ワールドミュージック町十三番地

上海、香港、マカオと流れ、明日はチェニスかモロッコか。港々の歌謡曲をたずねる旅でございます。

ジナちゃん、夜に咲く

2012-06-15 00:59:08 | アジア

”Bloom”by G.NA

 かの国の次代のセクシー・ヒロインと期待を集めているとの、韓国の歌手、G.NAちゃんの先日出たばかりのアルバムであります。
 セクシー方面とは言っても、派手に爆発するセックス爆弾型ではなく、どこか線の細い影のあるタイプのようです。写真なんかも、うつ向きがちなミステリアスな表情を捉えたモノトーンが多い。このアルバムには小写真集が付いてるんですが、ほとんど笑い顔ってありません。
 でも、この種の秘めたる性の気配の陰翳こそ本来のアジア人好みって気もします。まあ、この先に続くエロ談義は別の機会に、ということで。
 そういやG.NA嬢、デビュー目前で解散の憂き目にあったアイドルグループのメンバーだったこともあり、”呪われた五人”の一人、なんて言われた過去もあったようで。無事にソロデビューも叶い、人気者となった今日では、それも笑い話ではありますが。

 で、今回のアルバムでありますが、余計な音のないキリっと締まった、なんといいますか小股の切れ上がったファンク・サウンドを聴かせてくれ、気持ちが良いですな。彼女のキャラを生かしたあくまでクール、汗臭さのないダンス・サウンドがかっこ良いです。いや、たわいのないアイドルポップと言えばそれまでなんですが、それなりの抑制の効いたモノクロっぽい黒の美学は捨てたものではないって気がします。
 また、これは冒頭の曲、”Green Light”なんかに顕著なんですが、いわゆる K-Popとして我が国の市場に売り込まれている、いくつものガール・グループたちの楽曲にも共通するようなメロディラインの癖が、ここでも見受けられるのが面白いです。
 なんかねえ、韓国の若い女の子達のおしゃべりをリズムに乗せ、メロディを付けると、あのようなものに自然になってしまうんではないか、なんて思えて来るんだが。この辺、最新流行の裏面に息付くフォークロアって感じで。

 それにしても、これは海賊盤対策でもあるんでしょうけど、東アジアポップス世界のCDジャケの懲りようって凄いものです。このジャケ、ブック型のケースとしてあるんだけれど、シャッター風に蛇腹を引き上げるとG.NA嬢の姿の見える”表紙”部分があり、中央に先に触れた小写真集があり、最後のページに、”飛び出す絵本”方式で、開くとCDがこちらの目の前に飛び出してくる小細工といい、もう、手のひらの中の遊園地か、と。
 ともかく細工を重ねた結果、このジャケは大きさも重さもハードカバーの単行本くらいのものがあります。堂々たるものだ。でもって肝心の中身は、たかが6曲入りのミニアルバムでしかない。
 この矛盾というか無意味、逆に私は惚れましたね。この大仰なバカバカしさ。楽しいじゃありませんか。まあ、聴きなれる頃には邪魔でしょうがなくなっているのかもしれないが。