[8月22日12:00.天候:晴 宮城県仙台市若林区某所 某市立小学校体育館]
私達は私が卒業した小学校に向かった。
高橋:「ここが先生の卒業された小学校ですか」
愛原:「ああ。何か随分ボロくなったなぁ……。俺が通ってた時は幾分マシだったんだがな。これじゃ、“学校の七不思議”が現れても仕方が無いよ」
高橋:「ああ、あの『理科室の光るガイコツ』とか、『音楽室の歩くベートーヴェン』とかですか?」
愛原:「おい、そっちの方が怖いぞ!正確には、『理科室の歩くガイコツ』と『音楽室で勝手にピアノを弾くベートーヴェン』だ」
高橋:「この学校、随分とアグレッシブなオバケがいるんスね~」
愛原:「あくまでも噂だけどな」
リサ:「私の学校にもいるよ」
愛原:「へえ……どんなの?」
リサ:「『両目を金色に光らせた女子生徒が映る鏡』とか、『牙を生やした少女が現れる給食室』とか、『両手の尖った爪を研ぎに少女が現れる技術準備室』とか……」
高橋:「おい、リサ!正体バレ掛かってんぞ!」
愛原:「全部オマエか!」
学校の七不思議になるリサ。
愛原:「学校で第一形態はマズイって!」
リサ:「時々気を抜くと、そうなっちゃうの」
愛原:「学校にいる時は気を抜くなよ!正体がバレたら、学校に通えなくなるぞ!」
リサ:「気をつけまーす」
私達は体育館に中に入った。
一応、冷房装置は後付けで導入されているようだが、入口のドアが開放されているせいで、そんなに効いている感じがしない。
入る前に体温測定と手のアルコール消毒を求められた。
リサは体温が高いが、大丈夫か?
係員:「36度5分。はい、オッケーです」
リサ:「むふー」
愛原:「あれ?リサの平熱それだったっけ?」
リサ:「第0形態は」
愛原:「ああ」
ちょうど時間帯的に、避難者に昼食の弁当が配給されているところだった。
リサ:「お弁当……!」
リサは美味そうに弁当を見つめた。
愛原:「ダメだぞ、リサ。これは避難者用の弁当だ。昼食は両親に会ったら食べるから、それまで我慢してくれ」
私はリサの肩を叩いて宥めた。
父親:「学!こっちだ!」
すると、仕切られた一画に父親の姿を見つけた。
愛原:「お父さん、無事で良かったよ」
父親:「ああ。おかげさんで。この通り、お母さんも無事だ」
母親:「悪かったわねぇ、心配掛けて……」
愛原:「いや、いいよ。無事で良かった」
父親:「? その人達は?」
愛原:「ああ。うちの事務所のスタッフだよ。助手の高橋正義」
高橋:「愛原先生の一番弟子を務めさせて頂いております、高橋正義と申します!以後、お見知りおきを!」
高橋はビシッとネクタイを締め直して挨拶した。
父親:「そうか。オマエも従業員を雇えるようになったか。でも、だからって、『先生』って……w」
愛原:「あはははは……。いや、こいつが勝手に呼んでるんだ」
高橋:「俺は一流の探偵を目指しております。先生の名推理に俺は救われ、感激しました。是非とも先生を師と仰ぎ、俺も一流の探偵になりたいのです」
父親:「な、なるほど。学の父親です。今は気ままな年金暮らしです。高橋さんは分かりますが、そのコは?どう見ても中高生……バイト?」
愛原:「えっと、このコは……」
リサは両親の前に正座し、三つ指をついて挨拶した。
どこでそんな挨拶の方法覚えた!?
リサ:「リサ・トレヴァーと申します。霧生市のバイオハザード事件に巻き込まれて以来、先生の所にお世話になっております」
愛原:「リサ!?」
何か、私の前では子供っぽく振る舞うリサが、ここでは大人びた態度になった。
父親:「リサ・トレヴァーって、外人さん?」
愛原:「いや、国籍は日本なんだ。だけど、見た目からしてハーフかクォーターかもしれないね」
父親:「しれないねって、このコの親御さんは?」
愛原:「霧生市のバイオハザード事件で、このコは独りぼっちになったんだ。それで俺が預かってるんだよ。いわゆる、里親制度的なものでね」
父親:「オマエが里親なんかやれるのか?」
愛原:「一応、今のところ上手くやってます。公的機関の後押しもあるんで」
私は善場主任の名刺を父親に見せた。
父親:「政府機関が直接後押しって、オマエ何したんだ?」
愛原:「霧生市のバイオハザードに巻き込まれて、運良く生き延びただけだよ。それから巡り巡って、現在に至る」
父親:「何だそれ。問題は無いんだな?」
愛原:「それは大丈夫」
父親:「分かった。学を信じるぞ」
愛原:「それで、一体何があったの?ガス爆発ってことだけど……」
父親:「近所の『お化け屋敷』は知ってるだろ?あの廃墟の邸宅のことだ」
愛原:「ああ、やっぱりあれか!俺達、子供の頃、肝試しした廃墟の洋館!」
父親:「何でもあの屋敷の地下にガスボンベが埋まっていて、それが長年の腐食を経てガスが漏れ出し、何らかの理由で今朝爆発したらしいんだ」
高橋:「あ、いや、何かちょっと違うみたいっスよ」
愛原:「え?」
高橋がスマホを片手にしていた。
高橋:「ネットニュースじゃ、プロパンガスボンベの他に、不発弾も埋まってて、それも爆発したんじゃないかって言ってます。それらしいのも見つかったらしいですよ」
愛原:「やっぱりか。プロパンガスだか何だか知らないが、それだけであんなに大爆発なんかしないよな」
父親:「元々あの家はアメリカ人が住んでた家だからなぁ……」
愛原:「知らない。そんなの初耳だよ。俺が子供の頃にはもう空き家だったからさ」
母親:「確か、日本人の奥さんと一緒に住んでたのよね」
父親:「ああ。元アメリカ軍にいた人で、失踪直前まではアメリカ資本の会社で働いていたということだが……」
母親:「学が生まれてからすぐに、夜逃げ同然で行方不明になってしまったのよね」
父親:「そうだそうだ」
愛原:「あの、お父さん方……。そのアメリカ人さんが働いていた会社って、もしかしてアンブレラって言いません?」
父親:「そうなんだよ。それの日本版が霧生市でバイオハザードを起こして、ついに日本版も潰れてしまったな」
思いっきり怪しいな。
何で今頃爆発した?ただの偶然か?それとも……。
高橋:「で、先生、その屋敷の地下から人骨が見つかったらしいッスよ?」
愛原:「はあ!?」
父親:「思い出した!そのアメリカ人さん、下の名前をトレヴァーって言った!上の名前は何だったっけなぁ……」
リサ:「うっ……!」
その時、リサが両手で頭を抱えて苦しみだした。
どうやら、人間だった頃の記憶がフラッシュバックしているらしい。
母親:「ちょっと、大丈夫?」
リサ:「……大丈夫……です」
だが、リサの両手の爪が明らかに伸びて尖っている。
第一形態に変化してしまったのだ。
私は急いで高橋の着ているスーツの上着を脱がせると、それをリサに被せた。
愛原:「高橋!リサをトイレに連れて行け!」
高橋:「はい!」
私は体育館内にあるトイレを指さした。
高橋はリサを抱え起こすと、トイレに連れて行った。
父親:「大丈夫なのかい、あのコ?」
愛原:「大丈夫。霧生市で恐怖を味わったから、ちょっとトラウマがあるんだ」
母親:「かわいそうに……」
愛原:「トレヴァーなんて名字、そうそう無いだろう」
もしかしてリサの血縁者だったりして!?リサが人間だった頃の!
愛原:「トレヴァーさん、どこに行ったんだろう?」
父親:「アメリカに突然帰ったんだろうというのが、近所の噂だったけど……」
えーと……そもそも、アメリカのオリジナル版リサ・トレヴァーは、どうしてあんな化け物になったんだっけ?
母親:「でもさっき、高橋さんが『人骨が見つかった』って言ってたでしょう?実はアメリカに帰ってなくて、その人骨とやらがもしかして……」
父親:「オマエもさらっと怖いこと言うなァ……」
その爆発現場のお化け屋敷を探索したいけど、今は無理だろうな。
何だか、リサの人間時代に迫れるような気がしたのだが……。
因みに東京で発生した一家全員殺人事件については、こっちのリサは関係無かったことが分かっている。
私達は私が卒業した小学校に向かった。
高橋:「ここが先生の卒業された小学校ですか」
愛原:「ああ。何か随分ボロくなったなぁ……。俺が通ってた時は幾分マシだったんだがな。これじゃ、“学校の七不思議”が現れても仕方が無いよ」
高橋:「ああ、あの『理科室の光るガイコツ』とか、『音楽室の歩くベートーヴェン』とかですか?」
愛原:「おい、そっちの方が怖いぞ!正確には、『理科室の歩くガイコツ』と『音楽室で勝手にピアノを弾くベートーヴェン』だ」
高橋:「この学校、随分とアグレッシブなオバケがいるんスね~」
愛原:「あくまでも噂だけどな」
リサ:「私の学校にもいるよ」
愛原:「へえ……どんなの?」
リサ:「『両目を金色に光らせた女子生徒が映る鏡』とか、『牙を生やした少女が現れる給食室』とか、『両手の尖った爪を研ぎに少女が現れる技術準備室』とか……」
高橋:「おい、リサ!正体バレ掛かってんぞ!」
愛原:「全部オマエか!」
学校の七不思議になるリサ。
愛原:「学校で第一形態はマズイって!」
リサ:「時々気を抜くと、そうなっちゃうの」
愛原:「学校にいる時は気を抜くなよ!正体がバレたら、学校に通えなくなるぞ!」
リサ:「気をつけまーす」
私達は体育館に中に入った。
一応、冷房装置は後付けで導入されているようだが、入口のドアが開放されているせいで、そんなに効いている感じがしない。
入る前に体温測定と手のアルコール消毒を求められた。
リサは体温が高いが、大丈夫か?
係員:「36度5分。はい、オッケーです」
リサ:「むふー」
愛原:「あれ?リサの平熱それだったっけ?」
リサ:「第0形態は」
愛原:「ああ」
ちょうど時間帯的に、避難者に昼食の弁当が配給されているところだった。
リサ:「お弁当……!」
リサは美味そうに弁当を見つめた。
愛原:「ダメだぞ、リサ。これは避難者用の弁当だ。昼食は両親に会ったら食べるから、それまで我慢してくれ」
私はリサの肩を叩いて宥めた。
父親:「学!こっちだ!」
すると、仕切られた一画に父親の姿を見つけた。
愛原:「お父さん、無事で良かったよ」
父親:「ああ。おかげさんで。この通り、お母さんも無事だ」
母親:「悪かったわねぇ、心配掛けて……」
愛原:「いや、いいよ。無事で良かった」
父親:「? その人達は?」
愛原:「ああ。うちの事務所のスタッフだよ。助手の高橋正義」
高橋:「愛原先生の一番弟子を務めさせて頂いております、高橋正義と申します!以後、お見知りおきを!」
高橋はビシッとネクタイを締め直して挨拶した。
父親:「そうか。オマエも従業員を雇えるようになったか。でも、だからって、『先生』って……w」
愛原:「あはははは……。いや、こいつが勝手に呼んでるんだ」
高橋:「俺は一流の探偵を目指しております。先生の名推理に俺は救われ、感激しました。是非とも先生を師と仰ぎ、俺も一流の探偵になりたいのです」
父親:「な、なるほど。学の父親です。今は気ままな年金暮らしです。高橋さんは分かりますが、そのコは?どう見ても中高生……バイト?」
愛原:「えっと、このコは……」
リサは両親の前に正座し、三つ指をついて挨拶した。
どこでそんな挨拶の方法覚えた!?
リサ:「リサ・トレヴァーと申します。霧生市のバイオハザード事件に巻き込まれて以来、先生の所にお世話になっております」
愛原:「リサ!?」
何か、私の前では子供っぽく振る舞うリサが、ここでは大人びた態度になった。
父親:「リサ・トレヴァーって、外人さん?」
愛原:「いや、国籍は日本なんだ。だけど、見た目からしてハーフかクォーターかもしれないね」
父親:「しれないねって、このコの親御さんは?」
愛原:「霧生市のバイオハザード事件で、このコは独りぼっちになったんだ。それで俺が預かってるんだよ。いわゆる、里親制度的なものでね」
父親:「オマエが里親なんかやれるのか?」
愛原:「一応、今のところ上手くやってます。公的機関の後押しもあるんで」
私は善場主任の名刺を父親に見せた。
父親:「政府機関が直接後押しって、オマエ何したんだ?」
愛原:「霧生市のバイオハザードに巻き込まれて、運良く生き延びただけだよ。それから巡り巡って、現在に至る」
父親:「何だそれ。問題は無いんだな?」
愛原:「それは大丈夫」
父親:「分かった。学を信じるぞ」
愛原:「それで、一体何があったの?ガス爆発ってことだけど……」
父親:「近所の『お化け屋敷』は知ってるだろ?あの廃墟の邸宅のことだ」
愛原:「ああ、やっぱりあれか!俺達、子供の頃、肝試しした廃墟の洋館!」
父親:「何でもあの屋敷の地下にガスボンベが埋まっていて、それが長年の腐食を経てガスが漏れ出し、何らかの理由で今朝爆発したらしいんだ」
高橋:「あ、いや、何かちょっと違うみたいっスよ」
愛原:「え?」
高橋がスマホを片手にしていた。
高橋:「ネットニュースじゃ、プロパンガスボンベの他に、不発弾も埋まってて、それも爆発したんじゃないかって言ってます。それらしいのも見つかったらしいですよ」
愛原:「やっぱりか。プロパンガスだか何だか知らないが、それだけであんなに大爆発なんかしないよな」
父親:「元々あの家はアメリカ人が住んでた家だからなぁ……」
愛原:「知らない。そんなの初耳だよ。俺が子供の頃にはもう空き家だったからさ」
母親:「確か、日本人の奥さんと一緒に住んでたのよね」
父親:「ああ。元アメリカ軍にいた人で、失踪直前まではアメリカ資本の会社で働いていたということだが……」
母親:「学が生まれてからすぐに、夜逃げ同然で行方不明になってしまったのよね」
父親:「そうだそうだ」
愛原:「あの、お父さん方……。そのアメリカ人さんが働いていた会社って、もしかしてアンブレラって言いません?」
父親:「そうなんだよ。それの日本版が霧生市でバイオハザードを起こして、ついに日本版も潰れてしまったな」
思いっきり怪しいな。
何で今頃爆発した?ただの偶然か?それとも……。
高橋:「で、先生、その屋敷の地下から人骨が見つかったらしいッスよ?」
愛原:「はあ!?」
父親:「思い出した!そのアメリカ人さん、下の名前をトレヴァーって言った!上の名前は何だったっけなぁ……」
リサ:「うっ……!」
その時、リサが両手で頭を抱えて苦しみだした。
どうやら、人間だった頃の記憶がフラッシュバックしているらしい。
母親:「ちょっと、大丈夫?」
リサ:「……大丈夫……です」
だが、リサの両手の爪が明らかに伸びて尖っている。
第一形態に変化してしまったのだ。
私は急いで高橋の着ているスーツの上着を脱がせると、それをリサに被せた。
愛原:「高橋!リサをトイレに連れて行け!」
高橋:「はい!」
私は体育館内にあるトイレを指さした。
高橋はリサを抱え起こすと、トイレに連れて行った。
父親:「大丈夫なのかい、あのコ?」
愛原:「大丈夫。霧生市で恐怖を味わったから、ちょっとトラウマがあるんだ」
母親:「かわいそうに……」
愛原:「トレヴァーなんて名字、そうそう無いだろう」
もしかしてリサの血縁者だったりして!?リサが人間だった頃の!
愛原:「トレヴァーさん、どこに行ったんだろう?」
父親:「アメリカに突然帰ったんだろうというのが、近所の噂だったけど……」
えーと……そもそも、アメリカのオリジナル版リサ・トレヴァーは、どうしてあんな化け物になったんだっけ?
母親:「でもさっき、高橋さんが『人骨が見つかった』って言ってたでしょう?実はアメリカに帰ってなくて、その人骨とやらがもしかして……」
父親:「オマエもさらっと怖いこと言うなァ……」
その爆発現場のお化け屋敷を探索したいけど、今は無理だろうな。
何だか、リサの人間時代に迫れるような気がしたのだが……。
因みに東京で発生した一家全員殺人事件については、こっちのリサは関係無かったことが分かっている。