報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「この話のラスボスはBOWではなく、人間だった!」

2020-08-21 20:15:19 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[7月26日20:04.天候:晴 東京都大田区羽田空港 京浜急行電鉄羽田空港第1・第2ターミナル駅]

 

 

 空港ターミナルのレストランで食事をした私達は、京浜急行空港線の乗り場に向かった。

 愛原:「あー、歳のせいか、最近はフライ物を食べるともたれやすくなったねぇ……」
 リサ:「先生。まだ40歳にもなってないでしょ」
 愛原:「り、リサ!読者に歳がバレるからやめてくれ!」
 斉藤:「でもアラフォーということは公表してるじゃないですか。うちの担任の先生より若いですよ」
 愛原:「うちの高野君くらいの歳か。あんまり女教師モノは好きじゃないんだよなぁ……」
 リサ:「ん?何の話?」
 愛原:「い、いや、何でもない!」

 地下のホームに行くと、多くのインバウンド客を迎える為か、それは幅広く造られている。
 が、昨今のコロナ禍のせいで飛行機利用客が少ないせいか、明らかに利用客数は通常の3倍……もとい、通常の3分の1くらいの少なさではなかろうか。
 コロナ不況は絶対これから猛威を振るう。
 私の探偵の仕事も大丈夫なのかどうか、とても気になる。

〔「1番線、ご注意ください。折り返し20時11分発、都営地下鉄浅草線、京成線直通、快特、京成高砂行きが参ります。……」〕

 トンネルの向こうからやってきた電車は、東京都交通局の車両だった。
 東京都のマークでもあるイチョウのマークは緑色だ。

〔「ご乗車ありがとうございました。羽田空港第1・第2ターミナル、羽田空港第1・第2ターミナル、終点です。……」〕

 

 京浜急行の車両ならボックスシートもあっただろうが、都営地下鉄の車両となるとロングシートしか無い。
 まあ、腰かけてみると、結構フカフカであるが。

〔「ご案内致します。この電車は20時11分発、京急蒲田、品川、泉岳寺方面、都営地下鉄浅草線、京成線直通、快特、京成高砂行きです。羽田空港第3ターミナル、京急蒲田、品川、泉岳寺の順に停車致します。泉岳寺から先、都営地下鉄浅草線内、京成線内は各駅に止まります。途中通過となります天空橋、穴守稲荷、大鳥居、糀谷でお降りのお客様は、2番線の20時15分発、エアポート急行、逗子・葉山行きをご利用ください。発車までご乗車になり、お待ちください」〕

 リサ:「宿題やった?」
 斉藤:「バッチリ。リサさんとの婚前旅行ですもの。もう即行で終わらせたわよ」
 リサ:「ちょっと待って。今、何旅行って言った?」
 斉藤:「もちろん、婚z……」
 リサ:「あー、聞こえない聞こえない!」

 リサは両耳を押さえた。

 リサ:「何せ第0形態じゃ、耳の聞こえが悪くってw」
 斉藤:「じゃあ第1形態になって!鬼の姿なら聞こえるでしょ!?」
 愛原:「却下!」
 リサ:「先生の許可が下りないので、応対致しかねます」
 斉藤:「パールみたいなこと言ってぇ……」

 どうやら霧崎さん、ワガママ御嬢様に対しては、『旦那様の許可が下りないので、応対致しかねます』と答えているらしい。
 それをリサも聞いていたので、真似したというわけだ。
 というか、こんな公衆の面前で第1形態ですら変化無理だろう。
 善場主任の見解によると、リサの額に鬼の角のようなものが生えるのは、そこが弱点だと分かり易いようにする為らしい。
 リサの体を改造した旧アンブレラの狂科学者達は、万が一リサの牙が自分達に向けられた時の対策を施していたようだ。

[同日20:11.京浜急行電鉄空港線2017T電車先頭車内]

 私達を乗せた快特電車は時刻表通りに発車した。
 あまりスピードの出なさそうな地下鉄の車両だが、これでも快特を名乗る以上、本線で時速120キロ運転をするのだろうか。

〔「ご乗車ありがとうございます。20時11分発、快特、京成高砂行きです。次は羽田空港第3ターミナル、羽田空港第3ターミナルです」〕

 詳しい案内は次の駅を出てから行うようである。
 携帯で調べたところ、乗り換え先の東日本橋駅まではここから30分以上掛かるらしい。
 京急線内は快特として駅を飛ばして行くから良いが、そこから先が遠く感じるのだろう。

 

 リサ:「兄ちゃんは家にいるの?」
 愛原:「まあ、そうだろうな」
 斉藤:「パールには『いい加減にしなさい』と言っておきますから」
 愛原:「申し訳無いねぇ……」
 リサ:「今、メイドさんは家にいるの?」
 斉藤:「いないみたいね。だから、菊川駅には代理の別のメイドが迎えに来ることになっているわ」
 愛原:「最悪クビになるんじゃないか?そんな勝手なことしてたら……」
 斉藤:「そうかもしれませんねぇ……」

[同日21:15.天候:晴 東京都墨田区菊川 愛原学のマンション]

 私達の帰りは順調だった。
 だからその描写がカットされるのは当然だ。
 字数には制限がある。
 しかし、さすがに東日本橋駅から馬喰横山駅へ乗り換える時にあった不思議な電話に関してはカットするべきではないだろう。
 駅名は違えど、都営浅草線の東日本橋駅と都営新宿線の馬喰横山駅は地下道で繋がっており、徒歩連絡可能である。
 その地下道を歩いている時に掛かって来たのが、高橋からの電話だ。
 私が電話に出ると、

 高橋:「先生!た、助けてくだs……うわなにをするやめr」
 愛原:「あ!?」
 高橋:「お、鬼が……鬼が出たーっ!くぁwせdrftgyふじこlp」

 というやり取りがあった。
 何だか分からないが、急いで帰る必要がありそうだ。
 で、私が急いて帰ってみると……。

 霧崎:「お帰りなさいませ。愛原先生……&御嬢様」

 メイドカフェの店員みたいな愛想の良い笑顔と挨拶で霧崎さんに出迎えられた。
 部屋の中に入ると、どうやら霧崎さんがしたのか、部屋中ピカピカに掃除されていた。

 愛原:「な、何をしてるんだ?斉藤さんも帰宅したんだぞ?早いとこ帰ってやれよ」
 霧崎:「もちろん、そうさせて頂きます。ですが、その前に1つお願いがあるのです」
 愛原:「お願い?」

 リサが鼻をフンフンと引くつかせて、高橋の部屋のドアを開けた。

 高橋:「んー!んー!」
 愛原:「なっ!?」

 そこからぐるぐる巻きに縛られ、SMプレイ用のギャグを噛まされた高橋が出て来た。
 しかも、高橋はボコボコにされた後のようである。
 霧崎さんの後ろには鞭やらローソクやら……。
 な、何だ?私達が留守の間、2人でSMプレイでもやってたのか?
 普通はメイドさんコス側がMのはずだが……。

 霧崎:「これです」

 霧崎さんはドヤ顔で婚姻届を私に出して来た。
 既に高橋のサインもされている。
 だが、高橋の名前の所には血が滲んでいた。

 霧崎:「ここに保証人を書く欄が2つあります。1つは旦那様にお願いしました。しかしもう1つは旦那様の御命令で、愛原先生に署名をもらえとのことでございます!」

 しかし、そのもう1つの欄には斉藤社長のサインは無く、空欄だった。

 霧崎:「まずは愛原先生にサインを頂戴し、そうして頂ければ旦那様にもサインを頂けるのです。どうか、よろしくお願いします」
 愛原:「お~ま~え~ら~……!!」

 私の頭の中で何かがキレた。

 愛原:「その前に言う事があるだろぉぉぉぉぉぉぉっ!!!」

 その後はリサの回想である。
 私もその後、何が起きたか覚えていないのでリサに解説して頂く。

 リサ:「メイドさんがナイフを振るってきましたが、先生はそれを素手で弾き飛ばしました。で、メイドさんと高橋兄ちゃんを折檻していたんですが、あまりの大惨事に警察は来るわ、マスコミは来るわで、それはもう大変でした。で、婚姻届は先生の手で破り捨てられ、高橋兄ちゃんとメイドさんは血と涙を流しながら土下座を強要されたわけです。ええ、お怒り状態の先生には、私が鬼に変化しても勝てないような気がしました。私、元々先生に逆らうつもりはありませんでしたが、これからもっと気をつけたいと思います」
コメント (2)
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“私立探偵 愛原学” 「羽田空港到着」

2020-08-21 11:20:13 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[7月26日18:30.天候:晴 東京都大田区羽田空港 東京国際空港第2ターミナル]

 私達を乗せた飛行機は羽田の上空までやってきた。

 愛原:「今日は天気がいいから、夕日に映える滑走路がきれいだな」
 リサ:「おー!」
 斉藤:「飛行機の旅は、こういう所がいいんですよね」
 愛原:「なるほどな」

 機内のモニタでも、機外の映像が映し出されている。
 滑走路に着陸するところまでが醍醐味かな。

 ドスン!という音がして、タイヤが滑走路の地に付いたことが分かる。

 リサ:「おー!」

 着陸の衝撃もそうだが、その後のフルブレーキによる重圧もなかなかだ。
 もっとも、離陸時の重圧に比べれば何てことはないが。

 愛原:「帰って来たねぇ……」
 リサ:「うん、帰って来た」
 斉藤:「帰って来ました」

 外が薄暗いせいか、地上の誘導員はパドルではなく、誘導灯を振っている。
 その様子もモニターで見ることができる。
 パドルや誘導灯を交差させると、それが停止合図だというのは見ていて分かる。

〔「お待たせ致しました。……」〕

 愛原:「おっ、やっと降りられるみたいだ」

 私達は席を立つとハットラックから荷物を出し、出入口へと向かった。
 飛行機では必ず、出入口は進行方向左側と決まっている。
 これは船舶の習慣から来ているという。
 確かに往路で乗った船も、進行方向左側から乗り降りしたような気がする。
 なので、船の左舷側の事を『ポートサイド(港側)』と呼ぶことがある。

 スッチーCA:「御搭乗ありがとうございました」
 愛原:「お世話さまでした」
 斉藤:「どうもー」
 リサ:「おー!見送りしてくれる!」

 飛行機を降りて、到着ロビーを進む。

 愛原:「リサは飛行機に乗るの、初めてだったか?」
 リサ:「うん。ヘリコプターと輸送機ならある」
 愛原:「ゆ、輸送機!?」
 リサ:「タイラント君やハンターと一緒に、ああいうのに入れられて」

 リサは窓の外を指さした。
 そこでは、別の機体に積み下ろししているコンテナがあった。

 リサ:「船は貨物船だったし」
 愛原:「リサ、俺と一緒にいるからには心配ないぞ!移動は全部旅客車、旅客機、旅客船だ!」
 斉藤:「そうよ。しかも、私とも一緒ならビジネスクラスにも乗れるのよ。……今日は諸事情でエコノミーだったけど」
 愛原:「……すまん。予算が……」
 リサ:「ありがとう。研究所にいた時は『動物扱い』だったけど、研究所を出てからは人間扱いしてくれるようになった」
 愛原:「暴走したら研究所に逆戻りになるだろうから、気をつけないとな」
 リサ:「うん……」

 その時、リサの腹がグーッと鳴った。

 リサ:「お腹空いた」

 リサの右目が多少、金色に変わった。
 リサの話では他のBOWと違い、人間の血肉でないと栄養補給ができんということはなく、普通の食事でOKとのこと。
 だが、あまりにも飢餓状態になると、本当に暴走する。
 リサの場合、1食抜いて『減速』、2食抜いて『注意』、3食抜いて『警戒』、そして4食目には『停止』……いや、【お察しください】。

 愛原:「ああ、分かった。早いとこ高橋と合流して、何か食べよう。幸い羽田空港には、レストランが何軒もある」

 私は鉄道の5灯式信号に例えたが、善場主任の見解だと、3灯式信号らしい。
 1食抜いて『注意』、2食抜いて【お察しください】。
 幸いリサはグルメ思考派ではないので、人間の食べる物なら何でもいいらしい。
 しかし、1食抜くだけで暴走に注意しなければならないとは……。
 面倒臭そうな話に聞こえるが、これでもアメリカのエヴリンよりマシらしい。

 愛原:「いねーじゃん!」

 預けていた荷物を受け取り、それからやっとセキュリティエリアの外に出る。
 出迎えの人達が待ち受けていたが、その中に高橋の姿は無かった。

 リサ:「うーん……兄ちゃんの匂いがしない……」

 リサ、鼻をフンフンと鳴らしながら言った。

 愛原:「匂いで分かるのか。さすがBOW。ちょっと待て。電話してみる」

 私はスマホを取り出した。
 しかし、着信拒否のままにされていた。

 愛原:「ちょっとメールしてみよう!」

 私はメールを送ってみた。
 すると、今度はすぐに返信が来た。

 高橋:『先生、申し訳ありません。寝坊しました(泣)』
 愛原:「こ、こいつは……!」
 リサ:「先生、説教よろしく」
 愛原:「説教だな」
 リサ:「先生、お腹空いた」

 リサは後ろから斉藤さんに抱き付き、斉藤さんの右肩に噛み付く仕草をした。
 もちろん第0形態のままであり、目も人間の目であるから、半分冗談であろう。
 しかし、それが冗談のうちに食事に在りつかせてやらなくては。

 愛原:「分かった分かった。高橋抜きで夕食にしよう。あいつのことは知らん」

 私はそう言うと、ターミナル内のレストランを探すことにした。

 愛原:「八丈島空港のレストランは1軒だけだったが、ここはもう何十軒とあるからな。何が食べたい?」
 リサ:「いっぱい食べれれば何でもいい」
 斉藤:「八丈島では食べれなかった物を食べるというのはどうですか?」
 愛原:「おっ、それはいいな。八丈島では食べれなかった物となると……」

 私がレストランを見繕っている時、善場主任から電話が掛かって来た。

 愛原:「はい、もしもし?」
 善場:「善場です。羽田空港には着きましたか?」
 愛原:「はい、先ほど。これからターミナルのどこかで、夕食を取ってから帰るつもりです」
 善場:「分かりました。実は今うちの部署で、リサ・トレヴァーにとある装置を着けてもらおうという話が出ていまして……。詳細は明日以降にお話ししたいと思います
 愛原:「リサに装置?実験か何かですか?」
 リサ:「!?」

 リサは『装置』と『実験』という言葉に敏感に反応した。
 姿形は人間のままでありながら、瞳だけは両目とも金色に変化してしまった。

 善場:「実験と言いますか、要はリサ・トレヴァーの状態を管理する装置です。『百聞は一見に如かず』と言います。後日、その装置をお持ちしますので、それでもって直接御説明させて頂きたいと思います」
 愛原:「分かりました。ああ、申し訳ないですが、明日はちょっと予定がありまして……。ええ、明後日なら大丈夫です。……はい。分かりました。それではお待ちしております。……はい。それじゃ、失礼します」

 私は電話を切った。

 リサ:「私、また実験させられるの……?」
 愛原:「どうも話しぶりからして、リサの体をどうこうという話ではないみたいだよ。リサの状態を管理する装置ができたんだって。ま、どんなヤツかは善場さんが直接見せてくれるみたいだから、その時次第だな。リサは学校に行ってる間だから、俺が話を聞くことになるだろう」

 私はそう説明した。

 リサ:「私を研究所に戻す話じゃない?」

 リサは不安そうに聞いた。

 愛原:「ああ。そんなことは一言も出なかった。だから安心していい」

 そう言うと、リサはホッとした顔になった。
 アメリカのエヴリンもまた、研究所に連れて行かれるのを拒絶した為に暴走したらしい。
 それほどまでに、彼女達にとって研究所という所は地獄のような所だということだ。
 彼女達の身に何があったのかは、あえて触れるまい。
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