誘い

Ｎ氏からメール。

「今から焼肉食べに行かない？』

おおおおお！
焼肉ぅ～！！

実に素晴らしい誘いだ。
心ときめく誘いだ。

突然食事に誘われる事はよくある。
ラーメン行かない？
コーヒー飲みにいかない？
マックに寄っていかない？
など。

でも突然焼肉に誘われるほどテンションが上がることはないよね。

別に『おごってもらう』わけではない。
けど、さっきまでは安アパートで寂しくしていた男が、一気に焼肉を食べる立場へと変化するんだもん。

この急展開！
この成金っぷり！

だれがこの展開を予想しただろうか！
１秒前まで焼肉の事なんか頭の片隅にもなかっただけに、突然の朗報に狂喜乱舞だ！

こんな誘いを断れる人などいない！

もちろん二つ返事でオッケーした

かったんだけど…

泣く泣く断りの返事をしてしまいましたよ。

だって目の前にご飯があるんだもん！
昨日したチーズフォンデュの残りの食材を詰め込んだシチューがあるんだもん！
そして今まさにそれに第一スプーンを投入しようとしていた瞬間なんだもん！

ああ…。
焼肉が…。

ついさっきまではこのシチューを食べる気満々だったのだが、焼肉の事を聞くともう気がそっちにいってしまう。
なんだこれは！
と怒鳴りたくなってくるほどだ。
巨人の星を目指している男の父親の如く、このテーブルを引っくり返したい衝動にかられてしまう。
けどそんな事をしたら大惨事になるのは理解している。
床に散乱したシチューを片付ける事になるのは自分自身だ。
それが分かっているのにそうまでする覚悟はボクにはない。

なので黙って大人しくシチューを食べる。

ああ。
今頃Ｎ氏らは焼肉食ってんだろうなぁ。
羨ましい。
付き合いの長い人達だが、今日ほど羨ましく思った事はないね。

ちくしょう。
近々ボクも焼肉に行ってやるぞ！
誰か行くときは誘って下さい。
でもなるべく早めにお願い！！