ITSを疑う

ITS(高度道路交通システム)やカーマルチメディア、スマホ、中国関連を中心に書き綴っています。

はたしてSONYは車を作れるのか

2022年01月09日 | 自動運転

本年のラスベガスCESショー2022でソニーは2022年春に「ソニーモビリティ株式会社」を設立し本格的にEVの市場参入を検討すると発表した。
果たしてどこまで実現性のある話なのだろうか?

1月9日つけのCarview記事

リンク先記事では、家電メーカーの自動車参入はハードルが高いと指摘している。
一方で、「ソニーがカメラに参入するときや、ホンダがプライベートジェットに参入するときにも無理だという人がいたが結果をみてみろ」、という反論がある。

筆者の見解は前者に近い。それについて説明しよう。

自動車メーカーはどこもいまだに毎年大規模なリコールを出している。リコールするのは人命にかかわる重大な問題であり、またそこまで至らない自主改善などの不具合がその数倍発生している。これは自動車メーカーの怠慢ではなく、主に設計時点では想定外の使われ方や消耗、経年で露呈した部材の不適合などによるもので、市場からのフィードバックにより発見され改善されていくものだ。
引き合いに出されたカメラの不具合と車の不具合ではその構造やスケールが全く違うし、そもそもカメラで人命にかかわる問題は起きない。

自動車メーカーはこうした過去の失敗の蓄積を50年以上にわたり蓄積して設計に反映している。新規参入者には絶対に手に入れることができない財産なのだ。
問題があれば即人命にかかわるジェット機にホンダは参入したが、発売までに30年かかっている。
いやいやテスラはいきなりEVに参入したではないか、という人もいるかもしれないが、テスラのトラブルの多さは誰もが知るところ。大雑把な言い方をすれば、イーロンマスク氏の個人的なカリスマ性だけで支えられているようなメーカーだ。

そのテスラは莫大な先行投資で生産ラインを作り、利益が出るまでには相当な年月がかかってる。(現在は黒字化しているが、多くはco2排出権の販売によるもの)
これもイーロンマスクの個人企業だからできることで、ソニーにその胆力があるだろうか?

また、自動車販売には販売ネットワークが必要だ。ネット販売になり実店舗ディーラーなどいらないのだ、という意見もあるが、車には定期的なアフターサービスがあり日本中をカバーする物理的なネットワーク拠点はどうしても必要となる。

ということで、革新的技術力やスピリットだけではどうにもならないハードルがある。
それを乗り越えるためにはすべてを一手に引き受けるカリスマ経営者がいないと無理だが、残念ながらSONYはそういう体制にはなっていない。

生産に関しては、おそらくすでに稼働しているEV工場(多分中国)にオリジナルのOEMを生産させるという方法以外ないと思う。中国の自動車メーカーも大手であればそこそこ経験の蓄積が進み品質は上がってきている。そこでどこまでSONYブランドを発揮できるか、がカギだろう。

販売ネットワークに関しては、自前でやるのはまだハードルが高い。既存の家電のネットワークは物理的な修理工場スペースがないので新規構築が必要になる。

巷でよく言われる、EVがエンジンがないので家電が参入できるのだ、というような簡単な話ではない。