まさるのビジネス雑記帳

勉強ノート代わりに書いています。

株式譲渡契約の会計上の認識について

2009-01-06 13:48:19 | 株式関連

     このブログでは、頻繁に会社法にクレームをつけていますが、今回はちょっと趣き(?)を変えて、「有価証券の売買契約の認識」について、日本公認会計士協会の定める金融商品会計実務指針#22についての「けち」です。この実務指針では、以下の様に定めています。

有価証券の売買契約については、約定日から受渡日までの期間が市場の規則又は慣行に従った通常の期間である場合、売買約定日に買手は有価証券の発生を認識し、売手は有価証券の消滅の認識を行う。ただし、約定日基準に代えて保有目的区分ごとに買手は約定日から受渡日までの時価の変動のみを認識し、また、売手は売却損益のみを約定日に認識する修正受渡日基準によることができる。約定日から受渡日までの期間が通常の期間よりも長い場合、売買契約は先渡契約であり、買手も売手も約定日に当該先渡契約による権利義務の発生を認識する。」

     結論を先に言いますと、上場株券についてはこの処理方法でも構いませんが、未上場企業の株式譲渡については、全くおかしな処理方法ですね。未上場企業の株式譲渡については、契約締結日ではなく、(a) 株券発行会社は、株式譲渡の効力発生要件である株券を交付する日を会計上の譲渡の日とし、また(b) 株券不発行会社の場合は、当事者の定める株式譲渡の日を、会計上譲渡を認識すべき日としないとおかしいと思います。

     株式譲渡の方法は以下ですね。

① 上場株券の株式譲渡:15日に株券電子化(株式等振替制度)により上場株券の株券は無効・廃止されました。「振替株式」になったわけですね。従い、譲渡等の効力は、譲受人の証券会社の口座に、株式数の増加の記載・記録がなされることにより、その効力が生じます。従来の処理は、以下ですね。株式の買い注文が成立(=約定)した場合、原則として購入が成立した日から通常4営業日目(約定日を含みます。T4と言われます)に受け渡しがされます。即ち株券が譲渡され代金が支払われます。個人の場合等は、原則として、買付注文に際して買付代金の事前に預けます。

② 未上場企業の株式譲渡

-1 株券不発行会社の株式譲渡:株式の譲渡は意思表示で効力が生じると解されています。

-2 株券発行会社の株式譲渡:法128条①②の規定は以下です。

1株券発行会社の株式の譲渡は、当該株式に係る株券を交付しなければ、その効力を生じない。ただし、自己株式の処分による株式の譲渡については、この限りでない。

2項 株券の発行前にした譲渡は、株券発行会社に対し、その効力を生じない。

     企業会計は、発生主義・実現主義により認識しますね。発生主義とは、現金を支出した時点でコストを認識するのではなく、経済的事実が発生した時点において認識するという考え方ですね。また実現主義とは、収益を実現の時点で認識するという基準です。

○ 売買当事者の認識はどういったものでしょうか?

  上場株券の場合は、約定日に売買契約が実行された、受け渡しはその事務処理だという認識が一般的ではないでしょうか。特に個人等の場合は、証券会社に事前に購入代金を預けておかないと買注文を出せませんしね。従い、実務指針22通りの経理処理でもよいと思います。

② 未上場株式の売買の場合の当事者の認識はどういったものでしょうか?

-         株券発行会社の場合は、株券の交付が効力発生要件と会社法に規定されていますが、当事者の常識として、株券も渡さずに株式譲渡をしたとは思わないでしょう。通常は、株券交付と株金とは同時履行ですよね。事情があって株金の支払が事後になる場合もあるかもしれませんが、株券交付とともに、買主は代金支払義務を負うことになります。従い、株券の受渡を行う事によって、経済的事実が発生し、収益が実現すると認識しますね。株券の交付だけで株式売買を実行する場合もありますが、事前に株式譲渡(売買)契約を締結し、その中に譲渡株式の内容・金額・株式譲渡の日等を定める場合も多いですよね。株式譲渡契約の締結日は、経済的事実の発生した日ではありません。経済的事実の発生を予定した法律行為を行った日です。どうして、契約日(約定日)を、会計上の認識をすべき日と定めるのか、おかしいと思います。約定日に売買・受渡を実行するケースもありますが、約定日=法律行為の日の後に株式譲渡日(=経済的事実の発生日&収益実現の時点)を定める場合も多いですね。

-  株券不発行会社の場合は株式譲渡は、当事者の意思表示で効力が生じるとされています。親族間の譲渡なら契約書は要らないかもしれませんが、企業間の譲渡なら当然株式譲渡契約書を締結します。その契約書の中に株式譲渡の日を定めます。当事者が、株式譲渡の日と定めた日を会計上認識すべき日とすべきですね。


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