報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「愛原の両親」

2020-08-25 19:45:01 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[8月22日12:00.天候:晴 宮城県仙台市若林区某所 某市立小学校体育館]

 私達は私が卒業した小学校に向かった。

 高橋:「ここが先生の卒業された小学校ですか」
 愛原:「ああ。何か随分ボロくなったなぁ……。俺が通ってた時は幾分マシだったんだがな。これじゃ、“学校の七不思議”が現れても仕方が無いよ」
 高橋:「ああ、あの『理科室の光るガイコツ』とか、『音楽室の歩くベートーヴェン』とかですか?」
 愛原:「おい、そっちの方が怖いぞ!正確には、『理科室の歩くガイコツ』と『音楽室で勝手にピアノを弾くベートーヴェン』だ」
 高橋:「この学校、随分とアグレッシブなオバケがいるんスね~」
 愛原:「あくまでも噂だけどな」
 リサ:「私の学校にもいるよ」
 愛原:「へえ……どんなの?」
 リサ:「『両目を金色に光らせた女子生徒が映る鏡』とか、『牙を生やした少女が現れる給食室』とか、『両手の尖った爪を研ぎに少女が現れる技術準備室』とか……」
 高橋:「おい、リサ!正体バレ掛かってんぞ!」
 愛原:「全部オマエか!」

 学校の七不思議になるリサ。

 愛原:「学校で第一形態はマズイって!」
 リサ:「時々気を抜くと、そうなっちゃうの」
 愛原:「学校にいる時は気を抜くなよ!正体がバレたら、学校に通えなくなるぞ!」
 リサ:「気をつけまーす」

 私達は体育館に中に入った。
 一応、冷房装置は後付けで導入されているようだが、入口のドアが開放されているせいで、そんなに効いている感じがしない。
 入る前に体温測定と手のアルコール消毒を求められた。
 リサは体温が高いが、大丈夫か?

 係員:「36度5分。はい、オッケーです」
 リサ:「むふー」
 愛原:「あれ?リサの平熱それだったっけ?」
 リサ:「第0形態は」
 愛原:「ああ」

 ちょうど時間帯的に、避難者に昼食の弁当が配給されているところだった。

 リサ:「お弁当……!」

 リサは美味そうに弁当を見つめた。

 愛原:「ダメだぞ、リサ。これは避難者用の弁当だ。昼食は両親に会ったら食べるから、それまで我慢してくれ」

 私はリサの肩を叩いて宥めた。

 父親:「学!こっちだ!」

 すると、仕切られた一画に父親の姿を見つけた。

 愛原:「お父さん、無事で良かったよ」
 父親:「ああ。おかげさんで。この通り、お母さんも無事だ」
 母親:「悪かったわねぇ、心配掛けて……」
 愛原:「いや、いいよ。無事で良かった」
 父親:「? その人達は?」
 愛原:「ああ。うちの事務所のスタッフだよ。助手の高橋正義」
 高橋:「愛原先生の一番弟子を務めさせて頂いております、高橋正義と申します!以後、お見知りおきを!」

 高橋はビシッとネクタイを締め直して挨拶した。

 父親:「そうか。オマエも従業員を雇えるようになったか。でも、だからって、『先生』って……w」
 愛原:「あはははは……。いや、こいつが勝手に呼んでるんだ」
 高橋:「俺は一流の探偵を目指しております。先生の名推理に俺は救われ、感激しました。是非とも先生を師と仰ぎ、俺も一流の探偵になりたいのです」
 父親:「な、なるほど。学の父親です。今は気ままな年金暮らしです。高橋さんは分かりますが、そのコは?どう見ても中高生……バイト?」
 愛原:「えっと、このコは……」

 リサは両親の前に正座し、三つ指をついて挨拶した。
 どこでそんな挨拶の方法覚えた!?

 リサ:「リサ・トレヴァーと申します。霧生市のバイオハザード事件に巻き込まれて以来、先生の所にお世話になっております」
 愛原:「リサ!?」

 何か、私の前では子供っぽく振る舞うリサが、ここでは大人びた態度になった。

 父親:「リサ・トレヴァーって、外人さん?」
 愛原:「いや、国籍は日本なんだ。だけど、見た目からしてハーフかクォーターかもしれないね」
 父親:「しれないねって、このコの親御さんは?」
 愛原:「霧生市のバイオハザード事件で、このコは独りぼっちになったんだ。それで俺が預かってるんだよ。いわゆる、里親制度的なものでね」
 父親:「オマエが里親なんかやれるのか?」
 愛原:「一応、今のところ上手くやってます。公的機関の後押しもあるんで」

 私は善場主任の名刺を父親に見せた。

 父親:「政府機関が直接後押しって、オマエ何したんだ?」
 愛原:「霧生市のバイオハザードに巻き込まれて、運良く生き延びただけだよ。それから巡り巡って、現在に至る」
 父親:「何だそれ。問題は無いんだな?」
 愛原:「それは大丈夫」
 父親:「分かった。学を信じるぞ」
 愛原:「それで、一体何があったの?ガス爆発ってことだけど……」
 父親:「近所の『お化け屋敷』は知ってるだろ?あの廃墟の邸宅のことだ」
 愛原:「ああ、やっぱりあれか!俺達、子供の頃、肝試しした廃墟の洋館!」
 父親:「何でもあの屋敷の地下にガスボンベが埋まっていて、それが長年の腐食を経てガスが漏れ出し、何らかの理由で今朝爆発したらしいんだ」
 高橋:「あ、いや、何かちょっと違うみたいっスよ」
 愛原:「え?」

 高橋がスマホを片手にしていた。

 高橋:「ネットニュースじゃ、プロパンガスボンベの他に、不発弾も埋まってて、それも爆発したんじゃないかって言ってます。それらしいのも見つかったらしいですよ」
 愛原:「やっぱりか。プロパンガスだか何だか知らないが、それだけであんなに大爆発なんかしないよな」
 父親:「元々あの家はアメリカ人が住んでた家だからなぁ……」
 愛原:「知らない。そんなの初耳だよ。俺が子供の頃にはもう空き家だったからさ」
 母親:「確か、日本人の奥さんと一緒に住んでたのよね」
 父親:「ああ。元アメリカ軍にいた人で、失踪直前まではアメリカ資本の会社で働いていたということだが……」
 母親:「学が生まれてからすぐに、夜逃げ同然で行方不明になってしまったのよね」
 父親:「そうだそうだ」
 愛原:「あの、お父さん方……。そのアメリカ人さんが働いていた会社って、もしかしてアンブレラって言いません?」
 父親:「そうなんだよ。それの日本版が霧生市でバイオハザードを起こして、ついに日本版も潰れてしまったな」

 思いっきり怪しいな。
 何で今頃爆発した?ただの偶然か?それとも……。

 高橋:「で、先生、その屋敷の地下から人骨が見つかったらしいッスよ?」
 愛原:「はあ!?」
 父親:「思い出した!そのアメリカ人さん、下の名前をトレヴァーって言った!上の名前は何だったっけなぁ……」
 リサ:「うっ……!」

 その時、リサが両手で頭を抱えて苦しみだした。
 どうやら、人間だった頃の記憶がフラッシュバックしているらしい。

 母親:「ちょっと、大丈夫?」
 リサ:「……大丈夫……です」

 だが、リサの両手の爪が明らかに伸びて尖っている。
 第一形態に変化してしまったのだ。
 私は急いで高橋の着ているスーツの上着を脱がせると、それをリサに被せた。

 愛原:「高橋!リサをトイレに連れて行け!」
 高橋:「はい!」

 私は体育館内にあるトイレを指さした。
 高橋はリサを抱え起こすと、トイレに連れて行った。

 父親:「大丈夫なのかい、あのコ?」
 愛原:「大丈夫。霧生市で恐怖を味わったから、ちょっとトラウマがあるんだ」
 母親:「かわいそうに……」
 愛原:「トレヴァーなんて名字、そうそう無いだろう」

 もしかしてリサの血縁者だったりして!?リサが人間だった頃の!

 愛原:「トレヴァーさん、どこに行ったんだろう?」
 父親:「アメリカに突然帰ったんだろうというのが、近所の噂だったけど……」

 えーと……そもそも、アメリカのオリジナル版リサ・トレヴァーは、どうしてあんな化け物になったんだっけ?

 母親:「でもさっき、高橋さんが『人骨が見つかった』って言ってたでしょう?実はアメリカに帰ってなくて、その人骨とやらがもしかして……」
 父親:「オマエもさらっと怖いこと言うなァ……」

 その爆発現場のお化け屋敷を探索したいけど、今は無理だろうな。
 何だか、リサの人間時代に迫れるような気がしたのだが……。
 因みに東京で発生した一家全員殺人事件については、こっちのリサは関係無かったことが分かっている。
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“私立探偵 愛原学” 「爆発現場」

2020-08-25 16:01:53 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[8月22日11:14.天候:晴 宮城県仙台市青葉区 JR東北新幹線131B電車1号車内→JR仙台駅]

〔♪♪(車内チャイム)♪♪。まもなく終点、仙台です。東北新幹線下り、盛岡・新青森方面、東北本線下り、松島・小牛田方面、上り、岩沼・白石方面、仙石線、仙山線、常磐線、仙石東北ライン、仙台空港アクセス線、仙台市地下鉄南北線と仙台市地下鉄東西線はお乗り換えです。……〕

 私達を乗せた列車は減速し、カーブの多い市街地区間を走行していた。

 愛原:「『東北一の都会とて 其名しられし仙台市 伊達政宗の築きたる 城に師団は置かれたり』」
 高橋:「何スか、そのフレーズ?」
 愛原:「鉄道唱歌だよ。今は列車のチャイム、鉄道唱歌を流さないからなぁ……」
 高橋:「もしかして、『汽笛一声 新橋を……』のヤツっスか?」
 愛原:「おー、そうだよ!よく知ってるなぁ!それの東北本線版だよ」
 高橋:「たまたまっスよ」

 高橋は照れ笑いを浮かべた。

 高橋:「他にどんなのがあるんスか?」
 愛原:「今の続きが、『阿武隈川の埋木も 仙台平の袴地も 皆この土地の産物ぞ みてゆけここも一日は』だったかな」
 高橋:「そうっスか。……何かよく分かんないっス」
 愛原:「まあ、今から100年以上も前に作られた歌だから……」
 リサ:「先生、その頃から生きてる?」
 愛原:「俺は本物の鬼か!」
 高橋:「失礼だぞ、このヤロー!」
 リサ:「残念。私に噛まれれば、100年以上軽く生きられるのに……」

 ちょっと待て。
 BOWって不老不死なのか?

 高橋:「さり気無く先生を感染させようとすんじゃねぇ!」

〔「長らくの御乗車お疲れさまでした。まもなくこの列車の終点、仙台、仙台です。到着ホームは14番線、お出口は左側です。……」〕

 とにかく私は荷棚から自分の荷物を下ろした。

 高橋:「先生の御実家、駅から近いんスか?」
 愛原:「まあ、車で15分って所かな。ここも高架線だけど、ここからじゃ家が見えなかった。昔は見えたのに……」
 高橋:「マジっスか。駅近で便利っスね!」

 車で15分掛かる距離って、駅近って言うんだろうか?
 列車はポイントを2回渡り、下り本線から一旦上り本線を逆走し、その後で上り副線に入ると、そのホームに滑り込んだ。

〔「ご乗車ありがとうございました。終点、仙台、仙台です。お忘れ物の無いよう、ご注意ください。……」〕

 列車がホームに停車し、ドアが開く。
 私達は定時に到着したその列車を降りた。
 仙台市も暑く、降りたら暑い空気に包まれた。

 愛原:「北に来たから涼しいってわけでもないな」
 高橋:「そうっスね。先生、ここから何で行きますか?」
 愛原:「タクシーで行こう。荷物もあるし」
 高橋:「はい」

 私達は改札口を出た。
 東京駅と違い、同じJR線に乗り換えないのであれば、改札口は新幹線のそれを1回通るだけで良い。
 あとはタクシー乗り場に移動した。

 リサ:「牛タン……笹かまぼこ……萩の月……」

 リサは仙台名物のお土産を見て、目を輝かせ、涎を出しそうになった。

 愛原:「お土産に買って帰ろうな。うちの実家が無事だったら」
 高橋:「リサ、先生の仰る通りだ。場合によっちゃ俺のスーツのネクタイ、黒に換えないといけねぇ」
 愛原:「既に持参している時点で、オマエも不謹慎だからな?」
 高橋:「さ、サーセン!」

 私達はタクシー乗り場に移動すると、そこからタクシーに乗り込んだ。
 東京駅に向かう時は高橋が助手席に乗ったが、今度は私が助手席に乗った。
 土地勘があるのは私だけだからである。

 愛原:「若林区○○までお願いします」
 運転手:「○○ですか?……はい」

 運転手は取りあえずメーターを作動させて、車を走らせた。
 ロータリー出口の信号に引っ掛かる。

 運転手:「お客さん、○○地区ですが、今あそこは大規模なガス爆発がありまして、周辺がまだ交通規制掛けられてるんですよ。もしかしたら、途中までしか行けないかもしれませんよ?」
 愛原:「でしょうね。まあ、取りあえず行ける所まで行ってください」
 運転手:「分かりました」

 信号が青に変わり、タクシーは駅前ロータリーを出て私の実家に向かった。

[同日11:40.天候:晴 仙台市若林区某地区]

 タクシーは住宅街の市道を走行していた。
 そして、ついに……。

 運転手:「ああ、そこからもう入れないみたいです」

 私の実家がある所へ入る道が、既に警察によって封鎖されていた。
 その規制線の向こうからは焦げ臭い臭いが漂って来て、ガス爆発によって火災も起きたことを物語っていた。

 リサ:「死臭の臭いがする……」

 普通、死臭なら不快な顔をするものだろうが、リサはそうではないらしく、無表情で言った。

 愛原:「ここまででいいです」
 運転手:「分かりました」

 私達は規制線の外側でタクシーを降りた。
 そして、そこで警戒に当たっている警察官に話し掛けた。

 愛原:「すいません。私、この地区に住んでいる両親の安否を尋ねて駆け付けた者なんですが、この地区は今どうなっているんですか?」
 警察官:「この地区の住民の人達は避難所に避難しました。まだガス爆発の危険性が残っている恐れがあり、入ることはできません」
 愛原:「避難所はどちらに?」
 警察官:「近隣の小学校または中学校です。負傷した人達は病院に搬送しておりますが、まだ瓦礫の下に取り残されている方々もおりまして、今救助活動を行っています」

 これはどうやら、福島県で起きたガス爆発よりも規模が大きいみたいだぞ。
 本当にガスボンベが爆発しただけなのだろうか。

 愛原:「あ、今思い出した」
 高橋:「何スか?」
 愛原:「両親のどっちかの携帯に掛けりゃ良かったんだ。これでどっちも出なかったら、【お察しください】」
 高橋:「掛けてなかったんスか!?」
 愛原:「家の固定電話にしか掛けてなかったんだ」

 私は自分のスマホを取り出すと、まずは父親に掛けてみることにした。
 すると……。

 父親:「もしもし?学か?」
 愛原:「お父さん!そうだよ、学だよ。今、家の近くまで来てるんだ。無事なのか?」
 父親:「ああ。お母さんと今、小学校に避難してる。ケガも無く、無事だよ」
 愛原:「それは良かった。じゃあ、俺達もそっちに行くよ」

 私は電話を切った。

 愛原:「俺の両親は無事だ。今、小学校に避難してる。俺達も行こう」
 高橋:「うっス!良かったっスね!」
 愛原:「ああ。それにしても、何があったのやら……」

 それはこれから両親に聞けばいいだろう。
 私達は私の卒業した小学校に向かった。
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