スピリチャルTIMES 「とにかく生きてみる!」

スピリチャルTIMESの編集長北村洋一が、この不確定な社会に生きている人々の喜怒哀楽をレポートする。

とにかく生きてみるvs年老いた両親vs「何を」祈る

2011年06月28日 | 自小説 ノンンフィクション小説

とにかく生きてみる。深夜バイトに、重い体を引きずりながら、夜中自転車を45分くらい漕いで向かう。この時期、自転車を漕げば、汗はでる。熱い、ムシムシするこの通勤に、一条の光がある。それを頭に描きバイトに向かう。
バイト先は、野菜のピッキング作業であるため、室内は、かなり冷えている。これが、自転車を必至に漕いで汗ばみた体に程よい清涼感が与えられる。フレッシュエアーを浴び、なまった体が、活力が沸いてくるのがわかる。今のモチベーションは、このフレッシュエア-を浴びる瞬間の「快感」である。なんとも情けない、小さな話しであるが、この些細なことでも喜びを掴もうとしている、今の私の貪欲さに免じて、許してくだい。


今、私は理由あって、年老いた両親と同居している。そんな広くない家であるが、極力、両親の生活ペースを乱さないように、私自信の影を潜まして生活することを心がけている。自分の部屋の掃除、クリーニング屋、三度の食事も、両親のペースに私のエゴを挟まないように心賭けている。 

最近母親の記憶が飛ぶようになった。まずは、毎日の暦についていけいない。また、簡単な用事は必ず忘れているし、30分前にはなにをしたかは、記憶にない。ただ、物忘れという症状であり、ボケているわけでない。近所の人とは、道で立ち話をしていいるみたいだけど、「あの人誰だったかな?」とあとで言っている。1年前に大腸がんの手術をしたので、食は細くなったが、細い体でもせかせかと動いているが・・・・・その前の記憶がない・・・のだ。

父親は、反対に老人性のボケが少し始まっている。1時間くらいボーットしていたり、思い出したように、家中の引き出しを開けて、探し物をよくする。保険証や、判子や、何かの契約書を探しているいるのだが、とにかく言うことを全く聞かない・・・
その時は、「・・・それ違うやろ・・」と言うと、「ほんま・・」と言って一旦はやめるが、その尻から、もう探し始めているの頻繁にある。そして玄関に靴をはいたままで、5分くらい立っていることもある。

母は70台の中盤であり、父は80歳を越えた。だからそうなってもおかしくないのだが・・・
ただ二人の会話を聞いていて、二人にはそれなりのストレスが在るみたいだ。
お互いに、ボケてきたことお互いに心配していることである。
母は、父のボケを、「気をつけなあかん・・」と言って、あれやこれやと、矢継ぎ早に話をする。
「ご飯もっと食べ・・」「おかず、もっといれたろか・・」「お茶いれたろか・・」とか・・・それに対応できない父は、無言になり・・最後に母が、「人が親切に言ってあげてるのに・・・返事くらいしたらどうや・・」と言う。そこで父は「あああ・・」と返事をするが。その次の言葉が・・「自転車がパンク・・・」とか、全く関係ない話が出てくる。母はそんなこと聞いてない・・と言って、「同じことをまた聞くのだ。父もそれが、何回も聞いてることに、反論もせず・・ただ「ああああ・・」と言って、その場が流されていく。
ものわすれの母と、ぼーとしている父の会話は・・午後5時30分の夕食と、9時の就寝のパターンは、ここ1年変らなく続いている。
そして・・・炊きがったご飯を、仏様に供える。母は手を合わせ祈る。ご飯下げたあと、「あれ仏さんにご飯したかな?・・」と言ってまた手をあわせている。

「母の祈りは・・」何を祈っているのか?東北震災でもない・日本経済でもない・・ギャンブルもしないから、何かの利益をお願いしているわけでもない。自分たちの病気のことだろうかとも思うが・・「手術してからめっちゃ健康になった・・」と言っているから、そうでもないし・・
多分、今の母の頭には、現実のご利益を願うほど、頭が冴えていないと思う。それでは・・
母は、毎日、仏さんにご飯を供えながら・・何も考えないで手を合わせているのだろうか?
口にだして、言葉にして祈るのではなく、長年の達観と、神仏との距離の合わせ方が、その祈りの姿に現れている。
それは手を合わすことで、全知全能の神仏に、無心で心から「感謝」の意を表しているのだ。ご飯の横には、「もうこの年になって根気がなくなった・・」と言いながら大根と厚揚げと竹輪を焚いたおかずが、盛られている。

神仏に手を合わせる。「現世ご利益ばっかり・・」の私の祈りは、どの神様にも通じないだろう。
もっと無心に手を合わせられる「心」にならなければと今更ながら思う。
ただ・・・ 神様! 母と父の健忘と痴呆が、徐々に進んで行きますようにとお祈りしたい。
それくらいのご利益享受の祈りは・許してほしいのだが・・

 

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