報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「市街地へ向かう」

2020-08-28 15:45:42 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[8月22日15:06.天候:晴 宮城県仙台市若林区 仙台市営バス一本杉町停留所→仙台市営バスJ411系統車内]

 高橋:「先生、教授の車見ましたか?死亡フラグですよ、死亡フラグ」
 愛原:「元教授だよ。まあ、名誉教授としての籍はあるのかもしれないけど。まあ、死亡フラグというか何というか……」

 私達は先にホテルに行く為、小学校近くのバス停でバスを待っていた。
 交通規制そのものは大幅に解除されたことで、バス路線の通っている県道も車が通るようになった。

 愛原:「高齢者マークのプリウスか……。自分が死亡フラグじゃなく、他人が死亡フラグだ」
 高橋:「俺達も『サツの車』『ヤーさんの車』そして、『ジジィのプリウス』には要注意というステッカーを車に貼ってたものです」
 愛原:「どこで売ってるんだ、そういうの……」
 リサ:「バスが来たよ」

 両親達は正にその『走る死亡フラグ』に乗って、後でホテルまで来る。
 伯父さんはせっかくなので、大学に寄ってから帰るそうだ。
 いや、まあ、全ての高齢者プリウスが危険車両ではないということは分かってるんだけどねぇ……。

〔J411系統、若林区役所前、仙台駅前経由、交通局・東北大学病院前行きでございます〕

 リサ:「これ、前から乗るの?」
 愛原:「いや、中扉から乗って先にPasmoを当てるんだ」
 高橋:「でも先生、つい前から乗りたくなりますね」
 愛原:「まあ、気持ちは分かる」

 私達は中扉からバスに乗り、1番後ろの席に座った。
 都区内在住の私達がそう思ったのもそのはず。
 このバス、明らかに都営バスの中古車両だったからである。
 まさか仙台に来てまで、『みんくる』の絵が描かれたモケットの上に座るとは思わなかったよ。

〔発車します。ご注意ください〕

 バスが走り出す。

〔ピン♪ポン♪パーン♪ 次は若林区役所前、若林区役所前でございます。日蓮正宗佛眼寺へおいでの方は、荒町でお降りになられると便利です。次は、若林区役所前でございます〕

 愛原:「リサ、この辺りに見覚えは?」
 リサ:「分かんない。全然分かんない」

 進行方向左側の窓際に座るリサは、首を横に振った。

 愛原:「そうか……」

 この辺りはキリスト教会もある場所である。
 なので、修道服を着た修道女と乗り合わせることもある路線だ。
 魔女達にとっては危険地帯と言えよう。

 リサ:「何か、十字架を持った人達が家に来ていたような気がする……」

 リサはふとそんなことを言った。

 愛原:「思い出したのか!?」
 リサ:「よくは憶えてないけど……」

 アメリカ人なら、まあ宗教はキリスト教だろう。
 なので、何も珍しいことではない。
 伯父さんの話に出て来た『よちよち歩きの娘さん』がリサなんだとしたら、本名はアリサ(またはアリッサ)・洗礼名・トレヴァーということになる。
 そして母親は日本人だというから、正しくここにいるリサと条件は合うのだ。
 リサの顔立ちからして、日本人と欧米人とのハーフかクォーターだとは思っていた。

 愛原:「アメリカにいたトレヴァー家は旧アンブレラの犠牲になっている。しかし旧アンブレラと直接関わった一家は口封じの為にお家断絶させられたけど、その親族達にまでは魔の手は及んでいなかった。いや、魔の手からの追跡から上手く逃れたというべきか……」

 親族の一部はアメリカのルイジアナ州で建築設計事務所を経営していることが分かっている。
 元々トレヴァー家は建築士の家系だったらしい。
 そしてまた別の親族が日本に逃れて来たということか。

 高橋:「その口封じされた家族の中に、リサのオリジナル版がいたんですね?」
 愛原:「そういうことだ」

 当時14歳だったリサ・トレヴァーは旧アンブレラに捕まり、非人道的な実験を繰り返された挙句、不老不死の化け物と化している。
 旧アンブレラはそんなリサをゴミ同然に扱っていたが、日本法人がその研究を継承し、ついに日本モデル完全版として、ここにいるリサを造り上げた(アメリカ本体と違って生物兵器として悪用することよりも、むしろリサ・トレヴァーが手に入れた不老不死について研究したかったらしい)。
 もしリサがあのアメリカ人の家の子なのだとしたら、国籍はアメリカか?
 アメリカ人の子をどうこうするのであり、日本人の子をどうこうするわけではないからOKとでも思ったか、旧・日本アンブレラの連中?
 因みにここにいるリサは日本国籍である。

 高橋:「何かここに来て、急にリサの真相がやってきましたね?」
 愛原:「全くだ。どこに真相が転がってるのか、分かったもんじゃないよ」

 あとは更に立ち入り制限が解除されて、『お化け屋敷』を探索できればいいのだが、大爆発のせいで跡形も無くなったんだっけ。
 もう少し早く気づいてたらなぁ……。

 愛原:「ん!?」

 その時、私の脳裏に子供の頃の記憶が蘇った。
 それはまだ私が小学生だった頃、友達何人かと一緒に、あの『お化け屋敷』を探検した時の話だ。
 当時は規制も緩かったので、鍵なんか勝手に開けられたくらいだ。
 リビングみたいな所に暖炉があって、その上に『お化け屋敷』に住んでいたと思われる家族の集合写真があった。
 その中に、確かに『よちよち歩きの娘さん』が写っていたような気がする。
 だけど、それがここにいるリサなのかどうかは分からない。

 高橋:「先生、どうしました?」
 愛原:「いや……。リサも、もうすぐ15歳だ。その体の見た目の年齢はな。実際は俺より5歳くらいは年上なのか?そう思われる小さな女の子の写真を、あの『お化け屋敷』の中で見たような気がしてね」
 リサ:「私と似てた?」
 愛原:「いや、分からん。写真自体が古かったし」

 私が生まれる直前に行方不明になったということは、私が探検に入った時にはそれから10年くらい経ったということになる。
 元々古い屋敷だったので、尚更老朽化感が半端無かった。

 リサ:「私じゃないのかな。全然記憶が無い」
 愛原:「リサは人間時代の記憶が殆ど無くなっちゃってるからな。無理に思い出さなくていいからな」
 リサ:「うん」

 その時、私のスマホにメールが入った。
 それは伯父さんからだった。

 愛原公一:『学の両親が無事だった祝いに、夕食は美味い物でも食べよう。もちろん学の弟子と嫁も一緒で良い』

 『弟子』も『嫁』も、当人達の勝手な自称なのだが……。
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“私立探偵 愛原学” 「愛原の伯父」

2020-08-26 21:27:29 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[8月22日13:00.天候:晴 宮城県仙台市若林区某所 愛原の卒業した小学校体育館]

 私は体育館に避難した両親から、色々な話を聞いた。
 まず、実家についてだが、ざっくり見た感じ、大した被害は無かったそうだ。
 現場周辺は1kmに渡って封鎖されるほどの有様で、私の実家から現場となった『お化け屋敷』は100メートルくらいしか離れていない。
 にも関わらず大きな被害が出なかったのは、『お化け屋敷』と実家の間に2棟のマンションが新築されており、それが爆風を遮ってくれたらしいのだ。
 近隣住民からは日照権などを巡ってトラブルが発生していたらしいが、皮肉にもこの日照権侵害マンションのおかげで、我が家は無事だったということになる。
 もっとも、爆風の矢面となったマンションの被害状況は【お察しください】。

 父親:「せっかく帰ってきた所悪いけど、片付けを手伝ってくれないか?」
 愛原:「いいよ。2人もいいか?」
 高橋:「お任せください、先生!」
 リサ:「私も頑張ります!」
 父親:「頼もしい従業員だねぇ……って、お兄さんの方はともかく、お嬢さんの方はいいよ?」
 高橋:「あ、大丈夫っス。こいつ、こう見えて鬼に変身したら、かなり強いんで」
 父親:「は?」
 愛原:「高橋!」
 リサ:「秘密をバラしたら、バラバラにバラされるよ?」
 愛原:「政府機関をナメてはいかん!」
 高橋:「さ、サーセン」
 愛原:「ゴメン、お父さん。こいつら、ちょっと漫画やアニメの見過ぎで……」
 リサ:「ゲームも好きですよ」
 愛原:「そ、そうだな。そ、それでお父さん、今日はどうするの?ニュースを見ている限りだと、今日中には帰れないみたいだよ?」

 もちろん、多くの避難者はこの避難所に寝泊まりすることになるだろう。

 父親:「今日のところはホテルに一泊しよう。駅前の安いビジネスホテル、部屋空いてるだろ。明日になれば避難命令も停電も解除されるだろうから、片付けとか罹災証明とかはその後だな」
 高橋:「先生、こりゃ数日は帰れそうにないっスね」
 愛原:「もし月曜日になっても帰れないようなら、高野君に電話して納得してもらうさ」

 もし仕事の依頼があれば、平日でも私は東奔西走しているのだからな。
 そもそも探偵が一日中事務所にいることがおかしいのだ。

 ???:「おーっ、薫!無事だったかやーっ!」

 そこへ1人の老人がバタバタとやってきた。
 年齢は70代になっている。
 その老人を私は知っている。

 父親改め愛原薫:「公一兄さん!」
 愛原:「公一伯父さん」
 薫:「なに?小牛田の農家にいたんでねーの?」
 愛原公一:「オメェの近所がガス爆発で大惨事になったっつーんで、急いで駆け付けて来たんだっちゃ!」
 薫:「あー、そー。わざわざ申し訳無ェね。でもこうして無事だど」
 公一:「そうがそうが、そいづぁいがった。節子さんも無事で……って、おおっ!学!」
 愛原:「今頃気づいたの?」
 公一:「あんれまぁ!何年ぶりだべ!?なして来たんだ?」
 愛原:「いや、伯父さんと同じ理由だよ。俺も心配で東京から駆け付けて来たんだ。……ああ、高橋。この人は父親の上のお兄さんで、つまり俺の伯父さんの公一伯父さん。昔、仙台の大学で農学部の教授だったんだ。大学を引退してからは、小牛田……今の宮城県遠田郡美里町内で晴耕雨読の生活だよ」
 高橋:「愛原先生の一番弟子の高橋正義です!以後、お見知りおきを」
 リサ:「愛原先生の『お嫁さん』一番候補、リサ・トレヴァーです。よろしくお願いします」
 薫:「は?」
 母親改め愛原節子:「え?」
 公一:「何だべまづ!?」
 愛原:「リサ!」

 もちろんリサは今は第0形態に戻っている。
 しかし、両親にはまともな挨拶をしたのに、こいつはこの期に及んで……!

 薫:「学、本当なのか?」
 愛原:「り、リサが勝手に言ってるだけだよ!?」
 公一:「その方、歳はいくつであるか?」
 リサ:「今年で15歳(という設定)になっております」
 公一:「うむ。良かろう。愛原家の家督者として、学との結婚を認める」
 リサ:「わぁい!」
 愛原:「ちょっと、伯父さん!?」
 薫:「そんな急に……。しかも、まだ15って……」
 公一:「『15で 姉やは 嫁に行き』という歌があるべ?俺達の母さんも、正にその歳に俺を生んだんだっちゃ……」
 薫:「そりゃ親父達は大正や昭和初期生まれの人達だから、それは当たり前だったけども、今は令和の時代になって……」
 公一:「いいっちゃ、いいっちゃ!2人が幸せなら!な?」
 リサ:「はい!」
 愛原:「俺はリサを『娘』として面倒見たかったんだが……」
 高橋:「あの……取りあえず、駅前の東横イン予約したんスけど、そこでいいっスか?」

 蚊帳の外に出された高橋がスマホ片手に話し掛けて来た。

 薫:「おっ、高橋君、申し訳ないね」
 高橋:「いえ」
 愛原:「両親はツイン、俺達でツイン、リサはシングルだ。分かったな?」
 高橋:「もちっス」
 リサ:「えー、ダブルにして先生と一緒に泊まりたーい!」
 愛原:「いや、リサ、さすがにそれはマズいって」

 八丈島の時はまだ斉藤さんもいたからな……。
 いや多分、あれも厳密に言えばアウトだったんだろうけど。

 高橋:「コロナ禍ということもあって、簡単に予約できましたよ」
 愛原:「それは良かった。俺の名前で?」
 高橋:「先生、会員スから、それだと会員価格で泊まれるんで」
 愛原:「それもそうだ。それでいいかい?」
 薫:「ああ、いいよ。幸い、避難命令が出る前に、泊まりの準備はしてきた」

 爆発が起きてからそうなる前に、何十分かくらいのブランクはあっただろう。
 その隙に避難の準備をするとは、さすがは伊達に東日本大震災を潜り抜けてはいないな。

 愛原:「あ、そうだ。伯父さん、ちょっと聞きたいことがあるんだけど……」
 公一:「何だ?」
 愛原:「爆発現場になったアメリカ人の住んでた家のことは知ってる?」
 公一:「知ってるも何も、俺も訪問したことばあっからなやぁ」
 愛原:「マジで!?」
 公一:「農学教授として、アンブレラ社の開発した農薬がどんなものなんか興味があったんだ。んで、それついてば聞き出そうと思い、何回か訪問したことがある。だが、学が生まれてくる前に消えてしまったんだ」
 薫:「どうやら地下室から人骨が見つかったらしい。もしかして……」
 公一:「昔からアンブレラ社には黒い噂ば絶えなかったかんな。何てもトレヴァー氏は、アメリカから逃げて来たっつう噂だ。わしは捕まったのかと思ってたんだが……ん?トレヴァー?トレヴァー?」

 公一伯父さんはリサを指さした。

 愛原:「伯父さん、リサは実は昔の記憶が無いんだ。その記憶の糸を手繰れるのならと思い、あの屋敷について知りたいんだ」
 公一:「ふむ……。確か、あの家にはまだよちよち歩きの娘さんばいたべね。確か名前は……アリサとか言ったかや」
 愛原:「よちよち歩きの!?」

 実はリサの実年齢は私よりも年上である。
 リサ自身もそのこと自体は自覚していた。
 だからこそ、両親に挨拶した時のように、大人の女性のような振る舞いもできたのだろう。
 但し、人間時代の記憶の殆どを失っている為、基本的には見た目年齢と同じ振る舞いをしている。
 また、ウィルスの影響で体の変化の仕方が変わったこともあってか、更に人間時代の記憶は薄れているようである。

 公一:「『アメリカにいつ連行されるか分からない』とは言ってたな。だから、わしはそう思ってたんだが……人骨となると、アメリカから粛清の手ば来たんかもしれんちゃね」
 愛原:「そんな簡単に……」

 もしもリサがその『よちよち歩きの娘さん』だったとするならば、リサの出生の秘密に迫ることができる。
 私はそう思った。
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“私立探偵 愛原学” 「愛原の両親」

2020-08-25 19:45:01 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[8月22日12:00.天候:晴 宮城県仙台市若林区某所 某市立小学校体育館]

 私達は私が卒業した小学校に向かった。

 高橋:「ここが先生の卒業された小学校ですか」
 愛原:「ああ。何か随分ボロくなったなぁ……。俺が通ってた時は幾分マシだったんだがな。これじゃ、“学校の七不思議”が現れても仕方が無いよ」
 高橋:「ああ、あの『理科室の光るガイコツ』とか、『音楽室の歩くベートーヴェン』とかですか?」
 愛原:「おい、そっちの方が怖いぞ!正確には、『理科室の歩くガイコツ』と『音楽室で勝手にピアノを弾くベートーヴェン』だ」
 高橋:「この学校、随分とアグレッシブなオバケがいるんスね~」
 愛原:「あくまでも噂だけどな」
 リサ:「私の学校にもいるよ」
 愛原:「へえ……どんなの?」
 リサ:「『両目を金色に光らせた女子生徒が映る鏡』とか、『牙を生やした少女が現れる給食室』とか、『両手の尖った爪を研ぎに少女が現れる技術準備室』とか……」
 高橋:「おい、リサ!正体バレ掛かってんぞ!」
 愛原:「全部オマエか!」

 学校の七不思議になるリサ。

 愛原:「学校で第一形態はマズイって!」
 リサ:「時々気を抜くと、そうなっちゃうの」
 愛原:「学校にいる時は気を抜くなよ!正体がバレたら、学校に通えなくなるぞ!」
 リサ:「気をつけまーす」

 私達は体育館に中に入った。
 一応、冷房装置は後付けで導入されているようだが、入口のドアが開放されているせいで、そんなに効いている感じがしない。
 入る前に体温測定と手のアルコール消毒を求められた。
 リサは体温が高いが、大丈夫か?

 係員:「36度5分。はい、オッケーです」
 リサ:「むふー」
 愛原:「あれ?リサの平熱それだったっけ?」
 リサ:「第0形態は」
 愛原:「ああ」

 ちょうど時間帯的に、避難者に昼食の弁当が配給されているところだった。

 リサ:「お弁当……!」

 リサは美味そうに弁当を見つめた。

 愛原:「ダメだぞ、リサ。これは避難者用の弁当だ。昼食は両親に会ったら食べるから、それまで我慢してくれ」

 私はリサの肩を叩いて宥めた。

 父親:「学!こっちだ!」

 すると、仕切られた一画に父親の姿を見つけた。

 愛原:「お父さん、無事で良かったよ」
 父親:「ああ。おかげさんで。この通り、お母さんも無事だ」
 母親:「悪かったわねぇ、心配掛けて……」
 愛原:「いや、いいよ。無事で良かった」
 父親:「? その人達は?」
 愛原:「ああ。うちの事務所のスタッフだよ。助手の高橋正義」
 高橋:「愛原先生の一番弟子を務めさせて頂いております、高橋正義と申します!以後、お見知りおきを!」

 高橋はビシッとネクタイを締め直して挨拶した。

 父親:「そうか。オマエも従業員を雇えるようになったか。でも、だからって、『先生』って……w」
 愛原:「あはははは……。いや、こいつが勝手に呼んでるんだ」
 高橋:「俺は一流の探偵を目指しております。先生の名推理に俺は救われ、感激しました。是非とも先生を師と仰ぎ、俺も一流の探偵になりたいのです」
 父親:「な、なるほど。学の父親です。今は気ままな年金暮らしです。高橋さんは分かりますが、そのコは?どう見ても中高生……バイト?」
 愛原:「えっと、このコは……」

 リサは両親の前に正座し、三つ指をついて挨拶した。
 どこでそんな挨拶の方法覚えた!?

 リサ:「リサ・トレヴァーと申します。霧生市のバイオハザード事件に巻き込まれて以来、先生の所にお世話になっております」
 愛原:「リサ!?」

 何か、私の前では子供っぽく振る舞うリサが、ここでは大人びた態度になった。

 父親:「リサ・トレヴァーって、外人さん?」
 愛原:「いや、国籍は日本なんだ。だけど、見た目からしてハーフかクォーターかもしれないね」
 父親:「しれないねって、このコの親御さんは?」
 愛原:「霧生市のバイオハザード事件で、このコは独りぼっちになったんだ。それで俺が預かってるんだよ。いわゆる、里親制度的なものでね」
 父親:「オマエが里親なんかやれるのか?」
 愛原:「一応、今のところ上手くやってます。公的機関の後押しもあるんで」

 私は善場主任の名刺を父親に見せた。

 父親:「政府機関が直接後押しって、オマエ何したんだ?」
 愛原:「霧生市のバイオハザードに巻き込まれて、運良く生き延びただけだよ。それから巡り巡って、現在に至る」
 父親:「何だそれ。問題は無いんだな?」
 愛原:「それは大丈夫」
 父親:「分かった。学を信じるぞ」
 愛原:「それで、一体何があったの?ガス爆発ってことだけど……」
 父親:「近所の『お化け屋敷』は知ってるだろ?あの廃墟の邸宅のことだ」
 愛原:「ああ、やっぱりあれか!俺達、子供の頃、肝試しした廃墟の洋館!」
 父親:「何でもあの屋敷の地下にガスボンベが埋まっていて、それが長年の腐食を経てガスが漏れ出し、何らかの理由で今朝爆発したらしいんだ」
 高橋:「あ、いや、何かちょっと違うみたいっスよ」
 愛原:「え?」

 高橋がスマホを片手にしていた。

 高橋:「ネットニュースじゃ、プロパンガスボンベの他に、不発弾も埋まってて、それも爆発したんじゃないかって言ってます。それらしいのも見つかったらしいですよ」
 愛原:「やっぱりか。プロパンガスだか何だか知らないが、それだけであんなに大爆発なんかしないよな」
 父親:「元々あの家はアメリカ人が住んでた家だからなぁ……」
 愛原:「知らない。そんなの初耳だよ。俺が子供の頃にはもう空き家だったからさ」
 母親:「確か、日本人の奥さんと一緒に住んでたのよね」
 父親:「ああ。元アメリカ軍にいた人で、失踪直前まではアメリカ資本の会社で働いていたということだが……」
 母親:「学が生まれてからすぐに、夜逃げ同然で行方不明になってしまったのよね」
 父親:「そうだそうだ」
 愛原:「あの、お父さん方……。そのアメリカ人さんが働いていた会社って、もしかしてアンブレラって言いません?」
 父親:「そうなんだよ。それの日本版が霧生市でバイオハザードを起こして、ついに日本版も潰れてしまったな」

 思いっきり怪しいな。
 何で今頃爆発した?ただの偶然か?それとも……。

 高橋:「で、先生、その屋敷の地下から人骨が見つかったらしいッスよ?」
 愛原:「はあ!?」
 父親:「思い出した!そのアメリカ人さん、下の名前をトレヴァーって言った!上の名前は何だったっけなぁ……」
 リサ:「うっ……!」

 その時、リサが両手で頭を抱えて苦しみだした。
 どうやら、人間だった頃の記憶がフラッシュバックしているらしい。

 母親:「ちょっと、大丈夫?」
 リサ:「……大丈夫……です」

 だが、リサの両手の爪が明らかに伸びて尖っている。
 第一形態に変化してしまったのだ。
 私は急いで高橋の着ているスーツの上着を脱がせると、それをリサに被せた。

 愛原:「高橋!リサをトイレに連れて行け!」
 高橋:「はい!」

 私は体育館内にあるトイレを指さした。
 高橋はリサを抱え起こすと、トイレに連れて行った。

 父親:「大丈夫なのかい、あのコ?」
 愛原:「大丈夫。霧生市で恐怖を味わったから、ちょっとトラウマがあるんだ」
 母親:「かわいそうに……」
 愛原:「トレヴァーなんて名字、そうそう無いだろう」

 もしかしてリサの血縁者だったりして!?リサが人間だった頃の!

 愛原:「トレヴァーさん、どこに行ったんだろう?」
 父親:「アメリカに突然帰ったんだろうというのが、近所の噂だったけど……」

 えーと……そもそも、アメリカのオリジナル版リサ・トレヴァーは、どうしてあんな化け物になったんだっけ?

 母親:「でもさっき、高橋さんが『人骨が見つかった』って言ってたでしょう?実はアメリカに帰ってなくて、その人骨とやらがもしかして……」
 父親:「オマエもさらっと怖いこと言うなァ……」

 その爆発現場のお化け屋敷を探索したいけど、今は無理だろうな。
 何だか、リサの人間時代に迫れるような気がしたのだが……。
 因みに東京で発生した一家全員殺人事件については、こっちのリサは関係無かったことが分かっている。
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“私立探偵 愛原学” 「爆発現場」

2020-08-25 16:01:53 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[8月22日11:14.天候:晴 宮城県仙台市青葉区 JR東北新幹線131B電車1号車内→JR仙台駅]

〔♪♪(車内チャイム)♪♪。まもなく終点、仙台です。東北新幹線下り、盛岡・新青森方面、東北本線下り、松島・小牛田方面、上り、岩沼・白石方面、仙石線、仙山線、常磐線、仙石東北ライン、仙台空港アクセス線、仙台市地下鉄南北線と仙台市地下鉄東西線はお乗り換えです。……〕

 私達を乗せた列車は減速し、カーブの多い市街地区間を走行していた。

 愛原:「『東北一の都会とて 其名しられし仙台市 伊達政宗の築きたる 城に師団は置かれたり』」
 高橋:「何スか、そのフレーズ?」
 愛原:「鉄道唱歌だよ。今は列車のチャイム、鉄道唱歌を流さないからなぁ……」
 高橋:「もしかして、『汽笛一声 新橋を……』のヤツっスか?」
 愛原:「おー、そうだよ!よく知ってるなぁ!それの東北本線版だよ」
 高橋:「たまたまっスよ」

 高橋は照れ笑いを浮かべた。

 高橋:「他にどんなのがあるんスか?」
 愛原:「今の続きが、『阿武隈川の埋木も 仙台平の袴地も 皆この土地の産物ぞ みてゆけここも一日は』だったかな」
 高橋:「そうっスか。……何かよく分かんないっス」
 愛原:「まあ、今から100年以上も前に作られた歌だから……」
 リサ:「先生、その頃から生きてる?」
 愛原:「俺は本物の鬼か!」
 高橋:「失礼だぞ、このヤロー!」
 リサ:「残念。私に噛まれれば、100年以上軽く生きられるのに……」

 ちょっと待て。
 BOWって不老不死なのか?

 高橋:「さり気無く先生を感染させようとすんじゃねぇ!」

〔「長らくの御乗車お疲れさまでした。まもなくこの列車の終点、仙台、仙台です。到着ホームは14番線、お出口は左側です。……」〕

 とにかく私は荷棚から自分の荷物を下ろした。

 高橋:「先生の御実家、駅から近いんスか?」
 愛原:「まあ、車で15分って所かな。ここも高架線だけど、ここからじゃ家が見えなかった。昔は見えたのに……」
 高橋:「マジっスか。駅近で便利っスね!」

 車で15分掛かる距離って、駅近って言うんだろうか?
 列車はポイントを2回渡り、下り本線から一旦上り本線を逆走し、その後で上り副線に入ると、そのホームに滑り込んだ。

〔「ご乗車ありがとうございました。終点、仙台、仙台です。お忘れ物の無いよう、ご注意ください。……」〕

 列車がホームに停車し、ドアが開く。
 私達は定時に到着したその列車を降りた。
 仙台市も暑く、降りたら暑い空気に包まれた。

 愛原:「北に来たから涼しいってわけでもないな」
 高橋:「そうっスね。先生、ここから何で行きますか?」
 愛原:「タクシーで行こう。荷物もあるし」
 高橋:「はい」

 私達は改札口を出た。
 東京駅と違い、同じJR線に乗り換えないのであれば、改札口は新幹線のそれを1回通るだけで良い。
 あとはタクシー乗り場に移動した。

 リサ:「牛タン……笹かまぼこ……萩の月……」

 リサは仙台名物のお土産を見て、目を輝かせ、涎を出しそうになった。

 愛原:「お土産に買って帰ろうな。うちの実家が無事だったら」
 高橋:「リサ、先生の仰る通りだ。場合によっちゃ俺のスーツのネクタイ、黒に換えないといけねぇ」
 愛原:「既に持参している時点で、オマエも不謹慎だからな?」
 高橋:「さ、サーセン!」

 私達はタクシー乗り場に移動すると、そこからタクシーに乗り込んだ。
 東京駅に向かう時は高橋が助手席に乗ったが、今度は私が助手席に乗った。
 土地勘があるのは私だけだからである。

 愛原:「若林区○○までお願いします」
 運転手:「○○ですか?……はい」

 運転手は取りあえずメーターを作動させて、車を走らせた。
 ロータリー出口の信号に引っ掛かる。

 運転手:「お客さん、○○地区ですが、今あそこは大規模なガス爆発がありまして、周辺がまだ交通規制掛けられてるんですよ。もしかしたら、途中までしか行けないかもしれませんよ?」
 愛原:「でしょうね。まあ、取りあえず行ける所まで行ってください」
 運転手:「分かりました」

 信号が青に変わり、タクシーは駅前ロータリーを出て私の実家に向かった。

[同日11:40.天候:晴 仙台市若林区某地区]

 タクシーは住宅街の市道を走行していた。
 そして、ついに……。

 運転手:「ああ、そこからもう入れないみたいです」

 私の実家がある所へ入る道が、既に警察によって封鎖されていた。
 その規制線の向こうからは焦げ臭い臭いが漂って来て、ガス爆発によって火災も起きたことを物語っていた。

 リサ:「死臭の臭いがする……」

 普通、死臭なら不快な顔をするものだろうが、リサはそうではないらしく、無表情で言った。

 愛原:「ここまででいいです」
 運転手:「分かりました」

 私達は規制線の外側でタクシーを降りた。
 そして、そこで警戒に当たっている警察官に話し掛けた。

 愛原:「すいません。私、この地区に住んでいる両親の安否を尋ねて駆け付けた者なんですが、この地区は今どうなっているんですか?」
 警察官:「この地区の住民の人達は避難所に避難しました。まだガス爆発の危険性が残っている恐れがあり、入ることはできません」
 愛原:「避難所はどちらに?」
 警察官:「近隣の小学校または中学校です。負傷した人達は病院に搬送しておりますが、まだ瓦礫の下に取り残されている方々もおりまして、今救助活動を行っています」

 これはどうやら、福島県で起きたガス爆発よりも規模が大きいみたいだぞ。
 本当にガスボンベが爆発しただけなのだろうか。

 愛原:「あ、今思い出した」
 高橋:「何スか?」
 愛原:「両親のどっちかの携帯に掛けりゃ良かったんだ。これでどっちも出なかったら、【お察しください】」
 高橋:「掛けてなかったんスか!?」
 愛原:「家の固定電話にしか掛けてなかったんだ」

 私は自分のスマホを取り出すと、まずは父親に掛けてみることにした。
 すると……。

 父親:「もしもし?学か?」
 愛原:「お父さん!そうだよ、学だよ。今、家の近くまで来てるんだ。無事なのか?」
 父親:「ああ。お母さんと今、小学校に避難してる。ケガも無く、無事だよ」
 愛原:「それは良かった。じゃあ、俺達もそっちに行くよ」

 私は電話を切った。

 愛原:「俺の両親は無事だ。今、小学校に避難してる。俺達も行こう」
 高橋:「うっス!良かったっスね!」
 愛原:「ああ。それにしても、何があったのやら……」

 それはこれから両親に聞けばいいだろう。
 私達は私の卒業した小学校に向かった。
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“私立探偵 愛原学” 「JR東京駅から出発」

2020-08-23 22:45:37 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[8月22日09:00.天候:曇 東京都千代田区丸の内 JR東京駅]

 私達を乗せたタクシーは東京駅の八重洲口に停車した。

 高橋:「先生、ここは俺が払っておきますんで」

 助手席に座っていた高橋がそう言ってくれる。

 愛原:「ああ、すまない」

 リアシートに乗っていた私とリサは先に降りて、トランクから荷物を取り出した。

 高橋:「お待たせしました」
 愛原:「領収書はもらったか?」
 高橋:「もちっス!」

 どうやら高橋、Pasmoで払ったらしい。
 最近のタクシーは色々な支払方法があるから便利だ。

 愛原:「タクシー代は後で支給するから」
 高橋:「あざっす!」

 タクシーを降りて、私達はすぐに駅構内に入った。

 高橋:「どの列車にしますか?」
 愛原:「なるべく早く出発して、且つ早く仙台駅に着く奴だ。なるべく停車駅の少ない……」

 コロナ禍のせいなのか、ヘタすれば普通に歩くのも難しいくらい賑わう東京駅が、普通に歩けるくらいの閑散ぶりだった。
 いや、在来線乗り場は普通の旅客数だと思うが。
 取りあえず私達は自動券売機で自由席のキップを買うと、その足で改札口に向かった。

 愛原:「多分混んでないだろう」
 高橋:「ていうか多分、ガラ空きだと思います」
 愛原:「だな!」

 改札口を通過し、在来線コンコースに入る。
 そして今度は新幹線改札口を通った。

 愛原:「しまった!一番速い“はやぶさ”は全席指定だった!」
 高橋:「どうします?どこか窓口で……」
 リサ:「ねぇ、先生。あれは?」

 リサが発車標を指さした。
 すると何ということか、停車駅が“はやぶさ”並みに少ない“やまびこ”を発見した。
 あれなら自由席でも乗れる。

 愛原:「あれだ!でかした、リサ!」
 リサ:(*´σー`)エヘヘ
 高橋:「よくあんな遠い看板見えるなぁ……」

 リサは第0形態でも身体能力は人外並みに優れている。
 視力だって、2.0以上は絶対にあるはずだ。

 斉藤絵恋:「リサさん!」

 と、そこへ斉藤さんの声がした。

 リサ:「サイトー!?」
 斉藤秀樹:「やあ、どうも、愛原さん」
 斉藤秀子:「おはようございます。愛原さん」
 愛原:「斉藤社長に、奥様……」

 てか奥様、初登場じゃね?

 絵恋:「もしかしてリサさんも、那須の別荘に!?」
 リサ:「違う。仙台まで行くの」
 秀樹:「帰省ですか?」
 愛原:「そうなんです。本当はコロナ禍で控えるつもりだったんですが、例のガス爆発事件、実家の近所なんです」
 秀樹:「それは大変だ!何でも地中にガスボンベが埋まっていて、それが爆発したらしいですよ」
 愛原:「ニュースでやってたんですか?」
 秀樹:「いえ。うちの会社の仙台支社の人間があの辺に住んでいますので、そこからの報告です」
 愛原:「なので、ちょっと心配なので駆け付けに行くところです」
 秀樹:「それは緊急ですね。誰がどう見ても不要不急の帰省ではない。これなら小池都知事も、自粛警察も文句は無いでしょう」

 斉藤社長に自粛警察と同等の扱いされる小池都知事w

 愛原:「というわけで、私達は9時24分発の“やまびこ”で行きます」
 秀樹:「ちょうど仙台行きですね。私達はその1つ前の“なすの”です」
 愛原:「向こうで何か分かったら、教えてください。もし見舞金が必要でしたら、すぐに御用意致します」

 ビジネスライクにさらりと不謹慎なことを言う斉藤社長。
 これくらいでないと、大企業の経営者にはなれないのだろうか。

 絵恋:「じゃあね、リサさん」
 リサ:「うん。お土産は甘い物でよろしく」
 絵恋:「わ、分かったわ!」

 リサもリサで食欲に勝てないのだった。

〔21番線の電車は、9時24分発、“やまびこ”131号、仙台行きと“つばさ”131号、山形・新庄行きです。……〕

 ホームに上がると既に列車は停車していて、折り返し車内清掃が行われていた。
 確かにホームには、あまり人がいなかった。
 明らかに在来線よりも人がいない。

 高橋:「先生。御実家にお土産買って行ったらどうっスか?」
 愛原:「ん?そうだな……」

 私は売店に寄った。

 愛原:「ああ、“やまびこ”には車内販売が無いから、飲み物やら何やら今のうちに買っておけよ」
 高橋:「了解っス」
 リサ:「了解っス」

 私は取りあえず、オーソドックスに“ひよこサブレー”でも買って行くことにした。

〔「21番線、お待たせ致しました。まもなくドアが開きます。乗車口までお進みください。……」〕

 買い物をしている間に車内清掃が終わり、ドアが開いた。

 愛原:「おっ、もう乗れるみたいだ。早いとこ行こう」
 高橋:「はいっ!……おいリサ、早いとこ決めろ!」
 リサ:「はーい」

 買い物を済ませて、私達は列車に乗ろうとした。

 高橋:「先生、まだ一服する時間はありますか?」
 愛原:「ん?そうだな……」

 新幹線ホームには喫煙所がある。
 しょうがないので、1番後ろの車両まで行った。
 近い所がホームの一番南側だったからだ。

 愛原:「俺達は先に乗ってるから、乗れ遅れないように来いよ」
 高橋:「了解です。ちょっぱやで吸ってきます」

 私とリサは1号車に乗り込んだ。
 そして、まるまる空いている3人席に座る。

 愛原:「リサ、窓側でいいよ」
 リサ:「はーい!」

 リサはホイホイと窓側に座った。
 私は荷物を網棚に上げた。
 そして真ん中席に座ると、スマホでニュースをチェックする。
 ニュースでは斉藤社長の言ってた通り、地中に埋められていたガスボンベが何本も爆発したという。
 そのボンベが爆発した所というのは、もう何十年も前から空き家になっていた所らしい。
 えー?空き家なんてあったかなぁ……?
 あ……いや、何かあったような気がする。
 小学生の頃、友達と何人かで肝試しに行ったことがあったが、あそこだろうか。
 てか、まだ空き家だったのか。

〔「9時24分発、東北新幹線“やまびこ”131号、仙台行きと山形新幹線“つばさ”131号、山形・新庄行きです。途中、上野、福島に止まります。“やまびこ”号は福島を出ますと、終点仙台に止まります。“つばさ”号は福島を出ますと、米沢、山形、天童、さくらんぼ東根、村山、大石田、終点新庄の順に止まります。停車駅の少ない列車です。停車駅にご注意ください。まもなくの発車となります。ご乗車になりまして、お待ちください」〕

 発車の時間が刻々と迫る。

 高橋:「お待たせしました、先生」

 そこへ高橋が戻って来た。

 愛原:「おっ、ギリギリだったな」
 高橋:「サーセン。吸い溜めしてたもんで……」
 愛原:「まあいいさ。通路側でいいだろ?」
 高橋:「どこでもOKっス」

 そう言って、高橋は通路側の私の隣の席に座った。
 しばらくして、私達の列車は定刻に発車した。
 果たして、現場は一体どういう状況なのだろうか?
 そして、私の両親は無事なのだろうか?
コメント (2)
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