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絵本の話を中心に、好きなもの、想うことなど。

積み重ねられた薪

2006-09-27 14:42:34 | 想うこと

 図書館で見つけたこの写真集、もう3週間くらいずっと手元にあります。

 画家のジョージア・オキーフが、愛してやまなかった「我が家」。
 ニューメキシコにある、日干しレンガでできたその家の内部と、それを取り巻く自然と、
そこに暮らす人の写真が収められています。

オキーフの家

 『オキーフの家』  
 マイロン・ウッド 写真
クリスティン・テイラー・パッテン 文
    江国香織 訳


 モノクロで撮られた写真は、ほんとうにどれも素晴らしいものばかり。

 「ミス・オキーフのパレット」
 「庭師の エスティベン・スアソ」 ・・・・
 ミス・オキーフがこの家を買う決め手となった、黒い扉。と、説明がついている「幻想的に降る雪」というタイトルの写真‥などなど。

 
 本の冒頭で、写真家のマイロン・ウッドは、こう書いています。

 ここにあるのは、ジョージア・オキーフの家の写真です。30年以上にわたる彼女の存在のしるしが、随所に刻まれています。この住まいにおける彼女の暮らしぶりは“自然体”を重視したもので、しかも非常に一貫しているため、彼女が作品を通して表現しようとしたことを、おそらく作品以上にくっきりと、純粋なかたちで、住まいそのものが表しています。彼女の人生同様、彼女の住まいにも、虚飾は一切ありません。‥(後略)


 
意図せずとも、作品中に、自分自身が投影されていくように。
 あるいは、それまでどう生きてきたかが、その人の顔に陰影や優しさをもたらす、しわとなって現われてくるように。

 人が愛し、人が慈しんできた道具や、物や、衣服や、器や、暮らしの場は、その人以外の物にはなりえず、その人そのものを意味するようになっていきます。

 人と、物との関係の、しあわせな最終型。

 いつの日か、私もそんなふうな関係を築ける人でありたいという思いが、胸を満たします。


 

 オキーフの描く赤い花からは、燃え上がる炎のような情熱が。(それは描くことに対しての)
 オキーフの描く白い花から、熾火のような静かで強固な情熱(それは生そのものへの確かな思い)が、私に伝わり、私を励まし、遠くへと導いてくれるような気さえします。

 情熱を持って生きることの大切さ。



 それでは。
 生きることを、生きたいという気持ちを、生きていく情熱を、
 病魔に阻まれてしまったらどうしたらいいのでしょう。
 がんばって生きていたって、たどり着く先は、
 同じひとつの場所なのではないかと思った時、
 生きていくことに何か意味があるのでしょうか。

 親しかった人が逝ってしまった日、「オキーフの家」の中の
 1枚の写真を思い出しました。

 庭師のエスティベンが暖炉に積んだ薪の写真です。
 火をつけ、火がまわっていけば、その薪は大きく崩れ、
 最後には燃え尽きてしまうだけなのに、
 それはそれは美しく積まれているのです。
 「それ自体が美を備えている」
 そう写真家は書いてます。

 効率よく燃えていくために、もしかしたら
 その積み方は必然なのかもしれませんが。

 そうでなかったとしても、その庭師は
 美しく薪を積んでいったにちがいないのです。

 自分のために、ミス・オキーフのために。
 そしてたぶん、薪のために、暖炉のために。
 その空間のために。

 生きていくということは、そういうことなのだと思いました。
 
 いつかは燃え尽きてしまう薪を
 美しく積み重ねること。








 

 


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8 コメント(10/1 コメント投稿終了予定)

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・・・ (miyaco)
2006-09-27 17:56:40
…もしかして、もしかして…。と思っています。

杞憂であればいいのだけれど…



ぐっとのどのあたりが締め付けられるような感じです
返信する
miyacoさんへ (ruca)
2006-09-28 14:05:58
こんにちは。



今日はとってもいい天気ですね~。いい天気過ぎて、陽射しが眩しすぎて、なんだかつらいような気さえします。



思わせぶりな書き方しちゃって、すいません。



きっと、口には出さないものの(コメント書かないってことですが)、ゆうべこの記事を読んでくれたすべての人が、もしや、と思い、心配してくれたことでしょうね‥。それを思うと、申し訳ない気持ちになります。



決して、心配されたり、なぐさめられたり、したがっているわけではないのです。



だったら、何にも書かない方が、自分の心にだけ閉まっておいたほうがいいんじゃないか、とも思いました。



けれど、以前、詩の中のことばに救われてきたように、今度のことでは、この1枚の写真に救われたこと。心をつよく保つことができているのは、そこに美しい薪の姿があったからだということ、残しておきたかったのです。



※  ※  ※



私が最後に、その先輩に会ったのは9月12日、お見舞いに行った病室でした。その時は、ほんとうに元気な様子で、ベッドに起き上がって、1時間くらいいろんなことを話しました‥。その後様態は急変してしまい‥今週の火曜日にお亡くなりになったのでした。癌でした。













返信する
言葉ではいえない気持ち (フラニー)
2006-09-29 00:45:07
そうなのですね・・・。

こういうときに、本当に言葉がみつからなくて・・・・。

でも、お見舞いでrucaさんのあたたかい気持ちを喜んで受け取られただろうし、

お話もできて、よかったなと思います。



時々、生かされる意味を思うけれど、

rucaさんの最後の一文に、胸打たれました。

もしかしたら、美しくはつめないかもしれないけれど、一生懸命つみたいなと 思いましたよ。



前にも書かれていたジョージア・オキーフ。

作品も人も知らなかったのですが、

今度探してみようと思います。
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Unknown (まつかぜ)
2006-09-29 11:00:46
rucaさん、おはようございます。

いまだジョージア・オキーフの作品もそしてこの写真集も手にしたことの無い私ですが

rucaさんのこの「積み重ねられた薪」の言葉をずっと心に留めておけるようにしたい、と思いました。

病院でお話ができて、よかったですね。
返信する
フラニ-さんへ (ruca)
2006-09-29 18:15:21
こんばんは。



あたたかいコメント残してくれて、

ありがとうございます。



思えば、このブログに「お見舞いへ行く」ことを

書いて、その時迷っていた自分の気持ちを、

みなさんに後押ししてもらったのでした。

(そのおかげで、元気な時に会うこともできました。)



今日、告別式があり、参列してきました。

お見舞いの時に病室に居た妹さんが、私を見るなり

「クマちゃんも一緒に入れました」と言ってくれました。



ほんとはもっともっと、クマちゃんには見守り続けて

欲しかったけど、

お供する人(クマだけど)もいないとさびしいものね、

と思い、クマちゃんに託した気持ちも一緒に持っていって

もらいました。





ミス・オキーフのところの庭師の方のように、

あんなにきれいに薪を積み上げる事、

きっと私にもできないだろうけど(不器用なんです‥)

一生懸命に、「積む」気持ちだけは大切にしようと

思いました。決して投げたり、折ったりしないように。





返信する
まつかぜさんへ (ruca)
2006-09-29 18:22:02
こんばんは。



今日の夕陽、とってもきれいでした。

どこかで見ていたかな。



『オキーフの家』という写真集を見ていたから、

その中に、暖炉の写真があったから、

心を強く保っていることができた‥と思っていました。



でも、こうも言えることに気がつきました。

親しくしてもらった先輩の、早すぎる死があったから、

それまでは、写真集の中の1枚の写真に過ぎなかったものが

私にとって、とても重要な意味を持つ、忘れることができない

「たった1枚の写真」に変わっていったのだ‥



いずれにしても、ほんとうに美しい姿なんです、

その積まれた薪。



返信する
やっと・・・ (フラニー)
2006-11-19 16:56:35
土曜日に図書館に行って、やっと『オキーフの家』を借りられました。
どんな薪なんだろう?どんな人なんだろう?ってずっと気になっていて、やっとです。

オキーフという人自身知らない存在で、この写真を見たとき男性かとおもうくらい、ストイックな(いい意味で)感じを受けていたのですが、とても素敵な写真集でした。
今まだ文章で、オキーフさんに出会っている最中です。
rucaさんの言われていた薪!本当にすばらしい。
rucaさんと先輩のお話も一緒になって、わたしにとっても、なんだか忘れられなくなりました。
この先、絵に出会うこともあるかと思うと、うれしいですよー。ありがとうございます!
また、オススメの写真集があったら、教えてくださいね。
返信する
フラニーさんへ (ruca)
2006-11-21 14:00:34
ふたたび、こんにちは。

『オキーフの家』はほんとに素晴らしい写真集ですよね。
私の「クリスマスに買いたい本リスト」のトップに挙がっています。

オキーフの絵ももちろんとても素敵で、とても好きなんですが、あの写真に写っているオキーフという女性を見ると、信念を持って生きてきた人の「重み」をぐっと感じます。

とても美しい女(ひと)です。
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