”Code”by Ahmed Soultan
アーメッド・ソウルタン。なんちゅうとぼけた芸名使ってるんだろうね。なんぼソウル・ミュージックが好きか知らんが。
こやつに関して検索かけて調べようとすると、パソコンの方が気を使って「スペルはそれでいいのか?違うんじゃないか?アラブにはSultanという言葉もあるぞ。そっちじゃないのか?」と懸命に忠告し、そちらへ誘導しようとするのがおかしい。かつ、うっとうしい。しょうがないじゃないか、こいつがそんな名を名乗っている以上。
ソウルタンは1978年生まれのモロッコ人のシンガーである。モロッコ人とは言っても、アラブ人が北アフリカにやって来る以前のかの地の先住民、ベルベル人の血を引いているようだ。そんな彼は非常に若い頃(子供の頃、という意味か?)フランスへ移民として渡っている。ヨーロッパ生活のほうが長いのかもしれない。
彼の音楽は、まあ、そのような人生を歩んで来た彼なりに誤読した、アメリカの黒人音楽の潮流に連なる音楽、とでも言えばいいんだろうか。ファンクやヒップホップの色濃い重たいビートが繰り出され、その上にモロッコの民俗楽器の音や、英、仏、アラビア、ベルベルの4種の言語が交錯する歌声が重なる。
形状としてはまったくアメリカの黒人音楽そのものみたいなものなのだが、意外に気に入ってしまったのは、そんなアメリカのブラックミュージックの器に盛られた料理から、スパイスの効いた北アフリカらしい刺激臭が伝わって来たから。
それとも、オノレのアイデンティティがどうのこうの、なんて言う余地もないままに異境の音楽に骨がらみにされてしまった身の、歪んだ復讐劇の予感を聴き取ってしまったから、とでも言おうか。
いやいや、その音楽の上に吹いている、ヒリヒリする熱い砂漠の砂と風の手触りに、なんだか妙に血が騒いだから、という感じだろうか。