ワールドミュージック町十三番地

上海、香港、マカオと流れ、明日はチェニスかモロッコか。港々の歌謡曲をたずねる旅でございます。

ワールドカップと国歌・その他

2006-06-27 04:30:55 | 音楽論など


 いけねっ。ワールドカップが始まったら、各試合前に演奏される各国の国歌を聞きまくり、まとめて批評してやろうと思っていたんだけど、いざ大会が始まってみるとコロッと忘れてしまい、単にサッカー見物に終始していました。
 しょうがないから急場しのぎ、いつぞや話題にしました、もう閉鎖されてしまった某掲示板からの救出文書をまた使いまわさせてください。これは、今回のワールドカップの、まだ予選が始まったばかりのころに、その掲示板にとりとめもなく書き込んだ”サッカーと国歌・その他”に関する話題の抽出です。
 掲示板での会話の中から私の文章だけ引っこ抜いてありますんで、分かりにくいところもあるかも知れませんが、ご容赦を。

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 先日のワールドカップ予選を見ていて思い出したんですが、あの種のスポーツの国際大会において、「この国の音楽なんか、かなり面白そうだな」と思われる第三世界(って言い方も、もう流行りませんかね?)の国の国歌を期待して聞いてみると、意外にヨーロッパ風のありがちな曲想だったりしてガッカリさせられることがある。その国の民族固有の音楽性が、肝心の国歌にあんまり反映されていなかったりするんですね。
 この辺りが、ヨーロッパ式の国歌を持ったりすることに代表される”西欧風近代化”が成されていなければ”国際社会”への仲間入りを許されない、そして当の”第三世界諸国”も、それに疑いを抱いていないかに思える、そんな”グローバルスタンダード”の理不尽な相貌の表象みたいに私の目には映ります。

 それに関して。ホセ・フェリシアーノがフットボールの開会式かなんかで歌った”スター・スパングルド・バナー”は血が騒ぎましたね、古い話で恐縮ですが。荘重な”いかにも国歌”なあの曲の曲調をホセのカリブ海原産の血のざわめきが食い破る様、実に痛快なものを感じたものです。

 アラブ絡みの国際試合では、確かにあのアザーンみたいな歌声が観客席からずっと聞えている事が多いですね。やはりあれが当地における応援歌であるようです。
 私は、大分前の話になりますが、フランス・ワールドカップに先立って行われたアジア大会の中継をみていて、会場に響くあの歌声や、アラブのサポーターたちが打ち鳴らすパーカッションの響きに魅せられ、それをきっかけにアラブ圏のポップスを聴くようになった、なんて経験もあります。
 あれをそのまま国歌にしちゃったら面白かろうに、と思うのですが、そうも行かないんでしょうね(笑)

 アラブ圏の観客席から聞えていたのは、こちらの世界で言うような応援歌ではなく、たとえば選手の意気を鼓舞するようなコーランの一説を読み上げているのかなとも思うのですが、そんな場でコーランを使うのは不謹慎なのかも知れず。よく分かりません。また、聞えてくるパーカッションは、もしかしたら観客が勝手にその辺のものを叩いていただけなのかも。
 叩いていたと言えば、この間のワールドカップの際、韓国の応援席からはお馴染みの民俗打楽器の音が聞えていましたね。一方、やはりアラブ圏の国の人だったのでしょうが、客席でウードを持っている人を見たことがあります。が、小さなウードの音量を思えばサッカー観戦時に持っていてもほとんど使い道はなく、持っていることそのものに意義があるのでしょうね、あれは。楽器の意味合いを考えれば観客席にバグパイプが林立してもおかしくないんでしょうが、これは見た事がない。一度、ハーディガーディを持ち込んでいる人も見ましたが、あれも”持ってるだけ”なんだろうなあ。
 もっとも印象に残ったのは、宿敵イングランドとの試合前夜にアルゼンチンの若者たちが頭四つ打ちの手拍子を取りながらタンゴを歌っていた風景でした。そのような歌い方があるのかと感心するとともに、そのワイルドな調子に、発祥当時のタンゴの持っていた”悪場所のヤバい雰囲気”が、そんなかたちで今日のアルゼンチンの若者たちの血の中に営々と生き残っているのだなと、ちょっと感心してしまったものでした。

 もう一つ思い出したけど、これは先のワールドカップでしたか、ナイジェリアの試合の最中、民族衣装に身を包み、トーキング・ドラムを叩きまくるナイジェリアのサポーター、という非常に美しい光景を見ました。音までは聞こえなかったのが残念ですが。まあ、ナイジェリアの音楽状況をレポートした”コンコンベ”なんてビデオを見ると、ボクシングから魚とりまでトーキング・ドラムなしでは始まらないみたいですが、彼等は。
 イスラム系の音楽って合うかも知れませんよ、サッカーに。テレビでサッカー中継を見ながらバックにカッワーリーを流しておくと結構盛り上がるし、ナイジェリアのイスラム系音楽、”アパラ”の歌手、アインラ・オモウラなんかも、まるでサッカーのBGMとしか思えない疾走感を持った歌を聞かせてくれるし。(というか、彼には”チャレンジカップ74”という、サッカー・ネタの名盤がある)
 さらにアラブ方面で。いつだったかシリア対ヨルダン戦を見ていたら、両チームの選手が全員、平井堅と同じ顔をしていて笑ってしまったって記憶もありますが、この辺になると音楽の話じゃなくなって来ますわな。

 そうそう、ずっと前に見たユースのほうの対モロッコ戦で、相手方の応援席から湧いてきた応援歌と手拍子が忘れられません。
 なにしろ、あのグナワとかのモロッコ特有のトランス系(?)のひりつくようなリズム、あの感触がそのまま脈打っているみたいな歌であり、手拍子だったんで。あれって出来合いの応援歌なのか、自然発生的なものなのか、知りようもないんだけど、快感でした。そのままCD化して欲しいくらい。
 あんな応援、ついにわが日本は持ち得ないものなんだろうなあ。これはわがワールド・ミュージック生活における大問題である・・・

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 あっと。冒頭の写真は、中国人サポーター諸氏の応援(?)風景であります。