”I Write,I Recite”by Meena Kumari
インドの”歌う映画女優”さんらしい。なんでも独立直後のインド映画界で天才子役として評判を取り、その後、オトナになってからはメロドラマの悲劇のヒロインを演じたんだそうで。確かに美しい人です。そしてまあ、ベタな大衆の願望のマグマを真正面から浴び続けたのでもありましょう。
そして彼女、アルコール中毒で40才で死去してしまう。酒びたりだったんですかねえ。壮絶に人生を駆け抜けた、って感じでしょうか。絵に書いたような”大衆文化のスター”の生涯だ。無意識の内に溜め込んでいたストレスも大変なものがあったんじゃないですかね。「大衆の欲望への生け贄」なんて言葉も浮かんでまいります。
これは、そんな彼女が映画の中で歌った恋歌を集めたアルバムであります。特に歌唱力に優れた人ではなかったようで、その出来上がりは”たどたどしい”といった表現が妥当でしょう。
が、そのつたなさが不快かと言えばそんな事はないのであって、まさに薄幸の美女たる彼女の、運命に対する無力さを、それは象徴するみたいで、逆に切なさ倍増といった趣きがあるのでございます。どうか彼女が向こうの岸辺で安らぎを得んことを。