と高い買収価額が問題なのです。M&Aのアドバイザーは、買収後の経営に責任等持ちません。報酬を得ればそれでさようならです。買収後に、一番重要な経営が始まります。償却資産とした場合は、安易なM&Aの防止という効果も期待できます。

○ 私は、のれんは国際会計基準や米国会計基準の真似をせず、償却資産のままとすべきだと思います。注記で、のれんを償却しない場合の効果・影響額を記載すれば良いのではないでしょうか。


コメント (3)    この記事についてブログを書く
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3 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
突然ですが、よろしくお願いします。 (やまと)
2009-12-07 15:42:21
買収後の減損テストの仕方ですが、これは相手方の事業計画をもとにモニタリングすると思いますが、買収 先の会社と意見が食い違う場合があると思いますが、この場合は買収した会社の監査人の意見を参考にして見切り発車してしまうのでしょうか。
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「有価証券減損処理の恣意性」というのを、2009.3.... (まさる)
2009-12-13 21:58:48
http://masaru320.mo-blog.jp/business/2009/03/post_3be3.html

相手方の事業計画で、回復可能性がきちんとした証拠により裏付けられるのであれば、減損処理を行わないことも認められています。

ただ相手方の事業計画を鵜呑みにすることは出来ないですね。楽観的な数字を作って、その場しのぎで親会社に説明する例は多いですので。

事業計画についてよく打ち合わせて、その根拠・裏づけをきちんととった上で、監査人と打ち合わせないといけないと思います。監査人は、事業について必ずしもよく知っているわけでもありません。計画の裏付け・根拠とその計画実現の蓋然性を監査人によく説明すれば、普通の監査人なら、こちらの意見に従いますね。
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まさるさん どうもありがとうございます。 (やまと)
2009-12-18 14:12:50
本件理解できました。
IFRSを採用したら大変ですね。制度会計、管理会計、子会社の経営計画も毎年モニタリングしなければいけない。上場を希望する会社が少なくなるのではないでしょうか。
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