ITSを疑う

ITS(高度道路交通システム)やカーマルチメディア、スマホ、中国関連を中心に書き綴っています。

歩車分離信号

2008年08月15日 | 雑記
前回のエントリーで

(左折巻き込みなどを防ぐためには)信号を見直すのが普通だろう。そうしたまず第一に採るべき対策を無視して、「人がいるかどうかをセンサーで察知し、通信で車のディスプレーに表示する」なんてソリューションはどう考えてもジョークとしか思えない。

と書いた。
もう少し説明しておこう。

信号の改善で人・車の混交を防ぐために存在する方法は、大まかに言ってスクランブル化と右左折信号化と時差式がある。どれも事故防止には大きな効果がある。こうした信号を「歩車分離式信号」と呼ぶ。

しかしこのソリューションがあまり積極的に取られない理由は、車側のトラフィック容量が減少するために渋滞が発生する(だろう)ということだ。

しかし、歩道に歩行者が多く左折車両が信号一回待ちで通過できない交差点では逆に渋滞抑制になるだろうし、右折矢印信号はも大抵の場合は渋滞を緩和する。

さすがに最近、トラフィックの多い幹線ではほとんど右折矢印化が進んでいる。
直進車の合間を縫って、なおかつ二輪車に気をつけながら右折し、しかもその先に歩行者が横断しているなんている状況は曲乗りのようなもので、この先運転者が高齢化する状況では絶対に改善しなければならない。

渋滞に関しては実際にスクランブル化や矢印信号化でどの程度渋滞が発生するのか専門的に研究しているわけではないのであまり無責任なことは言えないが、交通が麻痺してしまうような事態でないのなら、人命が優先だろう。
もう少しいえば、ざっとネット上を見た限りでは歩車分離信号で渋滞が悪化したという明確な事例や論文はあまりない。
一方で警察や自治体が設置を見送る理由の中には「渋滞悪化が懸念される」という文章がいくらでも見つかるのだが。
(石川県の議会答弁で「18か所を整備し、2か所で著しい渋滞が発生したので廃止した」という文章があった。それでいいと思う。試行すればいいのだ。)

さらに、ハイテクはどんどん使えばいい。センサー技術で歩行者がいるか否かを探知できるなら、その情報をもとに信号制御をおこなって渋滞を回避すればいい。

ところが、我が国のITSはハイテクの使い方を間違っている。
通信を利用して車載器に表示する、という考えを持った時点で間違ってるのだ。
そもそも、DSRCによる通信ありきでITSがスタートしたことが判断を最初のところで誤らせている。

さっさと車+通信の幻想から目を覚ましてほしい。

ちなみに、歩車分離信号については歩車分離信号普及全国連絡会という団体が普及活動をしている。

追記:

警察庁は平成19年9月に歩車分離信号の設置基準指針を制定していた。行政もちゃんと考えている。
検討するべき交差点は

1.歩者分離制御により防止することができたと考えられる事故が過去2年間で2件以上発生している場合、または、その危険性が高いと見込まれる場合
2.公共施設等付近、または通学路などにおいて児童、高齢者などの交通の安全を特に確保する必要があり、かつ歩車分離制御導入の要望がある場合
3.自動車等の右左折通行量及び歩行者等の通行量が多く、歩車分離制御の導入により歩行者横断時の安全性向上と交差点処理能力の改善を図ることができると認められる場合

でも、ハードルを規定するよりはむしろ設置するべきでない事例を示し、それ以外は原則設置するぐらいでないと交通事故死者は減らないんじゃないのかと思う。