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「プリンセスチュチュ」ファンページ

St. Valentine's Day

2006-02-14 23:19:11 | 二次小咄
<おかえり~>
「ああ」
<寒かった?>
「まあな」
<そっか。あたし今日は外に出なかったよ。窓の外の小鳥さん達とお話してた。
でもおなかは空いたー。今日の御飯は何・・・何もじもじしてんの?>
「これ」
<あっ、バラの花!きれー・・・みゅうとの心の色みたい・・・>
「・・・そうか。そうだな」
<うん。でもどうして?今は咲いてないはずだよね?>
「偶然花屋の前を通って・・・偶然目についたんだ。おまえが・・・見たがるかもしれないと思って」

決心するまでに町の門と花屋の間を5回往復したことは黙っていた。

<わぁすごい、よく分かったね?あたし、『冬』がこんなに長くて
その間お花が咲かないって知らなかったから、ちょっと寂しかったんだ>
「おまえにやるよ」
<ほんと?!ありがと!嬉しいな~。バラの花もらったのは2度目だけど、ずっと・・・>
「2度目?」
<うん。なに?どーしてそんな変な顔するの?あたしなんか変なこと言った?>
「別に。誰にもらったんだ?みゅうとか?」
<ううん、ふぇみおに。でもその時よりずっと嬉しいよ。
てゆーか、その時は嬉しくなかった。あれ・・・なんでかな?>
「・・・飯にするか」
<うん!>


今、ちょっと思いつきで書いてみました・・・

「最後の宴」付録2

2005-08-07 16:55:02 | 二次小咄
もうひとつおまけ。

「・・・様!クリス様!」
はっと顔を上げると、机の前にザックスが立っている。
「ああ。なんだ?」
「副官殿から伝言です。砦外壁の補修はほぼ完了。
内部の方は明日にして、兵士らに休息を取らせたいと」
クリスはザックスの方を向いてはいるが、どこか遠くを見ているように焦点が合っていない。
クリスの返事がないのでザックスはクリスを覗き込む。
「クリス様?」
「ああ、うん、そうしてくれ」
クリスは我に返り、よく考えもせず慌てて答えた。
しかしザックスは立ち去ろうとせず、不審げに眉をひそめる。
「どうかしたんですかい」
「いや、何でもないよ。ご苦労だった」
クリスは不自然に強張った笑みを浮かべ、労いの言葉をかける。
ザックスは憮然とした表情でクリスを一瞥してから踵を返し、部屋を出ようとした。
「・・・ザックス」
背中にかけられた声にザックスは振り返る。
クリスは少しためらいながら、それでも聞かずにはいられないといった様子で尋ねる。
「もし・・・もし、とても大切なものが奪われそうになったら、お前ならどうする?」
ザックスは少し眉を上げた。
「大切なもの、ですかい?」
「ああ。とても大切なものだ。自分自身の命よりも」
クリスは縋るような目でザックスを見る。
ザックスは再び机の前に戻りつつ、こともなげに答える。
「そんなら何も悩むこたぁねぇ。命懸けでそいつを守るだけのことでさ」
「守る?」
クリスはただ鸚鵡返しに言われた言葉を繰り返す。
「そうとも。どうしても失くしたくねぇもんなら、なんもかんもかなぐり捨てて、
死に物狂いで守るしかねぇ。当然じゃないですかい?」
クリスは目が覚めたような顔になった。
「それがいいとか悪いとか、正しいとか間違ってるとか、関係ねぇ。
そんなことで諦めちまったら、悔いが残るだけじゃすまねぇ、きっと心が死んじまう。
俺ぁ、そんなあんたは見たくねぇ」
ザックスは眉間に皺を寄せてクリスを睨みつけるように見下ろした。
「俺だったらこんなところでぼやぼやしてねぇで、
そいつの傍に四六時中張り付いてでも守りますぜ。
戦争をやるのは別にあんたじゃなくてもいい。
でもそいつを守れるのはあんたしかいねぇんでしょ?」
クリスが固まったまま答えないので、ザックスは、用は済んだと判断して再び背を向けた。
しかし部屋を出る直前にふと振り返った。
「シディニアの奴ら、こないだこっぴどく追っ払ってやったから、当分来やしねぇでしょう。
クリス様はしばらくおやすみを取られるって、副官殿には伝えときますよ」
クリスは机の上の地図に目を落としたまま、何も答えなかった。

「最後の宴」付録

2005-08-06 01:31:41 | 二次小咄
恒例(?)おまけシリーズ。蛇足です。

クリスは焦っていた。
一刻も早くパルシファルに話をしたい―いや、しなければならないのに、
一昨日都に戻ってきてから、まだ、彼を捉まえられないでいる。
(今日こそは・・・)
固い決意で、クリスはパルシファルを探した。

「パルシファル、聞いて欲しいことがあるんだ、少し時間を・・・」
「悪い、また後で」
またしてもパルシファルは、別の友人達と話しながら、そそくさと逃げるように去っていく。
「待ってくれ、いつなら・・・」
そこに計ったように都合よく通りかかったヴォルフラムが声をかける。
「パルシファルは忙しいんだよ。妹の結婚のことでね」

クリスがゆっくり振り返る。
「・・・なんの話だ?」
眉間に皺を寄せてヴォルフラムを見据えるが、ヴォルフラムは一向に気にしない。
「御成婚の準備に決まってるだろう?・・・ああそうか、
君は帰ってきたばかりでまだ知らないんだな。
パルシファルの妹・・・フリーデリケとかいったか?彼女が王妃に選ばれたんだよ。
だからその準備さ」

クリスの顔色が変わった。
「そんなバカな・・・」
「どうしてだ?既に引退されたとはいえ、宰相閣下の姫だ。何も不都合は無いと思うが」
「宰相の姫・・・フリーデリケ・・・?」
自問するようにクリスが呟く。
「さっきからそう言っているだろう、何度も言わせるな」

ヴォルフラムがいらいらと答える。
「エリーザベトが選ばれなかったのは残念だが、まあ仕方ない。
パルシファルの妹なら妥当なところだ」
そう言いながらもヴォルフラムは悔し気な様子を隠せないが、
クリスはそれに気づく余裕も無い。
「それは・・・決まったことなのか?彼女の方も承諾したのか」
「勿論。とっくに公式発表されている。今頃は国境辺りにも知らせが届いているだろう」
かくしてヴォルフラムは、衝撃で立ち尽くすクリスという、世にも珍しいものを拝む機会を得た。

「遠い祈り」付録2

2005-07-31 01:33:00 | 二次小咄
(続き)

再び扉が開いてパルシファルが入ってくる。リンデは戸口から覗いて声をかける。
「じゃ、ちょっと待っててね」
「あ、別に持って来なくても・・・」
しかしリンデはもう聞いてはいない。バタンと閉まった扉を呆然と見ているクリスに、
パルシファルがすまなそうに笑う。
「これじゃあゆっくり休めないかな?」
「ああ、うん、いや・・・」
珍しく動揺している様子のクリスを見てパルシファルは少し微笑み、
それから表情を引き締めて頭を下げる。
「リンデにばらしちゃって、ごめん」
クリスは少し考えてから首を振った。
「・・・いや、今回はおかげで助かった。でも、もしまたこんなことがあったとしても、
なるべくリンデには黙っててくれるか?心配かけたくない」
するとパルシファルは難しい顔になり、ややあってためらいがちに言った。
「クリス、そのことだけど・・・陛下にちゃんと言った方がいいんじゃないか?」
「何を?」
クリスは不思議そうな顔でパルシファルを見る。
「君の待遇のことだよ。宮廷での君の扱いはあんまり不当すぎる。
いつも当然のように君に大変な仕事をさせておいて、
皆その恩恵を受けているのに感謝もしない。
それなのに君はいつも文句も言わずに彼らの無理難題に応じて、
理不尽な言いがかりをつけられても大人しく聴いてるし、
手柄を横取りされても黙ってる。君は人が良すぎるよ」
途端にクリスは笑い出した。
「クリス!」
「ああ、ごめん・・・いや、君に言われるとは思わなかった」
そう言いながらもクリスは口元に手を当てて笑いを押さえていた。
「笑い事じゃない。僕が言うよ。陛下に・・・」
「いいんだ」
あっさり遮られて、パルシファルは眉をひそめてクリスを見た。
「クリス・・・」
「心配してくれてありがとう。でも、本当に気にしなくていいんだ。
僕は褒賞も称賛も欲しいとは思っていない。良い結果が得られれば、
それでいいんだ。それに僕が欲しいのは・・・」
クリスは一瞬言い淀み、少し恥ずかしげに、けれどどこか嬉しそうに微笑んだ。
「もっと別のものだから」
しかし、パルシファルとしてはここで引き下がるわけにはいかなかった。
「でも、このままだと、冗談じゃなく、君はまた危険な任務に廻されるよ。
僕はリンデを泣かせたくない」
「僕もだ」
パルシファルを真っ直ぐ見返してきっぱりと答えたクリスに、パルシファルははっとする。
「でも、誰かがやらなければならないことで、僕にできることなら、回避する気は無いよ。
やれると思ったから引き受けた。今回は失敗してしまったけどね」
クリスは笑った。
「大丈夫。二度とこんな失敗はしないよ」
クリスは断言したが、パルシファルは不安を消しきれない。
その不安を封じるように、クリスは穏やかに言葉を重ねる。
「ありがとう。君達に出会えて、僕は本当に幸運だった」
本当に幸せそうに笑うクリスに、パルシファルはそれ以上何も言えなかった。
クリスがふと何かに気づいて立ち上がり、足を引きずって扉に近づく。
扉を開けると、両手で朝食を載せたトレイを掲げたリンデが、扉を開けられずに
まごついていた。
「ありがとう」
クリスはリンデの額に軽くキスをしてトレイを受け取った。

「遠い祈り」付録

2005-07-30 12:03:58 | 二次小咄
こちらの更新が止まっているので、本館 'Lohengrin' (遠い祈り)の付録をこちらにup。

クリスは小鳥の歌で起こされた。瞼に明るい光を、頬に新鮮な風を感じる。
ここはどこだろう?あの地下牢の中ではない。自分はあの後、どうしたんだったか・・・
「う・・・」
微かに呻いてまばたきし、腕を上げて光を遮ろうとするが、体全体がだるくて動きが鈍い。
「クリス?」
(えっ?)
今の声は・・・まさか、そんなはずは・・・
動悸が激しく打ち始める。
「おはよう、クリス」
おそるおそる目を開いて声の方を見る。
暗い牢の中で何度も思い描き、心に抱き締めていた眩しい笑顔を間近に見て、
心臓が跳ね上がる。
「お腹空いたでしょ?昨日、結局食べなかったもんね。
待ってて、今すぐ持ってくるから。あっそだ、隣にお兄様がいるから呼んでくるね」
「あっ・・・待っ・・・」
慌てて体を起こして傷の痛みに顔を顰め、掠れた声で呼び止めようとしたが、
リンデはさっさと行ってしまった。
クリスは起き抜けに与えられたショックが醒めないまま、
呆然とその後姿を見送るしかなかった。