ワールドミュージック町十三番地

上海、香港、マカオと流れ、明日はチェニスかモロッコか。港々の歌謡曲をたずねる旅でございます。

ハワイの地霊、歌う

2006-06-03 01:42:35 | 太平洋地域


 ”FACING FUTURE” by ISRAEL KAMAKAWIWO'OLE

 風にひらひら舞うような可憐なメロディを裏声混じりのハワイアン独特の歌唱法で歌われて「そのディープな歌声が」なんて批評をしたくなるのも、この人くらいのものかも知れない。深く土に根ざした美しい歌声が、天高くどこまでも舞い上がって行く。

 ともかく、その体型が凄い。上に掲げたCDのジャケ写真をごらんいただきたいが、ほとんど縦横同じ寸法の真四角のシルエット。ここまで太れば、そりゃ、歌もディープになるでしょう、理屈になっていないが。
 その巨体でちっちゃなウクレレを抱えて歌う姿は、まるでギャグ。聞こえてくる音楽は素晴らしいものであるが、もちろん。

 結局彼はこの超肥満体ゆえの無理が体にたたり、38年の短い生涯しか送れない事になるのだが、残された音源を聞くたび、まったく惜しい事をしたと言うより無いのである。

 今日化された伝承歌と、ハワイアン化されたジャズやその他のポップスの混在。古きハワイの文化の現代化がまったく自然に行なえてしまう人だった。先に述べたごとく、実にディープな手さばきを持って。

 自らが属するハワイの原住民族の伝統を強力に意識した音楽活動を行なった人物でもあった。
 1993年に発売されたセカンド・アルバム”Facing Future”に収められている ”Hawai'i 78”は、奪われたハワイ民族の血と地の神についての歌で、ハワイ主権復興運動について考え始める、良いきっかけになるだろう。

 日本の相撲界で活躍するハワイ出身の力士たちをテーマにした歌、「楽園の雷」というヒット曲が彼にはあり、それに対するジョーク半分の評価が行なわれているのが、ちょっと残念な気がする。というか、その程度しか彼が聞かれていない現実が淋し過ぎるのであるが。

 Facing Future のジャケに記された Israel の言葉を、最後に挙げておく。

 ~~~~~

Facing backwards I see the past
Our nation gained, our nation lost
Our sovereignty gone
Our lands gone
All traded for the promise of progress
What would they say.....
What can we say?
Facing future I see hope
Hope that we will survive
Hope that we will prosper
Hope that once again we will reap the blessings of this magical land
For without hope I cannot live
Remember the past but do not dwell there
Face the future where all our hopes stand

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