報恩坊の怪しい偽作家!

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“私立探偵 愛原学” 「市街地へ向かう」

2020-08-28 15:45:42 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[8月22日15:06.天候:晴 宮城県仙台市若林区 仙台市営バス一本杉町停留所→仙台市営バスJ411系統車内]

 高橋:「先生、教授の車見ましたか?死亡フラグですよ、死亡フラグ」
 愛原:「元教授だよ。まあ、名誉教授としての籍はあるのかもしれないけど。まあ、死亡フラグというか何というか……」

 私達は先にホテルに行く為、小学校近くのバス停でバスを待っていた。
 交通規制そのものは大幅に解除されたことで、バス路線の通っている県道も車が通るようになった。

 愛原:「高齢者マークのプリウスか……。自分が死亡フラグじゃなく、他人が死亡フラグだ」
 高橋:「俺達も『サツの車』『ヤーさんの車』そして、『ジジィのプリウス』には要注意というステッカーを車に貼ってたものです」
 愛原:「どこで売ってるんだ、そういうの……」
 リサ:「バスが来たよ」

 両親達は正にその『走る死亡フラグ』に乗って、後でホテルまで来る。
 伯父さんはせっかくなので、大学に寄ってから帰るそうだ。
 いや、まあ、全ての高齢者プリウスが危険車両ではないということは分かってるんだけどねぇ……。

〔J411系統、若林区役所前、仙台駅前経由、交通局・東北大学病院前行きでございます〕

 リサ:「これ、前から乗るの?」
 愛原:「いや、中扉から乗って先にPasmoを当てるんだ」
 高橋:「でも先生、つい前から乗りたくなりますね」
 愛原:「まあ、気持ちは分かる」

 私達は中扉からバスに乗り、1番後ろの席に座った。
 都区内在住の私達がそう思ったのもそのはず。
 このバス、明らかに都営バスの中古車両だったからである。
 まさか仙台に来てまで、『みんくる』の絵が描かれたモケットの上に座るとは思わなかったよ。

〔発車します。ご注意ください〕

 バスが走り出す。

〔ピン♪ポン♪パーン♪ 次は若林区役所前、若林区役所前でございます。日蓮正宗佛眼寺へおいでの方は、荒町でお降りになられると便利です。次は、若林区役所前でございます〕

 愛原:「リサ、この辺りに見覚えは?」
 リサ:「分かんない。全然分かんない」

 進行方向左側の窓際に座るリサは、首を横に振った。

 愛原:「そうか……」

 この辺りはキリスト教会もある場所である。
 なので、修道服を着た修道女と乗り合わせることもある路線だ。
 魔女達にとっては危険地帯と言えよう。

 リサ:「何か、十字架を持った人達が家に来ていたような気がする……」

 リサはふとそんなことを言った。

 愛原:「思い出したのか!?」
 リサ:「よくは憶えてないけど……」

 アメリカ人なら、まあ宗教はキリスト教だろう。
 なので、何も珍しいことではない。
 伯父さんの話に出て来た『よちよち歩きの娘さん』がリサなんだとしたら、本名はアリサ(またはアリッサ)・洗礼名・トレヴァーということになる。
 そして母親は日本人だというから、正しくここにいるリサと条件は合うのだ。
 リサの顔立ちからして、日本人と欧米人とのハーフかクォーターだとは思っていた。

 愛原:「アメリカにいたトレヴァー家は旧アンブレラの犠牲になっている。しかし旧アンブレラと直接関わった一家は口封じの為にお家断絶させられたけど、その親族達にまでは魔の手は及んでいなかった。いや、魔の手からの追跡から上手く逃れたというべきか……」

 親族の一部はアメリカのルイジアナ州で建築設計事務所を経営していることが分かっている。
 元々トレヴァー家は建築士の家系だったらしい。
 そしてまた別の親族が日本に逃れて来たということか。

 高橋:「その口封じされた家族の中に、リサのオリジナル版がいたんですね?」
 愛原:「そういうことだ」

 当時14歳だったリサ・トレヴァーは旧アンブレラに捕まり、非人道的な実験を繰り返された挙句、不老不死の化け物と化している。
 旧アンブレラはそんなリサをゴミ同然に扱っていたが、日本法人がその研究を継承し、ついに日本モデル完全版として、ここにいるリサを造り上げた(アメリカ本体と違って生物兵器として悪用することよりも、むしろリサ・トレヴァーが手に入れた不老不死について研究したかったらしい)。
 もしリサがあのアメリカ人の家の子なのだとしたら、国籍はアメリカか?
 アメリカ人の子をどうこうするのであり、日本人の子をどうこうするわけではないからOKとでも思ったか、旧・日本アンブレラの連中?
 因みにここにいるリサは日本国籍である。

 高橋:「何かここに来て、急にリサの真相がやってきましたね?」
 愛原:「全くだ。どこに真相が転がってるのか、分かったもんじゃないよ」

 あとは更に立ち入り制限が解除されて、『お化け屋敷』を探索できればいいのだが、大爆発のせいで跡形も無くなったんだっけ。
 もう少し早く気づいてたらなぁ……。

 愛原:「ん!?」

 その時、私の脳裏に子供の頃の記憶が蘇った。
 それはまだ私が小学生だった頃、友達何人かと一緒に、あの『お化け屋敷』を探検した時の話だ。
 当時は規制も緩かったので、鍵なんか勝手に開けられたくらいだ。
 リビングみたいな所に暖炉があって、その上に『お化け屋敷』に住んでいたと思われる家族の集合写真があった。
 その中に、確かに『よちよち歩きの娘さん』が写っていたような気がする。
 だけど、それがここにいるリサなのかどうかは分からない。

 高橋:「先生、どうしました?」
 愛原:「いや……。リサも、もうすぐ15歳だ。その体の見た目の年齢はな。実際は俺より5歳くらいは年上なのか?そう思われる小さな女の子の写真を、あの『お化け屋敷』の中で見たような気がしてね」
 リサ:「私と似てた?」
 愛原:「いや、分からん。写真自体が古かったし」

 私が生まれる直前に行方不明になったということは、私が探検に入った時にはそれから10年くらい経ったということになる。
 元々古い屋敷だったので、尚更老朽化感が半端無かった。

 リサ:「私じゃないのかな。全然記憶が無い」
 愛原:「リサは人間時代の記憶が殆ど無くなっちゃってるからな。無理に思い出さなくていいからな」
 リサ:「うん」

 その時、私のスマホにメールが入った。
 それは伯父さんからだった。

 愛原公一:『学の両親が無事だった祝いに、夕食は美味い物でも食べよう。もちろん学の弟子と嫁も一緒で良い』

 『弟子』も『嫁』も、当人達の勝手な自称なのだが……。

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1 コメント

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あとがき (雲羽百三)
2020-08-28 16:53:28
 愛原達が乗ったバス停の近くに聖ウルスラ修道会があったり、そこが運営する私立学校があったりするので、修道女の姿はその近辺でよく見かけます。

 あと愛原リサの実年齢ですが、仮に『お化け屋敷』の写真がリサ本人だとするならば、撮影された時期(当時5歳前後)に行方不明になり、その10年後、愛原に写真を発見されたので、15歳前後の年齢差があるということになります。
 愛原が40歳以下のアラフォーなので、それより約15歳年上のリサの実年齢は50代半ばということになります。
 非人道的な実験と人体改造手術を受けた愛原リサは極端に肉体の成長と老化が遅くなり、未だに14~15歳の肉体年齢というわけです。
 そして、人間の血肉に強い食欲を持つ生物兵器と化してしまったと。
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