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my favorite things

絵本の話を中心に、好きなもの、想うことなど。

クリスマスおめでとう

2008-12-25 14:17:54 | 好きな絵本
とても美しい青空が広がっています。
晴れている、というだけで、嬉しくなってくる日です。

小6のrの元へ、ちゃんとサンタさんが、本を届けてくれたと、という
ことのほかには、特別なことの何もない朝だったけど、でも、
なんだか、自然に笑顔になる朝でした。


私から、rへのプレゼントという名目で、今年のクリスマスに買ったのは
この絵本。やっと〈うちの本〉になりました。

ちいさなもみのき
    マーガレット・ワイズ・ブラウン 作 バーバラ・クーニー 絵


28ページの、最後の2行を読むと、胸の中がしんとした深いもので
満たされていくのがわかります。


   クリスマスなしでは、このよは、ただ おおきく、
  つめたく、からっぽにみえました。



今年出会ったすべての方に、大きな声で 「クリスマスおめでとう」








一年がかりのプレゼント

2008-12-18 15:30:44 | 好きな絵本
すこし前に図書館の「新刊」の棚で見つけました。

先週金曜日の、今学期最後の読み聞かせが、1年生のクラスだったので
そこで読もうと思い、何度も練習を重ねました。

とんがとぴんがのプレゼント
  西内ミナミ 文  スズキコージ 絵



スズキコージさんの絵。
好きか苦手かで二分しがちですが、私は「結構好き」です・笑

この絵本のテキストは、(なんと!)1968年に『ぐるんぱのようちえん』の姉妹編として
作者である西内ミナミさんがお書きになりましたが、絵の、堀内誠一氏が
多忙であったため、司修氏の絵で、こどものとも153号として発表され、
そして、今回、40年ぶりに再改作して、スズキコージ氏の絵で、出版されたそうです。

そんな経緯や歴史の重みを、いい意味でまったく感じさせない、新鮮で、楽しい話です。
スズキコージ氏の、パワー全開の絵も、コラージュが使われていたりしてさりげなくオシャレ。

出だしはこんなふう。

とおい、とおい、きたのくに。やまの、また そのやまおくに、
ちいさな はりねずみの ふうふが、ニコラスおじいさんと
くらしていました。2ひきの なまえは、とんがと ぴんが。
ことしも さむい ふゆが やってきました。 あるばんのこと。


いつも、世界中の人にプレゼントをあげるのに、ニコラスおじいさんは
プレゼントを誰からももらってないことに気がつく、とんがとぴんが。
おじいさんへの、「とっても素敵なプレゼント」を思いついたふたりは
手紙を残して出発します。

しばらく るすに いたします。らいねんの クリスマスまでには
かえってきますので、しんぱいしないでください。

1年がかりで、プレゼントを用意するなんて、気合の入り方が違います。

プレゼントの、素材探しの旅、それを手に入れるために働かせてもらうこと‥
そして、最後に、思い描いていた通りのプレゼントを用意することができて、
ふたりはとっても嬉しかったことでしょう。

プレゼントは、贈る相手のことを考え、準備している間がすごく楽しいのですから。



一生懸命練習したけれど、1年生のクラスでは時間が足りなくなりそうだったので、
ぐりとぐらのおきゃくさま』を読みました。

みんな、読み始める前は、「知ってる、知ってるよー」と口ぐちに言っていたのに、
読み進めると、「もしかして、サンタさん?」「サンタさんのかな、あれ」と
小声で、隣の子に聞いてる女の子がいたりして、読んでる私も、とっても楽しませてもらいました。

絵本は、声に出して読んで、それを聞いてくれる子どもが居て‥という
ところで、大きな力を発揮し、大きな力を与えてくれます。
今年も、無事に(休むことなく)、小学校での読み聞かせボランティアが
できたことに感謝です♪



赤いてぶくろ

2008-12-03 22:16:35 | 好きな絵本

今日の東京方面は、陽射しがたっぷりで、きれいに晴れていました。
こんな日の昼間は、なくっても大丈夫かもしれないけど、冬用のコートといつも一緒に
行動するのは、手袋です。

ちょっとそこまでの軽いスポーツタイプのコートには、自転車でも寒くないフリースの。
あまり寒くない日の、ちょっとお出かけ用の革のジャケットには、スエード皮の。
ダブルボタンがお気に入りの、白いダウンジャケットには、赤茶色の毛糸のを‥。

出かけるときに忘れないように、それぞれの手袋は、いつも上着とセットです。
(ポケットに入れたままってことなんですけど・笑)

グラヴとか、ミトンとかもかわいい言い方だけど、日本語の「てぶくろ」っていう呼び方も
なかなか好き♪です。
手にかぶせるから、てぶくろなんだろうけど、そんな直接的な呼び名なのに、結構いいですよね?



ところで。

この町の子供たちは、てぶくろといえば、赤色が定番のようなんです。


ふたごの兄弟のドニーが、ジェイニーのうちの庭に、てぶくろ片一方なくしてきたかも、と思い、
ネッドとともに探しに行くのですが、そのときにはてぶくろは見つからず、
でも、あとからそれは見つかって、ジェイニーが届けにきてくれました。

これでめでたしのはずなのに、なぜか翌日「ふたごちゃんが、あかい てぶくろを
さがしてるって きいたもので」とブラウンさんが、片方だけの手袋を届けて
くれて‥その後もゆうびんやさんや、ごみあつめのトムや、ぎゅうにゅうやさんも
赤い手袋を持ってきてくれて‥

そのあとも、どこかで だれかが あかい てぶくろを みつけるたびに、
ふたごの うちへ とどけにきました。


そして、
こんなに、赤ばっかりが集まってきちゃったのです。

てぶくろがいっぱい

フローレンス・スロボドキン 文  ルイス・スロボドキン 絵
三原 泉  訳



原書は、1958年に発行されていますが、日本では新刊です。

先日の「はじめましての絵本たち」で紹介され、とっても気に入ったのでした。
話も、絵の感じも好きだったからですが、決め手となったのは、
てぶくろがいっぱいの、「が」のテンテンが、よく見ると赤いてぶくろになっている
ところです。
(こういう細かい工夫に、胸がキュンとします♪)





手袋の思い出で、ひとつ忘れられないのは‥
その昔、ニューヨークシティマラソンを、セントラルパークで観ていたことがあり、
日本人が走ってくるたびに、懸命に手を叩いて応援していたのです。
11月の初めでしたが、ニューヨークの紅葉はすでに終わっていて、吐く息は白く
手袋なしではもう寒い季節でした。
その時は、表が黒で、内側が青色の、皮の手袋をしていたのですが、
気がついたら、指輪をしていた中指と薬指のところが破れていて‥
ものすごーいショックでした!
皮の手袋の皮が裂けるほどに、熱い声援をしていたんですか? わたし‥
(その手袋、今もタンスのどこかに眠っているはず)



風がえらんでくれた人

2008-11-13 16:05:19 | 好きな絵本

今日は朝からいい天気。 久しぶりの青空です。

晴れたら、月が見えるなあって思ってて。
お、今晩は満月の日ではないですか‥と気がついて。

「好きな絵本」カテゴリーの(なんと)100冊目は、ちょっと前から
この絵本にしようと決めていたので、その偶然の重なり具合が
なんとも嬉しいです。


満月をまって
  
  メアリー・リンレイ 作 バーバラ・クーニー 絵
  掛川恭子 訳


絵本ブログを始める前から、クーニーの『にぐるまひいて』を
持っていたのは、私の中では、「ちょっとすごいかも」ということで、
絵本ブログを始めてから知った、クーニーの数々の絵本は、
そのどれもが、大事な1冊になり得るものばかりでした。

にぐるまひいいて
ルピナスさん』 
エミリー
7ひきのこうさぎ

持っているのは、この4冊だけだけど、借りて読めるものは
全部読んだし、思ったことをその時々、ブログにも残してきました。


この『満月をまって』は、クーニーの最後の作品で、大好きな月が
描かれている、大好きな本だけれども、どこから、この絵本の
よさを(私にとっての)書いていいのか、ずっと迷っていた、難しい絵本
でもありました。

今回、声に出して読んでみて、これは、主人公の少年が、子ども時代を
卒業していく話なのだと、思い至りました。

舞台は100年以上前のニューヨーク州ハドソンの山あい。
家族と数人の友人だけで暮らし、木を削って籠を作り、それを町で
売って、生計を立てていた人の話です。

主人公の「ぼく」は、とうさんとその友人たちが籠をつくる様子をみながら育ち、
8歳になったら、町へ行く時に、とうさんが自分を連れていってくれるに
ちがいないと夢みていました。
が、それは叶わず、さらに1年以上待って、はじめて、とうさんが
声をかけてくれたのです。

町への道は遠く、帰りは決まって夜になってしまうので、
とうさんが出かけるのは必ず、満月の日。
だから、「ぼく」は、満月がやってくるのが待ち遠しくてなりません。

しかし、初めて見た町は、きらきらと光輝くものばかりではありませんでした。
「ぼく」は、そこで、初めて現実に直面します。
自分のあこがれだった父親は、町では「山ザル」呼ばわりです。
父の仕事も、父の作った籠も、もう見たくなんかないと思う少年。

けれど、彼の中で、何かがすこしづつほどけていきます‥
ビッグ・ジョー(とうさんの友達)のこんな言葉をきっかけに。

 「風からまなんだことばを、音にしてうたいあげる人がいる。
 詩をつくる人もいる。風は、おれたちには、かごをつくることを
 おしえてくれたんだ」

そして、風がえらんでくれた人になりたい、と、強い意志が芽生えます。
そのときには、「ぼく」は、小さな男の子ではなく、大人への一歩を
自分でも知らないうちに踏み出していたのです。



「風がえらんでくれた人」は、風の声に耳を傾けることができる人で、
風の声に耳を傾けることができるということは、自分の心の中を
まっすぐに見て、内なる自分の声に気がつくことができる人だと思うのです。

大人になるっていうことは、まず、自分の心の声を聴いて、
それにむかって進んでみようと思うことなのではないかなと、思います。
周囲の声に惑わされない、強い気持ちを持つことって、言い換えても
自分の好きなものを見つけるっていうことに換えても、いいかもしれません。




10月が誕生日の友達に、この絵本を選んだのですが、彼女はすこし
戸惑ったのではないかな、と思っています。
だって彼女は、もうすでに「風がえらんでくれた人」だから‥。

じゃあ、私はなんで(クーニーの他の作品ではなく)
この絵本にしたのでしょうね。
月が、きれいだったからかな。 
BASKET MOON というタイトルが彼女にぴたっときたからかも。

(私が)絵本が好きになって、クーニーの絵本が特に好きで、
そのクーニーの最後の作品を、知ってほしいと思ったからかな、と
そう思っています‥




揺さぶる音

2008-10-22 14:52:03 | 好きな絵本

この頃、お出かけしたことばかり書いていて、ちょっと気が引けてます。
なので、今日は「絵本」のおはなし。

絵本というくくりに入れていいのかどうかわからないけど、グレーの紙に
黒く細い線画がとてもいいので、装丁は、ちゃんとした「本」みたいだけど
「絵本」ということで‥




タイコたたきの夢』 ライナー・チムニク 作 矢川澄子 訳


同じ作者の『クレーン男』を、1か月前くらいに読んで、ふーむとなりました。

寓話なのかなと思ったけど、うまく自分の気持ちをまとめられなくって、
同じ作者の、別の作品も読んでみようと思い、こちらを手にとりました。
題名がすごく気になったのです。

表紙だけみると、描かれている二人の男がプロの「タイコたたき」で、
その男たちの夢見ていること、って内容みたいですよね。
でも、この男たちは、大勢の中の誰かであって、名前もなければ、
タイコをたたくのが職業というわけでもありませんでした。


むかしむかしのあるくにで、ある日、ひとりが言い出すのです。

   「ゆこう どこかにあるはずだ
   よっとよいくに よいくらし!」


それに賛同したものたちが、太鼓を打ち鳴らしながら、自分の国を出て、
よそのまだ見ぬ、もっとよいところを目指します。



現状に思い悩んでいるのなら、立ち上がって、太鼓を鳴らして
どんどん外に出ていくのが、得策であり、良策であり、人間としての本能でも
あるのかなあと思います。

でも、城壁の中で、それなりに満ち足りた暮らしをおくっていたのに、
どこの誰ともわからない男たちが、大勢で太鼓を鳴らしながらドカドカ
やってきたら、それもどんなものなのでしょうね‥

いろんな側面から、いろんなことが感じられます。

いま、私がいちばん思うのは、太鼓の音が聴こえてきたら、きっと
ドキドキしちゃうなあということ。
そのドキドキは、侵入者に対しての警戒であるよりも、一緒に行こうという
誘いに聞こえてしまうからかな・笑。
色々な意味で、太鼓の音には、揺さぶられます。


太鼓の音といえば、春樹氏の初期のエッセイ『遠い太鼓』の一節が、
必ずセットで思い出されるのです。

ある朝目が覚めて、ふと耳を澄ませると、何処か遠くから太鼓の音が
聞こえてきた。ずっと遠くの場所から、ずっと遠くの時間から、
その太鼓の音は響いてきた。とても微かに。
そしてその音を聞いているうちに、僕はどうしても長い旅に出たくなったのだ。


春樹氏は、日本を離れてギリシアやイタリアで生活し、そしてそのあと
ノルウェイの森』が出版されました。

なんか、すごいむかしばなしをしているみたいで、それに驚きますが(笑)、
「遠い太鼓」を最初に読んだときに、私も、この場所にいてはだめ、
行きたいと思っているところにいかなくちゃ、と強く思ったことをよーく
覚えています。

太鼓の音を、思い浮かべただけで、だから、気持ちが今でも揺さぶられる
のでしょう。

遠い太鼓




私たちのお店、BOOTS&STICKS の「スティックス」も、もちろん
太鼓をたたく、スティックのことです。
(私たちのお誘いは、まだ見ぬよい国へ、ではなく、ちょっとそこらへんの
散歩や、頭の中で、好きな場所へ行くことですけどね ♪)












お月見・前夜

2008-09-13 22:27:49 | 好きな絵本
こんなに月がきれいで、
こんなに風が気持ちがいいと、

ばばばあちゃんでなくっても、外に出て、星空を見ながら
寝られたらって思ってしまいます。




私は冷たい水だけ用意しておけば、冷蔵庫やレンジや
ましてやアイロンやにんじんなんかは、必要ないですね。
あ、頭のスカーフも・笑


数ある、ばばばあちゃんのお話の中で、この本が一番
好き♪ です。

いそがしいよる』  さとうわきこ 作




単色刷りと白い器と誕生日

2008-08-29 19:01:41 | 好きな絵本

こどもの頃から、いつもこういう順番でした。

誕生日がやってくる→夏休みがもうすぐ終わりだと気づく→さびしくなる

かなりの大人になった今でも、この気持ちはあまり変わっていませんが、
宿題という義務がなくなり、好きな目標をもてるようになったことが、
大人のいいところだなと思っています。


  +    +    +    +


6月の ことり便で選んだ、『フィリッパ・ラズベリーのうた

  
エヴァ・ビロウ さく 石津ちひろ 絵


表紙から素敵なんですが、中のページに、とっても惹きつけられました。

白いページに、どれも、単色のインクで刷ってあるんです。こんなふうに‥


この 白いページ+単色インク この夏、ずっと気持ちの底にあった気がします。

白に青・白にグリーン・白に橙・白に紅・白にピンク‥文字の色は黒。
なんか潔くって、さっぱりしてて、そしてきれい、です。



この白地の印象そのままの、器が、誕生日前に届きました。


       大谷哲也さん作の<白磁銅鑼鉢>

底から立ち上がりにかけて、とてもかっちりできていて、
そして(わかりますか?)、縁のラインに緩いゆがみのようなものがあるのが‥
その対比がおもしろく、見ていて飽きないし、親しみを覚えます。

こんな贈り物をいただいてしまって、どうしたらいいんでしょう、が真っ先に
思ったことでした。



早速、ゆうべの「お誕生日ごはん」のときに、使わせていただきました。
(否。正確には器に合う料理を作ってもらいました、です・笑)

      
      海老とズッキーニとエリンギの蒸し物 ですって。

  
  バースデーカードもいただきました。玉乗り象Tと、花火缶Tの絵もあって↓
  すごく嬉しかった!
     



ごはんの時、自分の誕生日よりも、はしゃいでいるように見えた
rがくれた手作りバースデーカード。お気に入りのメモ帳を何枚か綴じて
本仕立てにした“自信作”だそうです。

     

  

   どうもありがとう。

   贈り物もカードもメールも、ほんとうにどうもありがとうございます。



   新しい1年も、健やかに、笑って、過ごすことができますように。





こっちがわとあっちがわ

2008-08-24 14:55:42 | 好きな絵本
今、私たちが居る場所が「こっちがわ」なら、
もう生きている間は会うことができない人が居るのが「あっちがわ」。

そんなふうに、生と死の2つで、居場所を分けていたけれど‥

今日、この本を読んだら、今自分が居る「こっちがわ」へ、来る前の人たちも
「あっちがわ」にいたのかもしれない、ということに気がつかされ、
それなら「あっちがわ」に行った人たちも、そんなに淋しくはないかも
しれないと思いました。



     『わたしのおじさん』  湯本香樹実  植田真・画


 わたしは、みわたすかぎりの草原で目を覚まし、
 ずっとむこうに見えている大きな木のところまで、
 歩いていきました。、その木の下には、青いシャツをきた
 コウちゃんが座っていました。

 コウちゃんは、8歳の男の子だけれど、「わたしのおじさん」なんです。
 わたしの、(まだ見ぬ)おかあさんが11歳のときに、
 車にぶつかって死んでしまった、おかあさんの弟だから。

 わたしは、コウちゃんと遊び、コウちゃんと眠り、コウちゃんの
 おとうさん、おかあさんといっしょにごはんを食べます。

 コウちゃんとの別れの日、むこうがわへのダイブを躊躇しているわたしに、
 コウちゃんは、ここでのことを忘れてしまうわけではないのだと、
 教えてくれます。

 「むこうで、たとえばどこかはじめての場所に行って、
 はじめてなのに来たことがあるような気がするって思ったり、
 そういうことが‥」
 「あるの?」
 「ある。なんだかはじめて見たって感じがしないものを見たり、
 はじめて会ったって感じがしない人に会ったり」



rが生まれた時、私の祖母はもういなくって、それを残念だといつも思ってきたけれど、
rはもしかして、あっちがわで、私のおばあちゃんに遊んでもらってきたのかもしれません。

初めて会ったはずの人なのに、いつかどこかで会ったような気がする人や、
初めて来た場所なのに、懐かしい気持ちを感じたなら、それもやはり
自分がこっちがわへ、ダイブしてくる前の記憶のせいなのでしょう。



植田真さんの絵が、お話を一層、味わい深いものにしています。

※体裁や、文章の量からすると、「絵本」には入らないのだと思いますが、
植田さんの絵は、挿絵の域を超えている!という個人的な好みで、
「好きな絵本」のカテゴリーに入れました。







                      

こどものとも2冊と誕生日

2008-08-22 22:35:59 | 好きな絵本

帰省旅行の際に、必ず行くのが、四日市市にある「メリーゴーランド」です。

今回は、初めて、紙芝居の会に遭遇しました。

はじまりの歌は、子供たちが鳴らす楽器と、お店の方のギターでなんとも楽しげ。
(はじまりの歌)紙芝居・本のひらきよみ・紙芝居(終わりの歌)という構成でした。

紙芝居を横目で見つつ、絵本の棚の間を行ったり来たりしながら、
今回選んだのは、↓の こどものとも2007年11月号。

佐々木マキさんの絵や本はチェックしているつもりだったのに、見落としていたみたい。
『てんをおしあげたはなし 中国チワン族のはなし』という、
とても壮大なタイトルと、チワン族???というところにも惹かれました。



表紙上のオレンジ色の部分が「天」で、下のピンク色の部分が「地」。

   てんと ちは、とても とても
  なかのよい きょうだいだったのです。
  ふたりは、どんなときも
  なにをするのも いつも いっしょで、
  はなれたことがありませんでした。


このお話のすごいところは、太陽や月や星は、天にあるのではなくって、
天と地の間の、動物や植物や人間が存在するところに、一緒にあるというところです。

なぜ、動物が4本足で歩くことになってしまったかも、この本を読むとわかります。


こういう、全然科学的でないおはなし絵本って、大好きです



旅行からかえってきた翌日に届いた「ことり便」
8月のことり便は、娘rの誕生日プレゼントにしたので、一緒にたのんだ
この絵本だけ、先に読みました。

『くさむらむらのおつきみまつり』 こどものとも 2008年9月号

大好きな カズコ・G・ストーンさんの、「やなぎむらのおはなし」シリーズです。




今回は、9月号なので、お月見です。

舞台は、くさむらむら。 日本語だとユーモラスな感じになるのに、
英語だと、GRASS VILLAGE なんだかかっこいい~。

ほんものの虫は苦手なのに、このシリーズに出てくる虫には深い愛情を
もっています(笑)。

もう何度も書いていると思うけど、このシリーズの魅力は、丁寧に描かれた
色鉛筆と水彩画の美しさ+個性的な虫たち+小動物のさりげない手助け、です。

でも、最新のお話では、大活躍するはずの、とかげのチョロリさんに
不測の事態が起こってしまいます。
「チョロリとっきゅうに」に乗っていた虫たちはおつきみひろばに
着くことができるのでしょうか‥?



作者のカズコ・G・ストーンさんは、マンハッタンにお住まいです。
毎年夏になると、セントラルパークで開催される、ニューヨーク・フィルハーモニーの
フリーコンサートのイメージが、このお話の底辺になっているそうです。
(そういうところも、私を魅了している遠因なのかなあと思っています。)

大変残念なことですが、このシリーズは今回が最終回とのこと。
だから最後のおつきみひろばには、今まで登場したすべての虫たちが
勢揃いしていたのですね。



サラダとまほうのおみせ』から始まって、いったいどれくらいこのシリーズを
読み込んだことでしょう。

読み始めたのは、たぶんrが3歳のころ。その子が、今日で12歳になりました。

彼女がどれくらい「やなぎむら」を愛しているかはわかりませんが、母が、たいそう
気に入っていたことは、きっといつまでも覚えていることでしょう。


昨年から20歳のバースデーまで贈ることに決めた「絵本」。
今年は、8月のことり便から、『ともだちは海のにおい』を選びました。

そして、本の脇に写っているのは、木工の川端健夫さん作のオルゴールです。
ヒナタノオトさんで見つけて、とっておいてもらったものです。

先日の帰省旅行の際に、作者の川端さんにお会いしたので、オルゴールのことを
話したかったのですが、その時は、まだrに内緒だったので‥
マンマミーアさんにも、ひとつだけ置いてありましたね。
うちにやってきたのは、♪曲は「ハンプティ・ダンプティ」で、木は、くるみとナラです。

くるくる回すと、とてもとてもかわいい音がします。





今年
の夏は、つらく悲しいこともあったけど、そういうこと全部ひっくるめて
ただ一度だけの夏が終わろうとしています‥


原点

2008-08-05 16:22:50 | 好きな絵本

7月のはじめに、吉祥寺のトムズボックスへ行きました。
まだ1か月もたっていないのに、ずっとずっと前のことのような気がしています。
(なぜなんだろう?)


トムズボックスの7月の展覧会は荒井良二さんだったので、それを見るために
行ったのですが、とってもいい本を見つけたのです。

  MELODY

  『MELODY』 荒井良二 作


1990年にトムズボックスから出たものの復刊で、1000部限定と書いてあります。



ざらっとした紙の手触りと、大きさの縦・横の比と、アルファベットだけで書かれている
表紙の文字のせいで、なんかふるい英語の本を見ているようです。
赤と青だけの印刷も、ノスタルジックな気持ちにさせてくれます。



この本のタイトルの「MELODY」

見たこともない文字や、聞いたこともない国や島で埋め尽くされている
地球儀を持っているぼく。

地球儀は、回すと、キキキ、クーコ と妙な音を出し、

ぼくは、今日と明日のサカイメあたりで、それを回す‥



みごとなまでに、荒井良二さんの「原点」が本の中に詰まっています。

1990年。  おそるべし荒井良二。  そのとき20年後の自分を想像していたでしょうか?





1990年といえば‥
私は結婚して3年目で、ローリングストーンズが初来日した記念の年。
そのときに見ていた夢で、叶ったものと、叶わなかったもの。
そのときには、夢にも思わなかったことが、今は現実になっていること。
そのとき生きていたのは、今はもう居ない人たち。
そのとき生まれていないのに、今は元気いっぱいの人。

いろいろいろいろあってのまいにちですが、
私は私の原点を見失うことがないように。見失っても、やがて戻ってこられるように。




誇り高きは‥

2008-06-12 17:30:38 | 好きな絵本
今度の日曜日は父の日ですねー。

それを意識したわけではないのですが、
久しぶりに「好きな絵本」カテゴリーに登場したのは、
誇り高き、おとうさんねずみの話です。



『ねずみのとうさんアナトール』
イブ・タイタス 文 ポール・ガルドン 絵
晴海耕平 役


表紙の「アナトール」の文字が、トリコロールカラーに
なっていることからもわかるとおり、アナトールは、パリの
ちかくの ちいさなねずみ村に、愛する妻のドーセットと、
6にんの かわいい子どもたちと いっしょに くらしていました。

さすが、自転車競技がさかんな国です。
ねずみだって、かっこいい自転車に乗っていますね。

夕方、街に灯りがともること、ねずみのおとうさんたちは、
自転車に乗って、ねずみたちだけが知っているひみつの通路を
とおって、人間の家にはいりこみます。
家族のための食糧調達=しごとです。

ある晩、アナトールは、自分たちのしている「しごと」は
人間たちには、ひどく嫌悪され、「ねずみは、生まれつき
悪なんだ!」 とののしられたことにひどくショックを受けます。
相棒のガストンは、それも家族のためだからしかたがないと
割り切りますが、アナトールはすっかり気落ちしてしまいます。

「けいべつされ きらわれてると思うと たえられない。
ぼくの自尊心は どうなるの? ぼくのほこりは?ぼくのめいよは?」



人間になにかお返しができればね、と言った妻のひとことから
アナトールは、この後、すばらしいことを思いつき、
早速実行に移すことにしました。

自分の能力を最大限に生かし、それによって報酬をもらい、
愛する家族から、尊敬される‥ねずみじゃなく、人間の世界だって
これほど幸せなことって、そう他にはないはずです。
しかも、アナトールは、自分の「しごと」が認められると、ともだちの
ガストンに、仕事をてつだってもらえないかと、頼みにいきます。
ほんとに、アナトールって、どこまでいいやつなんでしょう。

それもこれも、自分の気持ちに正直だった故のこと。
自分の心の中の基準を、ぐらぐらさせないことが大事なのだと
アナトールに教えてもらった気がします。



それにしても、ナルニア国に居るリーピチープといい、
ネズミは誇り高き、生き物なのですね。
そして、ネズミといえば、むかしから大好物はチーズと決まって
ますが、ほんとうにチーズに関してはプロフェショナルなのでしょうか?
(デュバル・チーズ工場の職人たちよりも‥)




ミルフィーユ

2008-05-17 16:22:59 | 好きな絵本

ヒルサイドテラスでの2回目の講演のテーマは
ゴフスタインでした。
彼女の本は、どれも「特別」なので、1冊1冊、
これはあの時に買ったものと、覚えておきたいなあと
思っています。

出かける前から、その日、買って帰る絵本は決まっていて‥
それは、
『おばあちゃんのはこぶね』でした。



大興奮の5月15日の晩は、表紙を眺めただけで、
開くところまでいきませんでしたので、
昨日の夜、そっとひとりで、表紙を開きました。
図書館から借りたこともあるので、どんな話なのかは
知っています。
知っているからこそ、ひとりで開きたかったのだと思います。


5月15日のおはなしの中で、末盛さんは、
「ゴフスタインのはなしには、どれも悲しみが感じられる。
悲しみのひとはけがあるからこそ、人は彼女の本に
惹きつけられる」とおっしゃいました。

本のラストで、主人公のおばあちゃんは、こう言うのです。

よろこびとかなしみは
にじのよう、

それがわたしをあたためてくれる
おひさまのように。


人生は、喜びだけではないのです。
喜びと悲しみが、重なっているからこそ、
虹のように美しいのでしょう。

まさに、ひとはけの悲しみです。




喜びや悲しみが幾層にも重なって、
それでも、ひとくち齧ればさくっとおいしいミルフィーユのような
そんな人生を送った、90歳のおばあちゃんに
いつか私もなれるでしょうか。







お散歩日和

2008-04-15 15:10:15 | 好きな絵本

今日は、ぽかぽかで、いいお天気です。

午前中の仕事と用事を済ませ、鉢植えをのぞきこんだり、
水遣りをしていたら、急に、この本のことを思い出しました。


 みちくさ劇場
        『みちくさ劇場』
          荒井良二 作 


12のおはなしが、絵とともに、見開き4ページで語られています。
出てくるのは、小犬やねこやお花やカラスやことりやリスやぼうし(?)です。
みんなのんびりしたかたたちばかり。



たとえば、ねこのポチは、配達中なのに自転車を道端に停めて、
藪の中をじーっと見ています。
小さな花をつけた草に、「なにをしているのですか」と聞かれ、
「宇宙をみているような気になってくるんですよ」とこたえます。

小さな やぶの中の
とおくの とおくの むこうから、
こちらを のぞいている だれかが
いるみたいな 気がします。

「はいけい とおい だれかさん」




たとえば、バスの運転手をしている、花のミミちゃんは、
お客さんが誰も乗っていないし、のども渇いたので、ちょっとひとやすみ。
水を飲んでいたら、アリがけんかをしています。
どちらのアリの言い分も、ミミちゃんは同じように聞いてあげます。

「ふんふん、なるほど」
ミミちゃんは そういって、きいているだけです。
アリも はなしつかれたので、
むこうへ いきました。
しばらくして ミミちゃんは、また、
「ふんふん、なるほど」
と いってから、バスを はしらせます。
のんびり 花の おはなしです。



はじめの方に載っている2つのお話を、すこし紹介しましたが、
あとの10篇も、こんな感じです。
どの話にも、空が(紙面のわりには)広く描かれていて、
雲が動いたり、風が流れているのがよくわかります。

『森の絵本』や『バスにのって』の、荒井良二さんの絵が好きな方
だったら、きっとこの本も、好きになると思います。
縦19cmの、小振りなサイズも、話の内容とぴったりです。


今日みたいな日は、帽子をかぶって、
この本と簡単な飲み物を持って、
「あー散歩にいかれたらなあ」



こもりうた

2008-02-29 21:47:22 | 好きな絵本

スーパーマーケットの自転車置き場で、くすんくすんと甘えた声を出して
お母さんに抱っこをせがんでいる小さな子の、その声だけを背中で聞いて、
とっても懐かしい気持ちになりました。

そうそう、あんなふうな声、いっつも出してたな、rさん。

明日からはもう3月で、その3月が終わったら、ひとり娘のrも6年生。

秋頃から体もずいぶん成長し、こども時代もそろそろ終わりかなあと
思っていますが、眠る前の「絵本」はまだ続いていて…。
大きくなっていくことに対する漠とした不安が、子どもの心の奥にもあって、
それと折り合いつけるために、時間がかかる子もいるのでしょうか。




子どもがすごーく小さくて、いっつも泣いてた頃に、
こんな絵本を読んであげたかったな。

   
   あざらしの こが ねています。
   あざらしは はまべで ねむります。
   なみは まわりで おどります。
   けれども だれも あざらしの こに
   こもりうた うたっては やりません。


あざらしの次は、かもめで、その次はくま、うさぎ、りす、
ビーバー、うま、はりねずみ、らいおん、と続きます。

どの動物のページも、最後の文はみな同じ

   こもりうた うたっては やりません。


最後の最後に出てくるのは、人間の赤ちゃん。
すやすやベッドで眠る赤ちゃんをおとうさん、おかあさんが見守ります。


中谷千代子さんのが描く動物の子供たちの姿は、どれもみな愛らしいです。

この本に、出会いたかったな。もっともっと前に。
  
 みんなのこもりうた
      『みんなのこもりうた』
 トルード・アルベルチ 文 なかたにちよこ 絵
        いしいももこ 訳



はつゆきトリップ

2008-01-17 17:15:24 | 好きな絵本

ゆうべは東京でも初雪が降ったそうですね。
ちょうど2,3日前から、この本のことを書こうと思っていたのです。


主人公の女の子が赤いセーターを着ていたことと、お話の最初のほうで
こんな記述があったものですから、私は読みながら「あかいくつ」の
お話を思い出してしまいました。


 片足、片足、両足、片足‥‥。

 「おや、元気がいいねえ。」
 と、店番のおばあさんがいいました。女の子は、あらい息をしながら、
 とくいそうに笑いました。おかしやの前では、大きな犬が歯をむきだして
 ほえました。それでも、女の子は、すすんでゆきました。石けりの輪は、
 まだまだつづいていたのです。


赤い靴の魅力に抗えなかった女の子と、この本の中の少女は
設定がまるでちがいます。
この女の子は、偶然、村の一本道にろうせきで描かれた石けりの輪を
見つけ、ぴょんと飛び込んでみただけなのです。
この子が赤いセーターを着ていたのだって、偶然かもしれません。
でも、どこまでもどこまでも続いていく輪で、けんけんぱを
していく姿は、赤い靴を履いて踊り続ける少女と、私の中では
重なっていったのでした。

   初雪のふる日
         『初雪のふる日』
       安房直子 文  こみねゆら 絵


やがて、雪が降り始め、真っ白いうさぎたちが現われます。
 「もう帰ろうかな」
そう思っていた女の子は、前も後ろもうさぎたちに囲まれて
列から抜け出すことができなくなっていました。

どこまで輪が続いているの、という女の子の問いに、うさぎが答えます。
 
 「どこまでも、どこまでも、世界のはてまで。わたしたちみんな、
 雪をふらせる雪うさぎですからね。」


ここまで読むと、「あかいくつ」のイメージは遠のいていきました。

雪をふらせているのるのは、雪うさぎ。
このフレーズがとても新鮮だったからです。
雪は無機質なもの、意志を持たずしゃべらないもの、と思っていましたから。

初雪のふった日。
雪うさぎの列にのみこまれた女の子は、このあとどうなっていくのでしょう…。
うさぎたちの邪気のなさが、かえって、こわいような気がしました。

どこまでもどこまでも、降り続ける雪の場所に住んでいたなら、
清らかな雪の白さがうらめしく思えるときもあるのかな。
そんなことも思いました。


こみねゆらさんの描く女の子。
本物の女の子より、女の子の本質を表していて、なんだかぞくっとします。

次にもし、雪の降りはじめに出会えたら、トリップできる少女ではもはやないので、
せめて雪うさぎのイメージを重ね合わせてみようと思います。

(冷たい雪なのに、血が通っているうさぎ。赤の連鎖はやはり途切れないかも。)