スピリチャルTIMES 「とにかく生きてみる!」

スピリチャルTIMESの編集長北村洋一が、この不確定な社会に生きている人々の喜怒哀楽をレポートする。

とにかく生きてみようvs母vs猫vs整骨院 続編

2011年07月04日 | 自小説 ノンンフィクション小説

電話がなった。たまたま母がでた。●●川院からの電話だった。多分ここ最近姿を見せないので、整骨院側が、心配して連絡してきたのだろう。
「今、他の病気で・・調子悪いので・・大腸ガンの手術をしたから・・」とわけのわからん言い訳をしている。母の大腸がんは、結構値打ちがある。色々な場面で、「ガンになったから・・」という理由で、行きたくない用事の口実にしている。逆に、ガンの方も、「そこまで引っ張らなくていいのに・・」と思っているのではないか。

健忘症の母の記憶には、●●川院から電話があったことだけがインプットされている。
ましては、何の理由でその整骨院に行かないのか既に忘れている。
しかし、玄関での猫の匂いを嗅ぐと、その記憶が戻ってくる。
「●●川院には、もう行かへんで・・スリッパが猫くさいと言われたから・・」とその時の怒りや、恥ずかしい記憶が甦る。そして、違う■■田整骨院に通院する。
2日がたったころ・・・●●川院の知り合いの人が家にきた。
「あんた・・なんで来へんの?・・」と心配して尋ねてきてくれた。70歳同士の老人の会話が始まる。「私のスリッパが下駄箱においてあることから始まり、そこから猫のおしっこの匂いがすることを、他の人に指摘され、先生に注意されたことを・・一から話し始める。
「どう・・この家猫の匂いする・・」と母が聞けば、その老人も調子のいいことに、話をあわせる!
「そうやろ・・匂いそんなにせぃへんやろ・・」「毎日掃除して、お湯ながして擦ってるもん・・」と話す。「そやから腹たって・・スリッパ棄てて、駅前で、新しいスリッパを買ってきた・・」と言う。
「そやからもう●●川院には行けへん・・」と言う。結局その尋ねに来た人も何しに来たのか、相槌を打っつだけ打って帰っていった。しかし母には嬉しかったのだ。
また別の人もやってきた。同じ話しを繰り返し喋っている母であった。
道でばったり、知り合いと会ったとかで、別の整骨院がいいと聞いて、その人に連れられて、その整骨院に行ったりした。それは、それっきり行ってない。
とにかく猫の匂いつきスリッパの影響で、俄かに母の周りの人間が、右左している。

それから・・1週間くらいたったころ。
朝から病院に行く用意をしていいた。「何処に行くの?・・」と尋ねる。
「医者・・■■田院・・あそこの先生親切やから・・」と言うが、手に持っている診察券は、猫スリッパ事件のあった、●●川院のものだ。
「それ・・違うやろ・・●●川へは行けへんと言ったやろ・・」と突っ込む。
母は、「間違っただけや・・」と言って、絶対に行けへんと言って、■■田整骨院に向かう。

その夜、「●●川から電話あったよな・・」と聞いてくる。
「自分で話ししておいて、断ったやんか・・」と突っ込むと母も「もう行けへん・・」と言う。
今度は、二人連れで、母の友達が、説得にやってきた。
「猫の匂いなんかぜんぜんしないと説いて、それはたまたま匂ったんやろう・・」と言うことになった。もう既に母は説得に屈していた。


「●●川院に行くの?」と私はちょっといたずらぽく尋ねる。「行かへん・・・」と言いながら、「ちょっと聞くけど●●川の先先から電話あったやろ・・」と言って、何か確認する様子であった。

それから暫くたって夕飯が終わったころに、私が帰宅した。母の姿がなかった。
こんな時間に何処へ言ったのかな・と思っていたところに母が帰ってきた。
「何処に行ってたん?」と聞くと。

母がにやり笑って・・「怒ると思うが・●●川院・・に」と言う。
「絶対に行かへん・・」て言ってたやんと突っ込むと。
「直ぐ変るねん・・ なんでもすぐ忘れるねん」と言う。

あんたはエライ!些細なことなんか、直ぐに忘れられて、生きて行ける。自分の言ったことにも拘らないその柔軟さに改めて、ひっくり返った。


確実に母の態度は、子供にもっどているような気がする。
自分の言ったこと、執った態度に意固地にならずに、気持ちのままに柔軟に対応して生活している。全く観念にとらわれていない。もう観念という心の枷もなくなって来ているのだろう。
よく・・人々は言う。「いやなこと、辛いことは忘れてしまえと・・・」
それは、忘れることが出来ないことをわかっていて、それを気にしていたら前に進めなくなるから・・あえて忘れろ!と言うことだろう。
しかし・・本当に忘れられることが出来たら、なんと平和な楽な暖かい日々を過ごせることであろうか?と私は思う。

とにかく生きる<それでも生きる<気にしないで生きる
まだまだ修行がたらんように思う。

明日も母は、●●川院で、電気治療を受ける大勢の年寄りの中で、どんな話をしているのだろう。猫の話はしないと思うのだが・・・

終わり・・


コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« とにかく生きてみようvs母... | トップ | とにかく生きてみようvsあ... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

自小説 ノンンフィクション小説」カテゴリの最新記事